クラスの美少女が中二病だということを僕だけが知っている
なんとなくこんな感じなら美少女と普通の男子校生が近づいてもむかつかないなあと思って書きました。暇があったらお付き合いください^_^
僕のクラスには学年一の美少女がいる。彼女の名前は姫野葵さん。サラサラの長い黒髪に小さな顔にバランスよく配置された目、鼻、口。ぱっちりとした大きな瞳に長いまつげ。プロポーションも抜群だ。特に足が細長くてとてつもなく長い。とにかく長い。色白ですっきりとしたきれいな足だ。ちなみに僕は胸派と尻派であれば足派だ。
彼女はすさまじい美少女というだけでなく頭もいい。学年首位を逃したことがないらしい。さらに運動もできる。体育祭でリレーのアンカーになって最下位からトップになったなんてこともある。その時の体操服から出る生足は光輝いていた。しかも性格もいい。ちょっとクールだけどみんなに親切だしお高くとまった感じがしない。
まさに才色兼備。それはそれはモテてモテてモテまくる。もちろん僕のクラスもみんな彼女に夢中だ。でも、彼女が恋人を作ったことはないみたい。もう何人も玉砕している。高嶺の花ってやつなんだろう。
ところで、僕は姫野さんの秘密を知っている。偶然なんだけど、この秘密を知ってから彼女に対してなんだか複雑な気分なんだ。
それは二週間ほど前のこと。僕が課題を忘れてしまって学校に戻った時。教室に向かう途中で姫野さんを見かけたんだ。姫野さんは屋上に向かう階段を登っていた。ちなみにうちの学校は屋上に出入り禁止だ。姫野さんは真面目だから校則違反なんてしないはず。どうして屋上に向かっているのか、僕は気になってつけてしまった。
姫野さんは扉を開けて屋上に出てしまった。屋上への扉は金属製で扉を開けると大きな音がする。流石に扉を開けるわけにはいかない。どうしても気になった僕は扉に耳をくっつけた。声は聞こえないかなーと思ってたんだけど。
「観念しなさいっ!イリーガルギフテッドっ!この私があなたを見つけたからにはあなたの悪事はおしまいよ!」
「きっ貴様は!アルティメットゾディアックの一人、サジタリウスのアオイ!なぜ俺を見つけられたんだ!」
「フフッ私を甘く見たわね。私は射手。私の目は能力者のオーラを見分けることができる!これまではあなたが無自覚な能力者かと思って様子見していたけど、あなたが能力を使って生徒に悪夢を見せていることがわかったわ!これ以上は見過ごせない」
「見過ごせなかったら何だ!俺は選ばれし存在なんだ!これからもこの力でやりたい放題するんだ!お前も俺の力を食らえーッ!」
「無駄よッ!私にあなたの力は通じない。あなたの力は精神攻撃。より上位の能力者である私には効かないのよッ!」
「なっ何ィーッ!?」
「食らいなさい!私の奥義、サジタリウス・ジャスティス・アロー!!」
そこまで聞いて僕は迅速にその場を離れた。そして家に帰った。僕は姫野さんの秘密を知ってしまった。まさか、彼女がそうだったなんて。信じられなかった。ショックだった。みんなの憧れの姫野さん。学年一の美少女で才色兼備な彼女。まさしく完璧と言える高嶺の花である彼女がまさかーーー中二病だったなんて。
屋上から聞こえてきた姫野さんの声、すっごくイキイキしてた。いつもはもっとクールなのにノリノリだった。たぶん彼女は屋上で他の中二病仲間と待ち合わせしてたんだろうな。おかしいと思ったんだ。真面目な姫野さんが校則破りをするなんて。ごっこ遊びするために誰も立ち寄らないところにいたんだな。
しかし、姫野さん。あまりにも意外すぎる。まさか中二病だったなんて。僕ですら中二病を中学で卒業しているぞ。いやでも、高校でも中二病のやつはいるだろうし。いやでもまさか姫野さんがなぁ。
そんな感じで僕は姫野さんの秘密を知ってしまった。しかもこれだけじゃない。これ以外にも彼女のそんな場面を僕は見てしまったのである。
ある日、僕はお気に入りの漫画の新刊がでるので街の本屋さんに向かった。本屋さんで新刊を買ってウキウキしながら家に帰ろうと思ったら、姫野さんを見かけた。なんだか嫌な予感がしたんだけど、薄暗い路地裏に向かってたから心配でつけてしまった。ちなみに僕はストーカーじゃない。これはあくまで心配だからであって断じてストーカーじゃないから。
