155 魔女達の空中大魔法合戦
「では、恨みっこなしでいくわよ~~……始め!」
マジョリーさんのその言葉を受けて、黒いローブと黒いとんがり帽子をかぶった魔女のみなさんが一斉に箒に跨って空へと飛び立つ。
俺はそれらの様子を椅子に座って見ているのだが……。
……。
「大ごとになっちゃったなぁ……」
そう、ポソリと呟くのであった。
今俺がいる場所はマジョリーさんの所の地下ダンジョンの一室……いやまぁ、室という表現よりは、広大なフィールド型ダンジョンと言った方がいいか。
地下なのに、空があって草原があって林があって森もあって山も湖も川もあるという……ちなみに空の天気は天井に映し出された映像らしいのだけど、その部屋の高さが数キロ単位だというのだから……その広さも分かるというものだろう。
俺とマジョリーさんは、そんなフィールド型地下ダンジョンの草原地帯の小高い丘に置かれたソファーに並んで座りながら、魔女さん達の戦いを見ている。
戦いと言ってもそこで行われているのは、ある意味スポーツのような……。
「あれってどうやったら勝ちなんですか? マジョリーさん」
正直見ているだけだと良く分からないので、ルールを知っているマジョリーさんに聞くのが手っ取り早いと思いました。
マジョリーさんはいつものキセルを吸い、ピンク色の煙を吐き出しながら魔女達の戦いを見ていたが、俺の質問を聞いてこちらをチラっと見てから、また顔の向きを魔女達の方に戻しつつ。
「そうねぇ、ゼン君、あそこに浮かんでいる玉が見えるでしょう?」
「はい見えますマジョリーさん、たぶんあれは、魔法で作られた物だとは思うんですけど……」
マジョリーさんが言うように、魔女さん達が箒に乗って飛び回っている空域には、ピカピカと目立つように光る玉がいくつか予め浮かんでいたのよね。
戦闘空域がキロ単位で離れているから大雑把な考察になるけど、魔女さん達の体の大きさからの対比で、その光る玉の大きさは……バランスボールといえば想像できるだろうか?
それも市販で売っている奴の一番大きい奴……より大きいかも? あれは直径一メートル以上あるよね?
だって背の低い魔女さんだと、ほぼ同じくらいの長さがあるように見えるし。
そんな風に大きくてカラフルに光っていて少し透けているバランスボールが、フヨフヨと遅い速度で魚のように移動しながら空中にいくつか浮かんでいるのよ。
「あれを一定時間保持出来たら勝ちなのよ~」
マジョリーさんは遠くの玉をキセルで指し示すような仕草をしながら教えてくれる。
「なるほど……一定時間保持ですか……いち早く取っただけじゃ駄目なんですね?」
……ビーチフラッグのように最初に取った人が勝ちって訳じゃないのね。
そして、サッカーやバスケのようにゴールがある訳でもないんだな。
箒に跨った魔女さん達が飛び交う遠くの空域では、いち早く光る玉に辿り着いた魔女さんが、それを自分の側に確保した。
……たぶん玉と魔女さんが光る紐で繋がっている状態が、保持しているって事なんだと思う。
ってかあの光る紐ってば、俺とイクスさんが暴走したマジョリーさんに空で引っ張られた魔法じゃねぇかなぁ……。
あの時は怖かったなぁ……まさか自分が流れ星になれる時がくるとは思わんかったっけ……。
「どうしたのゼン君? 死んだオークみたいな目をしているけど……」
マジョリーさんが俺の顔を覗き込んで、心配そうに俺の頬に手を添えてきた。
「いえ……ちょっとあの競技を見て、昔の怖い事を思い出しただけなので……大丈夫です……」
「そうなの? ……むーん……ゼン君をこんなに怖がらすなんて! ダンマスに成りたての頃に空を飛ぶ魔物にでも襲われたのかしら? でもまぁもう大丈夫よ! 次にそんな事があったら私が助けてあげるからね! ふふ」
マジョリーさんは俺の頭を数回撫でながら、そう頼もしい言葉で俺を守ってくれると宣言してくれる訳だけども。
……。
……俺が怖い目にあった原因は魔物ではなくて……どこかのセクシーで〈魔法狂い〉な魔女さんのせいなんだけどね。
でもまぁ、マジョリーさんのその気持ちは嬉しいので、お礼は言わないとな。
「ありがとうございますマジョリーさん、これからもどうか俺を保護してくださると嬉しいです」
保護者が多いのはありがたい話だよね、お小遣いもくれるし。
俺はマジョリーさんの方を向いてしっかりとそうやってお礼を言ったのだけど、何故かマジョリーさんは少しだけ困惑をした表情で。
「……ゼン君って自分が保護される事にまったく忌避感がないわよねぇ……男の子って普通はそういうのが格好悪いとか言い出す生き物だと思っていたのだけどね……」
そう言って、マジョリーさんはまたキセルで魔法薬を吸いだした。
ふむ? 格好悪い?
