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41 413万DPと普通の冒険者

 いやもうほんとに、これどうしたら良いのよ……。


 コアの側でダンジョンメニューを見ながら俺は昨日の事を思い出す。


 ホムラと名乗った赤髪の美人さんで実はドラゴンだった彼女が、何か大きい魔物と思われる物を落としていった訳だが。

 あの魔物の落とされた跡を確認するに、たぶん全長50mは軽く超える魚型だか蛇型だかな魔物を落としたんだと思う。


 情報封鎖モードになっても明るさは外と同期するから暗かったし、夜目があっても大体の形しか分からんかった。


 手や足っぽい物は見えなかったので魚とか蛇だろうと思った訳だ。

 ホムラはその後にも何か小さい物をバラバラと落としていったよな?

 それがなんだったかも今となっては分からんが……何も残っていなかったというのなら魔石か魔物だったんだろうなぁ。


 倒されていた立派な木々達は俺のインベントリに眠っている。

 木材って売れないかなーとか思いながらね。


 そしてメニューだ……うん、何度見ても413万DPある……ホムラはアホか……詫びにしても酒のお礼にしても多すぎやねん。


 そして〈入口〉がまた取得出来てしまうのに気付いた。

 だけどお値段が60万DPに値上がりしている……それだけじゃない、さらに〈裏口〉や〈非常口〉なんてのもある……どういう事?

 入口と何か違うのだろうか……試しに取るにしても裏口が400万DPで非常口が100万DPなんだよ……。


 全部取るには足りんし……ホムラの言っていたメニューの拡張機能やら何やらにもDPを使いたいんだが……。


 あー迷う……この入口系は、たぶん俺のユニークスキルの拡張だからリアに相談してもあんまり意味ねーだろうしなぁ……。


 ぬぬぬ……新しい戦闘系のスキルを覚えて戦力を上げたいってのもあるし……うがあああああ。


「駄目だ! DPはあればあるほど使い道に困る! ちょっと休憩」


 俺はメニューから離れて、クッションを枕に〈ルーム〉の部屋に寝転がる。


 ちなみに今、弱い方のシャドウファントムはいまだに一体が狩りに、もう一体が洞窟の監視に、最後の一体がお屋敷の警備をしていて、一番強いファンファンはルナとセリィのレベル上げに護衛としてついていっている。


 ダイゴは薪割りをしたり屋敷の離れで寝ていたりするね。


 ダンジョンを持つと配下が足りねぇな、思ったんだが配下勢力を俺の〈ルーム〉に仕舞う事を考えるから問題なのであって、入口を使って何処かに置いておけば良いんじゃね?


 リアの所はまずいけど、それこそここの魔素湧きが枯れたとしても配下を置いておくとか……問題は〈ルーム〉の扉を潜れる大きさの配下じゃないと厳しいってくらいだが……それは一時的に〈ルーム〉を拡張して扉も大きくすれば済む話だよな?


 移動が終わったら拡張を戻せば……ふむ……この考えは結構良い気がする。


 ただ配下を置いておくなら場所的にはもっと広い所がいいよな……ホムラはそこら中を飛び回っているみたいだし今度聞いてみるか。


 そうなると配下待機場所に一カ所……冒険者街のお屋敷に一カ所、リアの所と洞窟とか予備に……最低でも〈入口〉が五カ所かそれ以上は欲しいな。


 DP使用の方向性が決まった俺は、寝転びながらもメニューの操作を再開させる。

 今二カ所の〈入口〉を三カ所増やして……む……増やすごとに値上がりしていくなこれ。


 予約していくと60万、90万、135万DPまでいって、それ以上はDPが足りないからなのかメニューに出て来なかった。


 そうして予算のあれこれを考えていた時にふと思った、DPさえあったなら大量の〈入口〉を取得し、世界中それぞれの季節湧きの魔素スポットに設置したら?


 ざわっ。


 一瞬その考えに鳥肌が立った、いやいやいや!