僕がコソコソしながら姫野さんについていくと、彼女は薄暗い廃ビルに向かっていった。姫野さんが廃ビルの近くに行くと、もう一人いることがわかった。その人物を見て僕はびっくりした。僕の学校の有名人だったからだ。ふわふわの茶色の肩までの髪に色素の薄い大きな瞳。姫野さんよりもかなり小柄な体。最も特徴的なのはその胸部ーーあまりにも大きすぎる胸。うちのクラスの佐藤(胸派の筆頭)によると65のHカップらしい。足派である僕ですら思わず二度見するほどの存在感。ぼくの学校での人気を姫野さんと二分する美少女。一学年下の夢宮ひなたさん。彼女がそこにいた。
まさか夢宮さんがここにいるなんて。どうして。いやわかっている。姫野さんと一緒にいて人気のないところにいる段階で、彼女もそうだと。でも、信じたくなかった。姫野さんだけでなく夢宮さんもそうだなんて。信じたくない僕の目の前で現実が襲いかかった。
「今日はよろしくね。ヴィルゴー。治癒が得意なあなたがバックアップなんて心強いわ」
「ふふふっ、アルティメットゾディアックが一人、ヴィルゴーのヒナタ。この乙女である私がいる限り、たとえ傷を負っても跡ひとつ残しませんとも!」
そう言って大きすぎる胸を張る夢宮さん。大きな胸が強調されている。
「頼もしいわ。今日相手するイリーガルギフテッドは強敵のようだから頼りにしているわよ」
「はいっ!お任せくださいっ!」
そこまで聞いてぼくはすぐさま立ち去った。わかっていた。わかっていたんだ。夢宮さんも姫野さんと一緒だと。夢宮さんもーーー中二病だ。
まさか、姫野さんだけでなく夢宮さんもだなんて。全然気づかなかった。なんだか気まずい。気まずすぎる。今度彼女たちにあったらどんな顔をすればいいの?
そんなこんなで二週間が経過してしまった。実はこれ以外にも姫野さんの怪しい(中二病的な)場面をいくつも見ている。しかもどうやら僕以外気づいている人はいないみたいなんだ。
僕は挙動不審になっていて全然姫野さんを見ることができない。家でもため息ばっかりついてしまう。幸せが逃げてしまうなぁ
あまりにも僕がため息ばっかりついているからか、家で姉ちゃんが話しかけてきた。
「あんた、何ため息ばっかりついてんのよ。鬱陶しいんだけど」
唯一の可愛い弟が悩んでいるのにひどい言い方だ。姉ちゃんは大学生で結構いい大学に通っている。でもものすごいオタクだし腐海なみに腐っている。しかも家では中学時代のジャージで眼鏡姿ですごくだらだらだ。
「ひどいよ姉ちゃん。僕にはものすごく深刻な悩みがあるんだ。ため息だって吐きたくなるよ」
はあっとまたため息が。本当、どうすればいいかなぁ。
「そんなに悩むなんて珍しいわね、いいわ、この頼れる姉が相談に乗ってあげよう!」
「えー姉ちゃんに?言っとくけど僕の悩みはかなりのものだからね?姉ちゃんに解決できるかな?」
僕としては単純に疑問に思っただけなんだけど姉ちゃんにとっては侮辱されたと感じたみたい。僕は頭をガシッとわしづかみにされてギシギシとされてしまい降参した。姉ちゃんは力が強い。僕は勝てなかった。
「ふーん、なるほど。気になる美少女が中二病だったことに気づいてしまい、普通に対応することができないと。しかもロリ巨乳美少女まで中二病だったと。ていうか、あんたの学校にそんなラノベみたいな美少女がいるなんてウケる」
「そんなの関係ないだろ!とりあえず僕としては気まずいからどうすればいいのか悩んでいるんだよ」
そういうと姉ちゃんは心底不思議そうな顔になった。
「えっなんで?あんたが美少女の秘密を知ったからって美少女とお近づきになれる訳じゃないんだから、そのまま当たり障りのない対応でいいんじゃない?どうせその姫野さんとはこれまでもあんまり話してないんでしょ。そのままでいいわよ」
目から鱗がってこんな感じ?確かに、僕はこれまで姫野さんとはあまり話したことがない。グループ課題でたまた一緒になったときぐらいだ。悲しいことだけど僕は平凡なただの男子校生。ラノベの主人公みたいに美少女とお近づきにはなれないのだ。