「弱い俺が、強くて美人で優しい保護者に守られる事のどこが恰好悪いんですか?」
マジョリーさんの言う事が理解出来なかった俺がそう問いかける。
この世界のダンマスの中で、俺は新人でよわっちぃ事は事実だし、下手に気を大きくしてイケイケな行動をしたら……ルナや仲間のみんなを残して死んじゃう事もあるんだよ?
そんな事にならないための、自分を守る行為を格好悪いなんて思う奴とか……世の中にいるのだろうか?
「も、もうゼン君ったら、私の事を美しくて優しくて麗しくて可憐で可愛くて素敵だなんて……もう! 本当の事にしたって素直に褒め過ぎよぉ! 嘘のつけない仕方ない子なんだからぁ……はい、これあげる」
マジョリーさんは体をクネクネと悶えさせながらそんな事を言いつつ。
……俺に一つの魔石を渡してきた。
あ、お小遣いですか? あざーっす。
俺はその魔石を素直に受け取りつつも思った事がある。
なんか俺が言っていない言葉が足されてないか? と。
いやまぁ、マジョリーさんが麗しかったり可愛い部分があるのは認めますけどね。
そんな感じでマジョリーさんと会話するために、魔女さん達の戦いから目を離していた訳だけど。
その時。
ドカンッ! っと大きな音が聞こえてきたので、その音がした方向、つまり魔女さん達が飛び回っている方に視線を戻した……。
って……。
「あの……マジョリーさん? なんか魔女さん達が飛び回りながら攻撃魔法を撃ちまくっているんですけど……あれは反則だったりしないんですか?」
俺が改めて見た空域では、攻撃魔法である様々な魔法が飛び交い、時には光る玉を牽引しながら飛んでいる魔女さんにそれが直撃して、大きな爆発が起こり魔女さんが吹き飛ばされたりもしている……大丈夫なのかあれ……。
「一定時間保持したら勝ちって言ったわよね? それはつまり、保持出来ないように妨害もありって事よ、さすがに殺傷能力の高い魔法は禁止しているけどね~、でも今日は皆やる気満々ねぇ~、やっぱりゼン君の出したお酒のおかげかしら?」
マジョリーさんはまったく驚きも焦りもせずに空中で行われている空中大魔法合戦を見ている……これが当たり前の競技という事なのだろう。
各属性のボール系やボルト系の魔法が飛び交い、さらには……良く見えないけども、たぶん暴風をぶちあてるような魔法なんかも使われてるっぽいなぁ……魔女さん達が何もない所で姿勢を崩したりしているしね。
……いやまぁ……何となく分かっちゃいたけど、俺の今の強さだと、遠距離からの魔法戦に持ち込まれたら勝てないよなぁあれ。
古参ダンマスの配下はやっぱ強いなぁ……。
……。
んー、でもちょっと動きの悪いというか、周りと比べると技量が一段低い魔女もいる。
「あそこにいる魔女さん達の技量にも結構差がありそうですね」
「そうねぇ、一人前に成りたてから中堅クラスくらいまでの娘達を集めたからねぇ」
あ、そうなのか……あの集団の中で最強の魔女さんでも、マジョリーさんの配下としては中堅クラスなのね……。
「イクスさんとかも動きについていけてないですよねぇ……」
「あの子はやっと見習い魔女から脱したばかりだからねぇ……小回りの飛行が苦手なのよねイクスは」
俺とマジョリーさんの見上げる空域では、魔女さん達の激しい戦いが繰り広げられているのだけども。
魔女さんの中の数人は上手く参加出来ていないというか、プロのサッカー選手相手に高校生や中学生が挑んでいるような感じは受ける。
その中にはイクスさんや、箒に下半身の蛇部分を巻き付けたラミア魔女さんなんかもいて、あの辺の人達は技量が低いクラスに入るんだなぁという感じ。
まぁ、まったくついていけてないという訳じゃなくて、ちょっと惜しい時なんかもある。
その辺は、使える魔法が初級系縛りっぽい部分の影響かも?
