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238話 二人の行方3

「それで、ジーク。こいつらをどうするの?」


 そろそろ火兎族の里へと移動しようかと言う頃になって、アメリアから声を掛けられる。こいつら、と言って指し示したのは、一箇所に集められた奴隷狩りの男達である。

 今は砦の外の地面に、並んで座らせている。後ろ手に魔封じの枷を嵌めているため、逃げ出すこともないだろう。

 この男達の処遇について、移動する前に決めておく必要があった。


「殺すべきだ!」


 俺が何かを答える前に、割り込む声があった。

 その方角へと目を向ければ、助け出した火兎族達の姿がある。声を上げたのは、その中の一人の男性だ。


「生かしておく意味がない! こいつらは殺すべきだ!」


 男性は声を荒げる。その主張は、わからないでもない。

 実際、殺してしまう方が手間はかからないのだ。人身売買を生業にしていた以上、犯罪者に違いないのだ。殺されたところで、文句など言えない。

 それに、この場にいるのは俺達と火兎族達だけである。奴隷狩り達を殺して森に遺棄すれば、自然と獣たちに食われ、証拠も残らないだろう。俺達が口さえ割らなければ、真実は闇の中となるのだ。


 だが、そんな事情があって尚、俺はその言葉に待ったをかける。


「いや、ちょっと待ってくれ。俺は、出来れば生かして騎士団に引き渡そうと思っている」


 その言葉に、声を荒げた火兎族の男性は戸惑ったような表情をした。まさか反対されるとは思っていなかったという様子だ。

 それに対し、アメリアは意外にも冷静な様子だ。てっきり人族を目の敵にしているアメリアであれば、男性の言葉に賛同すると思っていたのだが、俺の言葉を待つように静かに佇んでいる。


 その様子を目にし、俺は言葉を続けた。


「別に、積極的に生かしたいわけじゃないけどな。何かの拍子に死んでしまっても構わないとは思ってる。ただ、この国の法に従って、裁かれるのが正しい在り方かと思ってな」


 この国では、人身売買は明確な犯罪である。発覚すれば死罪となるか、自身が売り捌いた奴隷達のように、強制労働に従事させられることとなる。

 奴隷狩り達を殺してしまったところで、俺達が逆に捕らえられるようなことにはならないだろうが、法的には微妙な線である。騎士団だって、良い顔はしないだろう。それなら、法に従って騎士団に引き渡すのが正しい行いのはずだ。


 それに、もう一つ理由はある。


「あと、余罪もあるだろうからな。騎士団に引き渡して、そっちで調査してもらった方がいいだろう」


 奴隷狩り達の被害者が、火兎族達だけと言うわけではない。それ以外の人族を始めた種族の人々だって、被害に遭っていることだろう。

 人身売買の現場を押さえられれば、芋づる式に犯罪組織が摘発されることだろう。それでも、騎士団に渡せる情報は渡してしまった方が、向こうも助かると思うのだ。


 俺の言葉に、アメリアは瞳を閉じて少し俯いた。頭の中で、考えを纏めているのだろう。

 それも少しの事で、目を開けて再び俺の事を見返してきた。


「……わかった。ジークがそう言うなら、それでいいわ。皆も、それでいいわね?」


 アメリアが、傍らの火兎族達へと声を掛ける。自身だって奴隷狩り達には思うところがあるのだろうが、それよりも俺の言い分に理解を示してくれたようだ。

 人族である俺が声を掛けるより、アメリアに任せた方が角が立たないだろうから、正直に言うと助かった。


 その言葉を聞いた火兎族の中には、未だ納得しかねると言った表情の者も多少はいるようだが、概ね納得してくれたようだ。

 彼らは奴隷狩り達から助け出した俺達の事を恩人だと認識しており、その恩人が言うのであれば、と言った様子だ。


 ひとまず、奴隷狩り達の扱いは決まった。

 そうなると、次は火兎族の里への移動である。移動に関しては、事前にある程度、段取りを組んでいた。


 まず、先頭をアメリアとベティーナが務める。そもそも、この砦から火兎族の里まで、正確な道程を知っているのが俺以外にその二人しかいないのだから、そうなるのは当然であった。

 その後ろに、囚われていた火兎族達が列になって続く。女子供は中心に配置された。幸いにも、全員多少の疲労はあるようだが歩行には問題がなかった。


 それに続いて、捕らえた奴隷狩り達だ。後ろ手に魔封じの枷を嵌め、互いを縄で繋いだ状態で歩いてもらう。中には足の骨が折れた者もいたが、事前に治癒術で治しておいた。その他にもあちこち怪我はしていたが、歩ければいいのでそちらはそのままにしてある。

 最後尾が、俺とフィリーネが務めることとなる。背後から魔物に襲われる事態を防げるし、奴隷狩り達が妙な動きを見せても迅速に対応できるだろう。


 そうして俺達は一丸となって、森の中を歩き始めた。周囲の警戒のために風魔術で音を拾っているし、そこまでの危険はないだろう。

 そうして黙々と森の中を歩き続け、昼に差し掛かったころだろうか。

 俺達の前方に、火兎族の里が姿を現した。

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