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156 街道での雑談と物真似

 ガタゴトと音を鳴らしながら街道を東に向かう荷馬車。


 俺はその荷馬車の御者席に座り、実は意味のない手綱を握りつつ、先日の話を同じく御者席に座っているルナにしている所だ。

 ウッドゴーレム馬は今日も軽快に荷馬車をひいてくれる。


「結局固定は別として3人ずつにしたんだね、マスター」


 今日もいつものメイド服を着込んだ銀髪碧眼美少女であるルナは、御者席から前方を見つつ俺にそう問いかける。

 俺も一応周囲の警戒なんかをしつつ、先日の『ダンゼン商会』への出向を決める戦いを思い出しながら、質問に答える。


「ああ、一人だけだとケンカになりそうだったしな……試合で優秀だった順番にする事にしたんだよ」


 あの時の大魔法合戦はすごかったよなぁ……。


「マスターだけずるい、私もその攻撃魔法が飛び交う試合を見たかった」


 ルナはちょっとだけふくれっ面をしながら、そんな不満を口にした。

 こんな風に表情に不満を露わにしてくるってのは、ルナの情緒が育ってきているって事だよな……良いことだ。


「えっと……実は……途中から録画してある」

「え? ……日本産録画機器の魔道具?」


 いやいや、そんな物をマジョリーさんの前に出す訳にいかねーだろ?

 そんな事をしたら、研究協力とか何とかで三日は家に帰してくれなくなるわい。


「そうじゃなくてな、ほら、コアメニューに配下との会話とかを記録しておく機能があるだろ?」

「メモ帳代わりの機能にしては、拡張用DPが高かったやつ?」


「そそ」


 ダンジョン内の出来事を録画できるんだと思って獲得した奴なんだよなぁ……でも結局コアの近くじゃないと使えないという、配下への指示出しをメモっておくような機能だった事を後でラハさんに教えてもらったっけか……。


「あれはコアの近くじゃないと……あ」


 ルナが何かに気付き、横から俺を見上げるように覗いてくる。


「気付いたか? つまり、俺自身が何処にいてもコアの側にいるようなものだから――」

「マスターはいつでも何処でもコアメニューを使って撮影が出来ちゃう……」


 ルナが俺の言葉を遮って正解に辿り着く。

 うむ、ルナは賢いなぁ、俺が全てを言う前に正解したので頭を撫でておこう、ナデリコナデリコ。

 俺がそうやって片手でルナの頭を撫でていると。


「つまりマスターは何処ででも盗撮が可能」

「言い方!?」


 ちょっとルナさん? その言い方は良くないよ?


「そこはさぁルナ、『わー何処ででもコアメニューで動画撮影が出来るだなんて素敵だね、マスター私と一緒に記念撮影しようよ! キャハッ!』とか言うべきじゃね?」

「……私の声ってそんな感じ?」


 ふっ、宴の出し物用に〈声帯模写レベル3〉〈模倣レベル3〉〈物真似レベル3〉は取ってあるからな、似ているはずだ。

 ちなみに〈模倣〉スキルは広義な意味でのスキルだったので〈物真似〉を取る事で重複効果を狙っている。


 実は他にも色々と芸用のスキルは選べるのだが……〈バーテンダー〉なんかと同じカテゴリーで日本由来の物っぽいスキルも結構あるんだよなぁ……まぁぼちぼち取得していこうとは思っている。


「俺は似ていると思うんだが、どうだろな?」

「すっごい声質が似ていました……ゼン様……」


 ルナが何かを言う前に、荷台の方から犬獣人のポメラ族であるセリィがそう声をかけてきた。


 ちなみに今いる街道は、商都から東の隣国へと入る国境の手前なので、皆を荷台に乗せて移動している。


 出向扱いになったイクスさんや他の魔女さん達は、俺がまだ隣国にもついてないので表にはまだ出せない、だから彼女達には拠点島でマーメイド達を相手にした魔法講座とかをして貰っている。


「似ているとしても、私はそんな風に言わない」


 俺が声真似をしたセリフの何処かに不満を覚えたのか、ルナがそんな事を言いながら俺の太ももをつねってくる、イタイイタイ。

 いや、わざと性格とか口調を変えてるんだってば! あまりにもそっくりだと、それはもう芸ではないだろう?


