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354話 薬の調達2

 俺達が帝都の門に辿り着いた時には、それほどの数ではないものの、帝都に入ろうとする人が列を成していた。帝都に入る者への確認が増えたことで、一人あたりに要する時間が増えたのだろう。

 ちなみに、その多くは冒険者のようだ。見かけは粗暴な冒険者達も、騎士達の手前か行儀よく列に並んでいる。俺とアメリアも、その最後尾へと並んだ。


 それからほどなくして、俺達の番がやってくる。少し緊張感を覚えながら、俺は騎士の前へと立つ。

 俺を見返す騎士の瞳に、特に変わったところはない。少なくとも今のところは、俺達が第三皇子の元からクリスティーネを攫ったことについては、気付かれていないようだ。


「人族の男に、獣人族の女だな。冒険者か?」


「あぁ、そんなところだ。ところで、何かあったのか? 前に来た時より、騎士の数が増えているみたいだが」


 俺は敢えて自ら質問を投げかけた。情報を得るためには、こちらから質問を投げかけたほうが効率がいいだろう。騎士達が何を探しているのか、どこまで知っているのかを見極める必要がある。

 俺の前に立つ騎士は、俺の言葉に軽い頷きを返した。


「あぁ、ちょっと探している人がいてな。お前達、ここに来るまでに銀の翼を持つ半龍族か、白の翼を持つ有翼族を見かけなかったか?」


 やはり、探しているのは俺達のことで間違いない。騎士の口にした特徴は、クリスティーネとフィリーネのものだ。二人とも、身体的特徴が明らかなので、手掛かりとして適当なのだろう。

 そして予想通り、騎士達が探しているのはその二人で、俺やアメリアについては言及しなかった。二人以外にも仲間がいることは向こうもわかっているだろうが、特定するほどの情報は得られなかったのだろう。


 内心で勝利の拳を握りながら、俺は騎士の言葉に平然と答える。


「いや、見てないな」


「そうか。それから帝都に入る前に、こちらの魔術具に触れてくれ。隠蔽解除の魔術具と言って、姿を魔術で偽っているものがいれば、明らかになるものだ」


 そう言って、騎士の男は側面に棒の付いた、箱型の魔術具をこちらへと差し出した。

 やはり騎士達が使用していたのは、隠蔽解除の魔術具だったようだ。以前、川沿いの町で見たものと、同じ見た目の魔術具である。

 俺とアメリアは、順番にその魔術具の棒を握って見せた。魔術具は人族である俺にも、今は耳と尻尾を隠していないアメリアにも、これと言って反応を見せることはない。


 俺達が間違いなく魔術具に触れたことを確認すると、騎士は一つ頷きを見せ、一歩脇へと立ち退いた。


「問題ないな。通ってよし!」


 そうして、俺達は帝都の中へと足を踏み入れた。もう少し踏み込んで聞かれるかと思ったのだが、簡単な確認をされただけである。

 とは言え、それも仕方のないことだろう。帝都には毎日、何人もの人々がやってくるのだ。いちいち根掘り葉掘り聞きだしていては、何時まで経っても確認が終わらず、帝都の外で野宿をする人が出てきてもおかしくはないのだ。


 門から少し離れたところで、アメリアが隠蔽の魔術を使用し、火兎族の特徴である大きな耳と尻尾を隠して見せる。こちらの姿も、随分と見慣れたものだ。


「意外と簡単に入れたわね?」


「あぁ、遠目にしか見られてないおかげで、フィナの見た目しか特定できてないみたいだな。これなら、そこまで警戒する必要もなさそうだ」


 もちろん油断は禁物だが、この分ならシャルロット達をつれてきても、安全に町を歩けそうだ。もっとも、頻繁に出入りすれば、次こそ門の騎士に顔を覚えられそうなので、出来る限り帝都に立ち寄る回数は少なくする必要があるが。

 その為にも、今日一日でいろいろと買い込む予定なのである。マジックバックのおかげで容量には困らないし、金もまだまだ余裕があるからな。


「それじゃジーク、まずは薬屋を探しましょう?」


「そうだな、軽く町中を見ながら行こうか。他にも食料や毛布とかも買っていきたいな」


 俺達が帝都に滞在したのは数日間だが、それもエリザヴェータの計らいで城の東棟に宿泊したので、町中については詳しくない。精々が門と城の位置関係、それにクリスティーネを救い出した大聖堂くらいなものである。

 買い物をする店については、まったく知らない状態だ。幸い、町中には帝都の見取り図なんかも設置されているので、そこまで困ることはなさそうだが。


 早速とばかりに見つけた帝都の見取り図へと、二人して近寄って確認する。帝都の中はある程度、区画整理がされているようで、商業区画に足を運べば一通りの物が揃いそうだ。

 そうして目的地を頭に入れていると、隣のアメリアから軽く袖を引かれた。


「ジーク、これ見て」


「ん?」


 見れば、アメリアは帝都の見取り図の隣にある、掲示板を指差していた。掲示板には国からの知らせや、金銭と引き換えに貼り出された店の広告なんかが貼り出されている。

 赤毛の少女は、その中にある一枚の紙を指差していた。見たところ、最近貼り出されたばかりだと見える、真新しい紙だ。


「どれどれ……なるほど、これはクリスとフィナのことだな」


 そこに書かれていたのは、門で騎士からも聞かれた、銀翼の半龍族と白翼の有翼族を探しているといった内容だった。どうやら、帝都の門だけではなく、町中にも情報は行き渡らせているらしい。

 今は二人とも動けない状態だが、これで動けるようになっても、二人は帝都の中には入り辛くなった。隠蔽の魔術を使用すれば、町中でも大丈夫だろうが、やはり門を通ることは出来ないだろうな。


「俺やアメリアのことが書かれていないなら、ひとまずは大丈夫だろう。薬屋のありそうな一画もわかったし、早速行ってみようか」


 そうして俺達は帝都の見取り図を後にし、町中を歩き始めた。

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