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81話 護衛依頼と襲撃者4

 周囲を取り囲んだ男達は、一斉にこちらへと襲い掛かってきた。男達の目的を問う暇すらない。仕方がない、ここは男達を打ち倒して、後から目的を問う他にないだろう。


「『強き石の槍フェルズ・シュタルク・ランツェ』!」


「『強き光の槍リヒト・シュタルク・ランツェ』!」


「『強き風の刃ヴィント・シュタルク・クラン』!」


 俺とクリスティーネ、フィリーネの魔術が男達へと襲い掛かる。何れの魔術も、外れることなく男達へと命中した。魔術を受けた男達は後方へと吹き飛び、仰向けに倒れ込む。これで、多少なりとも頭数は減らすことが出来た。

 倒れた仲間には目もくれず俺達へと駆け寄る男達に相対するように、俺も剣を片手に前へと走り出す。俺へと向かってきているのは、三人の男だ。他の男達はクリスティーネやフィリーネ、それに後方の馬車へと向かっている。

 当然だが、俺一人ですべてを相手取ることなど出来はしない。目の前の敵を出来るだけ早く片付けて、他の応援に回る他ないだろう。


「『落とし穴(フォル・ラント)』!」


 空いた左手を前へと突き出し、魔術を行使する。突如として陥没した地面に足を取られ、男の一人が転倒した。こうやって相手の足並みを乱し、各個撃破するのが俺の定石だ。

 残った二人の男のうち、右手の男が片手を前へと突き出した。どうやら魔術を使うらしいと、俺はその男を注視する。


「『石の槍(フェルズ・ランツェ)』!」


 予想通り、男から魔術で作り出された石の塊が打ち出された。飛来するその速度はなかなかのものである。大きく身を捩れば躱せないこともないが、後方の状況がわからない。俺が身を躱したことで味方に当たるということも考えられる。

 ここは確実に防ぐ。


「『光の盾(リヒト・シルト)』!」


 石の槍の進路上へ、光の盾を生み出す。二つの魔術は衝突し、硬質な音を立てる。

 槍は盾を突き破ることは叶わなかったようだ。推進力を失った石の槍は、その場へ力なく落下した。


「『石の槍(フェルズ・ランツェ)』!」


 お返しとばかりに、俺は立て続けに魔術を行使する。狙いは先程魔術を放った男だ。

 男の放ったものと同程度の石の槍を、男は大きく回避した。命中はしなかったものの、牽制の役割は十分に果たしている。

 男の一人はもう目と鼻の先だ。男は俺を狙い、上段から剣を振り下ろす。


 俺はそれに合わせるように、下段から剣を振り上げた。

 俺の剣と男の剣とが衝突し合う。

 それも一瞬のことで、俺は剣を振り抜き、男の剣を跳ね上げた。

 どうやら、身体強化は俺の方が上らしい。剣を弾かれた男は、無防備にその胴体を晒している。

 俺は素早く剣を引き、刀身へと魔力を流し込む。


「『氷撃剣』!」


 気合と共に、横薙ぎに剣を振るう。

 氷塊に包まれた俺の剣は、狙い違わず男の胴体を叩いた。

 そのまま剣を振り抜けば、男は激しく身を折りながら後方へと吹き飛んでいく。

 手に返ってくるのはいい手応えだ。斬撃ではないため死んではいないだろうが、あの男はもう動けないだろう。


 男が地面へと転がるのも尻目に、俺は先程魔術で狙った男へと走り寄る。

 男は仲間が吹き飛ばされたことに少し動揺を見せていたが、それでも俺に相対するように剣を構える。

 あまり時間を掛けてはいられない。俺は力任せに男の剣を弾くと、生まれた隙にもう一度『氷撃剣』を行使する。


 氷に覆われた刀身を、上段から男の頭部へと振り下ろした。

 その一撃で意識を失ったのか、男はその場へ崩れ落ちた。

 斬れないとはいえ、撲殺するのではないかという勢いだ。死んでいてもおかしくはないが、状況が状況だけに手加減する暇もない。あまり殺しはしたくないが、仕方のないことだろう。


 俺はさらに、最初に落とし穴に掛けた男へと走り寄る。

 同じように上段からの一撃を弾き上げ、がら空きの胴体へ氷の刀身を打ち込む。

 男が後方へと倒れ込み、これで三人を無力化させた。

 俺は三人目の男には目もくれず、素早く背後を振り返った。それほどの時間もかけなかったはずだが、状況はどう動いているだろうか。


 クリスティーネの方は問題なさそうだ。クリスティーネも俺と同様に三人を相手にしていたようだが、既に足元に一人倒れている。残りの二人相手にも上手く立ち回っているようで、あの様子であれば助力の必要はなさそうだ。

 フィリーネの方は、少し苦戦しているだろうか。両手に剣を持ち、二人の男を同時に相手取っている。やはり体調が万全ではないためか、どこか動きがぎこちないように見える。


 ここはフィリーネの方へ助力へ向かうべきかと思ったが、馬車の方を見て思い直す。馬車の周囲を何人もの男達が取り囲んでいるのだ。セバスチャン達、ユリウス家の者達が対応しているのだが、少々苦戦しているようだ。

 いや、セバスチャンだけはかなり善戦しているようだ。その足元に数人の男が転がっており、今も二人の男を同時に相手取り、危なげなく剣を捌いている。


 反対に、苦戦を強いられているのが私兵達だ。今のところ脱落者はいないが、同時に複数を相手取ることに慣れていないのか、男達に押されているようだ。

 どうするべきかと迷う俺の前で、一人の私兵が男を相手取る中、別の男に背後から斬りつけられた。私兵が前のめりに倒れたのを確認したところで、俺は馬車の方へと走り始める。


 男達は倒れた私兵を尻目に、馬車の方へと歩み寄る。そうして、ついには馬車の取っ手へと手を伸ばした。

 その瞬間、男は空へと打ち上げられた。宙を舞う男は成す術もなく、馬車から少し離れた場所へと叩きつけられる。


 それを成したのは、向こう側が透けて見えるほどに透き通った壁だ。馬車の扉を守るように、氷の壁が立ち塞がっていた。

 突如として現れた氷壁は、馬車の高さほどにもなる。分厚い氷の壁が地面から出現したことで、馬車の扉に手をかけていた男はその身を大きく中空へと投じられることとなったのだ。


 それを成したのは、間違いなくシャルロットだろう。車内にいるシャルロットの様子はここからでは窺い知ることはできないが、しっかりと護衛の役目を果たしてくれたらしい。

 突然現れた氷壁に、私兵も含めた男達は動きを止めていた。その間に俺は走り寄ると、襲撃者の一人を斬り倒す。

 馬車周辺の戦いに俺が参戦したことで形勢は完全に逆転した。襲撃者達をすべて打ち倒すまで、それほどの時間は要さなかった。

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