「分かったから、太ももをつねらないでくれルナ」


 ギャルっぽい口調にしたのは悪かったってば。


「むぅ……」

「ゼン様、他の人の真似とかは出来ますか?」


 ちょっと拗ねて口を閉ざしてしまったルナをよそに、荷台から身を乗り出して俺の肩に手を乗せたセリィが俺の物真似を所望してくる。


 ふむ、そうか、聞きたいか、それならば。


「そうだなぁ、それじゃぁセリィの真似で……『ゼンにいしゃま~きょうも~私の~モフモフ~気持ち良かった~ですか~?』ってな感じかね」

「わふっ! 私はそんな風に言わないよ! ゼン兄様!」


 あのな、セリィ、まったく同じ口調を真似したら宴会芸にならないだろう?

 その人ではありえない一言や口調を入れる事で面白さがだな……。


 ってイタイです、すごくイタイので! レベルの上がった力で俺の肩を叩かないでくれセリィ……。

 太ももに続いて肩にダメージを負ってしまう俺は、話をすり替える事で逃げる事にした。

 というかセリィってば、感情が高ぶると丁寧語も崩れるし、兄様呼びになるのな。


「ええと、話を戻してだな、そろそろ休憩に入るから、そこで例の試合を録画した動画を皆で見るか?」


 もうすぐお昼だしな、ご飯休憩に入って……そのまま動画を見ながら野営に突入してもいいし。

 今日の夕方に国境の宿場町に着く予定だったけど……別に急ぐ旅でもないしな。


「見たい」

「えっと『動く絵』って、夜に見ている『あにめ』とか『どらま』みたいな感じなんですか?」


 ルナとセリィが俺への攻撃をやめてくれた、ありがたい。


「そんな感じ……あー、後で動画撮影とか録画ってのがどんな意味なのか説明してやるからなセリィ」


 ルナは俺の基礎知識をインストールしているから簡単に理解するんだけど。


 今回謎翻訳能力は『動画』を『動く絵』って翻訳したみたいだな……。

 すでにアニメなんかを見ているセリィだから『動く絵』で理解できるのかもだけど、他の人にはまた違う翻訳のされ方をするのかもしれないし……本当に謎い能力だよねぇ……俺にとってはありがたいんだけどさ。


 さて、荷馬車をとめるのに良い場所を探さないとな……。


 ここは隣国と商都に繋がる大きな街道だからさぁ、歩きでも馬車でも通行量がそれなりにあるんだよね。

 そうするとどうなるかというと……まずは野盗が増える、そしてそれを退治するべく雇われた冒険者や国の兵士が行き交う。

 商人の通行も元から多い、すると沢山の行き交う人を目当てにして街道で商売する人も出てくる……そしてそれを狙った盗賊も以下略。


 そうやってこの街道には人の目が多い場所もあるから、そういう場所では皆を荷馬車に乗せて移動しているのよね。

 ひとけのない地点なんかでは俺一人で移動している場合もあるけども。


 そんでうちは可愛い女の子が多いので、野盗だけでなく商人や貴族にも目をつけられる……イケメンな俺やイケショタっ子のダイゴもいるのに……ほぼ女性陣しか注目されないんだよな。

 とまぁうちの荷馬車は野盗やスケベな権力者ホイホイみたいになっちゃう。


 ごっつい装備の重装歩兵っぽいウッドゴーレムが二体もいるのにさ……もうちょい護衛の数を増やそうかしら?


 まぁ商人や貴族なんかは、商都の伯爵様のお墨付きな書状を見せれば大抵はどうにかなるから良いんだけど……まぁ、その書状を見せるまでの過程にかかる時間が勿体ないなと思う事はあるけどね。


 どいつもこいつも人間の商人や偉い奴らは、ルナやアイリやローラを寄越せとか売れとかなんとかうっさいっての!

 ……それによぉ……セリィだって可愛いだろうが!

 セリィが獣人だからって見る目がない奴らめ……。


 まぁ実はそういう面倒くさい輩や野盗とはちょいちょい出会っている……ただし、それを一々思い出したりしても楽しくないので、身内ともそういう話はあんまりしないかなぁ?


 道端に落ちているゴミに一々騒いだりしないだろう? まあそういう事だ。

 あ、でも野盗の装備なんかはゴミではないな。

 何故かっていうと、ローラやセリィに商談をまかせて装備屋とかで売却するとお金になるからな。


 ちなみに二人には売り上げの何%かを、商談の手数料的なお小遣いとして渡す事にしてある。


 っと、街道脇に丁度良さげなスペースが空いているね、あそこで休憩にしようっと。

 俺はウッドゴーレム馬にその場所へ向かうようにと指示を出すのであった。

お読みいただき、ありがとうございます。





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