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108 物欲センサー

「もうゼン君、こんな夜中に尋ねて来るなんて、研究のお駄賃にエッチな事を求めてくるのかと思ったじゃないの……それともそういう事しちゃう?」


 今俺は夜中であるにもかかわらず、ウェーブの入ったロングのピンク髪で体のラインに沿った魔女服を着ているマジョリーさんのダンジョンに来ています。


 セクシー美人のマジョリーさんにそんな事を言われたらドキドキしてしまうかもなんだが、この人の本性が〈魔法狂い〉なのを知っているので踏みとどまれました。

 先の言葉にも裏があるだろうからね、研究材料にされたりとかしそうだし。


「いいえしません、先程も言いましたが、この物体って人間社会で価値があるかなーって話をお聞きしたくて来ました」


 例の海岸で子供らが炙っていた代物が流れ着いているという場所を見せて貰ったら……潮の流れの関係なのか、岩場にかなりの数の石が打ち上げられていたんだよね。

 ……漁村ではゴミ扱いらしいよ? むしろ流木の方が嬉しいとか子供らは言っていた。


 オークションへの出品を利用した簡易ダンジョンコア鑑定をかけたら、海洋魔物の結石で鯨石とか出たから、まぁ日本で言うマッコウクジラの結石と似たような物なのかなって思っている。


「あら残念、えーとちょっと失礼」


 マジョリーさんが俺の差し出した結石を魔眼で鑑定している。


 いいよなぁあれ、俺も鑑定の魔眼が欲しいんだが、取得リストに出て来ないって事は今までの最高保持値である500万DPだっけ? あれ以上必要って事だよね……。


「海洋魔物の体内で作られる石だわね、鯨石とかそんな名前で流通しているわ、排出物なんだし糞石とかでも良さそうな物だけどね」


 そう言って、俺に鯨石とやらを返しながら、鑑定内容を教えてくれるマジョリーさんだった。


 やっぱり鯨の魔物がいるっぽいんだな……でかくて強いんだろうな。

 というかマジョリーさんってば、そのまんまな名前を出して来たな……。


 でもこれは結石だから……海を流れる間に余計な物は排除されるし。


「そんな名前で流通させたら安くなってしまうからではないですか?」

「まぁそうね、それで人の世界では香料として昔は同じ重さの金と交換、ってくらいの価値はあったんだけど……今はせいぜい同じ重さの銀貨と交換くらいかな?」


「それでも十分に高い気がしますけどね」

「錬金術師も欲しがるし、ダンジョンオークションに出してもいいと思うわよ、そうね、その拳くらいの大きさの物なら一万DP以上にはなるんじゃないかしら? 私もお安いなら何個か買うけども……ゼン君の拠点島とやらに流れ着いたのかしら?」


「これは浜辺に流れ着いた物なんですが、価値があるのかを知りたくて、リアよりは魔女のマジョリーさんの方が詳しいかなって思いまして」

「へぇ……〈日陰植物〉より私を選んでくれたのねぇ……そろそろ、うちのダンジョンのお隣に引っ越して来たくなったのかしら? なんならイクスをプレゼントするから移住しちゃわない?」


「……しません、そしてイクスさんを物扱いしないでください」


 リアが毎回ルナを要求してくるように、マジョリーさんも俺を勧誘してくるんだよなぁ……。

 まぁ俺と言うよりは、俺のスキルである〈ルーム〉が欲しいのかなって思っているけども。


「あら残念、イクスが喜ぶと思ったのになぁ、それで質問は以上かしら?」


 なんで物扱いされてイクスさんが喜ぶんだよ……え? M気質って訳じゃないよね? ……イクスさん?

 俺がマジョリーさんに向けて言った『イクスさんを物扱いしないでください』なんだか……何故だろう、あの瞬間、俺にブーメランが当たる幻想が見える気がした……。


「はい、ありがとうございましたマジョリーさん、これは情報のお礼に差し上げますので」

「あら、ありがとう」


 一度返された鯨石を再度マジョリーさんに渡して〈ルーム〉を起動……あそうだ。


「折角だし帰りは〈非常口〉を使ってみせますね、おやすみなさいマジョリーさん、さようなら~」


 前の研究会では俺のコアメニューが使える話に興奮しちゃって、こっちの話はしなかったからな。

 鉱山都市で見せた一回っきりだし、マジョリーさんも喜んでくれるだろうて。


「え? ちょっと待ってゼン君! 今調査用の魔法陣を――」


 ん? 今最後にマジョリーさんが何か言いかけてた気がするが……ま、今度会ったら聞いてみるか。


 ……。


 ……。


 コア部屋に戻ってから、漁村の側で野営しているルナの元に〈入口〉を使って帰る。

 村長に言って村の端っこで野営する事を認めて貰ったんだよね。

 流れ着いた石を調査したいとかなんとか言いくるめてさ。


 村人の妙齢な女性を派遣しますか? とか聞かれたので断っておいた。

 ……ぶれないよねあの村長、この世界では普通の感覚なのかもだけど。


「お帰りマスター」


 〈入口〉のために立てている細長いテントから外に出ると、ルナが出迎えてくれた。

 俺は出迎えで近づいて来たルナの頭を撫でてあげる。

 お留守番ありがとう、ナデリコナデリコ。


「ただいまルナ、何かあったか?」

「何もない、田舎は夜が早い物……働き手の男もいないなら猶更」


 ……そうだね。


 そして焚火というか竈の元へと戻っていくルナであった。


 ルナは暇があると料理していて、そうして出来た物は俺の〈インベントリ〉へと仕舞われていく。

 もうね、日本の業務用の大きい鍋を何回買ったか覚えてないくらいストックがある。

 〈インベントリ〉の中なら腐る訳でもないから問題ないけどさ。


 今日は、匂いからして醤油系の煮物か?


