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29 商業ギルド訪問、ヒモ認定

 デラン商会の商会長を先頭にして俺やルナもギルドに入って行った。


 会長は慣れているのか商業ギルド側の区画の受付へとまっすぐ歩いて行き、そして受け付けと少し話をしていた会長は俺らを呼びながらギルドの奥へと歩いて行く。

 前にカレンさんに連れてこられた個室がある方だね。


 個室が並ぶ中一つの部屋に入ってソファーに座ると、ほどなく部屋の中に年嵩の男性とカレンさんが入ってきた。


「お待たせしました、対応はこの者がよろしいのですね?」


 年嵩の男性は立ったままカレンさんを示し、会長に尋ねてきた。

 会長が俺を見たので頷きを返すと、会長は立ち上がり。


「ええ、よろしくお願いします、では私どもはいつもの商談に入りましょうか、ゼン殿頑張ってください」


 会長はそう言葉を残すと年嵩の男性と共に部屋を出て行った。

 立ったままのカレンさんをソファーに座る様に促し、俺とルナはカレンさんの対面に座る。


「あのゼンさん、商業ギルドの副ギルド長に私がゼンさんの担当になれと言われたのですが……どういう事でしょうか?」


 あの年嵩の男性って副ギルド長だったのかね。


「えっとカレンさんは細かい説明を受けていますか?」


 何やら戸惑いつつルナをチラチラ見てるカレンさんにそう尋ねてみる。


「いえ、この部屋にいる方の対応をしろと言われただけなので……あの……ゼンさんのご家族に紹介して頂けるという話は……」


 説明もなしに放り込んだのかよあの副ギルド長……俺の事を軽く見ているって事か、デラン商会の紹介っていってもまだ商人ですらないものな、仕方ないか……。


 それと家族に紹介? ああ、ルナが家族みたいな存在だって言ったっけか。


「ここにいるルナは俺の従者ですが、家族のような存在ですね」

「マスターのメイド見習いでルナと申します、よろしくお願いしますカレン様」


 俺がルナを手で示すと、ルナは頭を下げて挨拶していた。

 うんうんルナはきっちり挨拶出来て良い子だね。


 その丁寧な挨拶に感心した俺はルナの頭を撫でていく、ナデリコナデリコ。


「メイド? 従者? あ、あれ? あの……婚約とかそういった話は……その……あれ?」


 カレンさんは何やら混乱しいるのか小さな声で呟いている。

 そりゃ副ギルド長からなんの説明もされてないなら混乱くらいするよな。


 俺はカレンさんに丁寧にカバーストーリーを含めて説明していく。


 ……。


 丁寧に説明している間に何故かカレンさんの表情が曇っていき、最後にはテーブルに突っ伏していた。

 えっと……専属で対応するのが面倒なのかな?

 それなら残念だけど他の人に頼むかなぁ……カレンさん真面目だしお願いしたかったんだけどね、残念。


「あーカレンさん? 忙しいようなら他の人に頼んでもいいですよ?」


 俺は優しくそう語りかけていく。

 するとムクリと体を起こしたカレンさんが。


「いいえやります! ええやってやりますよ、ちょっと最近の自分の滑稽さに落ち込んでいただけなので気にしないでください」


 何か座った目でそう答えてきたカレンさんだった。


「ありがたいです、カレンさんは仕事も丁寧だし、稼ぎの少ない新人相手でも真面目に対応してくれるから信頼出来る方だと思っていたんですよ」


 俺は素直に思う所を伝えていく。


「そ、そうですか? ……まだチャンスはありそうです……」


 カレンさんは落ち込んでいた表情から一転少し頬を赤らめて恥ずかしがり……。

 チャンス? 商売のチャンスって事か、まだ何を頼むか言っていないのにすごいやる気だね。


「それでカレンさん、拠点として借家を借りたいのですが、前に言っていた新居を探すという話で何か良い場所はありまましたか?」


 カレンさんは鋭い考察力でルナの存在にあたりを付けていたものな、住む場所もきっと良い場所を見つけてくれているだろう。


「あ、あれはその……家族で住める一軒家を何件か探していましたが……商会を立ち上げるなら商店と一体型の方が良いでしょうか?」


 何故かカレンさんは顔を真っ赤にして何かを恥ずかしがっている。

 ああ、読みを外したと思って恥ずかしいのか、いやいや完璧だよカレンさん。


「いえ俺は店を開くつもりは今の所ないので一軒家で大丈夫ですよ、最初のうちはさっき説明した中にあった他大陸の品物をギルドのオークションに流すのみでいこうと思っているんです、小売りは人手が必要ですしね、この流れを読んで一軒家を探しているあたりは、さすがカレンさんですよね」


「そ……んな事はありませんが、お褒め頂きありがとうございます」


 俺が褒めれば褒める程カレンさんの顔が赤くなっていく、恥ずかしがり屋さんだったのかね、カレンさん可愛いね。


「少々お待ちください、資料を持ってきます」


 カレンさんはそう言って部屋を出て行った。

 部屋にルナと二人きりになるとルナが。


「マスターお金あるの?」


 根源的な事を聞いてきた。


 ふっその問題はすでに解決済みだ! 俺は胸を張って応える。


「リアに借りてある!」


「……マスターはリア姉様のヒモみたいだよね」


 ずがーんと俺の心に雷が落ちた……俺がヒモ……だと?

