36 初めてのダンジョン
ぅぅ……くっちゃいなぁ……。
俺は鼻をつまみながらオークの生活臭が籠った洞窟を進んで行く。
偵察したシャドウファントムが伝えて来た通り、もう敵はいなく一本道の洞窟で、最奥に広間のような空間があり、食べかけの動物なんかが放置されていてすごい臭い。
あいつらよくこの臭い閉鎖空間で生活出来るよな……悪臭無効スキルとかを持っているのかね……。
ダンジョンメニューで購入した、ヘッドライト型魔道具や腰につけたカンテラ型魔道具で足元を照らしながら、一番奥の壁あたりに近づき。
「ルーム!」
今回はリアの方の扉を更新する感じで扉を出す。
「警戒よろしく」
シャドウファントム達にそう告げてから入口から一歩入り、そして簡易ダンジョンメニューを出してまずは体を奇麗にする。
数DPで装備に付着した返り血やら泥やらがすべて奇麗さっぱり消えていき、ついでに体もお風呂に入ったごとくになる。
この機能って便利だけど味気ないんだよね……やっぱり体はお風呂につかりたい……。
いつか〈ルーム〉のシャワー室をお風呂に増設してやるからな、尚お屋敷のお風呂はいまだに使った事がない。
だって風呂用の魔道具って高いんだもの……。
こういった便利機能は、汚れ落としだけでなく武器や道具のメンテナンスも10数DPでしてくれるので、剣やら革鎧や革ブーツをメニューに預ける。
そうすると数分後には職人がメンテナンスをしたように刃は研がれ、防具も補修やらがされるのでありがたい。
服の場合はクリーニング店に出したがごとくにしてくれる。
ただ完全な復元をする訳ではなく、少しずつ劣化はしていくのでそれだけは注意だ。
剣の刃を研げは細くなっていくだろうしね。
そうして身奇麗になってから奥の部屋にあるダンジョンコアに向かい、ダンジョンメニューを開き洞窟と周囲の盆地をダンジョンとして掌握していく。
ダンジョンとして掌握してしまえば、臭い洞窟内も奇麗にしちゃえるし、よく分からない魔物の死骸とかも吸収を……あ……死体とか一々拾わなくても、後でこうやってまとめて吸収しちゃえばよかったじゃんか……。
くそ……初めてのまともなダンジョン運営だから仕方ないか……。
そして洞窟を少しだけ守りやすいように改変、通路に死角や影を作ってシャドウファントムの奇襲をしやすくする。
ダンジョンを作るには神が決めたのかルールがあって、入口からコアまでは道が繋がっている必要があり。
その道も、武装している人型生物が問題なく武器をふるえる広さが必要で、さらに足元や明りや空気がしっかりと確保されていなければならないらしい。
それを無視すると魔素の吸収効率が激減するとか。
二酸化炭素が濃い暗闇な通路の中を、魔力感知で動けるゴーレムだけで守るとかそういうのは無理っぽい。
……過去にダンジョン作成のルールが改変されたんじゃないかなぁとか思ってしまう……相手を一方的にはめるような事が出来るならそういうのやるよね?
俺も許されるなら色々アイデアは出てくるけど、なんつーか一方的に有利な状況はダンジョンルールで縛られているみたいなんだよね……。
今回の影部分を作っておくとかくらいなら許してくれるみたいで、完全な暗闇は駄目っぽい。
千段くらいの傾斜させた階段にスライムの粘液ローションを流して、一度滑ったら最初まで滑り落ちるダンジョン階段とかやりたかったのになぁ……残念。
なぜ人型生物がダンジョンを攻略しやすいルールなのかは知らん。
本当は防衛戦力用の魔物を呼び出したいんだが、このダンジョンを畳んだ後にそいつらをどうするっていう問題が出て来るんだよね……シャドウファントムは影に住めるし〈隠密〉持ちだから冒険者街のお屋敷に潜めるけど。
コボルトとかゴブリンを召喚しちゃうと居場所に困るんだよ。
さすがに俺の魔物戦力をリアの所に置いて貰う訳にはいかんし。
俺の〈ルーム〉の中を拡張する事も出来るんだが、それをやると維持費がね……DPに余裕が出来るまでは我慢しないとな。
とまぁ諸々考えながらDPの増える速度を見ている訳だが……1分で5DPくらいだから……時給にすると300DP前後か。
一日で小スライム7千体前後だと思うと意外に美味しい……そろそろスライムを単位にするのをやめてもいいかもしれない。
ダンジョンをこれ以上広げると費用対効果との兼ね合いもあるからな、とりあえずこのままとして。
うーんウッドゴーレムならじっとしていてもストレスを感じないらしいし、ダンジョンを畳んだ時も〈ルーム〉の廊下の隅に立っていて貰えば邪魔にならんかな?
