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82 リアと相談

 非常口で帰還――

「何処行くの?」

 ぞわっ! 俺の耳の側で声がした。


 何故か発動しなかった〈非常口〉……、一応まだダンジョンと繋がっているみたいだが、新たなスキル使用が妨害されている感じがする。

 ……俺はゆっくりと後ろを振り返る。


 鉱山都市の裏通り、誰も人がいない事を確認していたその場所に。


 ピンクのウエーブロング髪で体のラインが強調されるような黒ローブを着たナイスバディな魔女……マジョリーさんがニコニコ笑顔ですぐ側にいた。

 距離で言うと1メートルもない。


「えっと、一度保護者に会いに行こうかなって思いまして」


 嘘は絶対に駄目だ、うん。

 女性の笑顔にはいくつか種類があるのだが。

 この、マジョリーさんの笑顔には全面降伏しないといけない気がした。


「ふーん? さっき使おうとしたのはやっぱり転移系のユニークスキルなのねぇ……お供もいないし……このまま逃げようとか思っている?」


「まさかそんな! 保護者とちょこーっと会話したらすぐ戻るつもりでしたよ?」


「ジーー--」


 マジョリーさんがジッと俺の目を見てくる。

 俺は嘘をついていないので、そのままマジョリーさんを真っすぐ見返す。


「……ふーむ……嘘はついてないみたいねぇ……ゼン君からはダンジョンの気配をほんの少し感じるのよね、最初はコアを自身に埋め込んだと思ってたんだけど、本拠ダンジョンは島だって言うし……とすると転移系のユニークスキルを利用した何かなのか……お姉さんそれを知りたくてワクワクしているのよ、酷い事をする気はないから教えて欲しいなーって」


 語尾にハートマークが付きそうな口調で話すマジョリーさん。

 なんだろうか、新たな知識に拘る所は非常に魔女っぽい気がする。


「そこいらの話も保護者に相談してからにしようかなと思いまして……ほら、まだマジョリーさん達とは知り合ったばかりなので、第三者の意見をですね……」


 俺はこのまま話しても大丈夫だとは思うんだが、リアに相談せずにそれをした場合だと……怒られる未来が見えるんだよな。


「そうなの? ……嘘はついてないわねぇ……保護者って〈孤高〉かしら?」


 ん? あーダンジョンが火竜の島の側だとそう思っちゃうか。


「いえ、樹海ダンジョンのダンマスが俺の保護者です、まぁ火竜も似たような立ち位置になりましたけど」


 俺の言葉を聞いたマジョリーさんは、口を開けたままポカーンとした表情を俺に見せる。


「え? え? ゼン君ってば〈孤高〉と〈日陰植物〉の両方から保護を受けているの?」


「そうなりますかね?」


 二人のその二つ名は有名なんだろうか?


「ぇぇ……あの二人って仲が良いのに仲が悪いのよ? よくもまぁそんな事に……」


 なんだそりゃ? ……ケンカするほど仲が良いって奴かね?


「という訳で一度保護者に会いに行って良いでしょうか?」


 俺はマジョリーさんをじっと見つめながら聞いていく、逃げるつもりはこれっぽっちもない。

 むしろお礼とかをしないとなーとか思っているし。


「……いいわ、ゼン君は嘘をついたりイクスとの特訓の約束を破るような不義理はしないと判断します、なるべく早く帰ってきてね? ……出来ればその転移を一緒に体験したいのだけど……無理強いは良くないわよね……」


 もしかして転移に興味があるって事なのか?