 そんなまさか……ちょっとお金を借りたり、魔石を貢いで貰ったり、色々教わったり、後ろ盾になって貰ったり、保護して貰ったり……あれ?


「おれリアのヒモじゃん」


 すごい事に気付いてしまった。


「マスターちょっとカッコ悪いかも……」


 ルナがソファーに座って足をブラブラさせながらそう呟いた。


「待ってくれ! お金は絶対に返すから! 恩返しとかもするつもりだったから!」


 俺はルナの両肩を掴み一生懸命誤解を解いていく。


 まずい! まずいぞ! このままだとルナの俺に対する評価がナイスイケメンからオケラあたりにまで落ちてしまいそうだ。

 これは何かを考えねば……。


 ガチャッと扉の開く音がする。


「お待たせしましたゼンさん……何をしているんですか?」


 俺は隣のルナの両肩を握って説得している体勢のままだった……。

 何事もなかったかのように元の位置に戻る俺。


「お帰りなさいカレンさん」


 ニッコリ笑ってカレンさんを迎えてあげる。

 対面のソファーに座りながらもカレンさんは何か怪訝な様子だが。


「……コホンッ、ではこれらがお勧めの物件ですね」


 カレンさんがテーブル上に複数枚の借家物件の内容が書かれた物をひろげていく。

 俺とルナは別々にそれぞれの書類を手に取り確認をしていく……。



 ――



「良さげな物件ばかりです、まるで新婚の家族が住むような家庭的な家ばかりで迷ってしまいますねカレンさん」


 俺がそうカレンさんの物件選びセンスを褒めると。


「ゴフッ」


 カレンさんは何故か胸を射抜かれたコッコのような姿勢と声を捻りだしている。


 大丈夫? 病気にでもかかっているの?


「マスターこれとかどう?」


 ルナが一枚の書類を見せてきた。

 他の物件に比べるとちょっと大きいかもな、使用人用の離れとかもあるし。

 カレンさんに見せて聞いてみる。


「この物件だけ規模が大きいんですね」


「ああはい……夫婦の稼ぎが多いならこれくらいな物件も夢があるかなと思いまし……使用人を雇うなら離れもあった方がいいかなと思ったのがそれですね」


 カレンさんは何故か途中で言い直した。


 夫婦? ダンジョンマスターでも結婚している奴はいるってリアは言ってたけど……俺はどうしようかねぇ……相手に合わせて見た目の年齢を重ねる事は出来るだろうけども、そういやカレンさんは俺の結婚まで考えてくれてたのか、さすが仕事の出来る人は先まで読んでるんだなぁ、感心しちゃうね。


「結婚とかまだ考えた事もないけど、この大きさはいいかもですね、内部見学してもいいですか?」


「分かりました後で見にいきましょう……そうですか考えた事もナカッタデスカ……」


 カレンさんの体がプルプル震えているんだが……大丈夫?


 内部見学の前に、まずは商業ギルドに登録だと俺とルナは各種書類を記入中だ。


 商業ギルドに入らなくてもオークションに出品くらいなら出来るのだけれど、商業ギルド員だと口座が開設されるので、オークションの売り上げが自動で入ったり買い物を口座払いに出来たりするらしい。

