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51話 追放ギルドのその後3

 俺の名はヴォルフ。王都グロースベルクに拠点を置く、ギルド『英雄の剣』のギルドマスターだ。Sランクギルド『頂へ至る翼』との合併の話がなくなって以降、ギルドを追放したジークハルトの行方を追っているものの、未だにその足取りは掴めていない。

 あれから、このギルドには活気がなくなり、少し閑散としてしまっている。それというのも、ジークハルトと仲良くしていた新人達が抜けてしまったからだ。元々、ジークハルトが勧誘してきた者達で、ジークハルトのことを慕っていたようなので、それも仕方のないことかもしれない。

 辞めていった中には将来有望だったものも多く、またうちのギルドに不足しがちな術士が多く含まれていたことから、冒険者ギルドから来る指名依頼にもしばしば失敗する始末である。


 それもこれも、ジークハルトのせいである。奴が早くに戻ってさえいれば、こんなことにはならなかったはずだ。そもそも、あの無能は今どこで何をしているというのか。あの無能のことだ、冒険者生活など続けられず、金に困っているころだろう。その姿を確認できれば、少しは留飲も下げられるのだが。

 そんな風に思っていると、ギルドマスターの部屋へと続く扉が開けられた。入ってきたのは、ギルドメンバーの一人である男だ。


「ギルマス、ジークハルトを見つけました!」


「何?!」


 久しぶりのいい知らせだ。俺は思わず椅子から立ち上がり、前のめりになる。


「それで、連れて来たか?!」


「いえ、それが、すぐに見失ってしまって」


 男の報告に、俺は思わず舌打ちをする。使えない男だ。それでも、少しは事態が進展したとみていいだろう。


「まぁいい、王都にいるのであれば、直に見つかることだろう」


 ジークハルトを追放してから二、三日ほどはギルドメンバー総出で王都を探していたのだが、見つからなかった。そのため、王都を離れたのだろうと結論付け、捜索を打ち切っていたのだ。

 ここで見つかったということは、一時的に王都を離れていただけで、再び王都に戻ってきたということだろう。それなら、これから先いくらでも機会はある。

 そうしたことを考えていると、ふと気になったことがある。


「それで、ジークハルトの様子はどうだった?」


 大方、金が尽きて困り果てているころなのだろうが。俺はそう思っていたのだが、男から帰ってきたのは予想外の答えだった。


「いえ、いつも通りでしたよ? それに、随分と可愛らしい子達を連れていましたね」


 男の報告に、苛立ちが募る。いつも通りとは一体どういうことだ。あの無能は、まだ冒険者としてやっていけているというのだろうか。

 それに、可愛い連れがいたというのも許し難い。俺がこんなにもギルドの運営に頭を悩ませているというのに、あの無能は女と遊び歩く余裕があるとでもいうのか。

 苛立ちをぶつけるように握った拳でテーブルを叩けば、男は怯えたようにそそくさと部屋を出ていった。


 まぁいい。ひとまず、ジークハルトの奴が王都にいることは確認できたのだ。後は力尽くでも何でも、奴をギルドへと戻せばいい。そうすれば、Sランクギルドとの合併の話が再び成立することだろう。俺は晴れてSランクギルドのギルドメンバーになれるのだ。

 それを考えれば、行動は早い方が良い。この広い王都からただ一人を探し出すのは困難なことだが、上手くいけばジークハルトを見つけられるかもしれない。特に、冒険者ギルドあたりを集中して探せば、見つけ出すことはそう難しいことではないはずだ。

 俺はテーブルを回り込むと、外へと続く扉に手を掛けた。

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