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49 食事会の約束

 ふぅ……結局宴の二次会三次会と続きを要求されて、ギルドに来るのは三日ぶりか。


 今はいつもの個室でちょっと待たされている。


 ホムラといいリアといい酒があんなに好きだとは思わんかったよ……三次会にもなるとリアやホムラの相手をするのが段々面倒になって、セリィとダイゴを説得して庭園に連れていったんだ。


 そうしたらリアはメイド服姿のセリィを可愛い可愛いと自分の膝の上に乗せ、満面の笑みでセリィを肴に酒を飲んでいた。

 美少女鑑賞を肴にして酒を飲むとか強者すぎるだろう……。


 セリィが緊張して尻尾をピンッと伸ばして、まったく身じろぎしないで固まってたっけか……。


 すまんセリィ、さすがに二日間も酔っ払いを相手にするのは辛かったんだ。


 リアがセリィをそこまで構うのは、ルナが飯を作る事に夢中なせいもあったんだろうけど……いや……リアならルナとセリィの両方を膝に乗せそうだな。


 一方ダイゴはホムラにまったく物おじせず色んな質問をしていたし、カッケーカッケーと褒められて気分の良くなったホムラが、危うくブレスを吐いて見せる所だった。


 ホムラの頭を引っぱたいて止めたけどさ、まったく落ち着いて酒を飲む暇がなかったよ。


 ダイゴはラハさんの所でもカッケーカッケーを連発してたな。

 ラハさんは満更でもない表情をしていたが……ダイゴの視線はどう見ても体さんの金属鎧に向いていたんだよなぁ……。


 ラハさんの体さんが空いている手でダイゴの頭を撫でようとしたので。


 それは待ってと止めようとしたが……ダイゴは普通に体さんからのナデリコを受け入れていた。

 え……何? もうラハさんの体さんとは親しい間柄になったって事?


 ……俺がこないだダイゴの頭を撫でようとしたらお前逃げたよね?

 隣にいたセリィは頭をまた撫でさせてくれたのに……男同士だから恥ずかしかったんだろうか?


 とまぁ宴が続いて今は皆して庭園で雑魚寝をしているはずだ。


 ホムラはいつ帰るのかと聞いたら、俺の用事が済んだら運んでやるから、それまでずっといるって言いやがったんだよ。


 それを聞いたリアが、すぐギルドの用事を済ませて来なさいって俺を追い出したんだ……俺も眠りてーんだがな……。


 ――


 ガチャっと扉の開く音がする。

 いつもの個室に入ってきたのは、ハーフエルフで茶髪をお団子にした可憐なカレンさんだ。


「お待たせしましたゼンさん」

「いえ、それで大丈夫でしたか?」


 さきほど火竜のウロコをオークションに出す話をカレンさんにしたら、物が物なので上司に聞かないといけないと席を外していたのだ。


「はい、ですけど本当に一枚一枚日にちをずらして出すんですか? 全部を纏めて入札期限を長く設定した方が高くなる可能性が高いんですけど、この枚数なら火竜のウロコを使った鎧すら作れるので、じっくり時間を掛けて宣伝すればすごい値段が付きますよ?」


 取り敢えず火竜のウロコを50枚程出してみた。

 俺がダンジョンと冒険者街の境目で時間を掛けて何かを拾っていたのは、たくさんの人に目撃されていたからね……。


「この二日くらいで火竜のウロコが出回っているという噂は広まっているんですよね?」


「あ、はい、ゼンさんが言っていたようにダンジョンの中や街の付近で数十枚、それと、ここから少し離れた山岳地帯で火竜を目撃した冒険者が二枚持ち込んでいます、彼らの中には即金が欲しいのか商人に直接売る人とかもいますし、ギルドとしても商人を呼び戻すチャンスなのでギルドの情報網に乗せて情報を拡散させてますから」



「そこですよ、俺という他大陸の異邦人を受け入れてくれたこの街が、今回の火竜の件で商人が離れてしまうのは悲しいんです、恩返しではないのですが火竜のウロコの出品が商人を呼び戻す一助になればと思いまして」