そういや、結局イクスさんには勧誘を直接する事が出来なかったんだよね……。
出向に乗り気な魔女さん達が大勢出て来ちゃったからさ、あの時点で俺がイクスさんを特別扱いするのは……同僚魔女さんの中でケンカとかが起きちゃうかもだったしな。
まぁイクスさんも俺のお手伝い係には参加したいって表明してくれたのは嬉しかったけど……どうしようかなぁこれ……。
選ばれた人達とそうじゃない人達でケンカになっても嫌だし……あ、そうか。
「マジョリーさん」
「ん~どしたの~ゼン君、戦闘ばっかりで飽きちゃった? あの娘らの魔力はまだまだあるし、まだしばらく決着はつかないと思うわよ~」
いやいやそういう事ではなくてね。
「出向は順番にする感じでもいいかなーって思いまして……ほら、あれだけ熱心に戦うくらいにお手伝い係になりたいというなら、順番でもいいのかなって」
マジョリーさんは俺のそのセリフを聞くと、キセルから口を離してピンクの煙を吐き出しつつ。
「ふぅ~……そうねぇ、じゃぁあれの成績が良い順にしましょうか? あーでも、表に出す必要もあるのなら……一人くらいは固定扱いにしておいてもいいかもね?」
ああ、お貴族様相手に魔法付与の腕前を披露して貰う事もあるし、そうして貰うなら同じ人を見せた方が……ふむ……。
「そうですね、じゃぁ一人を固定扱いで、他を順番にしようかと思います」
……雇い主権限でイクスさんを固定にしちゃうのもありかなぁ……駄目かなぁ……?
「ゼン君、貴方イクスを贔屓しようと思ってな~い~?」
ギクッ!
マジョリーさんが、今まさにその事を考えていた俺の思考を読むがごとくの指摘をしてきた。
「え、ええ、まぁ前からの知り合いでもありますし、イクスさんに固定の役を頼もうかなとは思っていたので……駄目ですかね?」
「ふ~ん……イクスにも意地があるからねぇ~、贔屓される事が嬉しくもあり、悔しくもありそうだけどねぇ~」
俺やマジョリーさんがこうして話している間にも、ドカンッ! ドカンッ! と、空中では魔法の爆発が起こりまくっている。
イクスさんの意地かぁ……確かに魔女として一人前として扱われているイクスさんを、勝負の結果と関係なしに贔屓するのは、プライドを傷つけてしまうかもしれないかも?
……ちなみに俺なら喜んで話を受けるんだが、そうじゃない人がいる事も理解はしている。
どうしたもんかなぁ……。
むう……。
俺がムームーと唸りながら考え込むと。
俺の横に座っているマジョリーさんが、キセルを持っていない方の手で俺の頭を数回撫でてきて。
「もう……仕方のない子ねぇ……ちょっとお姉さんが手助けをしてあげるわ……」
そう言ってマジョリーさんは、俺の頭を撫でていた手を自分のコメカミにあてて、何かを……。
……なんらかの魔法を行使している?
マジョリーさんがその体勢を崩し、元の体勢に戻っても魔法で何かが起こる様子はなく……なんだったんだろ?