 でも俺のこれは〈ルーム〉の拡張スキルで転移とは微妙に違うかもだし……いや、まぁいいや取り敢えずリアに会いに行こう。


「なるべく早く帰ってきますから」


 そう言ってマジョリーさんから少し離れた俺は、改めて〈非常口〉を発動させるのであった。

 うん、ちゃんとスキルを発動出来そうだ。


「絶対よ~」


 手を振るマジョリーさんに手を振り返しつつスキルに飲まれていく。


 ……。


 ……。


 ――


「それで私に会いに来たって事なのね?」


 いつもの触れ合い魔物園の芝生の上にちゃぶ台を置きリアと会話した俺。

 ある程度の説明は終わっていて、ラハさんが横でお茶を準備してくれている所だ。


 最近は芝生の上に直にあぐら座りをするこのスタイルに慣れてきている。


 リアも最初は椅子の必要な足の長いテーブルとかを出してくれていたんだが、この方が楽なんだよな。

 ちゃぶ台の向こうのリアは所謂女の子座りというやつで芝生に座っている。


「そうなる、俺としては話しても大丈夫そうだと思ったんだけども、リアはどう思う?」


 俺の質問にドリアードのリアは軽く腕を組むと。


「まさかゼンが〈魔法狂い〉と知り合いになるとはねぇ……」


 なにその二つ名……。


「マジョリーさんって〈魔法狂い〉なんて呼ばれているのか?」


「ん? そうよ、そのままズバリで魔法に関して拘りがあるのよね~、ゼンのユニークスキルが転移系だと思っているなら逃がしてはくれないわね」


「あーだからちょっと怖い感じだったのか、知的好奇心が強いのか? あ、体さん、お茶ありです、茶菓子は俺が出しますよ、ケーキでいいですか?」


 俺とリアにお茶を出してくれた体さんにお礼を言いつつ、お茶菓子の要望を聞く。


「私は白いやつがいいわ」


 リアは手を上げ……頭の上のアホツル毛をピョンっと上げながら白いケーキ、たぶんショートケーキを注文してくる。

 ダンジョンメニューで高級なショートケーキを購入して、リアの前に置いてあげる。


 早速とばかりに食べ始めるリアを横に体さんは非常に悩んでいる。

 まぁ食べるのは首であるラハさんなんだが……。


「私はチーズケーキをお願いしますゼン殿」


 ちゃぶ台に置かれていた生首置物のラハさんが注文してきたので、チーズケーキを出して首の前に置いてあげる。

 それを体さんがフォークで丁寧にラハさんへ食べさせていく。


「もぐもぐ、知らない魔法に出会ったりしなければ〈魔法狂い〉もまともな方だし、ゼンの好きにするといいわ、ただし! 自分のコアのある部屋に入れちゃ駄目よ? さすがに目の前に自分以外のコアがあると……魔が差すって事もあるからね」


 そうか? まぁそういう事もあるかも?


「〈ルーム〉内に招待するのは危険って事か」


「んーそうねぇ……ゼンの〈ルーム〉ってダンジョンとして拡張出来るって言ってたわよね?」


「一応出来るね、維持DPが普通よりかかるから今はやってないけど」


「それならコアから離れた大きな部屋を一時的にでいいから作りなさい、そこに私と〈孤高〉と〈魔法狂い〉のダンジョンに繋がる入口を維持しつつ二人を呼びなさい、そこでちょっと三人で話をするわ、私がゼンの保護者として二人にビシッと釘を刺してあげる」


 保護者として俺を守ってくれるという事だろうか、さすがリアだ、頼りになる。


「了解だ、そういう方向でマジョリーさんやホムラに話してみるよ、ありがとうリア」


「ふん! 勘違いしないでよね!? 私はルナちゃんのためにゼンを保護してあげるんだから!」


 リアがアホツル毛で俺をペシペシしながらそんな事を言う、ツンデレか?

 ……いや……本気かもな。


 例えルナのおまけだろうがありがたい事には変わりない……お小遣いもくれるしな。

 早速ホムラに話を通してから帰るとするかな。


 俺はケーキのお代わりを宣言するラハさんを無視しつつ、ホムラに会いに行く事にした。


 嘆き悲しむラハさん、だけどね、こないだ体さんに相談されたんだよ。

 最近俺の出すお菓子が美味しすぎてラハさんが食べすぎだって……。

 お陰で体さんはシェイプアップエクササイズで大変らしいのだ……申し訳ない。


 でも体さんはそこまで運動が必要な感じには見えないんだけどなぁ。


 鎧を脱いだ私服の時とか超可愛いし……まぁ数百グラムの体重に一喜一憂するのは乙女心という奴なのだろう。


 可愛い人……体だしな。


 そんな訳で、ラハさんへのお菓子のお代わりはなしにするという協定を体さんと結んでいる。


 ふむ……今度、エクササイズを頑張る体さんに何かプレゼントしようっと。

 ……どうにもラハさんより体さんへのプレゼントが多くなってしまう。


 生首ラハさんにそこを突っ込まれた時は、体積での比率でプレゼントの数を決めていますって言い訳をしているのだが……。

 ……あ、もしかしてラハさんがいっぱい食べるのは自分も太って体積を増やそうとしている?


 顔より体の方が大きくなると思うんだけどなぁ……今度ラハさんにも何か送るとするか。


 そうした事を考えながら設置された〈入口〉へと向かう事にした俺。


 パタパタと胸元で手を小さく振る体さんは相変わらず可愛い人……体だ。

 そして芝生にごろんと寝始めたリアはアホツル毛を振って俺を見送ってくれる。

 そんな二人に手を振り返してホムラへと会いに行く俺であった。


 ん?


 ラハさん? 生首をちゃぶ台に置きっぱだと自分で顔の向きを簡単には変えられないからなぁ……、一応後頭部に向けて声をかけて手は振っておいたよ。


 そしたらラハさんはこっちを向こうとして強引に顔を振った事で、首が倒れてコロコロと転がってちゃぶ台から芝生に落ちてたね。


 体さんが慌てて生首を拾いに行ってたよ……。

お読みいただき、ありがとうございます。


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