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58 貿易港タタンタ  ルナ強化

「そこのお兄さんちょっと寄ってかないか? うちは遠国産の香辛料が豊富だぜ!」


 俺とルナが港町の市場を歩いているとそんな声がかかる。


 確かにその店には、色んな香辛料が所狭しと並べられている。


 俺のナナメ後ろを歩いているルナが俺の服をクイクイッと引っ張って。


「マスター、ちょっとお店見てみたい」


 そう言うので、その店に寄る事にした


「じゃちょっと見ていこうかな、お勧めはあるかい店主」


「毎度! そうなさぁこれなんて――」


 様々な香辛料を確認し値段交渉を重ねて仕入れていく俺とルナ。



 今はホムラに借りた島のすぐ側にある貿易港でタタンタの街、もしくはタタンタ港なんて呼ばれる場所に来ている。


 マーメイドの一族を配下にして防衛戦力を得た俺は、ささっとログハウスを買って魔素の湧きスポット中心に設置し、その拠点の周囲をダンジョンにするだけに留めた。

 てか狭い範囲なのに時給が800DP近くあるんだよ。


 露天風呂を作ったハジダンの倍以上だな。

 あ、ログハウスの後ろにも柵で囲んだ露天風呂は作りました。


 人化出来るマリーを含めた数人のマーメイド達を拠点の管理人として任命し、洋服やらをプレゼントしておいた。


 海はマーメイド達に、そして島内の防衛には、リアの樹海ダンジョンへ扉を開けてから安く召喚出来るウッドゴーレムを数百体呼び出し、それらに島内の巡回を兼ねたレベリングをさせている。


 ウッドゴーレムやシャドウファントムみたいな、ご飯のいらない戦力は管理が楽だよな……。


 いつかストーンゴーレムやアイアンゴーレムが召喚出来る場所に行って安く仕入れたいね。

 やっぱり鉱山とかかなぁ?


 マーメイドはご飯を自給自足出来るはずなんだけど……ルナの料理に感激しちゃったみたいで、人化出来るマーメイドがルナに調理の弟子入りを希望していた。


 ルナもまぁ簡単な事から教えているみたいだ。


 やる気が続くようなマーメイドがいるなら〈調理レベル1〉を補助輪代わりに付与してもいいかなと思っている。

 魚の丸かじりで大丈夫だった子らに味の濃いご飯は大丈夫か? とか思ってしまうかもだがマーメイド族は大丈夫っぽい。


 ちなみにスイレンさんは海の底で就寝中だ。


 最近ずっと一緒にいたが、そもそもドラゴンは結構寝るものらしくて、今回は丸一日寝るんじゃないかって話だった。


 やっぱ人とは生活サイクルも違うんだなって思う。

 ドリアードのリアも日光浴の時間をきっちり取っているしな。


 そんな訳でマーメイド達に夜の海上をこっそり大陸側まで運んで貰い、ひとけのない海岸の岩影に扉を一カ所記憶してから街道まで移動し。

 朝になってから街の中に歩きで入っていった。


 〈ルーム〉の入口が5個使えるからね、リアの庭園とダンジョン街のお屋敷、そしてホムラに借りた島の三カ所が固定で、残りの二カ所の空きを使い捨てのセーブポイントのごとく使える。


 ……。


「へー守竜様を称えるお祭りがあるのかぁ、それで表通りの宿に空きがなかったんだなぁ……」


「ああ、この港が海の強大な魔物に襲われないのも守竜様達のおかげってな、ありがたい事だぜ」


 香辛料屋のおっちゃんは海に向けて一礼していた。


 本当にホムラに感謝しているんだね。

 もしこれが信仰だとした場合、この大陸だと教会が幅を利かせているはずなんだが大丈夫なのかね……。


 教会ってのは創造神オールを崇めるとかなんとかで、眷属神も合わせて信仰していて色々とごちゃごちゃしている宗教なんだけど。

 ……神かどうかは知らんが強力な力を持った存在は実在しているみたいで、総本山的な場所には近寄りたくない勢力だなーとは思っている。


「それじゃ次の店に行こうかな、おっちゃんまたよろしく、ルナいくぞー」


「おう、またよろしく! 嬢ちゃんもまた買ってくれよ!」


 香辛料屋のおっちゃんに手を振りながら次の目ぼしいお店を探しにいく。


 そもそも交易として何かを仕入れに来たっていう設定だしな、適当に自分らが欲しい物とかを買いまくるつもりだ。


 金はホムラの洞窟に結構あったんだよね……それにこの大陸って国ごとに貨幣の鋳造をしているけど、ダンジョンの宝箱に入っている貨幣が基準になっていて、使われている金属の量は基本的に一緒なんだよ。


 だから一応他国の金も使えない事はない、まぁ今回はホムラの所にあった貢ぎ物の金を貰ってそれを使っている。


 ルナが、さすがヒモマスターとかなんとか呟いていたけど……。


 一応ホムラに酒は提供しているからセーフじゃね?

