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53 火竜の寝床

『ほれほれ次行くぞい』


 ドラゴン形態のホムラがそう念話をよこして新たな獲物を俺達の前に落としていく。


「よし行くぞルナに皆」

「がってんマスター!」


 ルナの返事と共にうちの魔物達も手を上げたりして意気を上げる。


 ――


 今俺達はホムラに貸して貰う予定の島の砂浜に来ている。


 あの時は怖くて目を瞑っていたが、今回はゆっくり着地してくれたので島の全容が良く確認できた。

 島の形は三日月の細い先っぽをさらに伸ばして中央に大きな入り江がある感じだ。


 入江は海と繋がっている部分が狭いので、大型魚とかあんまり来なさそうだし安全に養殖とか出来るかもなぁ。

 そして南側に背の低い山があり海からの風を防いでくれている。


 大陸があるのが北側で、島の入り江と砂浜が北を向いている感じやね、ホムラのねぐらの火山島ダンジョンは島から大陸を見て右側つまり東方向にある。


 すぐ近くだからよく見えるんだが、地味に火山から煙が常に出ているのが嫌なんだけど、ちゃんと管理しているから大規模な噴火はしないそうだ。


 そして今はこの島にいる魔物をホムラが一匹ずつ弱らせてから連れてきている。

 俺達はそれを砂浜で待ち受け、レベリングも兼ねて駆除している訳だ。

 あと素材や食材ゲットにもなっている。


 魔物を捕まえにホムラが移動している間は、ホムラのナビゲーターである水龍のスイレンさんが人間形態で護衛してくれている。


 この人は蛇型のドラゴンで、海からホムラに匹敵するような大きさの巨体で砂浜に乗り上げて来た時はちょっとびびった。


 スイレンさんはそのドラゴン形態時のウロコの色なんかと同じで、青い髪で青い目をしている。

 人間形態の体格はホムラより慎ましい感じだが、ほっそりしていて美人だ。

 ぱっと見はそうだな……青を基調とした部屋着な竜宮城の乙姫様ってイメージが一番近いかもしれない。


 和風美人って言えるかも、ホムラは洋風なグラマラス派手美人という表現になるかな?


 今回砂浜に運ばれたのはでかい蛇で、すでにホムラに叩きのめされているのでボロボロなのだが、それでも俺達より強い可能性はある。

 なので慎重に戦っていく。


「ウッドゴーレムは相手を押さえつけろ、ファンファンもシャドウバインドで動きを止めるのをお願い、ルナと俺はヒットアンドアウェイを意識して慎重に削っていくぞ」

「了解マスター! 食らえ魔短剣乱舞!」


 いや、ルナはそんな必殺技みたいなの覚えてないじゃんか……実際にやっている事は、リアに貰った魔短剣で数回切りつけてから離れて様子を見ているだけの行動だった。


 ルナさん楽しそうだね。


 まぁいい、俺もホムラから詫びとか言われて貰った剣で切りつける。


 火竜の剣〈火属性〉〈切れ味+〉〈腕力+〉


 この刀身が真っ赤な片手剣がすごくてさ、持っているだけで力が湧いてくるし切れ味はすごいし斬った場所が燃えたりするし……やばくねぇかこれ?


 昔ホムラの元にドワーフの鍛冶師が訪れて、頭を下げてドラゴンの素材を譲ってくれと酒を上納してきたんだって。


 ドワーフが美味い酒を譲るって相当な事らしいよ?


 ホムラはその意気に応えて自身のウロコや牙や血や涙なんかを譲ったそうだ。


 しばらくしてそのドワーフは一本の剣をホムラに捧げた。

 それがこの火竜の剣で、そのドワーフは良い剣が打てたと満足そうに帰ったそうだけど……貴重な素材で剣を作ってみたかっただけってのがドワーフらしいというか……。


 ザクッっという感触と共に、一番太い部分がルナの身長を超える程もある蛇の堅そうなウロコを、バターを斬るがごとくに切り裂いていく火竜の剣、そこから肉の焼けた匂いも漂う。


