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114 冒険者街の変化

 国境である川を超えました。


 なのでセリィやダイゴは、樹海ダンジョンのお屋敷でお留守番しているという設定なので、お屋敷に引っ込めました。


 あっちのお屋敷にも、たまーに商人とかが訪ねてくるんだよねぇ。

 主人である俺がいないから、外の扉越しの対応で良いと言ってある。

 その対応が失礼だと騒ぐ奴は無視をしろ、と付け加えてね。


 まぁそういう奴は大抵が、屋敷には子供だけしかいないという情報を何処かで得ていて、よからぬ事を考えている輩だからな。


 夜に忍び込もうとしたりさ……もう何組もそういう奴等はシャドウファントム達にバイバイさせている。

 おかげで樹海ダンジョン側の冒険者街は平和に……はまったくならないな。


 人の世の悪党が多い事にはうんざりするね。


 いや、自分の事を悪とも思っていないのかもなあいつらは、自らの利益になるなら商人が時には盗賊や野盗になる世界だしさ。

 まぁ、ローブを着た大きいウッドゴーレムが護衛に付き、ごついゴーレム馬を使っている荷馬車に手を出して来るやつはそんなにいないはずだけどね。


 この国の海がある南から、ひたすら北上すれば樹海ダンジョンだ。


 結構時間たっちゃったなぁ……確か可憐なハーフエルフのカレンさんと、セクシーなハーフ魔人のセシリーさんと、食事会の約束をしていたっけか……。

 まぁあの二人は美人だし、今頃結婚とかしていなくなっている可能性もあるかもな。


 ルナやローラやアイリを荷馬車に乗せつつ、ボチボチ北上の旅を続けている。

 前はホムラ運送で飛んでいったからなぁ……あれはまじで怖かった。


 この街道はリアの所で取れる果物を運ぶルートだったのだが、ホムラが空から樹海ダンジョンに竜の姿で降り立ったので、商人が離れてしまっていたんだけど……。

 俺が見る限りだと、商売用の荷馬車はそれなりに街道を通っているように見える。


 昔がどれくらいだったのかを知らんので判断付かないんだけども……一時期の商人が逃げ散ってしまった頃よりは大丈夫そうな気がしないでもない。


 ……。


 ……。


 ――


 いやいやいやいや、待って?


 俺があそこを出てから数カ月で、なんでこんな事に?


 今俺はルナやローラやアイリを荷馬車に乗せて、樹海ダンジョン側の冒険者街に近づいているのだけど。

 商人なのかなんなのか、馬車がずらりと街道を占領しているというか、渋滞している?


「なんじゃこりゃ……」

「異常事態」

「うーん、商人だけじゃなくて貴族の馬車っぽいのも並んでいますね、ご主人様」

「あ! あの紋章は勉強で習いましたよゼン様、この国の伯爵家だったと思います」


 御者台の俺の横に座るルナと、荷馬車の一番前に乗り、俺の肩に手をおいて前に乗り出して周囲を見ているローラやアイリ。


「たった三カ月かそこらで樹海ダンジョンが大人気に?」

「リア姉様はそんな事は言ってなかった」

「ご主人様、貴族がわざわざ紋章入りの馬車を使って、ダンジョンに入りに来るでしょうか?」

「ゼン様あれは……入口の方でお貴族様の馬車と門番が揉めているのでしょうか……?」


 あーほんとだ、貴族の馬車が無理やり街に入ろうとして入口がふさがっているな……渋滞が起きている原因はあれか。


 全員が馬車のマナーとして左側通行しているのに、あの貴族が右側を通って入ろうとして、街の中から出てこようとした馬車とかち合って動きが取れなくなった感じに見える。


 こりゃ駄目だな……。


「一旦引き返して何処かで荷馬車を〈ルーム〉に仕舞うぞ、そして徒歩で来よう……最悪周囲を囲う柵を超えたって事にして屋敷から出てもいいんだけどな、それはまぁ最後の手段という事で」

「賛成、マスターあっちの方がひとけがなくて良さそう」


 ルナの指さす方はダンジョン街とも街道からも離れる方向だ。

 まぁもうすぐ夕方だし野営しようとしている他の商人もいるし、それほど目立たんやろ。


「おっけ、一旦離れよう、場合によっては野営してから明日行こうぜ」

「了解しましたご主人様……それならメイド服の上に旅装用ローブを着た方が良さそうです」

「あれ可愛くないんですよね」


 そこのメイドのアイリちゃんや、旅装に可愛さを求めるなよ……どうにもおっとりしているというかなんというか……そういう部分は旅をしても変わらんのな。


 ……。


 ……。


 人の目がない場所まで移動して、荷馬車を〈インベントリ〉へ、ゴーレムを〈入口〉の中へと、色々しているうちに時間がたってしまったので、街道からずいぶん離れた位置での野営になった。


 荷馬車は仕舞っちゃったんで、俺達のみが残っている。

 場合によって街の柵越えをしようかと思っているから、護衛のウッドゴーレムも仕舞っちゃった。


 早速練習の成果をアイリやローラに披露して貰っての野営だ。

 今回は火打石も上手く使えたようだ。


 火打石の形が悪いのかと思って、新しいのを買うか迷ったが大丈夫そうだね。


 俺の〈夜目〉や〈遠目〉を使うと、各所に焚火であろう火が見えて、商人達が野営しているだろう事が分かる。

 ……というか夕方に街から人が出てきて、外で野営準備している奴等もいたからな。


「あいつらって……泊まる所がないから外で野営しているのかなぁ? どう思うルナ?」

「可能性大」


 ルナの返事も俺の意見を肯定するものだった。


「このダンジョンの噂は聞いた事がありましたけど、過剰な人気に見えますね、リア様の……その、あれで、たまに頂ける果物の産地ですよね?」


 微妙に言葉を濁すローラだった。

 契約魔法が発動したのかな?


