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79 〈ルーム〉でお話

「そうなんです! ゼン様には常識がまったくないんです! ですから私が支えてあげないと駄目なんです!」


「確かにそうよね……私を配下に欲しがる時の言い方とか……あれは告白と間違えても仕方ないわよね? ……常識のない推しも困るわよねぇ……でも、だからこそ私が投げ銭で支えないとね!」


 いつもの〈ルーム〉の部屋である。


 何か致命的な勘違いをしていたローラさんの承諾? も得たのでダンジョンコアメニューの拡張機能にある、守秘義務を伴う魔法契約を行った。


 これでローラさんは俺の配下になったので、知りえた秘密を外に洩らす事は難しくなる。

 そして、今はセリィとダイゴに紹介して会話させている所だ。


 しかし二人の会話には俺の常識がないとかなんとか言いたい放題だよな。

 俺ほどの常識人もいないと思うんだがなぁ。


 俺も昔は『そんな所だけは常識人なんだから!』ってよく言われたしなぁ。


「それはどんな状況で言われたの? マスター」


「ん? 女の子が何故か服をはだけながら俺に近づいた時に、はしたないから止めなさいって言……あれ? さっき俺は口に出して何か言っちゃってたか?」


「おっけー理解した、取り敢えず私はお昼ご飯でも作ってくる、マスターとダイゴは何が食べたい?」


「ルナ姉ちゃんが作る物ならなんでも美味いけど、こないだ浜辺で食べた焼きそば? って奴がまた食いたい! お肉多めで!」


「了解」


 ルナは台所へと向かって行った。


 一方的に質問されて。

 俺がまともに返事してないのに、何某かを理解されたうえに。

 食べたい物を聞かれ。

 それに俺が答える前に台所に行ってしまった。


 ……いやまぁダイゴの言った肉増し増し焼きそばも美味しそうだけどさぁ……。


 ちょっと寂しかった俺はルナの代わりに、側に座っているダイゴの頭を撫でる、ナデリコナデリコ。


「ちょ! なんで急に頭を撫でて来るんだよゼン兄ちゃん! 恥ずかしいだろ!」


 ダイゴに台所方面へと逃げられてしまった……くぅ恥ずかしがり屋め……。


 他に会話相手を探すもセリィとローラさんはまだ二人で会話している。

 仕方ないので、その会話でも聞いてみようかね。


 ◇◇◇


『つまり、推しっていうのは好きな相手を応援するっていう事で、セリィちゃんはゼンさんの事好きよね?』

『ええ!? あう……勿論好きですけど……』



『うんうん、それはもうゼンさんがセリィちゃんの推しっていう事なの!』

『そうなんですか? ゼン兄様……あっ、えっとゼン様が私の推し?』



『そうよ! そして応援するには投げ銭が一番分かりやすいわね!』

『投げ銭……お金ですか? あ! お金といえばゼン様の非常識な所がもう一つありました! お給料が多すぎるんです!』



『そうね……さっき私と契約した時のお給料の額もおかしかったからね、でもねセリィちゃん』

『やっぱり多すぎですよね、はい、なんですか? ローラさん』



『昔の偉い人は言いました、『余ったのなら投げちゃえばいいじゃない』と、つまりその多めのお給料は、セリィちゃんが好きに投げられるようにとの、ゼンさんの優しさから来た物だったのよ!』

『えっと……ごめんなさい良く意味が……』



『これからじっくりと教えてあげるからね、商売の事も推しへの接し方も』

『あ、はい! 商売人として鍛えて頂けるのがすごく嬉しいです!』



『……尻尾が嬉しそうに左右にパタパタしていて可愛いわねセリィちゃん……ゼンさんにダンゼン商会の筆頭従業員として任命されたからには、頑張って見習いである貴方の教育をしていくからね! 任せて頂戴』

『ありがとうございますローラさん、私頑張りますね! ……これでやっとゼン様の商会でお役に立てる日が近付きました……今までは私達姉弟がお世話になってばかりで……私はゼン様の身の回りのお世話しか出来なくて……』