 まぁ口座払いはギルドランクがある程度ないと駄目っぽいから俺はまだ無理だけど。


 商業ギルドも冒険者ギルドもギルドランクは同じで、木、鉄、銅、黒鉄鋼、銀、金、ミスリル、オリハルコンの8段階だ。


 木は見習いや期限付きバザーの時に出される仮証みたいな物で正式なギルド会員は鉄からだ。

 俺の冒険者ランクは鉄、商業ランクは銅からになった。

 ギルド口座は銅からじゃないと使えないからね……デラン商会が後ろ盾になってくれているからこその特別昇級だ。


 銅からは商会を名乗れる訳だが……商会名はルナが押して来た『ダンゼン商会』にする事にした。

 ダンジョンマスターゼンの商会だからだそうだ。


 ルナの事は大抵な場合肯定をするリアだったが、それを聞いた時だけは何も口にしなかったが……アホツル毛が萎れていたっけか……。


 ちなみにルナの冒険者ランクは見習い扱いで木だ、そして商業ランクは鉄にしといた。

 商業系は年齢とか関係ないからね、ダンゼン商会の従業員一号だ。


 そして今はギルドのオークションに出す物を見て貰っている所だ。


 オークションにもいくつか種類があって、俺が参加するのは公開入札型の物で、しかも入札期間が数日の物だ。

 樹海ダンジョンだと果物を買いに来る商人がほとんどだが、珍しい物や売れそうだと思えば買ってくれるだろうと思っている。


「へぇ……良い手触りの下着ですね、魔法も付与されているんですよね? ……〈清浄〉ですか、高級服に付ける基本な奴ですね」


 カレンさんは男物の下着を触って確かめつつ、何やら虫眼鏡みたいな魔道具を使って付与効果を鑑定している。


 そう、ルナに言われて買った男物のボクサーパンツと、長袖のアンダーシャツが思ったよりも良い品物なので思い付いたんだよな。


 こっちの世界の下着って安い奴はチクチクしたり、織り方の問題なのか伸縮がほとんどしなかったりで着心地が悪いんだよね。

 まぁ高級品は別物らしいけど、そういったのは高い魔物素材とかを使って付与も何個も付いてたりするんだと。


 俺はすっごく高い高級服と一般服の間に、着心地の良いほどほどの値段の服を潜り込ませ様としていて、柄とかもなく白や黒や灰色のシンプルで安いDPで購入できる男物の下着を売りに出そうと思っている。


 下着に付与されている魔法効果も一つだけになる物の中から選んだ。

 複数付くと値段が跳ね上がるらしいからね。


 だがそれを調べるための買い物で結構なDPを消費してしまった……今も俺のインベントリには複数効果のついている男物の下着がかなりの数ある……。


「どうでしょうか? オークションで売れますかね?」


 鑑定の終わったであろうカレンさんにそう聞いてみると。

 カレンさんは少し難しそうな表情をしながら。


「そうですね……〈清浄〉が付与されているし手触りも良いので需要はあると思いますが……ゼンさんにはまだ実績もないですし数も揃っていない品物だと……一つ銀貨3枚……いえ4枚くらいの入札はあるのではないでしょうか?」


「あ、数ならもっとあります」


 俺はそう言うやインベントリからボクサーパンツと長袖インナーシャツをどさっと出していく。


「……さっきはその拡張バッグっぽい物から出していたのに……ゼンさんは空間倉庫系スキル持ちだったんですね、隠す気ゼロですか?」


「ええ、カレンさんは信頼できる方だと思っていますので、顧客の情報を軽々しく周りに洩らしたりしませんよね?」


 インベントリを隠しちゃうと、色々と面倒だからって思っているのは、言わぬが華って奴だ。


 カレンさんは胸を張り俺を見つめて。


「ええ、私はゼンさんの信頼を裏切るような事はしません! それに真面目に仕事もするし尽くすしお買い得ですよ?」


 後半の言葉は少し小さい声だったが、お買い得? は聞こえた。

 この下着類がお買い得で欲しいんだろうか? でもこの下着は男物ですよ? 着られない事はないと思うけど……。


 カレンさんはすぐさまテーブルの上の商品を確認し出したので、突っ込みを入れる事はしなかった。

 それなら女性物を出してくださいとか言われても困るし。


 ――


「全部〈清浄〉付きで30枚ずつですね、これは上下合わせた物10セットを一組にして三組でオークションに出しましょう、ある程度数があれば商人も売り込みやすいから入札値も上がると思います……予想になりますけど一組で銀貨120枚以上はいくんじゃないかと、あくまで予想ですけども」


 えーとつまりボクサーパンツ一枚で銀貨6枚いっちゃうって事?

 俺の冒険者での稼ぎの良い時をはるかに上回るんですけど……男物のパンツ一枚に稼ぎで負けるのか俺は……。


 このボクサーパンツも長袖のインナーシャツも15DP前後の値段で購入しているから十分な稼ぎになる。


 ルナはスーパーで一番安く売っているような三個セットのプリンなんかが好きなんだが、それが3DPで買えるから……ああいや、異世界にいる俺が日本円で考えても意味ねーか……。


「じゃぁその出品の仕方でお願いします」

「お願いします」


 俺がカレンさんに頭を下げながら頼むと、隣でルナも頭を下げていた。


「はいお願いされます、では預かり証とか諸々の書類を書いちゃいますね、後でサインをください」


 そう言ってカレンさんは荷物を運ばせるための人を呼びに部屋を出て行った。


 また部屋に残された俺とルナ。



「ヒモ脱出計画は上手くいきそうだねマスター」


「ルナさんそのネタ使っていく気なの!?」

お読みいただき、ありがとうございます。


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