「マジョリーさん? 一体何を――」
「来たわよ」
俺の質問を一言で止めたマジョリーさん。
俺は発言を止め、マジョリーさんの視線を追うように……あ。
その視線の先では、遠くからイクスさんがこちらに向けて飛んで来ている所だった。
イクスさんの背後では今も大魔法合戦状態なのだが……どうやら先程のマジョリーさんは念話か何かを使ったっぽいな。
……。
しばらくして、ソファーに座る俺達の前にイクスさんが着陸をした。
ちなみに、今は〈人化〉した状態のイクスさんだ。
幻術のかかる黒のとんがり帽子もかぶっているので、中学生くらいの人間の魔女っ子に見える。
「急に呼び出して何事ですかマスター、えっと、出来れば早く競技に戻りたいのですけど……」
イクスさんは少し焦った感じでマジョリーさんに問いかけている。
「イクス、このまま戻っても勝てないのは理解しているのよね?」
「それは……はい……」
イクスさんはマジョリーさんの言葉を聞いてから、少し落ち込みつつも、俺の事をチラッと見てからまたマジョリーさんへと視線を戻す。
「ならば、これを使いなさいイクス」
マジョリーさんがそう言って〈インベントリ〉から出した物は……。
青銅製っぽい見た目で長さが4尺くらいの杖で、その杖の一番先に大人の拳より大きい細長い蒼い水晶が着いており、さらに本体部分には細かな意匠が施されている。
実は金属に見えるがめっちゃ軽いその杖は……。
って! 俺がマジョリーさんに貸し出している日本産の杖じゃんか!
「いいのですかマスター!」
「いいのよイクス、何故ならね、ゼン君がね……絶対に! ど~~~しても! イクスに自分の所に来て欲しいって言うからねぇ~」
マジョリーさんはそう言うと、ニヤニヤとした表情でイクスさんにその杖を渡していた。
……いやまぁ、マジョリーさんに対して、イクスさんに頼みたいとは言いましたけども……そこまで強い表現は使ってなかったと思うのですが……それは?
「ゼン様……そこまで私の事を……私! 頑張ります! 見ていてくださいね! ゼン様!」
イクスさんはマジョリーさんから杖を受け取ると、箒と黒のとんがり帽子を〈インベントリ〉に仕舞い、キッっと顔を上げ、その奇麗な金の単眼で俺を真っすぐと見ながら頑張るという宣言をし、……そして。
イクスさんが〈人化〉を解いたのか、ムクムクと巨大化していく。
サイクロプスであるイクスさんは3メートルを超える大きさなので、イクスさんのダボダボだった黒いローブはピチピチぱっつんのボディコン状態になる。
そうして大きくなったイクスさんは、彼女が持っていると、杖というよりも教師が持つ指示棒みたいに見える異世界産の魔法の杖を掲げ。
「『変身』!」
そう高らかにイクスさんは変身の掛け声を……って……あ……。
イクスさんが変身するための発動キーを宣言すると彼女が着ていた服が全て何処かに消え、さらに謎の光で肌色は見えないが真っ裸の体のラインが見える状態になり。
そして、イクスさんは恐らく杖が持つ謎の力により自動で変身中のポーズを取りながら、魔法少女の装束が順番に装着されていく事になる。
……そういや『時短変身』のキーワードをマジョリーさんに伝えるの忘れてたっけ……。
たっぷりと15秒以上かけてその魔法少女への変身を披露したイクスさんは、背中に魔法の羽を出現させると。
「では行ってきます! ゼン様の椅子になる権利は誰にも渡しませんので、見ていてください!」
そう大きな声できっぱりと宣言すると空中へと飛び立ち、大魔法合戦の行われている地点へと勢いよく飛んでいくのであった。
……椅子になる権利なんて誰も争っていないのだが……まぁ……良しとしよう。
俺は視線を飛んでいったイクスさんに合わせたまま、横にいるマジョリーさんへと話しかける。
「あの杖の貸し出しは贔屓にならないんですか?」
とね。
それに対してマジョリーさんも真っすぐイクスさんを眺めながら。
「大丈夫よ、あれで変身出来るのは、あの中ではイクスだけだから」
そう言うのであった。
って……そういやあの杖を使うには年齢制限があったんだっけ。
「イクスさんより若そうな魔女さんもいたと思うんですが……」
宴に参加していた身長が1メートルちょいのロリッ子な見た目の魔女さんの姿を思い浮かべながら質問していく。
「たぶんそれは、ドワーフ種族の娘の事よねぇ? あれでも結構な年なのよ?」
「まじですか……」
あのロリッ子の見た目でかぁ……鉱山都市にいる鍛冶屋のカンジさんのお嫁さんは、男ドワーフと同じくガッチリした体格だったのに、あのロリッ子魔女さんは人間の幼女っぽかったんだよなぁ……だから俺はドワーフとは思わなかったんだし……。
同じドワーフ族でも色々な見た目の人がいるのだろうか?