「それは……確かに商業ギルド側の上司も本人が良いと言っているなら邪魔するなと言ってきましたけど……恐らく纏めて売った時とバラでは数倍以上の差が出ますよ?」


 こういった、俺の不利益になりそうな事もきっちり教えてくれるから、カレンさんは信用出来るんだよな。


「良いんですよカレンさん、俺はカレンさんやセシリーさんがいるこの街が寂れるのを見たくないですから」


「ゼン君!? 私のためにそこまで考えてくれるなんて……キュンッ」


 キュン? 何の音だ今の。


 俺の前でカレンさんは自分の胸を押さえてもだえている。

 大丈夫? 病気か何かですか?


「ゼン君、実は今、商人が少ないし冒険者の動きも鈍くて暇なんでお休みが取り易いんです……なので私とデ――」

「あ、そうだカレンさん、俺はこのオークションの出品が済んだら仕入れをしにしばらく出かけますので、お土産楽しみにしてくださいね」


 おっとカレンさんのセリフと俺のセリフがかぶってしまった。

 お休みが取り易いで一旦セリフが止まるかと思い、俺の要件を言ってしまったよ。

 失敗失敗。


「あ、ごめんなさいカレンさん、えっと『なので私と』何ですか?」


「いえ! えと仕入れですか、お土産は気にしなくてもいいですよ、元気な姿で戻って来てくれたらそれが一番嬉しいですゼンさん」



「ありがとうございますカレンさん、ではウロコの件は了承という事で」


「はい、今預かり証やら何やら書類を書いて渡しますね」


 ――


 ――


 諸々の書類にサインし、部屋を出る俺とカレンさん。

 そこにハーフ魔人でロング黒髪浅黒肌のセクシーなセシリーさんが通りかかる。


「あらゼン、商談は終わったの?」


 セシリーさんが声を掛けてきたので、軽く話しでもと廊下で立ち止まる。

 カレンさんも書類を抱えたままそこに留まる……カレンさんは書類持っていかなくていいの?


「ええ、問題なく、カレンさんにはいつもきっちりした仕事をして貰って感謝してます」


 俺がそうカレンさんの仕事を褒めると、カレンさんが胸を張って得意満面の笑みを見せる。


 セシリーさんは俺がカレンさんを褒めると、目を細めて一歩だけ俺に近づいて。


「へぇ……ねぇゼン、火竜のせいでちょっとだけ暇になったのよね、だから私とお食事でもしない? 受付嬢として色々経験してきた面白話をしてあげるわよ?」


 ほほう、いいなそれ面白そうだ。


 んん? カレンさんが何やら口をパクパクさせている? エサが欲しい鯉のようだな。


「いいですよセシリーさん、俺はちょっと仕入れに出かけるので帰ってきたら面白話を聞かせてくださいね」


「おっけーご飯の美味しいお店を探しておくからね、お酒は大丈夫?」



「ええ、普通に飲めますし好きですよ、あ、でもエールはそこまで好きじゃないかもです、エールかワインかって聞かれたらワインかなぁ……」


「了解、ワインの美味しくてそのままお泊まりできるお店を――」

「ちょっと待ちなさいセシリー! なんて貴方がゼン君をデートに誘っているのよ! それに前も注意したけど呼び捨ては駄目よ!」



「いやカレンさん、デートではなく面白話を聞かせてくれる食事だっ――」

「ゼン君はちょっと黙ってて」


 あ、はい。


「えー? だっていつまでたってもカレンが動かないんだもん、私は二番目に誘うって約束したけどさぁ、カレンが動かないなら私が動いても良いよね? 魔人族は親しい間柄は呼び捨てにするからいいのよ」


「いつ親しくなったっていうのよ! それに……誘うのはこうタイミングというか……ゼン君を誘おうとすると何故か邪魔が入るというか……」


 む? カレンさんも俺と面白話な食事会をしたがっていたのか、それなら……うん。


「あ、それなら俺が帰ってきたら三人で食事会にしましょう」


「え!? ゼン君それは……いえそれが良いですね、そうしましょう」


「ちょっとゼン! 最初から三人でって激しすぎないか――」

 セシリーさんの発言は何故かカレンさんのアイアンクローでぶった切られた。


「激しい食事ですか?」


 俺がセシリーさんの発言に首を傾げていると。


 カレンさんがセシリーさんの顔にアイアンクローをしながら俺の方を向いた。

 あの……顔を掴んでいる手の付近から、ギリギリって音が聞こえてくるんですが、大丈夫ですかそれ?


