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151 休みの過ごし方2

 俺がダンジョンを構えている拠点島の浜辺は北の大陸に向いていて、尚且つ入り江状態なので波が穏やかだ。


 さらに島の南側の外海方面には低めの山というか木々が繁殖している丘があるので、外海からの強い風も遮られていて島の浜辺や中央部は過ごしやすい。


 そんな浜辺に今俺達は集結していて、今日は〈人化〉が出来ないマーメイド達も参加する宴になる。

 なので波打ち際にテーブルを設置したりと準備が結構大変だった。


 そんな風に準備していると日も沈み、浜辺の周囲には煌々と魔道具の明かりがともされている。

 この島に来た最初の頃は対岸にある大陸の人達に光が見えちゃうからとか、色々気をつけてたんだけど……。


 ドリル嬢を初めとした港町の古参の住人なんかはそういうのを気にしない事が分かったので、今はもう無理に隠そうとかは考えてはいない。


 まぁ、港町を含めた周辺地域の代官であるドリル嬢が禁止しているにもかかわらず、船で守竜様の縄張りに侵入してこようとする馬鹿共は……スイレンさんやマーメイド達に排除されちゃう事になるから安心安全だしな。


 守竜様への貢ぎ物を火山島の浜辺に置いていく船なんかはスルーするけどね。


 ホムラも貢ぎ物に酒があったりするのが分かっているので、火山島の浜辺の一部は魔物が近付かないようにしているとかなんとか……。

 俺がその話を聞いて最初に思い浮かんだ事は、犬が縄張りを主張するために……ってやめておこう、こんな思考がホムラに伝わると張り倒されそうだ。


 さて、話を戻して宴の最中で俺は何をしているかというと。


「はいはい、順番だよ~皆仲良く順番に並んでね~」


「ゼン様! 私は青い奴でお願いします!」

「私はオレンジ色で~!」

「皆自分の髪や鱗の色を選ぶのねぇ……ゼン様、私のウロコに似た色のお酒はありますか?」


 今日の日中に行ったマーメイド達との遊びで負けた俺は、彼女らに好きな酒をふるまうべく、バーテンダーとして大忙しだった。


 真っ白いワイシャツに黒いベスト、そして黒の蝶ネクタイでビシッっと決めた服装である。

 ……ただし足元は浅めの海に入ってしまう場所なので、黒のスラックスは膝上まで折りたたんで半ズボンみたいになっている……。


 彼女達は自分の髪や目やウロコの色に似たカクテルを欲しがる傾向にあるみたいだ。

 まぁ、まだカクテルの種類を良く知らないからってのはあるかもか。


「青いのとオレンジのと三人目の君は……『マタドール』でいいか、今すぐ作るから待っててくれな~」


 俺の〈バーテンダーレベル5〉を食らえ!


 物によってはしないで済む事もあるが、大抵はシャカシャカとシェイクしないといけないのだが……注文待ちに百人以上並んでいるのよなぁ……。


 ……配下の休日を楽しませるのもダンジョンマスターとしての務めか。


 ……島中に配置した植物系魔物な配下達は、異世界日本産の肥料をちょろっと撒けば満足してくれるのだけどね。

 知性の高い子達は色々と相手も大変だよね。


 ドリアードのリアがウッドゴーレム達を良く使っているのも理解できる話だ。

 ゴーレム系はあんまり不満とか溜めないっぽいからな。


 まぁそうして次から次へと注文にくるマーメイド達。


「ゼン様、次は甘い奴が飲みたいです!」

「ゼン様ゼン様! 私はシュワシュワっとして少し辛目の奴でお願いします!」

「じゃぁ私は、そろそろゼン様と飲みたいなぁ……」

「それ良いね~! ゼン様~ご褒美に~、一緒に~飲みませんか~」


 等々と、ひっきりなしにやってくるマーメイド達。


 えっと次は甘い奴でその次が辛目のだな、そして俺と? ちょっと注文の列が収まるまでは無理かなぁ、乾杯で許してくれ、はい、かんぱ~い。


 一緒に飲みたいと言った子には適当に自分用に作ったカクテルで乾杯してお茶を濁す、だってまだまだマーメイド達が並んでいるんだもの……。


 一度カクテルを受け取った子達も、宴で飯を食いながらカクテルを飲み終わると、お酒のお代わりを求めて俺の所に戻ってくるからなぁ……そこらのテーブルに置いてある酒を飲んでくれてもいいのよ?


 まさかほぼ全員が俺の作成したカクテルを求めて来るとは……ぬぬぬぬ……分身の術とか腕を増やすスキルが欲しくなる。


 浜辺の方のテーブルで楽し気に飲んで食ってをしているホムラがちょっと恨めしい。


 いやまぁご褒美に酒を選ばせるというのを選択したのは俺なんだけどさ。

 テーブルに色々な酒缶を並べるだけにしておけばよかったかなぁ?