ファンタジー世界はよく分かんねぇな……。
それと不思議に思った事が他にもあって。
「イクスさんが幻影の帽子を外したり〈人化〉を解いたのは何故でしょうか?」
「そうねぇ、幻影帽子も〈人化〉も、魔力を継続で消費するからだわね、それに〈人化〉を解いて箒に乗るとあの子は小回りがさらに利かなくなるんだけど……まぁ、あの変身した姿ならそれは関係なくなるからね~」
成程。
確かに飛行練習の時も〈人化〉を解いたイクスさんの箒の前に一緒に乗ると、飛び方が〈人化〉をしていた時に比べて少しだけ大回りになる気が……って、やっぱ怖くてよく覚えてないわ。
でもまぁマジョリーさんがそう言うのなら、そういう事なのだろう。
取り敢えず今は、戦場へと箒も使わずに飛んでいく、身長3メートル超のがっちりもっちりした体格の魔法少女ミラクルイクスの応援をする事にしよう。
と、そんな中、イクスさんの飛んでいる後ろ姿を見ていたマジョリーさんが口を開き。
「ねぇゼン君、イクスのあの下着って、ゼン君が前にプレゼントした物よね?」
魔法少女の衣装はスカートだからね、しかも何故か謎の光は変身が終わると発動しないから、空を飛んでいると丸見えなんだよね。
前に魔法少女になった時のイクスさんはドロワーズだったから……あの後で可愛い系の下着をルナに選んで貰ってプレゼントしたんだよ。
それと〈人化〉用装備にするための魔法付与用の天然鉱石触媒も一緒にね。
イクスさんは〈人化〉を解くと体がかなり大きくなるからさ……衣服に〈伸縮〉系付与がされてないと駄目っぽい。
黒のローブにそれらが付与されていないのは、ローブには防御系とかを優先して付与しているかららしいよ。
それと、魔法付与は失敗する事もあるらしいから、あの時はパンツと触媒で10セット分をプレゼントしたんだけど、どうやら付与に成功したっぽいね。
「そうですね、ドロワーズよりあれの方がいいかと思いまして」
「なるほど……ゼン君の表の仕事も下着職人って事になってたものねぇ……所でね、異世界の下着にすごい興味があるのだけど、商都で商ったような下着を、私も貰えたりしないのかしら?」
マジョリーさんは、その発言の途中で俺の方を向き、すごく真剣な表情でそう訴えて来る訳で……。
あ、うん。
マジョリーさんには商都の伯爵家相手にやった出張下着販売の詳しい内容とかには触れてなかったんだけど……販売した物の細かな情報を掴んでそうだなこれ……。
イクスさんへプレゼントしたのは可愛いといっても綿パンツだったけど、商都で披露したのはデザインとかも豊富でセクシーな奴とかがたくさんあったからなぁ……興味を持つのも仕方がないか……。
まったく、何処からそういう情報を仕入れるのやら……。
いや、それとも、高級品の下着にはマジョリーさんにとって異世界の魔法が付与されているから、そっち方面への興味の可能性もワンチャン?
「あー、じゃまぁマジョリーさんの所でもそのうち出張下着販売をさせて頂きたく思います……また大量に下着を異世界の日本から仕入れる必要がありますけども……」
「ありがとうゼン君! 噂は聞いているからね、すっごく楽しみだわぁ……仕入れ用のDPは後でお小遣い魔石をたくさん渡すから大丈夫よ」
そう言ってパチリッとウインクしてくるマジョリーさんだった。
ほほう、お代というかお小遣いがたくさん貰えるのなら、張り切ってやるべきだな。
まいどあざーっす。
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