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537話 虹の龍鱗の使い方

 少し普段の調子を取り戻したらしいアメリアと、遅れて起きてきたクリスティーネ達を加えて、いつも通り日課の訓練を始める。一通りシャルロットへ剣術の訓練を施してから、俺は自らの鍛錬へと移った。


「ふぅ……よし」


 深呼吸を一つして、自らへと気合を入れる。今から試みる魔術は、あの禁忌の魔術具の事件以来、初めて使うものである。

 あの時はクリスティーネ達三人が影へと呑み込まれたこともあり、俺はただただ必死だった。そんな中で使用した魔術だ、もちろん理論も理解していたつもりだが、それ以上に感覚を頼っていたところがある。


 あれから時間を空けた今、この落ち着いた状態で使用できてこそ、初めて習得したと言えるだろう。

 体内の魔力を集め、四肢へと流していく。そうして血流のように循環させた魔力を、鎧を着るイメージで体表へと身に纏った。


「――『龍鱗』」


 声を発すると同時、魔術が顕現する。

 現れたのは、虹色に輝く龍の鱗だ。

 俺の体を包み込むように、透き通った七色の鎧がその姿を現した。


 よし、成功だ。

 俺は心の中で拳を握り、軽く両手を開け閉めしてみる。掌の開閉に応じて龍の鱗も動き、虹色の残滓を残すのが見える。


「あ! ジーク、それ、龍麟だよね?」


 クリスティーネを始めとして、少女達が俺の方へと近寄ってきた。なにせ、今の俺は全身七色に光り輝いているからな。気になって仕方がないだろう。

 この中で、俺の今の姿を見たことがあるのは、禁忌の魔術具を破壊した直後に目にしたクリスティーネだけである。あの時はアメリアの身が心配で、良く説明できなかったからな。


「あぁ、全属性の龍鱗……そうだな、『虹龍鱗』とでも名付けるか」


 クリスティーネの『光龍鱗』やレイの『氷龍鱗』みたいな名前にしようとするなら『全龍鱗』とかが妥当な気もするが、この見た目なら『虹龍鱗』の方が適切だろう。

 改めて俺の姿を目にしたクリスティーネは、ぱっと顔を輝かせた。


「すごい! ジークも使えるようになったんだね!」


「あぁ、クリスのおかげでな。おかげで、例の魔術具を破壊することも出来たよ」


 俺が龍鱗を使用できるようになったのは、(ひとえ)にクリスティーネの助言のおかげである。あの場で龍麟が使えなければ、俺は影の騎士達に勝利を収めることが出来なかっただろうから、あの事態を解決できたのはクリスティーネの働きが大きいと言える。

 しばらく観察するように俺の姿を眺めていた少女達だったが、ふとフィリーネが首を傾げて見せた。


「でも、あんまり龍っぽくないの?」


「俺には翼も尻尾もないからな」


 白翼の少女の言葉に、俺は肩を竦めて見せる。龍鱗を纏ったクリスティーネは、さながら小さな龍と言える外見だが、それに対して俺は特徴的な鎧を纏ったように見えることだろう。

 何せ、俺には龍の大きな特徴である翼も尻尾もないからな。その二つがあれば、俺もクリスティーネみたいな見た目になるのだろうが。


 そんな俺の姿を見て、氷龍の少女はどこか不満そうだ。


「むぅ……翼と尻尾があった方が、格好いいのじゃ!」


「そう言われてもな……」


 レイの言葉に、思わず苦笑が漏れる。そんなことを言われても、どう頑張ったところで今から翼と尻尾を生やすようなことは不可能なのだ。龍鱗の魔術としては成功しているので、問題はないだろう。

 だがシャルロットは何やら思いついた様子で、ふと小首を傾げて見せた。


「ジークさん、翼や尻尾の形を想像すれば、龍麟で再現も出来ませんか?」


「ん? それは、出来るかもしれないが……」


 龍鱗は体の表面に魔力の鎧を纏うような魔術だが、僅かとは言え体からは少し離れている。それを思えば、龍の翼や尻尾の形を龍鱗で形作ることだって、可能だろう。

 もっとも、それに意味があるのかは甚だ疑問ではあるが。


 しかし俺の言葉に、半龍の少女は瞳を輝かせた。


「ジーク、やってみてよ!」


「見てみたいのか? ……まぁ、魔力操作の練習にはなるか」


 少女の希望に従い、俺は魔力を集め始める。

 意味はなかったとしても多少魔力が無駄になるくらいだし、試すだけ試してみてもいいだろう。少なくとも、龍鱗を操る練習くらいにはなる。それに、こういった試行から思いもかけない魔術が出来たりするものなのだ。


