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149話 装備の製作と素材の売却2

 扉を開き、建物の中へと足を踏み入れる。魔術具の照明に照らされた室内に、ずらりと剣や盾が並んでいるのが目に入った。キラキラと光を反射するその様は、なかなかに壮観なものである。

 だが、今日の目的はそちらではない。俺は左右に並んだ商品に目を向けず、正面へと足を進めた。向かう先にはカウンターが設えられてあり、その向こうでは一人の大男がどこか暇そうに剣を磨いていた。


「ん? おぉ、兄ちゃん達か。久しぶりだな」


「あぁ、しばらくぶりだな」


 俺達が足を運んだのは、王都にある鍛冶屋である。前回ここに来たのはいつだっただろうか。

 確か、剣術大会に出た後、アンネマリーの護衛依頼の準備で町を巡った時以来だ。クリスティーネ用の防具を取りに来たのだ最後だったと思う。


 期間的には一か月以上前のことだが、装備の更新に立ち寄ったと考えるとそこまで遅いということはない。日頃から武具の手入れはするものなので、鍛冶屋に立ち寄るのが数か月ぶり、というのは普通のことなのだ。


「それで、今日はどうした? 装備でも買いに来たのか?」


「あぁ、そんなところだ。ミスリル製の装備を作ってもらおうと思ってな」


「ミスリルだぁ?」


 そう言うと、鍛冶屋の親父は怪訝な表情でカウンターに肘をついた。


「兄ちゃん達には、ミスリルはちぃと早いんじゃないか? まだ黒魔鉄の武器を使っていただろ?」


「そうかもしれないけどな。だが、運よくミスリルが手に入ったんだ」


「ミスリルが? 採掘でもしてたのか?」


 基本的に、ミスリルといった鉱石を得ようとするならば採掘という手段が一般的である。俺がミスリルを得たと言えば、鍛冶屋の親父が採掘をしたのだろうと思うのは自然なことだ。

 だが、今回はそうではない。


「いや、ミスリルゴーレムを倒してな」


「ミスリルゴーレムだと?!」


 俺の言葉に、親父が立ち上がりカウンターに両手をつく。身を乗り出したその勢いに圧されるように、俺は背中を仰け反らせた。


「ゴーレムって言うと、ダンジョンにしか出ない魔物だろう? ダンジョンに行ったのか?」


「あぁ、ちょっとな。あそこには二度と行かないだろうが」


 転移の魔法罠に掛かって苦労した苦い思い出があるという事だけでなく、あのダンジョンに潜っても単純に旨味が少ないのだ。

 上層ではケイブゴブリンとロックゴーレムという、ほとんど金にならない魔物ばかり。下層なら多少は金になるだろうアイアンゴーレムが出てくるが、それだって材質は普通の鉄である。


 もう少し危険度の低いミスリルゴーレムでも出るなら話は別だが、そうでもないならもう一度あのダンジョンに足を運ぶ意味合いは薄いだろう。


「ミスリルゴーレムっていうと、かなり珍しくて強い魔物だろう? 倒したのか?」


「あぁ、何とかな」


 余裕だったなどとは口が裂けても言えないが、倒したのは間違いない。もう一度同じことをしろと言われてもやりたくはないが、それなりの剣さえあれば可能だろう。

 出来れば、次があるならもう少し余裕をもって対峙したいところだな。


「ただ、その時の戦いで剣が砕けてしまってな。少なくとも、俺の剣だけでも欲しいところだ」


「ん? 折れたんじゃなくて砕けたのか? 一体何をしたんだ?」


「魔力を込めすぎたみたいだ」


 俺の長年愛用していた剣は、ミスリルゴーレムとの戦いで粉々に砕けてしまっている。ミスリルゴーレムの体が硬すぎたというより、俺が全属性の魔力を限界まで流したためだろう。