 まぁ例えアウトでも気にせず金は貰うけどね、だってそこにお金があるんだもの!

 ホムラが使わなくなったものを貰って何が悪いというのだろうか?


 そうして市場を巡っていく俺とルナ。


 ルナに移動中は隠密スキルを微弱に使わせているんで、美少女なんだけどそれに気づく人は少な目だ。

 お店の中ではばれちゃうけどね。


「この貝柱を干物にした物はいいな……」

「出汁に使えるしホムラ姉様達のおつまみにもなる、樽ごと買おうマスター」



「へぇ絹を使ったハンカチかぁ……」

「女性へのお土産に最適、複数枚買っておく事を勧める、染色は全部違う色のにするべし」



「ああ、ガラスの器も一応あるんだな、これは砂漠の国からの輸入品か……」

「まだまだ濁りが酷い、これはスルー」



「あれ? これ乾燥させた昆布じゃね? 海藻を食べる文化あるのか、それとも輸入品? 東の国産? へー」

「マスターお金出して! すみませんお金払うのでちょっと味見をさせてください……モグモグ……買い占め決定!」



「壺? うあぁ魚醤ってやつかぁ……すごい味と匂いだな……」

「隠し味なら使える、いくつか買おうマスター」



「豪華な絨毯か……うちの拠点には似合わないな……」

「大きいね……マスター、あれ一枚で金貨30枚以上するんだって……」



「魚の干物か……しかも交易用なのかカラッカラに乾いているな……内地で売れるかなぁ? これとか氷下魚の干物っぽいか? スルメもあるのか、乾きものは爺ちゃんが好きだったなぁ……」

「味次第、一つください……モグモグ……炙ってあげれば好きな人はいるかも? そこの箱全部と、それとそっちの箱も全部買う」



「鍋釜屋? 貿易でもなんでもないよなこれ」

「遠国の魔道具で魔石を消費して煮炊きが出来るんだってマスター、……これは魔石の消費効率悪すぎる、スルー」



「果物だな……てか何処かで見た事のある果物達だな……うわ、えっぐい値段しているなぁ……」

「運ぶのが大変だし値段が上がるのは当然、それに人気あるからお手頃なのはすぐ売れていくみたい、あれは売れ残り……というか売りたい物を売るための相場操作用?」



「あーここらからは港町っぽい魚介類市場か、新鮮な魚介が特盛でしかも安いな」

「キラーンっ! 一先ずある程度買って市場を色々回る、これがこの街の相場なら買えるだけ買っていこう!」


 ウニ、カニ、エビ、イカ、タコ、一般ではあんまり食べられてないと言われたが俺達には関係ない。

 とにかく買いまくって、茶色い帆布ショルダーバッグ〈拡張5倍〉の中に入れる振りをしてインベントリにどんどん仕舞っていく。


 それを見られているとね、変な輩が絡んできたりもするんだよね……。

 なので、そういった輩への対処の仕方は……。


 市場ですっごい硬いと言われた堅殻クルミを大量に買ったんだ。

 そしてこれって普通は道具を使って割るんだって。


 なので、何か変なのが絡んできたら、そのクルミを片手で割って中身を笑顔でお裾分けしてあげた。

 そうしたら皆素直に帰って行くんだよね。

 礼儀正しい子が多い港町で良かった良かった。


 スリやなんかは、ルナのスカートの中に待機しているファンファンが全部止めてくれる。

 今日の市場は手に怪我をした人が多そうだね?


 そうして色々買ってから裏道の宿へと向かう。

 お祭りがあるからなのか表通りの宿屋は全部埋まってたから仕方ないね。


「ムフーッ満足満足」


 俺の少し前を歩いているルナは、好きなだけ買い物が出来てご機嫌のようだ。


 そして辿り着いた宿だが、寂れていて一階の酒場と飯屋を兼ねたスペースにもお客は一人もいない、そんな宿だ。


 獣人が経営している宿だから人間は来ないってのはあると思うけど。

 それだけじゃなくて、店主が怪我して調理が出来ないんだってさ。

 獣人も美味い飯がない所には来ないよね。


「ただいまーっと、1号室のゼン帰りましたー」


 受け付けの奥の部屋から『ハーイ』という可愛らしい声が響いて、中年のずっしりとした体格の熊獣人な女将さんが出てくる。

 声は可愛らしいんだけど、歩くたびにズシンズシンという擬音が似合う感じと言えばイメージが伝わるだろうか?

