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63 真珠の取引と次なる動き

「それじゃぁ上手くいったんだな?」


 ホムラに借りている島に建てたログハウスのテーブルに着いている俺は、マーメイド族の族長であるマリーにそう確認をしていく。


「はい、話も通っており、取引場所も海の波打ち際なので安心でした」


 マリーはそう言って、空間からお金の入っているであろう袋を取り出して俺に渡そうとしてくる。

 付与してあげた〈インベントリ極小〉も問題なく使えているようで何よりだ。


「それはマーメイド族の稼ぎとしていいよ、人の街で買い物にでも使うか、俺から何かを買うのに使ってもいい」


 俺が貿易港を治めている公爵の娘のドリル嬢に提案したのは、マーメイド族の真珠の件だ。

 どれくらいの価値があるのか聞いたんだが、思っていた数字の数倍以上は高くてびびった。


 例の嫌がらせをしてきたハゲ商人がなり上がった理由が、マリー達との取引で得ていた真珠だったようで、この港町は良質の真珠が手に入る場所としても有名だったらしい。


 ハゲ商人の店を掌握したが、真珠の仕入れルートが使えなさそうで少し困っていたんだとか。


 そこで、ホムラとの酒売買の繋がりで、島の周囲を縄張りにしているマーメイドとも友好関係を結んでいるという事にして、真珠取引の仲介を申し出た。


 ただしマーメイド族が相手するのは、ドリル嬢とその配下のみという事にしてな。


 あのハゲ商人は真珠の仕入れ情報を教える代わりに釈放を求めていたらしいが、この件にて取引材料もなくなり鉱山の穴掘りが完全に確定したみたい。

 頑張って鉱石を掘って貰いたいものだね。


 ドリル嬢のみの取引にしたのは、ホムラに良い感情を持っている人間に利権を与えて発言力を強化させるためでもある。

 守竜なんて討伐して島を占領するべきだ、とか言い出す奴が代官になったら困るしね。


 それに、これでまぁドリル嬢がホムラのために使うお小遣いに困る事はなくなるだろう。


 推しに自身の稼ぎをつぎ込む気持ちはすごい分かるからなぁ……俺もソシャゲのお気に入りキャラの季節衣装ゲットのために課金してたからな……。


 しかしまぁ……年端もいかない女の子にたんまりお小遣いをあげるのかぁ……うん、通報されないか心配になる案件だな。


 しかもそのお金の元になっているのは、マリー達の集めた真珠なので……俺は一切働いていない訳だ!


「まぁマリーも座りなよ、もうすぐご飯が出来るから一緒に試食しようぜ」

「ご飯ですか? まだお昼には早くありませんか?」


 質問しつつもマリーは俺の前の席に着く。

 確かにまだお日様は頂点に至っていない。

 体感で11時前くらいだろうか?


「いやほら、マーメイド族の人化出来る子の中に調理を覚えたい子がいただろ、今回一番センスがあるとルナが認めた子に〈調理レベル1〉を付与したんだよ、それで今はルナに教わりながら一人で料理しているって訳さ」


 俺はログハウス内の台所方面で料理している子と、踏み台に乗ってその横に付いているルナを指さして示す。


「成程、一人が調理スキルを覚えれば、他の子がルナ様の手を煩わせる事もなく自分達で教え合って修練していく事が出来ますものね、あの子は器用な方ですから楽しみですね」


 マリーと一緒になって台所を見て耳を澄ませると、ルナとマーメイドとの会話が聞こえてくる。



『そう、切り身にした魚には塩コショウを振って少し置いておく、その間にニンニクやプチトマトを切っていく』

『はいルナ様! えっと……トントントンッっと、うーニンニクって小さいから切り辛いですね、プチトマトっていう奴もコロコロ転がって難しいです』



『大丈夫そのうち慣れる、次はオリーブオイルを引いて熱したフライパンで切り身を両面焼いていく』

『こうですか? わ! 切り身が崩れちゃった……ひっくり返してっと』



『微塵切りにしたニンニクやプチトマト、それとさっき用意した貝を入れたら水と白ワインを入れる、火加減はこれくらい』

『はい! えーとこれとこれを入れて、お水を入れて、次は白ワインを『ゴクゴクッ』っと』


 スパンッ!!