「それに、完璧な美少女なんて二次創作の中でしかいないんだよ。美少女だって人間なんだからトイレで大のほうするし、ゲップするしおならだってするだろうし。あんたみたいな美少女に夢持ってる人にはダメージ大きいみたいだけど、子供なんだから誰だって中二病になるわよ。大人になったら黒歴史になるんだから、今はあたたかい目で見守ればいいのさ」
なるほど。確かに美少女だって人間。僕たち平凡なる人間が陥る病だってかかるか。そう思うとちょっと親近感湧くな。姉ちゃんの言葉には僕に対するこれだからこいつはみたいな侮りを感じるけど、グッとこらえる。姉ちゃんのアドバイスは有効だ。僕みたいなモブが美少女の秘密を知ったからって何になるのか。これまで通りでいこう。僕は姉ちゃんに笑顔でお礼を言った。
「姉ちゃん、ありがとう!姉ちゃんみたいな腐りすぎて納豆みたいなオタクでも頼りになるんだね!」
僕としては素直な気持ちでお礼を言ったのに姉ちゃんにはすごく怒られて喧嘩になった。姉ちゃんは喧嘩が強い。僕は勝てなかった。
それから数日。僕はこれまで通り姫野さんとはごく普通のクラスメイトとして対応していた。というか全然話さない。これまでもそうだったけど。でも、心を決めたから悩みはない。たとえ姫野さんのアレなところを見ても温かい目で見守ることができる。そう、今みたいにね。
何故僕だけが出くわしてしまうのか。僕はただ体育館の裏で一人寂しくご飯を食べようと思っただけなのに。ちなみにいつもは教室で食べてるんだけど、昨日見たアニメで体育館の裏でご飯を食べるシーンがあってちょっと試してみたくなって来たわけ。
姫野さんがスマホで話していた。何故こんな人気のないところで電話しているのか。気づいたんだけど、姫野さんのスマホカバー、藍色に星みたいなキラキラがついてて射手座のマークがついてる。サジタリウスさんだからかな。
ちなみに姫野さんは体育館の側面に立っていて僕は裏側。ちょうどよく僕の姿は見えていない。
「ボス、この間のイリーガルギフテッドは倒せたけど、ヴィルゴーに結構な負担をかけてしまったわ。今後、これまでよりも強いイリーガルギフテッドが出ないとも限らない。できればラウンドオブゾディアックで修行したいのだけど」
これまでも結構ヤバいのにさらにバージョンアップするのかな。ところでラウンドオブゾディアックって何?
「ええ、ありがとう。ボスの都合のいい時で構わないけどできれば早くお願いしたいわ」
そろそろ電話が終わりそう。僕はほっとした。流石に電話を盗み聞きするのは気が咎める。気が抜けてちょっとよろめいてしまったその瞬間。僕の足元に小枝があり踏んでしまったのである。パキッという軽い音がした時、姫野さんの鋭い声が響いた。
「誰っ!隠れていないで出てきなさいっ!」
あわわどうしよう!これ出てきたらやばくない?姫野さんに怒られちゃうよ!僕が慌てているうちにさらにヤバイことに。
「出てこないつもり?いいわ、そっちがそのつもりならこっちだって容赦しないわ!食らいなさい!私の奥義、サジタリウス・ジャスティ」
「わわわっ!ちょっとまって!今出てくるから!」
僕は観念して姫野さんの前に姿を表した。こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ。僕が姫野さんの前に現れると、彼女はビックリしたように目を大きく見開いた。そんな表情も美少女だ。
「あっあなたは同じクラスの田中くん!どうしてここに?まさか、あなたもギフテッドなの?でも、あなたからは能力者のオーラを感じない...」
姫野さん。ごめんね。ずっと黙っていようと思ってたんだ。でも、ばれてしまったからにはしょうがないんだ。でも、僕はきみのことをこれからも暖かく見届けるから
「姫野さん、僕知ってるんだ。君の秘密。でも、クラスのみんなに言いふらしたりしないから。安心して!」
「ま、まさか私がアルティメットゾディアックの一員だと知ってるの!......秘密を知っているからにはそのままにしておけない。悪いけど記憶を消さ」
「絶対に言わないよ!姫野さんが中二病だってことは絶対に!」
「せてもら......え?」
姫野さんにばれてしまったからにはきちんと伝えよう。僕は君を裏切ったりなんてしない。秘密を言いふらしたりなんてしないと。彼女の秘密は僕が守る!