 俺より背が高いし。


「お帰りなさい、では鍵を渡しますね……それで申し訳ないんだけど、先に言ったようにうちではご飯を出せないのよ、ちゃんと自分達のご飯を買ってきたかしら? 買ってないならうちの息子に屋台飯でも買いにいかせるけど?」


 そうだなぁ……部屋で食ってもいいんだけど……俺がルナを見ると……ああうん止められそうにないなこれ。


「すみません市場で色々買ってきたんで厨房を貸して頂けないでしょうか? ちゃんと片付けはしますし、借り賃代わりに作った料理のお裾分けもしますから、どうでしょうか?」


 俺が熊獣人の女将さんに厨房を借りられないか頼んでいると、横にいるルナがウンウン頷いている。

 さっき買いまくった食材を早速使ってみたいんだろう。

 さすがに宿屋で〈ルーム〉の扉を出すのは憚られるからね。


「うーん……厨房はうちの旦那の仕事場だし……」


 熊獣人の女将さんが悩んでいると。


「構わん、俺が見ていてもいいなら使っていいぞ」


 奥の部屋からさらに大きい熊獣人の旦那さんが現れた。

 腕を布で吊っているから骨でも折ったんだろうか。


「旦那がそう言うなら構わないわよ、好きに使って」

「こっちだお客人」


「ありがとうございます」

「ありがとう」


 お礼を言った俺達は熊獣人のヒグーさんに厨房へと案内された。


 へぇ奇麗で広い厨房……ヒグーさんが入ると狭く見えるね。


「マスター、私が言う食材を出していって!」


 ルナが自分のインベントリから調理用の道具を出し始めながらそう言ってきた。

 了解だ。


 ……。


 ――


 ――


 夕ご飯時、ヒグーの宿一階の酒場権飯屋に、俺や熊獣人の家族が揃っている。

 他に客が来ないっぽいので俺達だけだ。


「では頂きますルナ」

「召し上がれマスター、皆もどうぞ」


 テーブルに並べられた料理を見て唸っているヒグーさんを筆頭に、嫁のマレーさんも息子のアルク君も中々料理に手を出さない。


 ちなみに彼らの椅子は俺達とは違って特注の頑丈そうな奴だ。


 俺はまずタコの炊き込みご飯を自分の皿によそって食べる。


「んまい! 貝柱と昆布の出汁が染み渡った米とプリプリのタコが相性抜群だ、そこに枝豆がアクセントになっていて、いくらでも食えるなこれは!」


「フフー、実は隠し味に今日買った魚醤や香辛料も使っている」


 おおーすごいなルナは……さすが〈調理レベル5〉にしただけはある。

 レベル5って人の世界なら一流だものな。


「モグモグ、美味しいよお父さん! お母さん!」


 俺に続いて食べていた熊獣人のアルク君が、笑顔でご両親に報告している。

 彼はセリィと同じ年なのに、俺とほぼ同じくらいに背が高かったりするんだよね……。

 12歳相応の子供っぽい言動と、人間のプロレスラー並みな体格に脳が混乱する。


「はぁ……お客さんすごいんだねぇ……この透明なスープも美味しいし具もフワフワで……こりゃなんだい?」


 女将さんがルナに透明なスープを飲みながら質問している。


「それはエビしんじょう、エビを磨り潰した物に山芋とか色々混ぜた物、味付けの塩と出汁の加減が難しい」


 俺もよそって貰って飲んだが上品な味だよなぁ。

 てか異世界に和風なお吸い物を出すルナさんであった。


「ううむ、どれもこれも美味いな、タコを油で揚げるだけでなんでこんなに……こっちの魚の塩焼きも見事だ、シンプルだからこそ、その腕が問われる……ううむ……」


 ヒグーさんは片手で食べにくそうにしながらも次々と味を見ては唸っている。


 まぁ気にせず俺も食べていこう、次は……エビフライにしよう!


「モグモグ……これも美味いなルナ」


「エビフライは真っすぐにするのにコツが要る」


 ルナは平常運転で料理の説明をしながら自分も食べている。


 ヒグーさんが目を瞑って静かに味に集中しているので、マレーさんとアルク君と会話をしながら楽しく食べていく事にする。

お読みいただき、ありがとうございます。


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