 やっべー切れ味だなこの剣……。


 倒し終わった魔物は、俺がダンジョンメニューでコアインベントリに収納しちゃう。

 後で解体して必要な物を分けてから、残りはDPとして吸収しちゃうつもりだ。

 DPも食材もパワーレベリングも美味しいです。


 ――


 ――


 そうして日が暮れるまで狩りをしたが、まだまだ島に魔物がいるという事で、その日はホムラのねぐらへと行く事にする。


 ちなみに扉の設置を借りる予定の島にしてあり、俺の配下の魔物達は〈ルーム〉やお屋敷に帰らせている。


 火山の中腹にある洞窟がホムラのねぐららしいのだが……奥の広いスペースについた俺とルナは。


「いやさすがにごちゃごちゃしすぎだろ……片付けくらいしようぜ?」

「ドラゴンの汚部屋を発見しました、メイドモードルナちゃん起動!」


 ルナがなんかおかしな事を言いながら、ホムラに洞窟の奥のスペースの片づけを申し出ていた。


 ホムラは人形態でいる事の方が少なかったのかもね。

 その広いホールのような洞窟のスペースには、食べカスやらがそこらに飛び散り、それらを掃除しようとしたのか……ブレスか何かで焼いたり水で流したのではないかという跡が残っている。


 そこかしこにウロコや抜けた牙や爪やらが散乱しつつ、たまに財宝というかよく分からん物もある。


 奇麗な柄の布とか陶器の器とか、うわ……この箱って螺鈿細工じゃね―か……交易品って感じだけどなんじゃこりゃ……。


 ホムラに話を聞くと、たまーに火山島の砂浜まで人が来て貢ぎ物を置いていくらしい……守竜様への貢ぎ物か。


 人の姿で酒を飲みに人の街に降りた時に、それらを売っぱらって金にしたりする事もあるらしいが……。

 何故だろう、すっごい買い叩かれているのに、まったく気にしないホムラの姿が目に浮かぶんだけど……。


 スイレンさんも見た目はお淑やかで大和撫子的な和風美人って感じだが、やっぱりドラゴンなんだなって思った。

 片付けは水魔法で全て洗い流すと言ってたし、使える物も一緒に流してそう……あれ?


 ちょっと待て、ダンジョンなら食べカスなんて吸収しちゃえば……。

 うわ! ここダンジョンじゃないじゃんか!


「ちょ! ホムラ!? なんでダンジョンじゃないのここ!」


 ルナが掃除道具片手に飛び回っているのを眺めていたホムラが、面倒くさそうに答えてくる。


「んー? 儂のダンジョンはこの先の火口部分だけじゃな、ダンジョンとか管理が面倒じゃし」


 何言ってんだこいつと思いながら、俺は近くにいたスイレンさんに視線を移す。


 するとスイレンさんは、着物の袖で口元を隠すような動作をしつつ視線を少し俺から逸らし。


「面倒くさいですし」


 そう言うのであった。


 うん、この人もやっぱ大雑把なドラゴンなんだって理解したわ。


 ここらがダンジョンじゃないなんて、洞窟に入る時に暗くて魔法の光を出してくれた時点で気づけよ俺って感じだ。

 ……ちょっとパワーレベリングハイになっていたのかもしれない。


「そうじゃ、そこの通路の先には行くなよ? 儂の眷属がコアを守っているからのう、さすがにゼンとルナと言えども通す訳にはいかん」


 そう忠告してくるホムラ、人が十分に通れるその通路は明るくて……うん、気配感知スキルさんが強い魔物の気配を伝えてくるので絶対に行きません。


 取り敢えず……俺も片づけの手伝いをするか。


「ルナー!、俺も片づけ手伝うぞ」


「ありがとマスター、じゃぁまずは……ホムラ姉様、この部屋で必要な物ってある?」


 ルナは、人形態になって床に直に座り欠伸をしているホムラに呼びかけた。


「特にないな、あー、人の街で売れそうな貢ぎ物とかは残してくれると酒を買いやすいからありがたいのう……でももうゼンという美味い酒の供給源が出来たし、それらもいらんかもしれんか……うむ、全部ゼンにやるから酒に変えてくれんか?」


 いや守竜様に奉じた品物が何処かで見つかったら火山に盗みに入ったとか思われない?


 いやでもホムラは既にそれらを売った事があるって言っているから……考えるのは後でいいや、今はインベントリに入れてしまおう。


「おっけ、じゃぁまずは品物とかウロコとか骨とか……これはエサ魔物の骨か? まぁいいや全部俺のインベントリに仕舞っていくからルナは細かい奴を一カ所に集めてくれ」


「了解マスター」


 掃除をしながらホムラと雑談もしていたのだが、あえてダンジョンを広げない事で、魔素スポットから湧いている魔素を周囲にわざと漏らしているそうだ。

 そうする事で溢れた魔素から自然に魔物が湧くので、それが餌になるとの事だった。


 ああ……なるほど、一々自分が食べる分をダンジョンメニューで買うのは面倒なのかもな、ドラゴン形態だとすっごい量になるだろうし……。



 ……いやでも必ずしも大量の飯が必要ではないんだろ? やっぱり、ただ面倒なだけなのかもしれないな。

お読みいただき、ありがとうございます。


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