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158 国境についた

「ふあぁぁ……」


 ガタゴトとした音を響かせて進む幌付きの荷馬車。

 俺は今その荷馬車の荷台の後ろの方にクッションを置き、その上に座りながら大きな欠伸をしている。

 昨日は結局魔女さん達の大魔法合戦の録画映像を皆で見るために、お昼から野営する事になった。


 まぁ、野営といっても荷馬車の側に背の高めなテント……というか……小さめのゲル? を張り。

 そこに〈ルーム〉の〈入口〉を設置するので、俺達はダンジョンコアのある〈ルーム〉部屋でまったりと過ごせるんだけどね。


 まぁ寝る時はさすがにコア部屋だと狭いんで、ルナ以外は拠点島のお屋敷の方に行って貰う。

 ルナだけ仲間外れという事ではなくて、ルナは俺のナビゲーターだからコアを守護する役目もあるんだよね。

 ナビという存在である以上、それをするのが当然という意識は刷り込まれてるんだよ……勿論俺にもね。


 まぁでもそれは必ずそうしなければ命がない、という程のものではなくて、やれるならやるよね? 程度のもので。

 ……説明が難しいが……朝起きたらオトイレに行きたくなるよね? という生理現象的な……いや、これは上手い表現じゃないな……行かないと漏らしちゃうもんな。


 えーっと……あ、そうだ、映画館に行ったらポップコーンとドリンクを頼みたくなるよね?

 映画を見るという主目的には関係がないが、やれるならやるという感じで。


 つまり、ダンジョンを生み出すという主目的は強めに感じるけど、コアを守るというのは、守れたら守る程度の意識と言えば……理解して貰えるかなぁ?


 コアが壊されてもしばらくしたら新しいコアを生成出来るっぽいし……ただし、コアを掌握されちゃうのはまずいので、冒険者よりも他のダンマスとかを注意するって話になる。

 って、まぁこんなつまらん話を考えても仕方ないか。


 そんな訳でルナはコア部屋で寝ていて、俺は何処で寝るのかというと……今回は野営中に誰も外にいないのはよくないので、一人寂しく……いや、護衛の重装ウッドゴーレムやウッドゴーレム馬やファンファンなんかと一緒に荷馬車の側で見張りだ。


 皆も手伝うとは言ってくれるんだけど、女性陣は夜しっかり寝ないとお肌に悪いし、ダイゴは子供だし早く寝ろって事になるからな……まぁ俺はダンジョンマスターという種族でもあるんで、普通の人間よりは無茶が利くからね。


 とはいえ徹夜だと多少は眠いので、周囲に見せるための仮初の御者は他にまかせて荷台で欠伸なんぞをしているという訳だ。


「ゼン様、眠いなら仮眠したらどうですか? 私の膝を枕として貸し出しますよ」


 俺の対面に座っていた、サラサラのロングな金髪にホワイトブリムが似合っているメイド姿のアイリが、俺に向けて両手を差し出しながらそう言ってきた。


 ちなみに今は御者席に茶髪ポニテのローラとポメラ族で獣人のセリィが座り、同じくポメラ族で獣人のダイゴは荷馬車に追従している重装ウッドゴーレムの肩に座って警護の真似事をしていて。


 そして銀髪碧眼美少女メイドなルナは荷馬車の前の方に立ちながら、御者席のローラやセリィと何やら会話している。

 ……その会話の内容が。


 ◇◇◇


『昨日は野盗が現れなくて残念無念』

『ルナさんの言う通りよね、人通りも多い街道だし、お小遣いを獲得出来るかと思ったのにね~』

『最近、ゼン様に頂く商会従業員のお給料より、野盗の装備を売り払う時の交渉手数料で頂くお小遣いの方が多くなってきているんです……』


『餌が上等だから当然の結果』

『ルナさんの作る美味しさ満点のご飯を沢山食べて、露天風呂に入って清潔を保ち、さらにご主人様の〈光魔法〉や様々な異世界品のお陰で、お肌ピチピチモチモチで髪の毛サラサラ艶々の私達がいるからね~』

『わ、わたしは囮にはあまり役にたってませんけど……』


『そんな事はない、セリィのモフモフは獣人達の目の色が変わる至高のモフモフ』

『獣人の野盗とかがセリィちゃんを見ると、高く売れそうだと目の色を変えて襲ってくるものね……、一般冒険者の獣人とかも、セリィちゃんのモフモフな尻尾を視線で追いかけてたりするし、セリィちゃんがもう少し年齢を重ねて大人になったらすごい事になりそう』

『そ、そんな事は……えっと……私の尻尾も耳もゼン様の物です! もう少し成長しても他の人にはあげません!』


『おー、セリィも言うようになってきた、パチパチパチパチ』

『セリィちゃんは、それをご主人様に直接言えるようになれれば完璧よね』

『あわわ……それはまだ……恥ずかしいです……』


 ◇◇◇


 てな感じの事を三人で話している。


 うん、俺には〈聞き耳〉スキルがあるからさ、土や砂利道を荷馬車が通るとガラガラと煩い音をたてたり、バタバタと幌を揺らす風の音とかがしていても……聞こえちゃうんだよね。


 そうかぁ……セリィのモフモフは俺の物だったのか……。


 三人が話しているように、最近はますます美少女や美人っぷりに拍車がかかっている女性陣のおかげで……野盗ホイホイがすごい事になってきているんだ。


 少し前までは重装ウッドゴーレムにびびって手を出してこなかった野盗とかも、最近のアイリ達を見ると目の色を変えて襲ってくるんだよな……高く売れそうだとか思うのだろうか?