 それにより、剣の耐久力を越えたために内側から壊れてしまったのだ。剣には可哀相なことをしたとは思うが、あの時はそれ以外に方法がなかったのだから仕方がない。


「剣が壊れるほどの魔力って、兄ちゃんが使ってたのは仮にも黒魔鉄製の剣だっただろう? 一体どれだけ魔力を流し込んだらそうなるんだ?」


 鍛冶屋の親父が呆れたように言う。

 さて、どう答えるべきだろうか。本当なら、全属性の魔力を扱えることは言わない方が良いのかもしれない。そういう人は、なかなかに珍しい存在だからだ。

 だが、俺はこれから武器を作ってもらうのである。それも、出来れば全属性の魔力に耐え得る武器をだ。そのことを考えると、先に話しておいた方が良いだろう。


「全属性の魔力をありったけだな。そのお陰でミスリルゴーレムが斬れたんだから、御の字だろう」


「ほぉ、全属性とは珍しいな。しかも、黒魔鉄製の剣が壊れるなら、魔力も相当あると見た」


「どうだろうな? 人よりは多いみたいだが」


 俺の魔力量は、人間族よりも魔力の多いとされる精霊族、その一種である氷精族のシャルロットと同程度だと思われる。共に魔術の訓練をしている限りでは、そんな印象を受けた。

 なので、俺の魔力量はなかなかに多い方なのだろう。それでも無尽蔵と言うわけではないことは身を以て知っているので、あまり過信するわけにはいかないのだが。


「まぁ、ミスリルゴーレムを倒せるのなら、ミスリル製の装備を持ってても不足はないだろうな。素材は持ち込みか? それなら加工費だけで安く済むが」


「あぁ、ミスリルゴーレムの素材をそのまま使ってくれ。ここに出せばいいか?」


「馬鹿言え、こんなところに出されても邪魔で仕方ねぇよ。ついて来い」


 そう言って背を向ける親父の後に続き、店の奥へと足を進める。

 長い廊下が続く中、親父は手前から二番目の扉へと入っていった。入口から中を覗けば、左右と正面の三面の壁際にいくつもの棚や木箱が置かれている。

 木箱の中には蓋が空いているものもあり、中には石のような塊が詰まっているようだ。


「荷物がいっぱいだね」


「ここは……倉庫でしょうか?」


「フィーの勘が言ってるの。ここにはお宝が混ざってるの」


「触るんじゃねぇぞ」


 興味深そうに棚へと近寄る女性陣に、親父がギロリと睨みを利かせる。気弱なシャルロットは、クリスティーネの陰に隠れるように立ち位置を変えた。それに対し、フィリーネは気にした様子もなく箱の中を覗き込んでいる。


「それで、どこに出せばいい?」


「適当にこの辺りでいいだろ」


 親父の示す空いたスペースへと背負い袋を下ろし、袋へと両手を入れる。いくら解体したとは言え、一つ一つは片手では持ち上げられない大きさだからな。

 そうして、袋から一抱え程もある塊を取り出してズシンと床の上に置く。親父は塊の傍に腰を落とし、片手を添えて検分するように眺め始めた。


「なるほどな。表面がミスリル、中身は……こりゃあ黒魔鉄か」


「あぁ、さすがに全部ミスリルってわけではなかったみたいだ」


 言いながら、二つ、三つと背負い袋から新たな破片を取り出していく。足らないよりは、多めに渡しておいて余る方がいいだろう。


「よし、これくらいあれば十分か?」


「あぁ、十分だろう。別に全身鎧を作るってわけじゃないんだろう?」


「まぁな」


 戦争にでも行くなら全身鎧でも着こむのだろうが、冒険者にはそこまでの装備は不要である。動きを阻害しないように、上半身と腕を覆えれば十分だろう。


 それから俺達は注文する装備の細かい部分を話し合った。何本かの剣を握って一人一人に合う柄を決め、振り回しやすい重さを確かめるなど、様々だ。今回は柄頭や目貫に埋め込む石にも拘ってみた。


 完成には十数日を要するとのことだった。注文した量から言えば、十分に早い方だろう。

 それから俺達は新たな装備の完成を楽しみにしながら、俺達は冒険者ギルトへと向かうために鍛冶屋を後にした。

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