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157 闇鍋

 それはまさに圧倒的という言葉の似合う光景だった。


 魔女さん達の使う攻撃魔法がリボルバーの拳銃だとすると……それは、弾の途切れない重機関銃というべきものか?

 俺達の見ているメニュー画面に映るその光景を、ルナは元よりローラやアイリ達も息を飲んで見守っている。


「私の氷魔法とは比べ物にならないですね……」


 そう呟いたのは、フローリングの床に置いたクッションに座っているアイリだ。

 今はまだお昼ご飯を食べた後なので、アイリはメイド服を着ている状態だね。


 これが、いつもの寝る前なんかにやる恒例の映画鑑賞の時間の時とかだと、寝間着姿だったりもする。

 ちなみに最近のアイリはペンギン柄がプリントされた日本製のパジャマがお気に入りだ。


 今俺達がいるのは〈ルーム〉の初期部屋で、ダンジョンコアが設置されている狭いワンルームみたいな部屋だね。


 俺は片方の壁を背にして、床に座布団的なクッションを置いて崩したあぐらみたいな状態で座っていて、俺の右隣りにルナが壁を背にして座り、左隣にローラが座っている。


 そしてアイリとダイゴが俺達の少し前の床に座り、そして反対側の壁にメニュー画面を使った映像を流している状況だ。


 ……。


 ……セリィ?


 セリィはモフモフ係だからね、仕事熱心なセリィは俺のあぐらの上にチョコンと座って、今日もそのモフモフとした犬耳や尻尾がモフモフでモフモフだ。


 アイリの呟きは誰かに返事を貰うための物ではないのだろうけども、彼女の言う通りに、その映像の中の攻撃魔法の弾幕はありえない密度になっている。


 その映像の中心に常に映っているのは魔法少女ミラクルイクスだ。


 ……まぁ俺がイクスさんの活躍を撮影したのだから彼女が中心に映っているのは当たり前の話なんだけどね。


 そのイクスさんは、例の競技の的である直径が1メートル以上もあるバランスボール的な光る玉を片手で脇に抱え、その背中に生やした魔法の翼で縦横無尽に飛び回り、そして魔法の杖を触媒に攻撃魔法を周囲にばらまいている。


 あの大きさの光る玉だと、普通の人間サイズの魔女さんだと手で持つ事が不可能だからこそ、魔女さん達は魔法で保持していたんだろうけども……。

 身長が3メートルを超える、がっちりもっちりした体格の魔法少女ミラクルイクスならば、片腕で確保が可能のようだった。


 その姿は敵陣を突破するラグビー選手に見えなくも……いや、あんなに可愛らしくてフリフリの洋服を着たラグビー選手はいないか。


 魔法少女ミラクルイクスは光る玉を保持し、他の魔女さん達から逃げ回りつつ、周囲への魔法攻撃の手を緩めない。

 そんな大魔法合戦とも言える映像を、皆で昼食後に見ているのだけど、俺の隣に座るルナが俺の方を向いて口を開く。


「マスター、あの杖にあそこまでの力はなかったはず……どういう事?」


 うん、まぁあの杖で魔法少女ミラクルルナに変身した事のあるルナならそれに気付くよなぁ。

 アイリやセリィは魔法少女に変身はしたけど、その姿で魔法を使ったりはしなかったんだよな。


 そんなルナの質問に共感したのか、アイリやローラも映像から視線を外して、俺の方を向いてくる。


 では説明しよう!