 ……今はリアの縄張りの中だから俺も自由に出来るのであって、他のダンマスに見つかったらそんな上手くはいかんだろう……自重しよう。

 それに〈入口〉の値段はどんどん高くなるみたいだしな……。


 まぁ予算配分の続きだ。


 俺は起き上がると作業を続ける。


 まず〈入口〉を三カ所増やすだろ? リアとお屋敷と配下置き場と予備が2つ、うん285万DPかかるね……ついでに〈非常口〉もいけちゃうな……よし385万DPっと。


 次がホムラに言われたメニュー拡張だ、魔物を吸収する時に使いたい部分をインベントリに分けて仕舞う機能とかだな、それ以外の便利拡張機能も取れるだけ取ってしまおう。


 コアから離れてもダンジョン内なら簡易メニューで大抵の事が出来るようになったりする機能は絶対に取りたいし、ダンジョンのログを見られる機能もいるよな。


 それがあればホムラが何を落としていったかも後で分かっただろうに……他にも色々便利機能があるけど……むぅ……DP足りないからいくつもの拡張機能を諦めないといけないな……。

 便利にしたきゃDPを払えって事だよな……よし! 予算配分はこんなもんだな。


 合わせて405万DPか、残りの8万DPでこの洞窟を守る魔物部隊でも用意するか?

 ああいや、俺やルナの強化や日本産の物資の仕入れを優先した方がいいか……うひー、DP足りねぇなぁ……。


 百DP溜まって一喜一憂してた頃が懐かしいぜ……。


 俺がメニューで色々とスキル購入したり物品購入していると、シャドウファントムが〈ルーム〉に入って来て焦った感情を俺に伝えてきている。


「どうした?」


 俺がそう聞くと、狩りに出ていたシャドウファントムはボディランゲージ……というか影絵? と感情を伝える技を駆使して状況を教えてくれる。


 どうやら盆地に冒険者が近付いて来ているらしい……くそ! 態勢が整っていない状況でばれるのは面倒だな。


「全員撤収だ」


 俺はウッドゴーレムを廊下に入れて端っこで立たせ、シャドウファントム2体も〈ルーム〉の中に入らせる。


 そしてダンジョンメニューで洞窟の入口を岩や土で埋めてしまう。

 そうすると盆地側のダンジョンとの接続が切れてしまい、時間がたてば掌握から解放されてしまうがまぁ問題はない、どうせ一旦放棄するし。


 崖の中腹の露天風呂だがわざわざ滑り易い崖を登られたらまずいが……気付かれない事を祈ろう。

 そして最後に〈ルーム〉の扉を閉じる。


 これで完全に接続が切れたので、しばらくしたら盆地に作った初めてのダンジョンは消滅する。


 つかなんで冒険者があんな中途半端な場所に?


 ……あー街道に魔物が現れまくったからリアに駆除をお願いされたんだったな……つまり人間側でも同じような駆除か調査依頼があった可能性も?