 真夜中にこんな良い匂いさせて大丈夫かね……まぁ潮風が吹いているし、俺らは村より陸地側にいるから……大丈夫か。


 さあ明日は村長にこの鯨石の話をしないとな、っとその前にダンジョンオークションの確認しよう。

 もう天然石であるペリドットの粒石の出品は取りやめてある。


 そして俺のダンジョンコアレベルも上がっているらしく、出品数の制限とかもかなり増えているし、高価な物の取り扱いなんかも見られるようになっている。


 そのうちダンジョンメールやらダンジョン掲示板も使えるようになると、リア達は言っていたっけ。

 ただし、普通なら新人ダンジョンマスターが、数十年間ダンジョンの運用をして、やっと使えるようになるかならないかっていうくらいの機能なんだとか……。


 俺はほら、ホムラのおかげで中堅ダンマスが押さえるようなマナスポットを借りる事が出来たからね……運がいいよねほんと。

 あいつは俺の事を友だと言ってくれるからさ、過剰にありがたがる姿とかを見せる気はないけど、心の中でしっかりと感謝しておこう。


 そしてオークションで鯨石を検索……ふーむ、大きさが分かりにくいなこれ。


 ……出品画像の隣に銅貨でも置いてくれればいいのに、ゴブリンの拳大とか、妖精の頭くらいとか、……誰だオークの金〇くらいの大きさなんて書いてる奴は……。

 あ、買う場合は隅っこにコア鑑定の結果が乗っているのか、重さも普通に書いてあったわ。


 まぁ総じて入札値はマジョリーさんが言っていたくらいか。

 いや、それより安い気がするけど、これはまだ競り落ちてない値段だからだな。

 つーか出物が5個もなくて出品期間も結構長いな、終了が数カ月先のもあるし。


 じゃまぁ、これくらいで売れるのなら……半値……鯨石の半分の重さの銀貨と交換なら俺に損はないよな?


 人族の間の流通値が分からんのがあれだな……まいいか、ダンジョンオークションに出せば利益が出るくらいの値段で買ってあげれば取り敢えずいいだろ。

 そうしてメニューを閉じるとルナが近付いてきた。


「マスター味見」


 ルナが差し出して来た小皿には煮込まれた肉とタマネギが見える。


 俺はそれを受けとり、行儀が悪いが〈光魔法〉の浄化で奇麗にした手で、皿の上を滑らせるように料理を口に入れた。

 浄化魔法は超便利で、焦げ付いた鍋とか洗う時とかによく頼まれる。


「美味い! けど……なにか一味足りないような?」

「ストックの料理酒を切らしてたから、赤ワインを何本か欲しい」


「なるほど、それで前と少し味が違うのか、折角だしルナのインベントリも大きい奴にするか?」


 ルナの〈インベントリ〉の広さって未だに極小のままなんだよ。

 それだと料理用の道具とか調味料の予備を入れとくのも大変だよな?


 DP収入も増えたし……暫くダンジョンからの収入を溜めて、尚且つ保護者からのお小遣いを貰いに歩けば……十日もあればそこそこ大きく出来るで?


「今は要らない、むしろ〈家事+〉や〈調理+〉のついた装備が欲しい」


 ルナの着ている普段着の方のメイド服は〈家事+〉が付いていて〈調理〉スキルに補正つくからな……でもさルナさんや。


「俺のダンジョンメニューで買える、異世界産の品物に付く魔法付与効果って、ランダムというかガチャじゃんか? だいたい使う物の方向性に沿ってはいるんだけど……狙うと沼るのは世の常だぜ?」

「……物欲センサーが憎い、もうすでに5回は外している」


 ん? いやまて? ルナさん今なんて?


「5回? どういう事だ? ルナ?」

「……お鍋が噴いちゃう、大変大変」


 いつもと口調が違う感じでパタパタと急いで逃げていくルナだった……。

 確かにお前にはダンジョンコアに溜まっているDPを使う権限は与えているけどさ……。

 ガチャで無駄遣いしているとか……。


 ルナってば……主人にそっくりじゃんかよ! くそ、俺が俺だけにルナを責められないや。


 後で何を買ったかだけ聞いておくか、何かに使えるかもだしな。


 そうして俺は怒っていない事を伝えるためにルナへと近づいていくのであった。

お読みいただき、ありがとうございます。


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