表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/158

122 さっくりオークション

 ざわざわと人の声が響き渡る会場。


 そこは樹海ダンジョン側の冒険者街……に入りきらない人の多さだったので、野外ステージが作られた。

 街の外の平原にステージを作り、オークションに参加する人間用のスペースを柵で区切ってあるだけの簡素な物で。


 今そこには溢れんばかりの人々がひしめき合っている。


 俺はオークションに参加しないので、少し離れた位置から野次馬をしている街の住人達と一緒に眺めている。


 オークション用スペースの外枠と野次馬の間にはロープを張る事で多少の距離がおかれている。

 そしてそこには、臨時の警備に雇われた冒険者が等間隔で立って見張っていた。


 さぁ落札値はいくらくらいになるのかねぇ……。


 お、商業ギルドの人間がステージに出て来て挨拶すると、見本のウロコが出されてオークションが開始されるようだ。


 ちなみに出品物の警護にはデラン商会が協力しているとかで……もうすでに怪しい団体とかがいくつか物理的に潰されている。


 隙を見て盗みに入ろうとでもしていたんだろうけど、この地の領主やその配下の兵士達が武力行使をしたデラン商会に対して何も言わないんだから話は通っているのだろう。


 こうしてデラン商会の噂が盛られていくのだろうなぁ……。

 っと出品物の説明が始まった。


 事前の告知通り剣と鎧のセットが十分作れる分量のウロコを三セット分出すみたいだ……。

 俺が出したウロコ以上の枚数があるのは……デラン商会が何とかしたっぽいというか……リアがホムラに要求したのかもしれない。


 火竜のウロコで作った揃いの武具とか浪漫があるお宝だものな。

 何処かの国の王に献上すれば上位貴族……は無理にしても、中位貴族くらいにはなれるかもしれない代物だ。


 お、始まった。


 ……うわぁ、入札者達のすごい熱気と相まって、ものすごい勢いで値段が上がっていく。


 バラで売るとウロコ一枚で大銀貨数枚から金貨一枚前後だったりするんだが……うへぇ、単価が10倍以上になっているよ……まじかぁ……。


 ……。


 二回目はもっと値上がったな、下がるかと思ってたんだけど……。


 ……。


 三回目はさらに値上がりそう。



 上位貴族の遣いも必死で入札していたけど、商人の入札額の釣り上げ方がえぐい。

 剣や鎧に仕上げたら落札値のさらに数倍の価値になりそうだしな……あ、終わっちゃった。


 落札した商人にまとわりつく貴族の遣いの奴等……後で払うから譲ってくれって……手ぶらで帰ったら怒られるのだろうかね?

 ……無茶な話だよなぁそれは、それなら予めもっとお金を持ってこいっての。


 さて、帰ってご飯食べようっと、ぞろぞろと興奮しながら値段の感想を言い合う野次馬に紛れ、お屋敷に帰る俺だった。


 ……。


 ……。


 ――


 こうしてダンジョン街を歩いていると。


 二日前にオークションも終わっていて人が減るかと思ったんだが……意外に残っている気がする。

 手ぶらで帰るくらいなら、手堅く儲かるダンジョン産の果物でも仕入れてから帰ろうって事かねぇ?


 俺はギルドに向かい、お団子髪で可憐なハーフエルフのカレンさんに会いにきた。

 火竜のウロコオークションが終われば、次は俺の綿パンツオークションの落札日がやってくる。

 ちょこっとずつ日にちはずらしているので、まずは最初の8千枚の売り上げ確認だ。


 ……。


 いつものように商談用の個室に案内された俺に、対面のソファーに座るカレンさんが、テーブルの上に書類を出しながら。


「だいたい私共の予想通りでしたゼンさん、800枚のセットで銀貨120枚前後、それが10セットで金貨12枚を少し超えるくらいでしたね」


 となると綿パンツ一枚で銅貨15枚くらいか……。


「もう少し安くなると思っていたんですけど……ほら、他にもまだ期日の来ていない大量の綿パンツ出品が残っていますし、カレンさんの予想を信じてなかった訳ではないんですけど、ちょっと俺の予想とは違いましたね」


「確かに一つの商業ギルドが扱うと考えると数が多く感じられるかもしれませんが、国単位で考えるとまったく足りてませんし、売り出した物が女性なら誰もが使える……つまり人口の半分が買う可能性がある商品ですからね……正直な話、出品数を絞れば倍くらいの落札値にはなっていたかもしれません」


 むー、〈清浄〉みたいな魔法付与はついてないけれど、素材が十分良い物だしな……。


 買い付けに来ているおっさん商人達が、サンプルの女性用綿パンツをビョンビョン伸ばしたり触ったりしながら確認している姿は……正直あまり見られた物ではなかったけど。


 まぁそれで良い品物だと気付いてくれたって事か。


 しかし金貨12枚かぁ……俺のダンジョンでのDP収入を全てつぎ込んだ商品がそれだけの値段になるってすごいよな、DP収入の一日分だぜ?


 つまりこれからもパンツを売り続ければ年間で金貨三千枚……ってさすがにスキル習得用にまた溜め始めないとな。

 ここ最近のリア達から貰うお小遣いも全部女性用綿パンツにつぎ込んでたからな。


 俺はなんでこんなにパンツに力を入れていたのだろうか?