 ……はいはい、次はピンク色のカクテルですね~。


 ……。


 ……。


 ――


 今だ終らぬ注文を捌いていると、マーメイド達の並ぶ海側とは反対方向、つまり俺の背中側から人が近付いてくる。

 〈気配察知〉で気付いてはいたのだが、チャプチャプと海の中に少し入ってきた彼女が俺の横に来ると。


「ゼン様……その……私にも作って頂けますか? それと……その……乾杯も……」


 俺の横に来たのは、青系のワンピースドレス姿なスイレンさんだった。


 拠点島にあるお屋敷の横や〈ルーム〉内でする宴なら、真っ先に俺の横の席を確保するスイレンさんなのだが、今日は俺がマーメイド達を相手にずっと立ちっぱなしで作業しているので、ちょっと遠慮気味な様子だ。


 というか、マーメイド達を意識して遠慮するとか、スイレンさんもずいぶんと変わってきたね。


 今はマーメイド達へのご褒美タイム中なのだけど、スイレンさんの表情がすっっっごい寂しそうなのよねぇ……。

 俺はそんなスイレンさんの表情を確認した事で可哀想に思ってしまい、彼女の相手をしても良いかとマーメイド達に聞こうと思い正面に向き直ると。


「「「「「「「「「「ゼン様! スイレン様を優先してあげてください!!」」」」」」」」」」


 俺の作業台の前に並んでいたマーメイド達が一斉に姿勢を正してそんな事を言ってきた。


 う……うん……前みたいな恐怖にかられて言っている、という感じではないのだが……。


 たぶん、スイレンさんに対する認識が自分達を守護してくれる崇拝すべき存在? みたいな感じに変わってきているようで……。

 スイレンさんと一緒にマーメイド達が外海にレベリングに行っていた結果かねぇ?


 ……えーと……ま、いいか。


 竜と人魚じゃ戦闘力が違いすぎるからね、多少親しくなっても友達にはなれんのだろう。

 今は、前よりも近しい関係になっているのなら良しとしておこう。


 ……でもなんつーか。


 主人である俺には気安いのだよなぁマーメイド達は……。

 スイレンさん程には敬われてない?


 ……。


 良し、気にしない、うちはフレンドリーな主従関係って事だな。

 まぁ取り敢えず、マーメイド達から許可も出たので。


「スイレンさんは何が飲みたいですか? 最優先で作りますよ」

「ゼン様! ありがとうございます、えっと、えっとですね……前に浜辺でお話の読み聞かせをして頂いた時に最後に飲んだ奴がいいです!」


「ああ、あれですね、了解しました、俺の分も一緒に作るので、乾杯もしましょうねスイレンさん」

「はい! ゼン様! ふふっ」


 さっきまでの悲し気な表情から一転、可愛らしい笑顔を見せてくれるスイレンさんであった。


 ちなみにマーメイド達は音をあまり立てずに俺達の前からすでに移動していて。

 少し離れた宴用テーブルに並べてある酒缶なんかを飲み始めていた。

 スイレンさんに自分達のご褒美時間を譲るという事なのだろう。

 うーむ、後で何か補填してあげんといかんなぁ……。


 ……。


 ……。


 ――


 カクテルを作る作業台を砂浜側へと移動させ、ホムラ達の座るテーブルへと着いた俺とスイレンさん。

 俺達はいつものように乾杯をしながら宴を楽しんでいく。


 浜辺で宴をやるならと、BBQ風な炭焼き調理台を使ってルナが調理してくれた浜焼きは、マジで美味しかった。


 醤油や塩のみのシンプルな味付けでありながらも、絶妙な焼き具合はさすが〈調理レベル6〉と言うべき物で。

 俺もホムラやダイゴと争うように食べていった。


 スイレンさんも勿論沢山食べているが、ホムラほど早食いではなく、彼女は俺との乾杯を楽しむ分ちょこっと食べるのが遅め。

 まぁ食べる量そのものはさすが竜だね、といった感じなのだけども。


 ……。


 そんなこんなで宴を皆で楽しんでいると、マーメイド達の出し物が始まった。

 歌や魔法を使った水芸にと様々な出し物は見ているだけで楽しく。


 そんなマーメイド達に『ゼン様も一緒にどうですか』と誘われたので、歌の上手いマーメイドと日本の歌のデュエットなんかを披露する。

 最近はマーメイド達も俺が歌う日本の歌を覚えてきているのでそういった事も可能なのだ。


 彼女らには俺やルナの持つ謎な翻訳スキルは備わっていないので、外国人が理解していない日本語で歌う感じになってしまうんだけど。

 言葉というより音として覚えちゃう娘もいるんだよね。


 ちなみにダイゴやセリィ達と日本の映画なんかを見る場合は、画面にこの世界の字幕が出てくる。

 それに付け加えて俺やルナが細かい翻訳や解釈の説明係になったりしている。


 そんな風に出し物を楽しんでいる中で、スイレンさんに時間を譲ってくれた分、何か歌って欲しい曲はあるかとマーメイド達に聞いたら。

 前に何度か披露した事のある、この世界の言葉で歌った恋愛の歌を望まれた。


 ならまぁ〈人化〉を持っていないマーメイド達のご褒美の補填のために歌うのだからと、波打ち際から海に向けて簡易ステージを作成して本気で歌う事にする。


 それら準備を整えてギターを準備し、さぁ歌おうとなったら……。


 ローラとアイリがメイド服をバッっと一瞬で脱ぎ捨てた!!


 ……何をしてんねんと思ったが、服の中が水着だった彼女達は、マーメイド達に混じって夜の海の中に入っていった……。

 ……どうしてそっちに? と聞いたら、『推しの本気の歌の時は、真正面から聞かないと勿体ない!』とかだそうで……。


 あ、はい。


 どうやらそういう事らしい。


 ……。


 ……。


 様々なスキルを活用し、本気の恋愛ソングを歌い上げた俺。


 今はマーメイド達やローラ達からの投げ銭が、ステージ上に設置したザルにバンバン入ってくる。


 所で、真珠やサンゴも『銭』と言って良いのだろうか?

 ……まぁ今は、細かい事は気にせずに感謝しておくか。


 あざーっす。

お読みいただき、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いや、きっとマーメイド達から敬われてるはずですよ 多分その気になれば雄ライオンみたいに、のんびりしてるだけで回りの子達が全部やってくれるようになるはずですよ。
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