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8話 冒険者ギルド2

 冒険者ライセンスに関する説明を終えた受付の女性が、俺達へと向き直り姿勢を正す。


「ご用件は以上でしょうか?」


「いや、素材の買取もお願いしたい」


 そう言って、俺は背負い袋をカウンターへと乗せた。さらに、袋の口を開いて中の物を取り出しカウンターへと並べていく。

 袋からは、その外見からは想像できない量の物が取り出されていた。それもそのはず、この背負い袋はマジックバックと呼ばれる特殊なカバンなのだから。


 この背負い袋にはより多くの物を入れられるよう空間を広げる『空間拡張』、より多くを持ち運びできるよう物の重さを軽くする『軽量化』、中に入れたものの時間の流れを遅くする『時間遅延』の三種類の魔術が付与されている。付与したのは俺自身、つまりこのマジックバックは自作だ。


 俺の腕では三倍程度の空間拡張に三分の一程度の軽量化、それにいくらかの時間遅延が限界だったが、元手がほとんどかかっていないためこれでも結構重宝している。

 こういう部分では『万能』の有難さを感じていた。普通の人間では、こんなに簡単にマジックバックを作ることなどできないだろう。


 袋から取り出したのは昨日倒したオークの肉に、オークの魔石だ。オークの肉は、フェアの葉という防腐性のある葉で包んでいる。こうすることで、より長く鮮度を保つのだ。

 オークの肉は基本的にいつでもそこそこの値段で売れるし、魔石にも広く利用価値がある。こういった素材の売却額や依頼の達成報酬が、俺達冒険者の基本的な収入となる。


「オークの肉にオークの魔石ですね。少々お待ちください」


 カウンターに並べられた素材を確認した女性が、何やら計算を始めた。オークの肉は秤に乗せてその重量を測り、魔石には光を当てその純度を見ている。これくらいの量であれば、すぐに結果が出ることだろう。

 予想通り、それほどの時間をかけることなく計算結果が出された。


「はい、全部で400ルードになります。よろしいですか?」


「あぁ、それでいい」


 女性の言葉に了承を返し、小銀貨を受け取る。

 素材は直接利用業者などに売ることもでき、その方が高く売れる場合も多いのだが、基本的には冒険者ギルドで纏めて売却する者が多い。冒険者ギルドでも買取価格は適性だし、一度にすべての素材を換金できるため手間もかからないからだ。


 俺自身、余程のことがない限りは冒険者ギルドで売却している。その際は金額に問題がないか確認されるが、まぁこれはほとんど形式的な質問だな。ここで断るのは、余程天邪鬼な奴だけだろう。

 俺は受け取った小銀貨のうち二枚を革袋へと仕舞うと、残った二枚をクリスティーネへと差し出す。


「ほら、クリス。受け取ってくれ」


「えっ、えっ、でも、もらっていいの?」


「俺とクリスはパーティだからな。報酬を折半するのは当たり前だろう?」


「えっと……そう、なのかな? あ、ありがとう!」


 実際にパーティを組むのは今日からなわけで、昨日の討伐報酬は俺だけが貰ってもよかったのだが、クリスティーネはまだまだ駆け出しの冒険者だ。

 俺自身、別に裕福というわけではないが、クリスティーネも金銭的な余裕はないだろうし、これくらいはいいだろう。


 それから俺とクリスティーネは受付の女性に礼を言い、受付を離れる。カウンターの上に置いた素材は、後ほど別の職員が倉庫へと運ぶことだろう。

 次に向かう先は依頼を貼り出してある掲示板だ。宿代や食事代を稼ぐためにも、何か依頼を受けなくてはならない。出来れば、割りの良い依頼が残っていればいいのだが。


「いいか、クリス? ここが依頼掲示板と言って、冒険者の受ける依頼が貼り出される掲示板だ。冒険者ランクによっては、受けられる依頼と受けられない依頼があるから注意してくれ。今は俺とパーティを組んでいるから、Dランクまで受けられるぞ」


 クリスティーネへと依頼掲示板の説明をしながら、良さそうな依頼を物色する。良い依頼を見極めるコツは、貼り出されている依頼の情報すべてをよく見ることだ。まぁ、コツと言うほどでもない当たり前のことなのだが、この辺りを横着する冒険者が多いのだ。

 大雑把な冒険者などは報酬額しか見ないこともあるが、あまりお勧めはできない。依頼の危険度がわからない冒険者など、長生きはできないものだ。


 張り紙には依頼の内容と報酬額に、必要な冒険者ランク、それに冒険者ギルドの推奨する人数が書かれている。

 冒険者に好まれるのは当然、場所が近く達成が容易で報酬額の高い依頼だ。もちろん、そんな依頼は滅多にないが。


「これはどう? 薬草の採取依頼だって」


「報酬額が安すぎる。却下だな」


「それじゃ、こっちのは? えっと、討伐依頼みたい」


「討伐対象がな……オーガは二人じゃちょっと無理だろう」


 クリスティーネが目に留まった依頼を指差し訊ねるのを、俺は逐一確認して検討する。しかし、貼り出されているのは難しさに対して報酬の釣り合っていない依頼や、今の俺達二人には達成が困難だろうと思われるような依頼ばかりだ。

 やはり、良い依頼は他の冒険者がすでに受けてしまった後らしい。


 クリスティーネの実力がわからない以上、あまり難しい依頼や遠出が必要になる依頼は避ける必要がある。

 それらを考慮して上から下まですべての依頼を確認したものの、今の俺達に丁度良さそうな依頼は、残念ながら見つからなかった。


「良い依頼がないな……仕方ない、依頼を受けるのは諦めよう」


「そう? それじゃ、今日はお休みってことになるの?」


「いや、適当に素材採取だな」


 依頼を受けなくとも、冒険者としてできることはある。昨日オークを討伐したように、魔物を倒して素材を集め、それを売却すればよいのだ。

 もしくは、薬の素材などを採取するのもよい。魔物の素材や魔石、それに薬草や鉱石などを集めて売れば、それなりの金額にはなるだろう。

 幸い天気も良いことだし、懐に余裕のない俺達に休んでいる暇はないのだ。


「そうと決まれば、行動あるのみだ。ここから南にある森に、素材採取に行こう」


「わかったわ! 見ててよジーク、私、頑張るから!」


 何やらクリスティーネは張り切っているようだ。まぁ、元気がないよりかは余程良いだろう。

 そうして俺は、クリスティーネを連れて冒険者ギルドを後にした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 依頼をしようとして、諦め、素材採取に向かうという流れが冒険者として生きる現実味のある話の流れで良いと思いました。その流れのおかげで、読んでいて自然と素材採取頑張ってね、と登場人物たちを応援…
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