 ここは俺らの本拠島とかじゃなくて外だからな、誰かが聞いている可能性もある。


「あの果物達は美味しかったですよねぇ……また食べたいです」


 アイリは果物が好きなのかな?

 それなら今度樹海ダンジョン産の果物を使って、皆でドライフルーツ作りでもしようかね。


 ん?


 俺達からそこそこ近い位置で野営していた、商人っぽい見た目の奴らの気配が……あ、くそ……まったく。


「ファンファン」


 俺がそう呼びかけると、ルナのメイドスカートの下から黒い影がニュルリと出て来る。

 俺達を照らす焚火の明りをも遮る影の闇がそこにはあった。


「周囲の警戒を頼む、明りも使わず音も立てずに俺達に近づこうとした時点で処理していい、商人の皮を被った盗賊だ、一切気にするな」


 スッと、何の音もさせずにファンファンは周囲の闇に溶けていった。


「むぅ……スカートの中がスカスカで違和感……」

「ちょっと我慢してくれルナ、多少離れているとはいえ、こんなにたくさんの人が一定間隔ごとにいる中で動かすには、あいつが一番なんだよ……いつの間にかレベルも俺に追い付いているしよ……」


「ファンファンは、たまに隣の島で夜のソロ狩りをしているらしい」

「え? まじか? あいつ何してんだよ、ホムラやスイレンさんに許可は?」


「貰ってる」

「そうか、まぁそれならって……ならねーよ! ずるっこいなあいつ! 俺達はなんだかんだで忙しくて、たまにしかレベリング出来ないのによぉ、夜のあいつなら格上も狩れるし逃げるだけなら余裕だものな」


「一時期マスターにレベルを抜かれていたのがショックだったらしい」

「俺に対抗してんのかよ……つーかもうあいつさぁ、下手なダンジョンならラスボス役になれるよな」


「中級ダンジョンなら余裕」


 だよなぁ……レベル34って、人間なら一流の戦士とか呼ばれる奴等のレベルだぜ?

 しかもファンファンには、スキルとかいっぱい付けちゃってあるからなぁ……。


「まぁ今日は俺が見張りをしておくから、三人共そこのテントで寝ちまいな」


 そう言って俺は焚火の側に張った小さなテントを指さす。

 ワンタッチで設置出来る異世界日本の逸品です。


 でもリアに怒られそうなので、テントの外側に、この世界の布をかぶせて偽装しています。

 これで完璧だな。


「私も見張りしようか?」


 ルナの問いかけに、頭を撫でてあげながら答える事にする俺。


「大丈夫だよルナ、ルナは人を思いやれる良い子だな……」

「分かった、おやすみなさいマスター」


 ルナはそう言ってテントに潜り込んでいった。


「ローラとアイリも寝ちゃっていいぞ、見張りは俺とシャドウファントム達でやるからさ」

「いえ、これも野営の練習という事で私もご主人様にお付き合いします」

「私もお付き合いします!」


 いや、前に練習した時に、見張り中に寝落ちしちゃってたじゃんかアイリ……。

 無理せんでいいのよ?

 人には得手不得手があるからな、それに応じて仕事をすりゃいいのよ。


 しかし二人共俺の勧めを拒否して、眠くなるまでは、と頑なだったので。

 まぁいいかと見張り参加の許可を出した。


 すると二人は、焚火の側で丸太に座っている俺の左右に椅子を持ってきた。

 その後は、左右から順番に様々な質問が来る雑談をしながらの見張りとなった。


 ……。


 ……。


 ローラは眠そうに頭をこっくりこっくりさせながら目を擦っており。

 アイリはすでに夢の中で、俺の腕を掴んで寄りかかりながら寝ている。


「ほらローラ、眠いならテントに行って寝なよ、アイリも一緒に運んじゃうからさ」

「推しを二人占め……いえ、独り占めできるチャンスなんです……ううう……だめ……寝ま……」


 駄目そうなので、まずはアイリをテントに運んでいく俺だった。

 運ぶならお姫様だっこが一番楽だよな、ぽーいっと、テントの中にアイリを寝かせてやる。


 さて、俺は振り返ってローラに……なんで君は俺に向けて手を伸ばしているのかな?

 起きているのなら歩けるだろうに。


「ほらローラも寝ちゃえっての」

「眠らないと……やってくれない~……サービス~……ですか~?」


 もう言動が眠さでちょっとおかしいなローラは。


「何のサービスだ?」

「抱っこ運び……です~」


 ああ、分かった分かった。


「ほれ、じゃぁ運んでやるから」


 ローラもアイリと同じようにお姫様抱っこで運び、テントに放り込んで寝かせてやる。

 ローラは眠い目を擦りながらも、最後に俺のポケットに銀貨を入れていた……。


 運び賃?


 いやまぁ貰うけどさ。

 おやすみ、そう軽く声を掛けてからテントの入口を閉め、見張りに戻る。


 俺達の周囲に見える野営の焚火の数は変わっていない、だけどもいくつかの気配は消えている。

 俺の〈悪意感知〉にすっごい反応していた所ばかりだな……。


 近付いて来ただけで、相手にちゃんと手を出される前にこちらから攻撃するのはどうなんだ? とか言われそうだが。


 そういう意見は、自分の命を天秤の片方に乗せてから言って貰いたいものだよな。

お読みいただき、ありがとうございます。


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