「あの魔法の杖なんだけどな……マジョリーさんが改造した事で、新しい魔法能力が付与されています!」

「「「ああ……」」」


 ルナまで揃って三人で同じ反応をしている。

 マジョリーさんがどんな風に思われているのかが分かる話だな。

 そしてルナが俺の服をクイックイッと引っ張ってきて。


「マスター、それの具体的な内容を知りたい」


 そんな風に聞いてきたので、俺は返事の代わりに映像を指さしてやった。

 俺が片腕をあげて映像を指さした事で、三人の視線もコアのメニュー画面へと戻り。

 丁度その時に、映像の中で俺がマジョリーさんへと話しかけるシーンになる。


 まぁ映像はミラクルイクスを映したままなので、音声だけなのだけども。


 ……。


 ◇◇◇


『あの……マジョリーさん?』

『んー? どうしたのゼン君?』


『イクスさんの使っている魔法の量がちょっとおかしいんですけど……あれはイクスさんの素の能力のせいですか?』

『いいえ~、あれはゼン君に借りている杖の能力だわね~』


『……いやいや、あの杖にあそこまでの魔法弾幕を張れる程の力はなかったはずですけど?』

『えっとねぇ……あの杖の素材がすっごく優秀で、魔法付与出来る器が大きくて、まだまだ付与出来る空きがあったから……追加で魔法付与しちゃった、てへっ』


『借り物に勝手に手を入れないでくださいよ……』

『だってぇ~我慢できなかったんですもの~』


『可愛らしく言っても駄目ですよ、まったく……あ! こないだかなりお高めな異世界産な天然石の購入を打診してきたのって……』

『おお、そこに気付いちゃった? うふふ、あの大きさの天然水晶で透明度が高く、なおかつ真球に近い物とか……うふふふふふ、すっっっっごくやりがいがあったわぁ~』


『あれ……後でリアにすごい怒られたんですからね? 『あんな規格外に質の良い天然石を軽々しく売るな!』って』

『あらん……だからあの後で頼んだ追加注文に応えてくれなかったのねぇ……まったく〈日陰植物〉ったら余計な事を……ねぇ~ぜ~ん~く~ん~』


『いや、駄目ですよ! リアにこれ以上怒られたくないので、ほどほどの物までの注文でお願いします!』

『いいじゃないの~ほ~ら~、今ここには怒る保護者もいないわよ~? ちょっとだけ、ね? ちょっとだけならいいわよね~?』


『いや、ちょっと! 駄目ですってば! ちょ、なんで俺の手を掴んで拘束してくるの!? 待って、マジョリーさん!? ――』


 ……。

 ……。


 ◇◇◇


 ……。

 ……。


「改造された魔法の杖の具体的な能力を知りたいと言ったら、マスターとセクシー魔女とのイチャイチャな音声を聞かされた」


 いや待って! ルナさん?


 あれはどう見ても、肉食動物に狙われた羊の声だよねぇ!? イチャイチャではないよねぇ!?

 しかもちゃんとあの音声だけの攻防の後で、マジョリーさんから杖の説明もされてたじゃんかよ。


「人聞きの悪い表現するなよ……ちゃんとマジョリーさんが説明してたじゃんか、『周囲から使用した魔力を吸収する』って」


 そうなんだよな、あの杖に付与されたスキルは〈使用魔力吸収〉っていう……やべー内容らしくて。

 その魔法効果が付与された事により、使用者の魔力が切れる事が……ほぼなくなったそうだ。


 魔力切れが『ほぼ』ないと言ったのは、杖の能力である〈初級魔法全〉をメインに使用した場合であって、杖の使用者が上級魔法スキルや超級スキルを素で持っていてそれらを使った場合は別だとかなんとか。


 どうも、杖に付与されている〈初級魔法全〉で使用された魔力をリサイクル的に吸収出来る能力とからしいんだよね。


「確かにすごい能力……マスター、あの杖は今どこに?」

「あー……あの魔法付与に使った天然石がものすっっっっごい高かった奴なんだよなぁ……なのでしばらくは貸し出し継続というか……今はイクスさんが持っているっぽい」


 あれだけの経費を使って魔法能力を付与されちゃうと、返せとも言えないというか……。


「残念……またコアメニューでお高い魔法の杖を買ってもいい?」


 ルナ的にもあの杖はお気に入りっぽかったから、言いたい事は分かるんだけど……。


「……実は十本程買ってみたんだけどな……、魔法付与ガチャ的に、あの杖はソシャゲのガチャでURカードを引くよりきつい確率っぽくてな、奇跡の一本だったみたいなんだよな……」

「おおう……ちなみにその買った杖には?」


「〈変身(少女限定)〉は結構な割合で付くんだけど……後は〈舞踊〉とか〈演技〉とか〈化粧〉とか〈モデルポーズ〉とかな……」


 俺が追加で買った杖に付いた能力を教えると、ルナは苦い物を食べたような表情をして口を開いた。


「闇鍋……」

「だな……」


 俺とルナはコアメニューの魔法付与ガチャの闇鍋具合を、改めて認識する事になった。



 ……まぁ、基本的には対象の品物の方向性に合った魔法付与がされるんだけどね。

 食器なら〈頑丈〉とか〈温度維持〉とかさ。

 購入した魔法の杖十本のほとんどに〈変身〉のスキルが付いているので、方向性は一応合っているんだよなぁ……。

お読みいただき、ありがとうございます。


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