「大丈夫だよ、姫野さん。誰だってそういう時期はある。僕だって中二病だった時期はあったさ。もちろん、クラスのみんなにばらして恥ずかしい思いをさせるなんてしないから安心して!」
「えっえっちょっ待って」
姫野さん、ビックリしているよな。そうだよね。いきなり特に話したことがないクラスメイトからこんなこと言われてもビックリするよね。よしさっさと逃げよう。姫野さんも僕がいたら気まずいだろうし!
「じゃ、僕行くね!大丈夫!絶対言わないから!バイバイ!」
そのまま僕は風のごとくピゅーっと走り出す。自慢じゃないけど僕は足が陸上部並みに早い。後ろから姫野さんの叫び声が聞こえた気がしたけど、たぶん気のせいだろうね。
「ちょっ!待ちなさい!私はっ私は中二病なんかじゃないーーー!!!!」
姫野さんの愕然とした顔なんて、僕には見えなかったのであった。
その後の話として、姫野さんがよく僕に話しかけるようになった。一貫して、自分は中二病じゃないと主張している。もちろん僕は理解者としてあたたかい目で見守っているとも。ただ、困ったこととしたら、よく姫野さんが僕を人気のないところに連れ出して、中二病的な奥義名を変なポーズと一緒に叫ぶことかな。空気がシーンとなっちゃうんだ。正直反応に困っちゃうんだよねぇ。でも、僕は引いたりしないよ姫野さん。姫野さんも人間なんだって思えるからね。
〜完〜
ここからは主人公である"僕"が知らないはなし。
姫野はアルティメットゾディアックの集会場所である都内のとあるビルに来ていた。アルティメットゾディアックが一人、リーダーであるライブラの明石燐に会うためである。
姫野は最近非常に疲れていた。クラスメイトである田中が自分のことを中二病だと思っていると知ったからだ。もちろん、姫野は中二病ではない。
この日本にはいつの頃からか、頂上の力を持つものが出現するようになった。そのものたちは、星座に因んだ超常能力を持ち、ギフテッドと呼ばれていた。姫野はそのなかでも特に強い能力を持つアルティメットゾディアックの一員である。アルティメットゾディアックのメンバーは超常能力を使って犯罪を犯すギフテッド、通称イリーガルギフテッドを取り締まることを任務としている。もちろん姫野もこれまで大勢にイリーガルギフテッドを捕まえている。自らがアルティメットゾディアックの一員であることを誇りとしていた。
だから、自分が中二病と思われていると知り、ものすごくショックを受けた。姫野は誤解を取り除こうとした。通常、ギフテッドでない普通の人間に能力を見せることは禁止されている。だが、自身が中二病だと思われているのなら話は別だ。姫野はめちゃくちゃ傷ついた。だから、自身が中二病でないと証明しようと禁止されているが能力を田中に見せようとしたのである。いくらギフテッドの頂点にたつアルティメットゾディアックの一員だとて十代の少女。繊細な心が傷つきまくったのである。
しかし、なぜか田中の前では能力が発動しなかった。一度であれば調子が悪かったのだろうと姫野は無理矢理納得しようとしたが、これが二度、三度と続けば話は別である。彼女の奥義、サジタリウス・ジャスティス・アロー。技名を叫ぶとともに弓矢を引くようなポーズを取れば、白く輝く光の矢が現れ敵を射抜く技だ。出力切り替えが可能でちょうどよく敵を気絶させることができるため、姫野が愛用している奥義である。これを田中に見せようとしても何故か光の矢が現れず、技名を叫んでポーズを取るだけになってしまうのである。
姫野が誤解を解こうとしても奥義がは不発してしまい中二病ではないと証明できない。そして田中は中二病だとさらに誤解する。負のループである。
何故か田中が見ている前だと超常能力が使えない。田中が見ていない時にはきちんと使えるのに。流石におかしいと姫野は悩み、アルティメットゾディアック一の知識者にしてリーダーの明石燐を訪ねたのである。