 ……俺が納入したパンツの数を数える商業ギルドのお姉さん達が、涙目になるのがちょっと楽しくなっていた事は間違いない。


「まぁ普通に売れてくれて良かったですよ、綿パンツの出品は一旦止めますね」


「分かりました、ギルドの新人受付嬢達も喜ぶでしょう……、一度に30万枚が持ち込まれた時はびっくりし、50万枚が持ち込まれた時は驚愕をし、100万枚を超えた時は憔悴していましたからね……あーいうお仕事は新人の子がやるものですし」


 うんごめん、ちょびっとやりすぎたかなとは思っている。

 さすがにこのままだと、彼女達に悪いかなぁと思うので。


「これを彼女達にお渡しください」


 そう言って、ルナ謹製バタークッキーの詰め合わせの入った籠をカレンさんに渡しておく。


「焼き菓子ですか? 新人の娘達も喜ぶと思います……ちなみにゼンさんに商談の持ち込み話が大量に来ているのですが、本人の意向によりどうしてもな事情がある相手や断り辛い筋以外は全て私とセシリーがお断りしています……」


 あ、はい、そういやセシリーさんも俺の準専属みたいな扱いらしいな。


「これはカレンさんとセシリーさんでどうぞ……」


 バタークッキーの詰め合わせをさらに追加しておいた。


「ありがとうございます、これからも頑張って仕事をしますね、そういえば男性用の下着なのですが……」


 あ、それはすっかり忘れてた。


「ああはい、近いうちにまた持ってきますね」


「よろしくお願いします……それとたぶん断り辛い筋から、女性用下着でデザイン製の高い物を要求される事は覚悟しておいてください」


「……女性用の綿パンツじゃ駄目っぽいですか?」


 貴族の女性達と個々で取引したくないから、大量に数を出して誤魔化したって理由もあったんだが……。


「彼女らは男性用の質の高さを知っていますから……」


 カレンさんが断り辛いって事は上位貴族かぁ……。


「まぁそれはその時になってから考えるとしますよ、それであれだ、目玉オークションも終わったしカレンさん達との約束はどうしますか?」


 明日の事は明後日の俺がどうにかするだろう、それよりも食事会の約束だ。


「はい、高級宿屋も徐々に空きが出来ているとの事で……二人で合わせて二日連続の休日を取るのに調整が必要ですので……五日くらい先になりそうですが大丈夫ですか?」


 二日連続? んー二日酔い対策とかかね?


「いいですよ、久しぶりに樹海ダンジョンにでも潜って時間を潰していますね」

「はい、楽しみにしていてくださいね!」


 冒険者のあれこれな話とか楽しみだね。


 ……。


 ……。


 ――




 side ギルドの職員


 ここは冒険者ギルドと商業ギルド両方の独身なギルド職員が住んでいる職員用のアパートの一室だ。

 家賃も安く警備も万全なので、大抵のギルド職員はこのアパート群に住んでいる。


 そんなアパートの一室に茶髪ハーフエルフの女性と、ロング黒髪片巻き角浅黒肌ハーフ魔人の女性が寄り沿って会話している。


「どうだったカレン?」

「ばっちしよセシリー、休日の調整は終わったし、ホテルの部屋と食事の予約も済んでいるわ」


「そ、そう……ついに勝負の日がくるのね……」

「ええ、ちゃんと翌日もお休みにしたし……」


「ゴクリッ……だだだ大丈夫かしら? 私もカレンもこういうの初めてだし……」

「ケリーが言うには、あのくらい稼ぎのある商人なら適度に遊んでいるだろうから安心だって……でも私から見るゼンさんは遊んでいるようには見えないんだけどもね……」


「あータチアナが言うには、ゼンさんはちょっと攻略難易度が高そうだって言ってたかなぁ?」

「でも差し入れのクッキーの美味しさから、ゼン君に声をかけようとしている新人受付嬢がいるみたいよね……」


「あー、あれ美味しかったねぇ……上級貴族のお茶会に出てくるお菓子かと思っちゃったよ」

「砂糖とバターをふんだんに使ったあれほどの物、しかもあの量を軽くプレゼントしてきて、尚且つギルドのオークションへの出品数とか大手の商会並みだもの……優良物件として狙われる可能性が高いわ……」


「これも結構高い物だしね……ふふ」

「そうね……これは私達二人だけへのお土産みたい」


 そう言って二人は懐から絹のハンカチを取り出して手触りを楽しんでいる。

 片方は黒く、もう片方が白いハンカチだった。


「タチアナに聞いたドレスも準備してあるし……カレンの方は?」

「ケリーに聞いたドレスはばっちりだわ!」


「まぁ……最後までは無理でも、仲良くなれる切っ掛けにはしたいわよね」

「そうね、セシリーは準専属だけど、私がいるとあんまり会話が出来てないしね」


「うう……カレンが受付にいる日を狙ってくるからなぁゼンは……」

「色々な職員を相手にした時の面倒事を嫌っているのでしょうねぇ、意外に慎重よねぇ……」


「ゼンとお話出来る日を楽しみにしているわ」

「そうね、楽しみだわね」


 ……。


 ……。

お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたなら


作品のブックマークと広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただけると嬉しいです


評価ボタンは、作者のモチベーションに繋がりますので、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 古の漫画の主人公みたいに 女性の覚悟を踏みにじる主人公でない事を祈る 女性側の立場にも立てるような主人公であって欲しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