『……推しの身の回り? そういえば見習い従業員なのにメイド服だものねセリィちゃんは、えっと……具体的には今までどんな仕事をしてたの?』

『ローラさんの護衛をゼン様がする前の話になりますが、まずは朝起こしに行きます、ゼン様は寝起きが悪いので、そっと体を揺らしながらお声をかけてゆっくりと起こす必要があります、ルナさんにまかせるとダイビングアタックで起こすので注意が必要です』



『ほ、ほほう? ね、寝起き……?』

『それから朝の着替えのお手伝いです、といっても見た目は同じような現地服にしているのであれなのですが、きっちり毎回下着まで全部お取替えしています、それと信じられますか!? 私が言わないと同じのを着っぱなしなんですよ!? もう! 何日も同じ服だなんて! ……脱いだ服の匂いを嗅ぐとすっごい濃いゼン様の香りがするんです……衣服の洗濯はさせてくれずにめにゅうという奴でやられちゃうんですけど……』



『お着替えまで!? 脱いだ服の匂いを嗅いでいるの?』

『そしてご飯の支度のお手伝いですね、お皿を出したり片付けが基本ですが……たまに出るゼン様の苦手な物とか、多すぎて食べきれない物を食べてさしあげるのもお役目なんです! この間なんて食べきれないってお肉を残しちゃうんですもん、はぁぁ美味しかったなぁあのお肉……』



『料理の上手いルナちゃんが量加減のミスを?』

『それと、それとですね……たまに、たまーにゼン様が苦手なお野菜を食べるのを手伝う事もあります、ルナさんが言うには健康のためにお野菜も食べないといけないとかで……そんな時は私があーんって食べさせてあげると渋々食べてくれるんです、ゼン様可愛らしいですよね?』



『あーんですって!? ……他には?』

『そうですね、二つある拠点の家のお掃除とか、後は拠点島にある露天風呂に皆と入る時にお背中をお流しするくらいでしょうか? ローラさんはまだ島に行ってないんですよね? お風呂大きくって気持ちいいですよ』



『お風呂! え? 皆で? え?』

『あ、大丈夫です水着……えーと、水中用衣服を着用して入るのでお洋服を着ながら水浴びという感じです』



『はぁ……びっくりしたぁ、なるほど確かにそれなら、ってまって! 背中を流すって、石鹸を使って洗うのをゼンさんにセリィちゃんがやってあげてる?』

『ぼでーそーぷとかいう奴です、すっごい泡がたつんで面白いですよ、私がというよりはダイゴやルナさんも一直線に並んで背中を流し合うんです、後はゼン様に私の髪の毛を洗って頂いたりしますし……家族みたいで楽しいです』



『……他には?』

『夜にあにめという紙芝居を見る時にゼン様の膝の上でモフモフ係になったりでしょうか?』



『もふもふ?』

『えっと『ポメラ族のモフモフの毛並みを専用の櫛でとかすのが楽しい』だそうで……やりすぎも良くないとかでたまにしかしてくれませんが……ゼン様はダイゴにもやろうとするんですがあの子は逃げちゃうので、仕方ないので私がダイゴの分までモフモフ係をしているんです……ほんと仕方ないですよね』



『他に……は?』

『そうですね……あ、ゼン様の耳のお掃除なんかもします、こう私の膝にゼン様の頭を乗せて貰って、そっと痛くないように優しく耳掃除してさしあげるんです、お返しにって私の耳の掃除もしてくれるんですよ? ゼン兄様優しいですよね』



