28 ルナをお出迎え ルナ強化&ゼン強化
デラン商会と合流した俺は、デラン商会がこの樹海ダンジョン側の冒険者街に来るといつも借りるという借家まで一緒に荷馬車に乗ってやってきた。
たくさんの商人が荷馬車で買い出しに来るこの冒険者街には、荷馬車を何台も連ねてくる隊商も多いので、荷馬車ごと入れる大きな倉庫のような借家がたくさん建ち並んでいる。
すぐ横には厩舎もついていて集団でまとめて入れるので宿屋より人気がある。
全員が宿屋で泊まるよりお安いし警備もしやすいそうだ。
目の前のそんな借倉庫とも言うべき大きな建物に入っていく。
中は何もなく一階は広い荷馬車置き場、二階に雑魚寝が出来るスペースと個人の部屋がいくつかあるだけだという、台所さえないシンプルな構成だ。
すぐさま荷馬車を引いていた魔物を厩舎に連れていくデラン商会の人達。
引いているのが鳥系だったり牛系の魔物なのに馬車と言うんだよな……ま、気にしてもしょうがないか。
「ではゼン殿、入口はうちの者が見張っておりますのでそろそろ」
ラハさんに似ているデラン商会の会長さんがそう言って来る。
普通の人間にしか見えないけどドッペルゲンガーなんだよなぁこの人……。
「了解、ルーム!」
俺は壁際に冒険者街用の〈ルーム〉の入口を開けて中に入り、二つ目入口の扉を開けていつもの芝生の上に出る。
そして触れ合い魔物園で遊んでいるルナを呼ぶ。
「おーいルナ出番だぞー」
チビ魔物やリアと何かの遊びをしているルナにそう呼びかけると、ルナはチビ魔物やリアにバイバイと手を振りながら俺の所へ駆けてくる。
「おまたせマスター」
息せき切って辿り着いたルナの格好はメイド服だ!
ダンジョンメニューの中でマネキンに着せて一揃いで表示されていたセットのメイド服を買ったのだが。
黒いメイドワンピース〈清浄〉セット効果有。
白いメイドエプロン〈清浄〉セット効果有。
白いメイドカチューシャ〈清浄〉セット効果有。
シンプルな構成のメイド服は、簡易コア鑑定の結果通り。
セット装備効果なんてものも付与されていた。
それぞれに〈清浄〉がついているのは元より、尚且つセットで装備すると〈家事+〉がついてくる。
ルナの〈家事〉スキルレベルが1だからそれがちょこっと強化される。
メイド服は直接他者から見られてしまう物なので、そこそこの値段の物しか買えなかったが、下に着る物は高い物にするようにルナに言ってみた!
俺みたいに冒険者として革鎧とかを着ている訳じゃないルナのために、良い装備を用意するのは当然だよなぁ?
ルナが自分で選んだので細かい所までは知らんが。
キュロットペチコート〈清浄〉〈防御+〉
キャミソール〈清浄〉〈身体操作+〉
この二つだけは教えてくれた。
それ以外は乙女の秘密だそうで……。
防御力アップと体を上手く動かせるようになる効果がついて来たっぽい。
ルナの靴は運動がし易そうな足首より上まで保護されている黒いブーツだ。
可愛らしいのでもよかったんだが、動き辛いのはあれだしな。
黒いブーツ〈疲労軽減〉
ちなみにこないだ買ってあげた水着には、リア曰く〈水泳+〉がついていたそうだ。
メイド服の見た目はクラシックスタイルに近いが、白のエプロンにはフリフリがあって可愛さも備えている。
ルナのこのメイド服姿を始めて見た時のリアは、いつものアホツル毛に花を沢山咲かせながら褒めていた、芸人か?
リアはチビ魔物達の所でルナに名残惜し気に手を……アホツル毛を振っていて……お前らずっと遊んでたんだろ?
俺はリアに挨拶代わりに手をかるく振ってから扉へと戻っていく。
ちなみにこの〈ルーム〉の扉だが、俺がある程度近くにいるか掌握したダンジョン内にいないと開けっ放しには出来ない事が分かった。
簡易転移に近いこの扉の使用方法を色々考えていたんだが、その性能のせいでいくつもの案がポシャってしまった。
そこまで都合の良いスキルはないかね?