 くそ……色々やりたかったし、風呂もまだ一回しか入ってないのにな……洞窟や風呂の形は残ったままだし扉を繋げてまた掌握すれば良い話なんだけどよ。





 side 冒険者


 そこは木々が生い茂る山岳地帯、街道から脇にそれた地点だ。

 そこを今、冒険者達が周囲を警戒しながら移動している。


 一人は男の剣士、ごつい革鎧を着こみ腰に剣を履き、今は腰の後ろに装備していたナタを振るって先頭で道を作っている。

「ふぃーやっぱダンジョンと違って自然のフィールドは面倒だよな」



 もう一人は女性の魔法使い、黒いローブの上から軽量な革鎧を着こみ、手には両手で持つような長い杖を持っている。

「貴方が安請け合いするからでしょーに」



 最後の一人は男の弓使い、頑丈そうな布の服に弓を背負い矢筒を二つ腰から下げ、周囲を警戒しながらも。

「どうせ受付嬢にいい顔したかったんだろ、移動時間を考えたらダンジョンのが美味しいのによぉ」



「うっせぇなお前らだってギルドランクを上げるのにギルドからの依頼を受けて信頼度を上げるのは大事だっていつも言っているじゃんか!」

「それはね剣士、もっと楽な依頼ならって意味なのよ……こんな山の中を歩くくらいなら護衛依頼のがなんぼかましだわ」

「魔法使いに賛成だ、ギルドからの依頼でもちゃんと吟味しないとな」



「ちぇ……悪かったよ、それにしてもオークの姿は見えないな……弓使い、痕跡はどうだ?」

「痕跡? なんの話だ剣士?」

「狩人なら獲物の足跡とかで分からないのかって話なんじゃないの? たぶんだけど」



「魔法使いの言う通りだ、それでどうだ?」

「いや俺は弓使いであって狩人じゃないから、そんなの分かる訳ねーじゃんか」

「使えないわね……」



「誰が使えないだよ魔法使い! お前らなぁ……刃物が使えるから剣士に肉屋になれとか言ったり、魔法使いなのに回復魔法使えないのかよ、とか言われたらどう思うよ?」

「ぶっとばすな俺なら」

「張り飛ばすわね私なら」



「分かってんじゃんかよ! だったら俺に畑違いの事を要求するなよ……」

「んなの知ってるよ、暇だから弄っただけだ、ああ、これが情報にあった盆地の縁だな」

「ジョークを理解出来ない男はモテないわよ? なにあれ……盆地の中央の木々が不自然になくなっているんだけど……それにオークの姿は見えないわね」



「剣士も魔法使いも後で覚えてろよお前ら……奥に天然の洞窟があるんだったか? 見に行こうぜ」

「ああ、魔物の姿が一切見えないのが不気味だが……行くしかねぇか」

「オークごとき私のファイヤーボールで吹き飛ばすわよ! フフフ」


 冒険者達は盆地の中を警戒しながら進み、無事に奥の崖にたどり着く。


 そこには水が少し溜まった池というより水たまりが残っており、崖には水が流れた後が、そして土砂でも崩れたのか洞窟の入口が土や岩で埋まっているのを発見する。


 洞窟が崩れて埋まった場所を調べている剣士が後ろを振り向きながら。


「こりゃぁ結構分厚そうだな、洞窟は完全に埋まっているぞこれ、そっちはどうだ弓使い」


 池のような水たまりのような場所の周囲を歩いて、何か痕跡がないかを確認している弓使いは。


「特になんもねーよ、オークの水飲み場かねぇこりゃ、雨が降ったら崖から水が流れてくるのかな?」


 魔法使いも水たまりを覗き込みながら。


「生き物もいないし池というより水たまりね、オークの痕跡とかなーんもなしって報告したら冒険者ギルドは信じてくれるかしら?」


「そうだな……んっ?」

 剣士が二人の側に近寄りながら何かを言おうとした時、三人に影が差し込む。


「雲か?」

 弓使いが空を見上げると彼は一切の動きを止めた。


「どうしたの弓使い」

 欠伸をしながら仲間の様子がおかしい事に気付いた魔法使いも、弓使いに倣って空を見上げる。


 そこには一匹の巨大なドラゴンが、彼らの頭上をグルグルと回るように飛んでいた。


 真っ赤な鱗を携えたその美しいともいえるドラゴンは彼らの側に着陸する。


 ズドンッ、その大きな音と振動により呆気に取られていた冒険者達は恐々と戦闘態勢を取る。


「赤いドラゴンだと? ……オークがいなくなった理由はこいつか?」

「ムリムリムリあれ絶対上位竜よ……終わった……私の華麗なる人生が始まる前に終わったわ……」

「剣を降ろせ剣士、本当に上位竜なら知恵が人並みに高い、敵対する意思を見せるのはまずい」



『お前達ここで何をしている……』



 三人の冒険者はその頭に響く言葉に戦慄する。


「念話で会話の出来る火竜ってそりゃおまえ……」

「御伽噺に出て来るあれよね……」

「〈孤高〉の火竜……」



『ふむ……返事がないなら潰してしまおうか』



 三人の冒険者は持っていた武器をポイッっと投げ捨てると、その場に両膝を着けて跪き。


「俺達は依頼でこの場所を調査に来た冒険者です! 貴方に敵対する意思はありませんのでお許しください!」

「お……おなじくお許しくだにゃい!」

「俺も貴方の餌場と知らず進入した事を謝罪します!」