 ルナがインベントリから出した紙製のハリセンで、マーメイドの頭を引っぱたいていた、漫才かな?


 てか料理用に準備した白ワインを普通に飲むなよ……マーメイドに料理酒の概念を伝えるのに苦労してそうだ。

 勿体ないって思っちゃうらしいとルナが嘆いていたっけ。


『真面目にやらないなら、試食の時に出すテーブルワインをなしにする』

『申し訳ありません! つい反射的に……お酒を食材にかけるという行為にどうにも慣れなくて……頑張って……頑張ってやりますから! ……ぅぅぅもったいない……シクシク』


 マーメイドは泣きながら白ワインをフライパンに入れていた……泣くほどなのか……。


『水分が沸騰してきたら火を弱めて蓋をして蒸す』

『は、はい! えーとポコポコいっているので火を弱めて蓋を……えっと、この砂時計をひっくり返すんでいいんでしたっけ?』


 様々な時間に対応した砂時計は各種用意してあるんだよね。


『そう、その間に器の準備』

『はい!』


 ……。


 ――


 テーブルを囲むように俺とルナ、それとマーメイドのマリーと調理を覚えた子が座って料理の味見をしている。

 料理名はさらっと聞き流してしまったんだが、確かアクアパンツァーとかそんな名前だった気がする。


「うん、まぁまぁいける……いや、ちょっと味が薄いか?」

「最後の味の調整は自分でやらせた、これは好みにもよるから、私が作るのはマスター好みの味」


 なるほど、この味は調理したマーメイドの好きな味って事か、てかルナが作るのは俺の好きな味の料理なのか……いざそうやって言われるとなんか恥ずかしいな。


「いつも美味しい料理をありがとうルナ」

「どういたしましてマスター」


 俺はルナにありがとうと日頃の感謝を込めて伝えていくのであった。


「あ、あの……私の料理の感想は……」


 調理を担当したマーメイドが心配げにこちらを伺って来るので。

 俺は調理をしたマーメイドの方を向き、素直に感想を伝えていく。


「十分美味しいと思うよ」

「合格、次は海鮮の揚げ物とか教える」


 ルナの次の料理教室は揚げ物か、カキフライとかエビフライかなー? イカリングとかアジの南蛮漬けとかもいいなぁ……。

 ……考えてたら食べたくなってきた……今日の夕飯に南蛮漬けをルナに頼もう。


 合格を貰ったマーメイドは、嬉しそうにルナに色々と料理の質問をしたりしている。

 そしてそんな和気あいあいとした場所で。


「もぐもぐモグモグ、うん美味しい、ゴクゴクッ……ゼン様、ワインのお代わり飲んでいいですか?」


 一人だけ試食なのにがっつり食べてがっつり飲んでいる子がいる。


 気にしない事にしてマリーのグラスに白ワインを注いであげた。


 マリーは見た目が子供だから守竜祭の時に人の街でお酒が飲めなかったしな、こんな時くらいは自由に飲むといいさ。


 ……。


 ――


 ――


「カポーン」


 拠点島に設置した露天風呂に水着で入りながら、ルナが謎の擬音を口に出していた。


 いやまぁ謎ではないか、漫画やアニメなんかによくある、銭湯の中で使われる擬音なんだろうけども……。

 ここは天井のない露天風呂だから音の反射もないし、あの音はしねーと思う。


 露天風呂の中でルナは、プールで使うビート板を頭から背中あたりに来るようにして、仰向けでプカプカと浮いている。

 楽しそうで何よりだが日本の露天風呂でやったら怒られる奴だな、いや、泳いでないだけましか?


 水に浮かぶのが好きならマーメイド達と入り江の海で遊ぶのも良いかも……良し、今日の夜に俺とルナに水泳系のスキルを付与しちゃおう。


 島の借主になったんだから泳ぎもある程度出来ないと勿体ないよな。


 俺はまぁ日本の学校で習ったからプールでなら100メートルや200メートルくらいなら軽く泳げるんだが。

 海はプールとは別物だって爺ちゃんも言ってたし、スキルは必須だろう。


 マリーやマーメイドにスキルを付与する時に気付いたんだが、種族によって付与出来るスキルが微妙に違ってたりするのな。

 〈人化〉とかは俺のメニューには出て来ない物だと思ってた。


 ファンファンやゴーレムに〈人化〉が出て来なかったのは……肉体がない種族だからかな? それともステータスが足りてないとか?