「なんでもないのよゼン君、私はこれで失礼するから、ゼン君も仕入れに気をつけて行ってきてくださいね」


「ィタィイタィってちょっとカレン……助けてゼン……」


 セシリーさんがアイアンクローを受けながら俺に手を伸ばして救援依頼を出してくるが。

 カレンさんの満面の笑みを見て、俺はそこから撤退する事にした。


「はい、では失礼しますカレンさんセシリーさん、帰ってきたら面白話を期待していますね、では」


 そそくさとギルドの廊下を早歩きで外に向かう俺だった。


 ――


 ――



 side 受付嬢


 ギルドの廊下にアイアンクローをする茶髪お団子ハーフエルフ受付嬢と、それを受けるロング黒髪片巻き角浅黒肌ハーフ魔人受付嬢がいる。


「ちょっとカレンいい加減にしてってば!」


 その言葉を聞いてカレンと呼ばれた受付嬢は相手の顔から手を離す。


「まったくセシリーは……」


「私が何をしたって言うのよ……カレンがぐずぐずしているから、ちょっと食事に誘っただけじゃないの」


「食事? セシリー貴方さっき何を口走ったか覚えてないの? 最初から三人で激しいって何? ワインが美味しくてお泊まりの出来るお店ってナニ?」


 カレンの目は自分のセリフと共にどんどん吊り上がっていく。


 セシリーはそれを見て恐怖を感じたのか一歩分距離を開ける。


「あはは、ほらやっぱ男と女がデートするなら……ねぇ? そういう事になるんでしょう?」


「ならないわよ! 何いきなり押し倒そうとしているのよ! ゼン君は食事会って言ってたでしょ」


「そうだっけ? でもほらお酒を飲むんだし、しかもゼンは私の事をセクシーでキュートな美人って言ってたし、そうなるのは確定じゃないの?」


 カレンは同僚のその言葉に頭を抱える。


「セシリー貴方、私の事を天然だの恋愛下手だのとよく言うけど……貴方も同じじゃないの……単に好きになれる人が今までいなかっただけなのね……普通のデートでいきなり初日からそんな事になるなんて……あんまりないって同僚の娘達は言ってたわよ?」


「まぢで!? ……そうなの? そっかぁ……いやほら私はそういうの初めてだから……あはは、あれよね、よくカレンの事をアホだなぁと思って見てたけど、目の前に好きになれそうな男がいると自分でも何を言っているのか分からなくなるものなのね」



「はあ……気をつけてね? ゼン君は今までの恋に恋をしてたのとは違うんだから……あの人に引かれたら私は今までの比じゃなく落ち込むからね?」


「おっけー……でもさ……カレンと私の二人で迫ればワンチャンありそうじゃない?」



「それは……そう……かしら? 自慢じゃないけど私も貴方も美人だものね……ゴクリッ、そういうのに慣れている娘に手管を聞いておくべきかしら?」


「そうしよ! えーと聞くならケリーがいいかな?」



「うーん……ここはタチアナの方が良くないかしら?」


「仕事終わったら両方に聞いちゃおうか」



「そうね、下手な弓使いも数打てば当たるって言うしね」


 そうして何かを決意した二人は機嫌よく仕事に戻っていく。




 ちなみにだが。


 ケリーは所謂肉食系の派手派手エロチック衣装を好み、ガンガン攻めるタイプの受付嬢だ。


 そしてタチアナの中身は肉食なのだが。

 可愛い衣装を好み、見た目は清楚で気品があり、獲物を段階を踏んで墜としていくタイプの受付嬢だ。


 二人の側に誰かが、それこそ女性警備兵さんがいたならばこう言っただろう。


『混ぜたら危険な物もある』

 と、そして。


『下手な弓使いは何度打っても当たらないから下手なのだ』

 と。

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