45 ギルドに説明
再起動したカレンさんと、もう一人セシリーさんとも一緒にギルドへと向かって歩いていく。
セシリーさんって言うのはカレンさんの隣の受付によくいる人で、浅黒い肌に頭の片側に可愛らしい小さな巻き角があるセクシーな受付嬢さんだ。
セクシーなセシリーさんに、可憐なカレンさんで覚えよう。
カレンさんはセクシーというより可憐な美人さんだよね、ほらお胸がね……ペッタ……ブルッ! 何処からか殺気が漂った気がしたので俺は思考を止めた。
「どうしたのカレン急に怖い顔をして」
セシリーさんがカレンさんに問いかけている。
俺は二人の後ろを歩いている訳だが。
「いえ……今何かすごい侮辱を受けた気がしたのだけど……気のせいかしら?」
下に恐ろしきは女の勘だな。
カレンさんに漂った殺気のせいか、そのまま三人は無言になって商業ギルドのいつもの商談用の個室部屋へと到着する。
「今お茶を淹れて来るわね」
セシリーさんが部屋を出て行き。
カレンさんと二人っきりになり、向かい合ったソファーにそれぞれ座る。
「ではゼンさんにお話を聞かせて頂きますね、これは冒険者とギルドとの契約に含まれる緊急事態での事情聴取になりますので、拒否はお勧めしません」
「大丈夫ですよ、最初から報告はしようと思ってましたから、呼び方が『君』から『さん』に戻りましたねカレンさん」
「!!! ……いえその……ギルドの規約で仕事中は基本的に『さん』付けをするようになっていまして、さきほどのは忘れてください」
カレンさんが少し恥ずかしそうにそう言ってきた。
少し頬が赤くなっている気もする。
「了解ですカレンさん、では報告なのですが――」
――
――
俺はダンジョンの中で果物を食べるドラゴンを見たが、こちらに気付いているにもかかわらず特に攻撃等はされなかったと伝え、火竜のウロコも複数枚手に入れたのでそれをオークションに出したい旨を告げた。
勿論先々にスキルによる嘘の看破判定を受ける事になる可能性を考えて、ホムラにはダンジョン産の果物を俺の目の前で食べて貰った。
リアはブチブチ文句を言いながら果物を出してたけどね……。
「なるほど……過去のドラゴン襲来の時は冒険者が攻撃を仕掛けたとも聞きますし……こちらが何もしなければ反撃もないのかもしれませんね、情報ありがとうございますゼンさん、私は早速上司にこの話を伝えてきますので、オークションへの出品作業はその後になりますがよろしいでしょうか? 少しお待たせしてしまう事に――」
「あ、それなら私が話を詰めておくよ、いいでしょカレン?」
俺が報告している途中にお茶を持ってきて、そのままカレンさんの横に居座っていたセシリーさんが、カレンさんの話をぶった切るように口を挟んできた。
「……どうしたのセシリー? 貴方はお仕事に戻っていいのよ? ゼンさんはわたしの専属なんだから私が面倒を見ます」
「ええー? 上司に報告って絶対時間かかる奴じゃないの、今は緊急事態でそれが優先なのは分かるけど、その間ずっとゼンを待たせる気なの?」
おや、セシリーさんは俺の事を呼び捨てにするのね……前にちょっと話した時は確か『さん』付けだったんだが、でも今は仕事中じゃないの?
「そんな事は……なぜゼンさんを呼び捨てしているのかしら? ねぇセシリー?」
なんだろうか普通に会話しているのに、部屋の温度が下がってきているように感じる。
樹海ダンジョンのあるこの国の今の季節は、温暖な気候で昼間は暖かいはずなんだけどね……夜はそこそこ涼しかったりするけど。
セシリーさんはカレンさんの問いに応えず、俺の方を向くと。
「ねぇゼン、この間カレンが泣いちゃった時にも聞いたけどもう一回いいかな? 私の肌ってこのあたりではあまり見ない色でしょ? これってハーフ魔人族でもあるからなんだけどどう思う? しかもハーフのせいで片方だけでしかも小さい角なんだけど……」
この質問って、こないだカレンさんが何故か急に泣いちゃった時にセシリーさんに聞かれた事じゃんか……あの時の返事が気に入らなかったんだろうか?
……うーむ、じゃぁちょっと恥ずかしいけど、もうちょっと強調して答えるべきか。
「前も言いましたけど……そうですね、確かにこのあたりで見ないですが、なんというかこう、エキゾチックなセクシー美人という感じなのでモテモテだろうなぁと思いますし、その角も可愛らしくてキュートさも備えていますよね、ただし」
俺の言葉を聞いていたセシリーさんは引きつった笑みを零しつつも。
「ただし……何? ……やっぱりハーフ魔人は気持ち悪いとか?」
「寝返りを打つ時に角が枕に引っ掛かりそうだなとは思います、そういえば、カレンさんが自分の耳を嫌いなのはそれと同じような理由で、寝る時に長い耳が邪魔だったりするのかなーって思いましたね、当たってます?」
女性を普通に褒めるのは恥ずかしいので少しジョーク的な物を挟みつつも、俺は前から思っていた事をカレンさんにも聞いてみる事にした訳だ。
「……」
「……」
カレンさんとセシリーさんは、珍獣を見るような目で俺を見つつ黙ってしまっている。
「……プッ……なにそれ、アハハ寝返り……アハハハハハハ寝返り、寝返りで角がってアハハハ、駄目、わき腹が痛くて涙が……ぁぁ……ぅぅぅぅ……」
「フフフ、この中途な長さの耳が寝る時に邪魔だから嫌い? ……ウフフゼン君ってば……フフ……ぅぅ……ぅぅぅ……」
え……? あの……二人共なんで泣いちゃっているの!?
ガチャッ。
俺達がいる部屋の扉がノックもなしで開いた。
そこには簡素な鎧を着こみ腰に剣を履いた女性がいて。
警備兵か何かかな? ってやばい! 二人がガチ泣きしちゃっているしこれは……。
「あ、あの! この二人は急に泣き出しちゃって、俺が何かした訳ではその……」
泣き出した理由が分からないから言い訳も上手くいかん、やべえどうしよう……。
「大丈夫です分かっていますから、ほら二人共、ここは一旦仕切り直しなさい、顔でも洗ってから上司への報告をお願いします、彼には帰って貰うので商売の話はまた次にするといいでしょう」
たぶん警備兵な女性はカレンさんとセシリーさんを部屋の外へと送り出し、そして立ったまま俺に告げる。
「酷い事をして泣かせた訳じゃない事は理解しています、けど彼女らは一旦落ち着かせた方がいいので今日はお帰りください、火竜の報告ご苦労様です、後日ギルドから情報料が支払われると思います」
「あ、はいお疲れ様でした、えーと……じゃぁ帰りますね」
「はい、情報提供ありがとうございました、ウロコの件はまた後日お願いします」
俺は警備兵さんに促されたので帰る事にした。
……さっきのは、なんだったんだろうか……あれ?
あの人なんで火竜のウロコの事を知っているんだろ……個室の会話を聞いていた?
警備のためか? ……ありえるな……。
お読みいただき、ありがとうございます。
36話のダンジョンを作るさいのルールを少し変更しました
話の筋にはあまり関係ありませんがご迷惑をお掛けします
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