『膝枕耳かきまで……それとたまに出る兄様っていうのは』

『うぁぁ! ……そう呼んでも良いって言われてるのでたまに出ちゃうんです……私達姉弟の恩人で優しくて……まるでお兄様みたいだなって……』



『……』

『ローラさん? どうかしました?』



『……なる』

『え? なにか言いましたか?』



『私もメイドさんになる! 従業員筆頭辞めてメイドさんになる!』

『ええ!? どうして急にそんな、ローラさんは商売人として一人前なんですから従業員で良いと思うんですけど、私も早くゼン様のために商売でもお役に立ちたいですし』



『だって推しの寝起きが見られたりあーんしたり、お風呂に一緒に入っちゃったり出来るのでしょう!? 商売の事はセリィちゃんにまかせる! 私メイドになる!』

『ええ!? 駄目ですよ! それらは私の仕事なんですから、譲りません!』



『ずーるーいー、同じ推しを応援する仲間のはずなのに! ずーるーいー』

『仲間にはなりますけどお仕事を奪うのは駄目……ううんと……なら一緒にやりますか?』



『いいの!?』

『もう仲間ですから……商売はローラさんが私に教えて、メイドの仕事は私が教えますね、でも全部譲ったりはしませんからね? ゼン様のお世話は基本的には私がします!』


 ……。


 ……。


 ――


 なんか話の内容が変な方向に行っているので放置する事にした。


 おかしいな『ダンゼン商会』の番頭さん的な従業員をゲットしたはずなのに、メイドが増えそうなんだけど……。

 それとセリィの話の中について、いくつか言い訳をさせてくれ。


 朝が弱いって話は、安全な自分の家だからのんびりと寝ているだけだ。

 今回の護衛だって短い睡眠でもきちっと目は覚めていたし、ゆっくり眠れる時にゆっくりするくらいいいだろ?


 そしてお着替えだ、いや俺から頼んではないんだけどね……。

 仕事をしていないからって色々遠慮しちゃうんだよセリィは。

 なので無理やり仕事をでっち上げてだな……主にルナが、そう、つまりルナのせいだ。


 そんでご飯のお残しはセリィのためにやっている。

 セリィはやっぱり商売の方の仕事を手伝えてないからって言って、ご飯の時も遠慮しちゃうからな。

 俺のお手伝いという名目で、セリィの好きそうな物を食べさせているってだけの話だ。


 ダイゴ? 飯の時のあいつに遠慮の二文字なんて存在しねーよ。


 そしてセリィからのあーんは……ルナのせいだ。

 俺にもよく分からんが、配下にはご褒美をあげろとルナが言ってさぁ……。

 セリィにあーんされるのがそれにあたるって……。


 ほんとかなぁとは思いつつ、その時のセリィが尻尾を左右にパタパタと嬉しそうに振っているから、ルナの言う事を信じている。


 ダイゴはたまに戦闘訓練の相手になるのがご褒美なんだと、戦闘民族か何かかあいつは……。

 幼いうちにレベリングし過ぎたかな?


 お風呂はまぁ水着着用を義務にしているから、海外の温泉みたいなイメージだし。

 一直線に並んだ背中流しは……ルナが見たアニメからだな、なのでルナのせいだ……。

 女子の方は水着が邪魔でちゃんと洗えないんだけど、ルナ曰く雰囲気を感じたいだけだそうだ。


 そしてモフモフ係はルナの……うんごめん、俺の意思でペットの毛先を整えるような感覚でやっています。


 ダイゴはすぐ逃げるんだよなぁ……ポメラ族の毛はフワフワなんだけど毛先が絡んでいたりするから、丁寧にすいてあげたくなってな……ペット用の日本の製品がすごい役にたっている。


 耳かきとか爪切りは、ある時自分の部屋でやっていたら、セリィがメイドの仕事ですって張り切ってやろうとするから……しょうがないだろ?

 ポメラ族のつぶらな目をウルウルさせながら、私にやらせてくださいって言われたら……やらせるしかないじゃないか……。


 そして一方的にセリィにやって貰うのも悪いだろ?

 だからペットのお世話本で犬耳掃除の事とか勉強してからやってあげたよ。


 そしてやっぱりダイゴは逃げるんだよなぁ……好感度が足りないのだろうか?


 まぁそんな訳で、半分くらいルナが原因だ。

 もう半分は俺の意思だけどな……。

お読みいただき、ありがとうございます。


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