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257話 半龍少女と氷精少女4

「二人はどういう関係なの? 姉妹……なわけ、ないよねぇ?」


 エリーゼと名乗った火兎族の少女は、軽く首を傾げながら、私の背の翼へと目を向けた。いくら贔屓目に見ようとしても、私とシャルロットが姉妹には見えないだろう。種族的な特徴はもちろん、髪色も瞳の色も、顔立ちだって異なるのだ。

 その質問に、私達は顔を見合わせる。シャルロットの瞳が私を頼るような色をしていたので、私は頷きを見せた。シャルロットはまだ緊張しているようだし、ここは年長者として私が対応するべきだろう。

 それから再び、エリーゼへと向き直る。


「えっと、私達は冒険者で、一緒のパーティを組んでるんだ」


「なるほどね、冒険者かぁ。うんうん、確かにそんな感じする……かも?」


 そう言いながら、エリーゼは首を傾げて見せた。確かに、私はともかく、シャルロットなんて可愛らしい少女にしか見えないのだ。そう言う感想を持つのも、わからないでもない。

 エリーゼはさらに質問を重ねようとしたようだが、それよりも先に私が口を開いた。


「それより、ここがどこなのかとか、教えてもらってもいい?」


「あれ、もしかして、何もわからない感じ? ここはダスターガラーの町だよ!」


「ダスターガラー?」


 初めて聞く名前の町である。少なくとも、ジークハルトと共に旅をしてきた中では、訪れたことのない街だ。宿に泊まった夜など、地図を広げてジークハルト達と語らうことはあったが、その中にダスターガラーなどと言う町はなかったはずである。

 それどころか、シュネーベルクの町の近くでもないようである。馬車に揺られた日数から言っても、シュネーベルクの町からはそれほど離れていないはずなのだが、どういうことだろうか。


 シャルロットに心当たりはあるかと視線を向けるが、私の視線に気が付いたシャルロットは、ふるふると首を横に振って見せた。やはり、シャルロットにも覚えはないようだ。


「エリーゼちゃん、ダスターガラーの町って、シュネーベルクの町の近くじゃないの?」


「シュネーベルクの町?! クリスちゃん、シュネーベルクの町を知ってるの?!」


 私の言葉に、エリーゼは驚いたような顔を見せた。

 その様子に少し驚かされながらも、私は頷きを返す。


「う、うん。私もシャルちゃんも、その町の近くで捕まっちゃったんだ」


「そっか……シュネーベルクの町かぁ……懐かしいなぁ」


 そう言うと、エリーゼはどこか遠くを見るような目で、窓の外へと顔を向ける。私もそれに釣られるように、外へと目を向けた。

 すっかり陽は落ちたようで、外は暗闇に包まれている。階段を二度上がったので、ここは三階なのだろう。窓の外には建物も見えず、僅かに星空が見えた。


 少しだけ時間をおいて、再びエリーゼがこちらを向く。


「私もね、その……元々は、シュネーベルクの町の近くに住んでたんだ!」


「それって、もしかして火兎族の隠れ里?」


 火兎族なのだし、その可能性が一番高いだろう。

 そんな風に、ただ何となく言ってみただけのだが、エリーゼにとっては予想外の言葉だったようだ。先程よりも驚いた様子で、丸テーブルに手をつき軽く腰を上げた。


「クリスちゃん、何で知ってるの?! 火兎族の隠れ里の事は、一族以外には秘密なのに!」


「えっとね、私達、色々あって火兎族の隠れ里に行ったんだよね」


 それから私は、アメリアと出会ってからこれまでのことについて、掻い摘んで話をした。ひとしきり話し終えたところで、エリーゼは深く息を吐いた。


「なるほどね、そんなことがあったんだ。それにしても、クリスちゃんとシャルちゃんはアミーに会ったことがあるんだね」


「うん、アメリアちゃんとも友達なんだ。と言うことはエリーゼちゃんも、アメリアちゃんのことを知ってるんだ?」


「そうなの。ベティーとロジーも入れて、四人で昔からよく遊んでたんだ。ねぇねぇ、皆は元気だった?」


「うん、元気だったよ! ちょっと、奴隷狩りのことがあって大変だったけど、今頃きっと、ジークがなんとかしてるはずだから!」


「そっか……会いたいなぁ」


 そう口にして、再び窓の方を向くエリーゼの表情には郷愁の色が見えた。

 それを目にし、私の頭には一つの疑問が浮かんだ。


「エリーゼちゃんは、いつからここにいるの? 奴隷狩りに襲われたのって、最近のことだよね?」


 火兎族の里が奴隷狩り達に襲われたのは、私達がアメリアと出会う少し前のことのはずだ。てっきり、エリーゼもその時捕まり、私達のように奴隷として売られたのだと思っていたのだが、違うのだろうか。