 たぶん……異世界日本から購入した下着の体形補正効果のせいとかもあるんだろうな……後は高級下着には〈魅力+〉や〈姿勢+〉みたいな魔法スキル効果がついていたりするからな……。


 おかげで実は俺も、最近は野盗が宝箱に見えてきているのだけど……これもダンジョンマスターの性かねぇ?


 ダイゴ? ……あいつも身綺麗にするのが習慣になってきているし、女性獣人達から見られている事はよくあるね。

 ダイゴは冒険者的な実力も高いし……後5,6年したらモテそうだよな……まぁ今は只のイケショタ犬獣人なんだけどな。



「ゼン様?」


 おっと、俺に向けて手を伸ばしたままのアイリを放置する所だった、ごめんごめん。


「ありがたい話だけどなアイリ、もうすぐ国境に着くから、そこの様子を見ておきたくてな」

「ああ……確かに、国境を監視する兵士達の対応を商会長であるゼン様がする必要があるかもですね」


「そういう事だな、ふあぁぁぁ……」


 昨日国境を越えようと思っていたから、野営地から国境が近いんだよな。

 欠伸も出るし眠いが、もう少し起きていないといけないよな。


 アイリは膝枕を諦めたのか俺に向けて差し出していた両腕を下ろし、床に置いたクッションの上で姿勢を少し変え……。

 ……てか、さっきは膝枕しやすそうな座りかたをしていたからな。


「ゼン様、国境は、また川を越えるのですよね?」

「ん? ああそのはずだ、アイリが仲間になってすぐの渡河は、海の側だったから川幅も結構あったけど、こっちは内陸だからな、確か大人が石を思いっきり投げれば対岸に届くくらいだとか?」


 東の隣国との国境線は一本の川が基本になっていて、まぁもっと北に遡った源流の方になると細かい川が何本もあるので、国境も結構曖昧らしいんだけどね。


 崖とか川とか山が国境になるのが普通っちゃ普通だよな。


 前回ドリル嬢のいるタタンタの港町から西に向かった時の国境越えは……特に俺らに注目する人もいないだろうしという事で、夜中にこっそりマーメイド達に川越えを手伝って貰ったんだよなぁ。


 でも今回は商都で俺から下着を買った女性陣達全員が『ダンゼン商会』が東に向かっている事を知っているうえで、その動向に注目しているんだよね。


 それなので人の目がある所は『ダンゼン商会』として、荷馬車で移動しておかないといけないと言う訳だ。


「マスター、国境に着いた」


 ん? 荷馬車の前に立っていたルナからの呼び掛けに、俺とアイリも立ち上がり、拡張の付与された荷物箱なんかを避けながら荷馬車の前にいるルナの左右へと向かう。


 そうして一旦停止した荷馬車の荷台から周囲を伺うと。

 今俺達がいる場所は少し高台になっているのか眺めがいい。

 そして、ちょいと遠くに見える川には二本の木製の橋がかかり、その手前には兵士の詰め所っぽい建物が見える。


 詰め所の脇の川岸には大量の小船が係留され、今も人が乗った船が向こう岸とこちらを行き来している。


 さらに、橋へと通じる街道の周囲には通りがかる商人や旅人達のための宿場町が広がっていて。

 何軒もの宿や酒場や厩舎やらが街道に面するように建てられており、お客であろう商人や旅人や冒険者っぽい人が沢山出入りしている。


 さすが商都から隣国へと繋がる街道にある国境の関所だな、宿場町の規模もでかい。


「じゃぁ行くか」


 俺がそう宣言すると、馬型のウッドゴーレムがカッポカッポと速度を落として歩き出す。

 お読みいただき、ありがとうございます。


 2023年の5月末あたりから、この小説の最初から誤字脱字チェックをするという作業をしていまして……やっと全話一通り見終わったのが数カ月後という、まさかここまで時間がかかるとは思っていませんでした。

 まだおかしい部分はたくさんあるのですが『なろう』と他サイトにも掲載していたので修正作業も倍必要という状況に疲れたので、こちらの更新は一旦止めて。

 カクヨムの方だけ更新という形にしようと思います↓

 ttps://kakuyomu.jp/works/16817330650220324057



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― 新着の感想 ―
[気になる点]  こちらの更新というのは”なろう”のことで別サイトでは更新するということでしょうか?もしそうならリンクをお願いしたいです。
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