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64話 貴族令嬢の護衛依頼3

「お父様、護衛の冒険者が来たと聞いたわ!」


 部屋へと飛び込んできた少女は、少女特有の高い声でそう言い放った。

 シャルロットと同じくらいの年頃の、小さな少女だ。整った顔立ちの中で、ややつりあがった意志の強そうな青い瞳が印象的である。ウェーブのかかった金色の長い髪は、手が掛かっている様子が伺えるほどの輝きを誇っていた。

 少女が身に付けている服も高級そうなドレスである。フリルがふんだんにあしらわれたそれは、可愛らしい少女によく似合っていた。


 急いで来たのか、頬がやや紅潮している。少女はこの屋敷の関係者で間違いないだろう。お父様という言葉からは、ユリウスの娘なのだと予想がついた。年齢からして、その後ろの老紳士の娘ということはないだろう。

 少女は後ろ手で扉を閉めると、ユリウスの方へとやや早歩きでやってくる。それを見ていたユリウスは、小さく溜息を吐いた。さらに、軽く額に片手を当てて見せる。


「アンナ、後で呼びに行くと伝えられたはずだろう?」


「だってお父様、私を護衛する冒険者なのでしょう? 私が同席しないことには始まらないわ!」


 そう言うと、少女はユリウスの隣へと腰掛けた。足を揃え、姿勢よく背筋を伸ばした姿からは日頃の教育というものが窺える。

 その様子を見て、ユリウスはまた一つ溜息を吐いた。そうして、俺達へと正面から向き直る。


「まったく、仕方ない……紹介しよう、この子はアンネマリー、私の娘だ。今回君達に依頼したのは、この子をオストベルクへ無事送り届けることだ」


「この子を、ですか?」


 ユリウスの思わぬ発言に、俺は少々戸惑った。てっきり、オストベルクへの護衛としてはユリウスの身を守るのだと思っていた。

 しかし、ユリウスの口振りでは、ユリウスと娘のアンネマリーは別行動をするようである。何か理由でもあるのだろうかと訝しんでいると、その様子に気付いたのかユリウスが口を開いた。


「あぁ、本当なら共に移動をするところなのだが、少々王都に仕事を残していてな。一足先に、アンネマリーだけをオストベルクへと向かわせることになったのだ」


 ユリウスの説明に、俺はほうほうと頷く。アンネマリーをオストベルクへ送るに当たって、護衛となる冒険者を求めたのだろう。条件として女性冒険者を一名以上としたのは、娘を慮ってのことだろう。確かに、この年頃の少女なら男冒険者だけに囲まれるよりも、同性がいた方が安心だろう。

 そんな風に俺が内心で納得していると、それまで俺達の事を観察していたアンネマリーが口を開いた。


「でもお父様、この人達で本当に大丈夫ですか? あまり強そうには見えませんし、何より私と同じくらいの女の子までいますよ?」


 少女の歯に衣着せぬ物言いに対して、俺は何も言えない。自分自身、見た目からして強者に見えるなんて思ってはいない。クリスティーネとシャルロットなど、普通の少女にしか見えないのだ。実力を疑われるのは仕方のないことだろう。

 ユリウス自身も、俺達の実力に関しては疑いを持っているのだろう。顎に片手を当てて、考え込むような仕草を取った。


「一応、うちからも兵を二人と、なによりセバスを付けるから問題ないとは思うが、確かに実力の確認は必要か……君達、どの程度戦える?」


「俺達は三人とも中級魔術が使える。それから、俺とクリスは前衛でも戦える。オーク程度の魔物なら、多少数がいても問題はない」


 ユリウスの質問に、俺はそのように即答した。

 俺達のパーティの特徴は、何と言っても三人全員が魔術を使えることである。そんなパーティなど滅多に存在せず、瞬間的な火力だけで言えばかなりのものだろう。今回のように街道を進む場合、見晴らしがいいために魔術は十分にその利便性を発揮できる。

 さらに、俺とクリスは剣術だけであってもそれなりに戦える。オーク程度であれば、まず遅れは取らないだろう。パーティ全体のバランスで言えば、人数以上の働きができる。


 それから、と俺はクリスティーネへと視線を向ける。何日も行動を共にするのであれば、告げておいた方が良いことがある。


「クリス、見せてやってくれるか?」


「いいの?」


 俺が問いかければ、隣に座るクリスティーネがその意図を理解し、小首を傾げながら問い返してきた。俺が言ったのはもちろん、半龍族の証であるクリスティーネの翼と尾を見せてやってくれ、といったものである。

 護衛のためにアンネマリー達と数日を共にするのであれば、半龍族であることは明かしておいた方がいいだろう。半龍族は普通の人族よりも身体能力に長けていることが知られているため、護衛に当たる冒険者として説得力が増す。

 それになにより、翼と尾を隠すのは少し窮屈だとクリスティーネは以前言っていた。実際、人目のない街の外や宿屋の部屋では翼と尾は出しているのだ。連日窮屈な思いをするよりは、素直に打ち明けておいた方がいいだろう。


 俺が頷きを返せば、応じるようにクリスティーネからも頷きが返ってきた。そうして少し後ろを振り返る。どうやらソファーの背もたれを気にしているようである。そうして軽く座り直し、指を打ち鳴らした。

 瞬く間に光に包まれてクリスティーネの翼と尾があらわになる。その様子を目にしたユリウスとアンネマリーは、同じように驚きを眼を見開くことで表した。こうして見ると、親子なのだということがよくわかる。


「なるほど、半龍族だったのか。それなら、普通の冒険者よりも腕が立つだろうな。ということは、そちらの子も同じようなものか?」


「まぁ、似たようなものだな」


 ユリウスがシャルロットを見ながら問いかけるのに対し、俺は首肯を返す。シャルロットは見た目では人族にしか見えないものの、実際は氷精族という種族である。もっとも、そこまで明らかにする必要はないだろう。

 俺の返答に、ユリウスは何やら納得したような表情を浮かべる。ひとまず、ある程度の腕はあるものとして思ってもらえたのだろう。


「そういうことなら、問題ないだろう。君達には正式に、オストベルクへの娘の護衛を依頼する。アンナも、それでいいな?」


「お父様が問題ないと判断したのならいいわ! あなたたち、しっかりと私を守りなさい!」


 そうして、俺達は正式に護衛依頼を受注した。出発は翌朝と言うことなので、俺達はユリウスの屋敷を後にする。それから、数日間の護衛依頼に当たれるよう、細々とした物資の買い出しに出掛けるのだった。

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