126 魔法少女ミラクルルナ
「『変身』」
ルナが魔法の杖を構えてキーワードを唱えると……。
謎の光が全身から放たれ、ルナが着ているメイド服が消えて、裸のシルエットだけが見える状況になり。
そしてルナの足元から順番に、魔法少女っぽい装備が現れて装着されていく。
その変身時間は20秒弱くらいか? 結構長いのに隙があるとは感じないという……不思議な現象だった。
「とまぁこんな感じですリアさん」
俺はいつもの触れ合い魔物園の芝生の上で正座をしながら、俺達の保護者を自認しているドリアードでダンジョンマスターでもあるリアに話しかけた。
なんで正座しているかというと、前に漁村を救った話の中でチートっぽい魔法の杖の事を意図的に話さなかった事が、リアにバレたからだ。
それもこれも。
いつものお茶会の時にルナがポソリと。
『マスター、あの杖の少女限定って何処までを指すと思う?』
という質問をぶっこんできたからだ。
今それを聞かなくてもいいだろう! と、俺の慌てた表情を見たリアが、その自慢のアホツル毛で俺を絡め取り。
説明をしなさいと、真剣で真面目なちょっと怖い表情で聞いてきたので、全てゲロった次第です。
……。
とまぁそんな次第で正座をしながら説明する事に。
というかルナは少女にカテゴリーされるみたいだな。
ホムンクルスでまだ一歳にもなっていないから、赤ん坊とも言えるのだが……。
「『変身解除』」
ルナがそう唱えると、ヒラヒラした服装でリボンもいっぱい付いている、夢の溢れる魔法少女コスチュームから、いつものメイド服へと一瞬で戻った。
最初に変身する時の無駄に裸のシルエットになる部分とかいるのかねこれ……そういう物だと言われたらそうなのかもだが。
リアから反応ないな……。
正座している俺の横に立っているはずのリアをチラッと見ると、体が震えている。
「どうしたリア?」
俺はリアにそう声をかけてみた。
するとリアはルナに向けていた視線を俺に向けてきて。
「どうしたもこうしたもないでしょうゼン!」
「声がでかいよ、その杖の効果を見せろというからルナが実践したんだろうに、何か問題が?」
やっぱり初級魔法全部使えたりする杖はやべーのかなぁ……ってあれ?
まだそういう部分は見せてないような?
「あんなのハレンチでしょうが! なんで変化する時にルナちゃんが裸になっているのよ!」
裸? 何言ってんだか。
「あ? ちゃんと謎の光で守られてただろ? 魔法少女の変身なんてあんなもんじゃね?」
日曜朝の番組を見ていれば珍しい事ではないよなぁ?
「あれは駄目よ! 何でゼンが普通でいられるのかが理解出来ないわ……例え素肌じゃなくても裸の輪郭が丸見えだったじゃないの! あの状態を他の誰かに見られたらどうするのよ!」
んー?
……。
えーと、ルナが変身している所を他の誰か……まぁそこらの男に見られると仮定すると……あのシルエットを見られる訳で……あれ?
……。
「見せられなくね? そこらの男とかがあのルナの姿を見たら……俺はそいつを切り捨てるかもしれん」
「でしょう? なのであの杖は駄目ね! 壊しなさい」
「かなり高かったんだが……仕方ないか、ルナ、その杖を――」
「『時短変身』」
ルナに杖を渡すように言おうとしたら、再度変身のキーワードを唱えたルナ、すると。
シュンッ、一瞬でヒラヒラした服装でリボンいっぱいな魔法少女が姿を現した。
……。
「ルナ……もしかして一瞬で変身できるのか?」
「2回目からは時短が必須!」
謎の魔法少女ポーズを取りながらそう言ってくるルナ。
ちょっと語気が荒いというか強いというか……実はコスプレとか好きなタイプに育っちゃったかも?
まぁあれだ……時短には納得してしまった俺がいる。
「え? えーと……え? ルナちゃん?」
リアがちょっとリアクションに困っているなぁ……。
「変身の問題は解決したみたいだけど、どうするよリア」
「あ、ああ……そうねぇゼン、えーと……問題ないの……かしら?」
ありゃ、それならもう正座やめていい?
