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148話 装備の製作と素材の売却1

「ついに帰って来たな」


 俺は目の前に広がる光景を目にし、大きく溜息を吐いた。

 フィリーネの故郷、フォーゲルベルクを発って十数日後、俺達は王都グロースベルクへと辿り着いた。


 なお、戻る際に利用した道程は、オストベルクからフォーゲルベルクへと向かう際に利用した道とは異なる。一度オストベルクへと向かうよりも、直接王都を目指すほうが早かったためだ。

 初めて訪れる町ばかりで、そう言った町を見ることが好きなクリスティーネも十分に楽しめたようである。


 さて、久しