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30 借家契約、受付嬢

「それじゃぁカレンさんは冒険者ギルドの職員でもあり、商業ギルドの職員でもある訳ですか?」


 今俺とルナとカレンさんは、さきほどの借家物件に向けて歩いている所だ。

 歩きながらの雑談で、カレンさんの所属はどちらになるのかと聞いてみたんだが。


「そうですね、幹部クラスになると分かれているんですけど、ダンジョン側の冒険者街なんて何処もこんな感じですよ?」


 まぁ確かにこの街の稼ぎの出所ってほとんどがダンジョンからになるし、商業ギルドとしてもその大本を押さえておきたいよな。


「でも冒険者用の受付と商人用の受付は離れてますよね? カレンさんも異動する事とかあるんです?」


「一応両方の研修は受けましたけど、私はずっと冒険者相手の受付ですね、っと着きましたよここがご紹介出来る物件です、門の鍵を開けますね」


 ガチャガチャと外門の鍵を開けているカレンさんの奥には二階建ての一軒家が見える、背の高い立派な石壁に囲まれている敷地で、中の建物自体も石造りですごくしっかりしてそうに見える。


「では案内しますね、どうぞ~」


 カレンさんが先だって敷地の中に入っていく。


 目の前にある屋敷には向かわず、まず横に歩いて行き端っこにある使用人用の離れを見せてくれた。

 1Kのアパートを少し狭くしたくらいの部屋が2部屋独立して横並びになっていて、トイレはついているけど風呂も台所もないのか……この世界だとこれが普通なのかね?

 二段ベッドが置かれているだけで部屋が狭く感じる。


 次は本命の屋敷の方だ、二階建ての豆腐チックなシンプル建物で50坪くらいかなぁ……一階には台所に、食堂、応接間、倉庫、トイレにお風呂に洗濯場があって、二階には6部屋くらいの個室がある。

 豪邸という程ではないが小金持ちといった風情があり、裏庭もちょこっとあって屋根付きの井戸もあった。


 だけどカレンさんに聞いたら中流階級以上になると水は魔道具か魔法で出す物らしい、下水道はあるけど上水道はないんだね……。


「いかがですか? これでお家賃が一月銀貨13枚ですよ」


 カレンさんがニコニコして言ってきたのだが……。


「いやちょっとそれは安すぎませんか? 中の中くらいな宿に30日泊まるより安いんですが……」


 最初この街に来た時に紹介された宿が大銅貨5枚だったんだよね、結局泊まりにはいかなかったんだけども。

 ちなみにこの世界の暦や時間や度量衡は地球の日本とほぼ同じだ、誰かが広めたのか神が決めたのかは知らん。


 カレンさんは俺の問いかけに慌てて持っていた書類に目を通すと。


「あわわ、すみませんギルド職員割引の値段を言ってしまいました……実際は銀貨20枚です……」


 顔を赤くしながら謝罪してくるカレンさんであった。

 自分で借りる値段と間違えちゃったのか。


「カレンさんでもそんな間違いをするんですね」


 俺は笑いながらそう揶揄したが。


「ソウデスネ……私はいつも間違ってばかりですよゼンさん」


 カレンさんは少し寂しそうに答えた。


 ルナが俺の服の袖をクイクイッっと引っ張る。


「どうしたルナ」

「ここに決めようマスター、台所も使い易そう」


 家の規模の割に台所スペースが広いのは、この家を建てた人が食道楽だったからとか言ってたっけか。


「そうだな、じゃぁここに決めますよカレンさん、契約お願いします」


 周りも小金持ちの住宅が多いし治安も良さげで、ギルドからも程よい近さで市場にも大通りを歩くだけで行けちゃう、うん、よくもまぁこんな良い物件を探しておいてくれたもんだよ、カレンさんには感謝しかないな。


「畏まりました、それではギルドに戻って契約しましょう」


 ……。


 ――


 ギルドの個室でまた各種書類に記入して、出来ていた商業ギルドの証明タグなどを受け取り、借家の家賃を三カ月分前払いをして家の鍵を受け取った。

 これ以降の家賃はギルドの口座から引き落とす設定にしておく。


「ではカレンさんまたよろしくです」

「失礼します」


 俺とルナはカレンさんに別れを告げた。


「お疲れ様でした、オークションに入札がもしなかったら連絡しますね、まぁ大丈夫だと思いますけど」


 カレンさんの挨拶を背にギルドの建物を出ていく、さてまずは生活雑貨とか飯の材料を大量に仕入れないとな。


 俺のナナメ後ろをキープして歩くルナを連れて市場へと向かっていく俺達であった、そろそろ旅装用のローブは脱いでもええんやで?






 side 受付嬢達の休憩室


 ここはギルドの建物の中にある職員用の休憩室だ、そこの一角で二人の女性が会話している。


「元気出しなさいよカレン」


 一人の受付嬢がテーブルに突っ伏しているカレンと呼ばれた女性を慰めている。


「はぁ……いいのよ私なんてどうせいつも2割を引く女なんだから……」


 カレンはテーブルに臥せったままくぐもった声で答えた。


「だからそれは2割と言わないでしょっ! 今日もまた飲みましょうよパーっとさ……てかいつもより深刻よね、まだ出会って一月もたっていない相手なのにそんな風になるの珍しくない?」


 受付嬢は疑問をぶつけてみた。


 カレンはむくりと上半身を起こすと、受付嬢に顔を向けて自分の耳を触りながら見せつける。


「……私達って混ざり者でしょ? でもゼン君は初めて会った時から一切気にしたそぶりがなかったのよね、そのくせこうニッコリと笑顔を向けてあげると、恥ずかしそうに美人を相手にした男の子な反応をする時があるの、それはつまり無関心ではなく混ざり者を普通の女性として見ているって事でしょ?」


 カレンが弄っている自身の耳はほんの少しだけ尖っていた。

 受付嬢は少し怒りながらカレンを窘める。


「その混ざり者って言い方やめなさいよ、自分で自分を貶めてどうするのよ、私達は様々な資質を持っているって逆に誇ればいいのよ」


「ごめんなさい……でも実際私に声をかけて来る人の大半は珍しい玩具を見るような人が多いから……」


「エルフの血は美形が多く生まれるからね……ハーフとはいえ……ってこの話はやめやめ、話を戻すわよ」


 受付嬢が深刻になりかけた空気を両手で払うようにして変えていく。

 カレンは受付嬢に合わせて話を少し戻し。


「そうね、それでゼン君は種族とかハーフエルフとか関係なしに私を見てくれているのかなーって思っちゃって……ちょっと暴走しちゃったみたい……てへっ」


 カレンは小さな舌を少しだして照れてみせる。


「なるほどねぇ……それなら私の角も気にしないのかしら?」


 受付嬢は自身の頭の片方の脇から出ている小さな巻き角を触っている。


「大丈夫じゃないかしら? 貴方も一緒にゼン君にアタックしてみる?」


「うーん……話した事ないしちょっとまだ判断出来ないわね、……ねぇカレンもしかして、もしかしてなんだけどさ、そのゼン君ってカレンがハーフエルフな事に気付いてないなんて事はないわよね?」


「まっさかー耳のとがった人間の女性がいるなんて事はないし、エルフに比べたら耳は短いとはいえ、さすがにそんな事は……」


 カレンと受付嬢はお互いをジッと見ながら。


「そ、そうよね、ないわよねー」

「ないない……ない?」


「……」

「……」


「もしもそうなら、それはそれですごい子だと思うけど……」

「今度ゼン君に聞いてみるわ……」


 カレンと受付嬢の話が一段落ついた時に休憩室の隅で食事を取っていた女性が立ち上がる。


 その女性はテーブル上の食事を乗せていた空き皿を持ち出口へと向かう、そして二人の側を通りがかる時に。


「あの男はやめておいた方がいい」


 そう言い残して去って行った。

 急に会話を振られた二人はびっくりした表情で。


「えっと……あの人ギルドの警備兵よね? 急に何だったんだろ? ゼン君はやめた方が良い? なにそれ?」


 カレンは意味が分からなくて困惑していて。


「立ち去って行った後の廊下でヒモがどうたら呟いていたわよ?」


 受付嬢がその耳の良さで拾った情報を補足する。


「意味が分からないわね、ゼン君は警備兵が出て来るような問題を起こしていないし」


「ヒモってなんだろ? あ、そういえば警備兵って警備の関係で個室にいるお客と職員の会話を聞いているわよね? 内容は守秘義務の魔法契約で外に洩らせないようになっているけども、そこで何かあった?」



「特に何の問題もなかったわよ? しいていえばゼン君のメイド見習いさんが超絶可愛かったくらいだわね、エルフの血を引いているんじゃないかと思うくらいの美少女だったわ」


「何よそれ、すごい見てみたかったわ」


 そうしてそのまま受付嬢とカレンの話は少しずつそれていった。


 人としてのその見た目よりも少し年を重ねている彼女達、年齢イコール彼氏いない歴の彼女達はヒモの意味を理解できる素地を持っていなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。


お屋敷の家賃がちょっと安く感じるかもしれませんが異世界の物価だという事でお願いします


後、カレンさんが一生懸命お得な物件を探したと思って下さい


少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたなら


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