『ふむ……この強さではあの影を倒してダンジョンコアを潰す事はありえんか……なれば……お主ら、ここらで人を見かけなかったか? 黒髪の青年と銀髪の少女の二人だ』



「俺の剣に賭けて街道からここに来るまでオークの一匹すら見ていません!」

「お……おなじく見てましぇん!」

「俺の〈遠見〉スキルでも街道を外れてからは人型の確認はしていません!」


 火竜は目を瞑り少し考えると。


『そうか……ではもうあの二人は……驚かせてしまって済まんな、これは情報料だ、ではな冒険者どもよ』


 火竜は自身の手の爪で脇腹あたりの皮膚を少し触ると軽く手を振っている、そして背中にある大きな翼を羽ばたかせると飛んで行った。


 火竜が飛び立つ時の土埃を、もろに顔に食らった三人の冒険者達は顔を手でぬぐいながら。



「許されたようだな……死ぬかと思った……」

「ふふ……私の高貴さに恐れを為したのね〈孤高〉の火竜といえど大したことないわね!」

「『許してくだにゃい』『見てましぇん』」



「ブフッ! やめろ弓使い! 思い出しちゃったじゃねーかアハハハハハ」


 弓使いの言葉を聞いた魔法使いは、顔を真っ赤にして弓使いに飛び掛かる。


「ちょっとそれは忘れなさい! あんなのが前に来たら誰でもああなるでしょー!!」


「分かった悪かったって、頭を叩くなよ、もう言わないから! ちょっとやめろっての!」


 跪いていた弓使いにのしかかるようポカポカと殴っている魔法使いを見て尚笑う剣士、だがその視線の隅に何かが日の光を反射したのかキラッっと光った事に気づいた。


 彼はケンカしている二人を放置し、その光の元に歩いて行く。



「だからやめろっての、お前なぁ、女だからって反撃されないとか思うなよ!?」

「私は貴方が記憶を失うまで殴るのをやめないわ!」

「おい二人共」



「ざっけんなこら、いい加減にしないとオッパイ揉むぞこらぁ!」

「やってみなさいよ! そうしたら明日にはファイヤーボールで豚の丸焼きが一つ出来るだけだからね!」

「おい弓使いに魔法使い! これを見ろ!」



 大きな声を出した剣士につられ、ケンカを辞めて視線を剣士に向ける弓使いと魔法使い、そこには。



「剣士おま! まさかそれって……火竜の?」

「ウロコとか言わないわよね!? えほんとに? ああああ! そう言えば情報料がどうたらって言ってた!」

「ああ……これがもしあの火竜のウロコなら……」


 魔法使いは剣士に駆け寄り、スパッとウロコを奪い取りつぶさに確認を始める。


「いきなり取るなよ魔法使い……」

「うっさいわね! 魔力反応を見ているの! 黙ってて!」

「まぁここはあいつにまかせようぜ剣士、一応王都魔法学園の学士持ちだしな」



「本人が言う程成績が良かったとは思えないけどな」

「言ってやるなよ剣士、それでも普通の冒険者パーティに魔法使いがいるなんて幸運は滅多にないんだからよ」

「……二人共聞こえているからね?」



「あはは……すまんすまん魔法使い、それでどうだ? 本当に火竜のウロコっぽいか?」

「わりーわりー、でも俺はちゃんと魔法使いを頼りにしているし、好きだぜ?」

「……いいけどね、さて、これは恐らくあの火竜のウロコで間違いないわ、一枚しかないと鎧とかには使えないけど、魔法付与の触媒として考えたら……銀貨どころじゃなくて金貨での取引になるわよ」


 魔法使いはジト目で男共を見ていたが、一転して火竜のウロコの価値を説明しながらニヤッと笑ってみせる。


「おおお! まじか! 俺、新しい剣が欲しいんだけど!」

「ばっかここは俺の弓の新調をだな」

「そこは私の杖にする所でしょー」



「何言ってんだよ前衛が強くならないと危険だろー?」

「後衛の火力が上がるから殲滅速度が上がるんじゃねーか」

「ファイヤーボールの威力が上がれば……ってそういえば落ちてたウロコは一枚だけだった?」



「……いんや、ちょっと光ってた所に落ちてただけで、ちゃんと探してはいないな」

「え? てことは……」

「探しなさい! スキルを総動員してでも探しなさい! 剣士! 弓使い! 今日はここで野営してでも辺り一帯を探すわよ!」



「おっけー魔法使い! 俺の新しい剣のために!」

「まかせろ魔法使い! 俺の新たな弓のために!」

「探すわよ二人共! 私の新たな杖のために!」



「「「ひゃっほー-ー-い!!!」」」


 魔物の気配すらない静寂を帯びた盆地の中、三人の冒険者の叫び声だけが響くのであった。



お読みいただき、ありがとうございます。


後に出て来る冒険者ですけど剣士と弓使いは魔法使いの事が彼女にしたいという意味で好きです


ですが生来のお人好し成分のせいか二人共抜け駆けとか出来ません


魔法使いはまったく気づいていない恋愛系ポンコツさんなので……弓使いは思い切って好きだと言っている部分とかね……あれ本気なのです。


てな訳で少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたなら


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