姫野がアルティメットゾディアックのリーダーの執務室にはいると、そこには赤毛に黒縁の眼鏡をかけた二十代ほどの美女が机の前に座っていた。彼女こそが栄えあるアルティメットゾディアックのリーダー、ライブラのリンである。
「こんにちは、ボス。今回は時間をつくってくれてありがとう。どうしても聞きたいことがあるの」
そう姫野が言うと明石は眉を下げどこか悲しそうな顔で応えた。
「全部言わなくてもわかっているよ、葵。君のクラスの田中のことでしょう。残念ながら私は君の悩みを解決することができない。いや、どんなギフテッドだって解決できないだろう。手助けできずに本当にすまない」
姫野はその言葉に驚愕した。なぜならば、明石はギフテッドのなかでも一番賢く、彼女に解決できない問題はないと言われているためだからだ。
「なっなぜ?ボスほどの人ならわかるでしょう!どうして田中の前では能力を使えないの!このままじゃ私はずっと中二病と思われてしまう!お願いだから助けて...」
そういうと姫野はうつむいてしまった。彼女は非常に疲れていた。何度となくためしても田中の前では奥義が不発し、その度に田中から向けられる生温かい視線。耐えられなかった。
姫野の言葉を聞き、明石は椅子から立ち上がり後ろの窓に向いた。そして告げた。残酷な真実を。
「平和なる傍観者それが彼の能力だ」
「えっ?彼はギフテッドなの?でも、ギフテッドであれば私にはオーラが見えるはずだわ。でも、彼にはオーラがなかったわ...」
サジタリウスである姫野は特殊な目を持っている。通常、ギフテッドとそうでない人間を見分けることはできない。ギフテッドには身体的な特徴がなく普通の人間と体の構造などは一緒だからだ。しかし、姫野の目は特殊でギフテッドを見抜くことができる。七色に光るオーラがギフテッドの体から出ているように見えるのである。
「たしかに、通常のギフテッドであれば君にはオーラが見えるはずだ。しかし、平和なる傍観者は特殊でね。彼の視界にはいったギフテッドは超常能力を無効化されるんだ。つまり、彼に見られていると超常能力を使えない」
「そっそんなの聞いたことがないわ!でっでも超常能力ならオンとオフがあるはずだわ。オフの時に私の奥義を見せれば、中二病だって思われないでしょ?」
姫野はすがるように明石を見た。明石は姫野を見ずに告げた。見るに耐えないように。
「平和なる傍観者の能力は常時発動している。オフになることはない。つまり、彼の誤解を解く方法はないんだ...」
「うそでしょ...うそといってよ...ねぇ...」
姫野は膝から崩れ落ちた。もはや立っている気力がないのである。唯一の希望は絶たれた。これからも田中のなかでは姫野は中二病のままである。
「平和なる傍観者はこれまでの歴史で数えるほどしか確認されていない。まぁ、数が少ないのはわかる。彼らが発見されるためにはその視界に入ったギフテッドが超常能力を使用する必要がある。君のクラスに平和なる傍観者がいたのは不運だった。どうか諦めてくれ」
この日、姫野ははじめて絶望を知った。これまで彼女は栄光ある道を歩んできた。多くの人々に称賛され、まさに未来は輝かしいばかり。苦難もあったがすべて乗り越えられるものばかりであった。しかし、今回はじめて解決できない絶望を知った。
絶望を知って少女は少しずつ大人になっていくのである。頑張れ姫野。負けるな姫野。田中に中二病だって思われたって君の仲間は中二病でないと知っている。これからもみんなのためにどんどんイリーガルギフテッドを捕まえてくれ。また田中に見られて中二病だって思われるだろうけどね。
〜終〜
ここまでお読みいただきありがとうございました。なんとなく美少女が不憫な話を書きたいな、でもあんまり可哀想すぎるのもなんだかなぁと思ってこの話を思いつきました。お時間いただきありがとうございました。