てことで二体呼び出してっと……コアに貯めてある経験値でレベルもちこっと上げて……よし。
ウッドゴーレム レベル3 〈魔力感知レベル1〉〈頑丈レベル1〉
「ついてこい」
召喚したウッドゴーレム2体を連れて洞窟に出る。
そしてインベントリからオークの死体類をごろごろっと出し、ダンジョンに吸収させていく。
洞窟もさっきまでの臭さは一切なく明るくて快適だ。
「じゃぁシャドウファントムの1体とウッドゴーレム2体で洞窟の外の魔物を狩ってきてくれ、もうすぐ夜になるし影魔法使いの独壇場だろ?」
俺がそう指示を出すと、シャドウファントムは凹凸のない人型になり、謎のダンスを踊り出して喜びを表現しだした。
こいつら陽気なうえに戦闘好きだよな……。
「たまにはウッドゴーレムにもトドメを刺させてレベルを上げてやる事、シャドウファントム達はレベルが上がったらお屋敷の奴も含めて一番レベルが低い奴と交代、もし人が近くにいたら避けて戻って来て俺に連絡、ダンジョンの外で倒した魔物はダンジョンまでウッドゴーレムに運ばせて死体を吸収させろ、じゃ行っていいぞー」
シャドウファントムは強いけど物理的な事が苦手だからな……影魔法のレベルが上がれば魔物を影に引き込んで運んだりも出来るそうだが、まだスキルレベル3だしな。
人型になったシャドウファントムは、ジャンケンで勝った方が影人型でスキップをしながら2体のウッドゴーレムを引き連れて外へ出て行った。
まぁここらの魔物はレベルが低いし負ける事はねーだろ……暗くなったらあいつらつえーし……。
うちの屋敷に侵入しようとした盗賊も撃退しているしね。
一応初めて来た奴で武器とか持ってなかった奴は身ぐるみ剥ぐくらいで勘弁してやろうと思っている……だが武装して入ろうとした奴は……。
……そういえばダンジョンで亡くなった冒険者って遺体が吸収されるから、お葬式には遺品が使われるらしいよ? この世界のあるある知識をお届けしました。
さてと、洞窟の監視や護衛のためにもコアメニューでダンジョンを監視するかね……っとお屋敷側の扉も開けておくか……〈気配感知〉により裏庭にいるダイゴと台所に居るルナとセリィを感じた。
もう樹海ダンジョンの狩りから帰ってきていたようだ。
ダイゴはまだ9歳だし遊んでていいんだぞと言っても、何か仕事をくれというので井戸から水を汲んだり薪を割る係に任命している。
まぁ丸太からじゃなくて、ある程度割ってあるやつをさらに細くするだけの仕事なんだが、獣人は身体能力に優れているせいか、9歳とは思えないくらい上手くナタを使っていた。
あいつらからの視点だと、俺は部屋に引きこもっていて9歳に仕事をさせる姉の雇い主になっちゃうんだよね……。
ご飯を食堂で一緒に食べる時に、セリィが気を使いながら商会としての仕事はしないのかと聞いてくるのがいたたまれないというか……しょうがねぇからまた表の仕事をしないとなぁと思っている。
ギルドオークションへの出品はたまにやればいいやとか思ってたんだけどな……。
あの下着オークションの落札後に、カレンさんから追加の出品はないのかと商人達から催促があったと聞いた。
何でも落札した商人が思ったよりも高値で売りさばけたとかの情報が出回ってしまったそうだ……触り心地が良くて肌に優しい下着だからね。
それにボクサーパンツはポジションがびしっと決まるから楽なんだよ、何のポジションかは言わないけど。
おかげでお屋敷に直接訪ねてくる商人だかもいるんだが……後ろ盾のデラン商会の名前を出したら強引な奴らも逃げて行った。
本当にラハさん達はどんな事をやらかしたんだ? 有難いけど……。
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