 まだまだダンジョンメニューは知らない事だらけやね……急いで知る必要もないけどさ。

 そうして俺も水着で露天風呂に浸かりながら諸々考え事をしていると。


「マスター、飲み物出してー」


 露天風呂の中を仰向けでプカプカ浮いているルナが俺に声をかけて来たので、毎度のアイスココアを準備して渡してあげる。


 俺はスポーツドリンクにでもするべかな、お風呂にゆっくり浸かるなら水分は大事だ!


「ありがとーマスター」


 ルナはビート板から起き上がり温泉の縁に向かうと。

 足だけ浸からせて縁に座り、アイスココアを美味しそうに飲み始めた。


 俺も自分用の飲み物を出して飲み始める。


 しかしあれだな、自分のプライベートな島でのんびりまったり一日を過ごして、夜は露天風呂でくつろぐとか最高すぎるだろ。


 はーもう冒険者とか商人とかやらずに引き籠っちゃうのもあり……いやいやまてまて。

 ルナの情緒を育てるためにも、色々な経験は必要だって思ったから色々やっているんだった。

 あまりの快適さに忘れちゃう所だったよ……恐るべし露天風呂。


 えっと森で果物、海で海鮮ときたから次は何処に……平原で肉……か?


 樹海ダンジョンでも肉はある程度取れるけど、上級の美味い肉はフィールド型ダンジョン産だって可憐なハーフエルフのカレンさんが言ってたっけ。


 うーむ、平原ダンジョンのマスターで性格が普通な人とかいねーかな?


 ……今の所、ダンジョンマスター二人に出会って二人とも変人だったし……望み薄かもな。

 あ、でもその理屈だと俺も変人になっちまうか。


 俺は普通だから他のダンジョンマスターにも常識人がいる可能性はあるな!


 リアあたりに相談してみるか。


 ……そういや樹海ダンジョンと島ダンジョンで思い出したが、初めて作った洞窟ダンジョンを忘れていたな……後で様子を見にいかねば。


 ……。


 ……。


 ――


 ――


 様子を見に行った盆地の洞窟だが、魔物がそこそこ湧いていたので洞窟入口の土砂をどかしてから盆地と周囲の魔物を配下の経験値として美味しく頂きました。


 景色の良い露天風呂は勿体ないけど一旦潰して階段とかも崩して坂にして、ただの洞窟に戻しちゃったよ。


 常に自分のダンジョンにして〈ルーム〉の入口を置いておくには、まだ管理する配下が少なすぎるからね、たまに様子を見て魔素が溜まっているなら経験値を稼ぐ場所くらいに思っておこうか。


 ちなみに俺のダンジョン島よりも、洞窟ダンジョンに繋いだ時の方がゴブリンやらの召喚DPが安かったね……今は別に使わんけど。


 いやほら、ゴブリンとかは食料が必要なのが面倒なんだよ……ゴーレムとかシャドウファントム達は周囲の魔素を吸収するのがご飯っぽいから楽なんだ。


 あいつらは休憩さえちゃんと与えておけば勝手に回復する。

 さすがにずっと動かしっぱなしだときついみたいだけどさ。


 シャドウファントムとか、もっと雇いたいんだよなぁ。

 でもあんまりリアに強請るとルナにヒモ判定されちゃうからな……。

 召喚出来るようにするにはどういう場所にダンジョンを作ればいいんだろ?


 コアレベルが上がれば高いけど召喚出来るようになったりもするらしいんだけど。


 墓場とかか? それとも深い洞窟とか? ふーむ……分からんなぁ……。


 魔素スポットだけじゃなく、安く魔物が召喚出来る場所とかも〈ルーム〉の入口で押さえておきたいけど……。


 次の〈入口〉取得にかかるDPが202万5千DPの可能性が高いんだ……。


 世の中そんなに甘くないって事だよな。

お読みいただき、ありがとうございます。


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