「ちなみにルナの格好はどう思う?」
ルナの服装なんだが、所謂魔法少女っぽい白やピンクを多く使った配色で、ブーツに羽が付いていたり、ミニスカートにはヒラヒラやらリボンやらがいっぱい付いていたり、上のジャケットもスカート同様でヒラヒラとした服装とリボン大目でちょっと目が疲れる感じだ。
「は? ルナちゃんは最高に可愛いに決まっているでしょうゼン! 白とピンクを主体にした配色はルナちゃんの純真可憐さを増し増しにしているし、各所についたリボンや羽がキュートだし、サラサラの銀髪を頭の横で結っているのもすっごく可愛いわ!」
ああ、何故か変身するとツインテールになっているよな、似合ってはいるけどね。
えっとリアもすっごい褒めているし、もうお説教は終わったのだろうか、俺は正座を崩そうと……。
「何故姿勢を崩そうとしているのよゼン」
「え? いやほらルナも可愛いし、杖情報隠蔽の件のお話はもう終わったかなぁって……」
「正座し直しなさい」
「えっと……」
「……ゼン?」
「あ、はい」
芝生の上での正座は継続するようだ。
「それで変身すると魔法が使えちゃうのよね? ルナちゃん見せて貰ってもいいかしら?」
「おっけー、魔法少女ミラクルルナ、飛びます」
その言葉と共にバサッっとルナの背中から光の翼が飛び出してくる……。
実態を伴わない魔法の翼のように見える。
そしてルナは空を飛んだ。
いやまぁこの部屋の天井は青空を映し出した物らしいから、低空飛行で飛んでるんだけど、結構早いなぁ……。
そしてリアが予め出していた的用のウッドゴーレムに、初級魔法を飛ばしまくっている。
ファイアアローとかウインドアローとか、そういう奴を次々とウッドゴーレムにぶつけているね。
うむ……ファンファンはちゃんとパンチラを防いでいるし、良い仕事をしているなぁ……。
あの魔法の杖には、謎の光でパンチラとかのエッチなシーンを防いでくれる機能まではなかったみたいだ。
……しばらくしてからルナが帰ってきて着地をし、変身を解いた。
「こんな感じ」
そして変身を解いたルナは、その杖をリアに渡している。
「初級魔法とはいえ飛行して敵に撃ちまくれるとか……やばいわよね……うえ……〈身体強化〉に〈戦闘術〉まで付いてるじゃないの……まったくもうゼンは……」
杖を毎度の鑑定の魔眼で確認をしながら、リアが溜息をついている。
「まぁでもなリア、それは俺が召喚魔法を使う時に魔法の杖に見せかけて使っただけなんで、詳しい情報は外に漏れてないぞ?」
「そうねぇ……それにまぁ、使えても初級魔法だから……辛うじて国宝にはならないくらいに収まっているし……」
国宝ってそんな簡単になれる物なのだろうか?
「いるし?」
「この限定ってのがあるしね、えーと『変身』だったかしら……」
リアがキーワードを唱えるも、何も起こらなかった……。
見た目は若々しいけどな……そりゃぁ……ねぇ?
「少女限定だからな」
スパンッ! 俺が漏らした言葉を聞いた瞬間、リアのアホツル毛が飛んで来て引っぱたかれた……イタイ……。
「分かっているわよ! ちょっと確かめただけじゃないの! ……次はゼンもやりなさい、ラハも今呼んでいるから」
変身出来なかった仲間を増やそうとするリアであった。
それでも、もし体さんとかが変身しちゃったら……キャバクラのコスプレデーみたいな事になっちゃう気がするなぁ。
まぁ本物のお店には行った事ないけど。
少女……少女ねぇ……?
……。
……。
――
その後にリアから正座を解く事を許された俺は、ルナやリアと一緒に皆を順番に呼んで色々と実験しました。
その結果セリィは少女でした。
セリィは飛ぶのが怖いのか、地面から30センチくらい浮かぶだけでキャーキャー言ってた。
ダイゴは俺と同じで杖は無反応、首を傾げながらすぐお屋敷に戻って行った。
火山島まで行って試したが、ホムラやスイレンさんも駄目だった。
そして検証が終わったら酒と乾杯を要求された。
ローラも無反応で……アイリは変身出来ちゃった。
16歳は駄目で15歳はいいのか? 高校生と中学生の違いだろうか? ……謎い。
まぁ人間の年齢はそんな感じで判断されているっぽいので、終わりにしても良かったのだが。
一応他でも確認をしてみる事にしたら。
マーメイドであり、見た目がルナと同じくらいに見えるマリーは……駄目だった。
その結果が出たマリーは『やはり私は大人なんです!』って俺に鼻息荒く念押しをしてきた。
……マリーはなんでそこまで念を押すんだ?
そしてマジョリーさんに見せるのは危険なので辞めておこうと思ったんだが……後でバレるとまずいというリアの忠告を聞いて、迷いの森ダンジョンまでお邪魔してきたさ。
〈人化〉した日本人形みたいな少女姿の黒猫のクロさんは駄目だった。
うーん……やっぱ年齢なのかなぁ?
クロさんは実験のお手伝いにペット用食品を要求してきたので、特大サイズの奴を買ってあげました。
そしてイクスさんなんだが……元の姿で変身出来ちゃった。
その見た目は3メートルの単眼魔法少女で。
話を聞くにイクスさんって15歳なんだってさ、もうちょい上かと思ってたよ。
可愛いフリフリリボンの格好を恥ずかしがって、人化だか変化だかのスキルで中学生くらいの姿に変化したら、その変化に合わせて魔法少女服が縮まるんだね……謎い服だ。
箒で飛び慣れているからなのか、魔法少女姿でアクロバット飛行を披露してくれたのはいいんだけど……いつもの裾が長めなローブじゃないせいか……魔法少女のミニスカの下のドロワーズが丸見えだった。
今度イクスさんに女性用下着をプレゼントしよう、そうしよう。
そしてマジョリーさんだが勿論変身は出来なかったんだけど……。
研究材料として魔法の杖を貸して欲しいとお願いされたので、杖はしばらく貸し出す事に。
俺が貸しても良いと言った時のマジョリーさんの顔は、とても人に見せられる物ではなかった……〈魔法狂い〉かぁ……さもありなん。
そしてお土産に大量の魔石お小遣いをゲットして帰る俺だった……。
こんなにお小遣いが貰えるなら、リアに早い事ばらしておけばよかったね。
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