……ダンジョンを細長く伸ばしたらどうなるかとかはまだ試せていない。
「そういやルナ、昼飯はもう食ったんだよな?」
扉を通過しながらルナに質問してみる。
「リア姉様と一緒に食べ終わってる」
俺が昼飯時間になっても帰って来なかったら先に食えって言っておいた事をきっちり守ったようだ。
「なら良し、武器はちゃんと〈インベントリ極小〉に仕舞ってあるよな?」
「ばっちし!」
ルナがメイドエプロンの下に手を突っ込み、さもそこから取り出したように見せかけて〈インベントリ極小〉から投げナイフと短剣を取り出す。
今回の外出に先駆けてルナにはもう二つ追加でスキルを覚えて貰い、そのための武器なんかも渡してある。
戦闘能力が低めの〈格闘〉しかなかった事に不安を覚えた俺とリアは、ルナにもう少しスキルを覚えさせる事にしたんだ。
俺は遠距離攻撃出来る魔法なんかが良いと思ったんだが……ルナが選んだのは〈短剣術レベル4〉〈投擲レベル3〉だった。
この時のルナは10時間ちょい光る繭状態だったっけ。
そして目覚めた後にリアがノリノリでルナに戦闘訓練をつけるのだと言って、ウッドゴーレム相手に真剣でやらせてたっけか……いくらウッドゴーレムさん達が堅いからってひでぇ話だ……だって対人戦を意識したウッドゴーレムさんの持つ武器ってゴボウとダイコンだったんだぜ?
そのゴボウとダイコンは、後でルナが美味しく調理して皆で食べた事をここに宣言しておきます。
投げナイフは使い捨てる事を考えて冒険者街で買った物を多めに持たせている。
勿論そうじゃない物もあるけどね。
特に短剣はリアがルナにプレゼントした物で……あいつ、最初は刃の部分に靄がかかって上手く認識出来ない短剣とか渡そうとしてたんだよ……。
鑑定の出来ない人でも魔法付与されてる物だと分かってしまうので、普段使い出来る奴もくれって言ったら、黒鉄鋼を使ったとかいう奴を追加で渡してくれた。
リアさんあざーす。
黒鉄鋼製の武器は普通に冒険者街でも見かけたから大丈夫だろ。
もう一つの靄のかかる短剣の方をコア鑑定させて貰ったら〈認識阻害+〉〈切れ味+〉とかついてる魔短剣でした……。
そうそう、コア鑑定で思い出したが、オークションのペリドットは103DPで売れていた。
一日かけて3DPしか上がらないならオークションの期限を1時間くらいにしてもいいんじゃね? とリアに言ったら、アホツル毛で頭を叩かれた、解せぬ。
なんとかリアから半日で出していい許可を取り、今の俺には出品枠が一つしかないけども同じ品物なら出品予約が重ねられるので、大量のペリドットを期限半日で100DP開始になるように設定しておいた。
いちいち操作するの面倒だしね。
――
デラン商会の借りた貸家に戻って来ると、商会長の横には銀髪でルナと同じくらいの背丈の女の子が旅装用の丈夫そうなローブを着て立っていた。
「ゼン殿ルナ殿、この子がルナ殿の代わりを務めていた者です」
銀髪の娘は綺麗な礼を俺達に向けてすると。
「このローブをお使いください」
そう言って着ていた旅装用のフード付きローブをルナに渡している。
ちょっと汚れている所も旅をしてきたリアリティを感じられて良いな。
「ありがとう助かるよ」
「ありがとう」
俺とルナが感謝の言葉を伝えると、もう一度頭を下げてから銀髪の少女は離れていった。
ラハさんに似ているデラン商会の商会長さんが、早速ギルドに行こうというので同行する。
今回商会を立ち上げる訳だが、この冒険者街は街として特殊なせいか商業ギルドと冒険者ギルドが同じ建物の中に存在している。
俺が冒険者ギルドだと言っている場所は商業ギルドでもある訳だ。
今までそっちの区画に用事がなかったから行った事がないんだけどね。
そうして俺は、メイド服の上から旅装用のフード付きローブを着こんだルナと、デラン商会の商会長さんと一緒に冒険者ギルドへ向けて歩いていく。
そういえば、ルナが俺にも日本産の魔法付与された服を買うべきだと言ってきたので、下着だけブランド品の良い奴を買ってしまった。
DPも結構使っちゃったし服はまた今度な……俺の下着の細かい描写は需要ないだろうしいらんよね? 〈清浄〉や〈活力+〉〈温度調整〉なんかがついてきたよ。
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