 私の言葉に、エリーゼは首を横に振って見せる。


「ううん、私が捕まったのは……えっと、もう五年は前かな?」


「えっ、五年もここにいるの?!」


 驚きと共に聞き返せば、首肯が返る。

 聞けば、五年前にアメリア達と遊んでいた際、シュネーベルクの町へと足を伸ばしたようだ。そこで、火兎族であることが奴隷狩りに知られ、エリーゼだけが捕まってしまったということである。

 それから人身売買組織を転々とし、最終的にここに来ることになったということだ。そうしてこの部屋に閉じ込められ、五年が経過してしまったということである。


「五年いるとは言っても、町のことなんて全然知らないんだけどね? ほとんど部屋から出してもらえないし」


「そっかぁ……」


「あ、あの……それで、ここはどこなんでしょうか?」


 シャルロットの言葉に、はたと思い出す。そう言えば、町の場所について聞いているところだった。結局、ここはシュネーベルクの町からどのくらいの距離なのだろうか。

 エリーゼも、話の途中だったことを思い出したようだ。


「そっかそっか。えっとね、シュネーベルクの町からなら、距離的には三日くらいなんだけど……この町って、帝国領なんだよね」


「帝国……ですか?」


 エリーゼの言葉に、シャルロットが首を傾げて見せる。あまりピンと来ていない様子だ。

 とは言え、私自身も地理にはそこまで詳しくはない。国内についてならジークハルト達と多少話したことはあるが、外国ともなるとさっぱりである。

 それでも、多少は説明できることはある。


「えっとね、私達のいた王国とは別の国で、王国の北にある国だね。氷の属性の強いところで、とっても寒い国って話だったかな?」


 私の知っている情報としては、このくらいである。それでも、少なくとも間違ってはいないはずだ。エリーゼも、私の言葉を肯定するように頷いてくれた。


「そうそう、その帝国だよ。それで、この屋敷はダスターガラーの町にある、領主の屋敷なの」


「領主……貴族ってこと?」


「そうそう。貴方達も会ったと思うよ? 太っちょの、派手な服を着た趣味の悪い男の人、見なかった?」


 エリーゼの言葉に、私とシャルロットを購入して、ここまで連れてきた男の事を思い出す。なるほど、あの男のことか。確かに、お金は持っていそうであった。貴金属を大量に身に付けていたし、この屋敷もとても立派だった。

 しかし、領主ともあろうものが、奴隷など購入してよいものなのだろうか。いまいち、帝国と言うところがよくわからない。


 疑問点はまだまだある。幸い、エリーゼは私達と話すことを楽しんでいるようなので、快く答えてくれるだろう。

 私は一つ一つわからないことを聞いて行こうと、再び口を開く。


「ねぇ、エリーゼちゃん。ここって――」


 言いかけ、不意に口を閉ざす。その原因は、突然聞こえたノックの音だ。先程騎士達の消えていった扉が、外から軽く叩かれたようだ。続いて、錠の開く音が聞こえた。

 何だろうかと思っていると、正面に腰掛けるエリーゼが立ち上がった。


「夕食の時間みたい。話はまた後で、とりあえずついて来て」


 その言葉に、私とシャルロットは顔を見合わせてから腰を浮かせる。何もわからない以上、今はエリーゼの言葉に従っておくのが良いだろう。

 そうして後を追う私の隣へ、先程まで窓の外を眺めていた青髪の女性が立ち並んだ。

 結局、この人とは何も話せていないな、と考えていると、女性は横目で私へと視線を向けた。そうして、小さく口を開く。


「一つだけ、忠告しておくわ。ここで長生きしたければ、大人しく、目立たないようにしなさい」


 それだけ告げ、さっさと扉の方へと歩いていく。その言葉に、私はシャルロットと再び顔を見合わせた。

 言葉の真意はわからないが、私達を案じての言葉なのだろう。

 どうやら、安心できるのはまだまだ先らしい。

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