 背中と臀部へと魔力を集め、龍鱗で翼と尻尾を形成していく。幸いにも、全てを想像で補う必要はない。何せ、目の前にクリスティーネとレイという、本物の翼と尻尾を持つ例があるのだからな。二人と同じようなものを形作ればいいわけだ。

 そうして出来上がったのは、虹色に光る龍の体だった。クリスティーネのものを参考にしたので、随分と似通った形になったように思う。


「どうだ?」


「格好いいです、ジークさん!」


「なかなかいいんじゃない?」


「ちょっと派手だけどね?」


 シャルロットやアメリアには好評な様子だが、エリーゼは苦笑を漏らしている。確かに、先程よりもさらに虹色の光が増したように思える。とてもではないが、町中など歩けない姿だ。

 そんな俺の隣へと、クリスティーネが並んだ。


「『光龍鱗』っと……えへへ、お揃い!」


 そう言って、嬉しそうに笑って見せた。色は異なるが、俺とクリスティーネの見た目は龍に近い似通った姿をしている。

 少女達が嬉しそうな様子だし、『虹龍鱗』を使う際はこの形になるように練習してもいいかもしれないな。特にクリスティーネの姿は見慣れているので、想像しやすいのだ。


 そう考える俺の前で、フィリーネが背の翼を広げて見せた。


「ジーくん、その姿ならきっと飛べるの!」


「さすがにそれは難しいんじゃ……いや、試すだけ試してみるか」


 一度は少女の言葉を否定しかけるが、すぐに思い直した。何事も挑戦だ、やるだけやってみよう。単独で空が飛べるようになれれば色々と役にも立つだろうし、純粋に飛んでみたいという気持ちもある。

 今だって、風の魔術を使えばかなりの高さまで跳躍することは可能なのだ。龍鱗の翼を使えば、跳躍から飛翔へと昇華することだって出来るかもしれない。


 そう考え、早速試そうとしてみたのだが――


「……これ、どうやって動かせばいいんだ?」


 翼の動かし方がわからなかった。それはそうだ、俺には元々翼などないのだから、動かし方なんてわかるはずがない。龍鱗は魔力で作っているので、それを操作すれば動かすことは可能だが、どう動かせば飛べるのだろうか。

 首を捻る俺の前で、クリスティーネが横を向く。


「ジーク、こんな感じに動かすんだよ!」


 そう言って、実際に翼を動かしてくれる。それだけで、少女の体が地上から離れた。なるほど、これはわかりやすいな。


「こう、か?」


 少女の手本を参考に翼を動かそうとしてみるが、どうにも動きがぎこちない。まだ龍鱗の魔術に慣れていないため、思った通りに動かせないのだ。

 慣れれば空だって飛べるようになるかもしれないが、しばらく練習が必要だろう。ひとまず、今日のところは龍鱗の魔術が再現できただけで良しとすべきだ。


「むぅ……フィーも使えるようになりたいの!」


 龍鱗を使用した俺とクリスティーネの姿を前に、フィリーネが唇を尖らせる。どうやら羨ましがっている様子だ。

 だが、フィリーネ達も龍鱗の魔術が使えるようになれば、戦闘力は飛躍的に上がるのだ。身に付けられるのであれば、習得した方が良いのは間違いない。


 そんなわけで俺とクリスティーネ、それからレイの指導の下、龍鱗の講習が始まった。俺が使えるようになったのだ、他の少女達だって使えるようになるかもしれない。

 だが俺の思惑は外れ、少女達が龍鱗を発動させることは叶わなかった。やはり、何か特殊な素質が必要ということだろうか。龍麟については、今後も引き続きの研究が必要そうだ。


 今日のところはひとまず龍鱗の訓練を終え、残りの訓練を消化しよう。

 『虹龍鱗』を解除し、皆にそう告げた時だった。


「頼もう!」


 そんな声と共に、三人の騎士が姿を見せた。

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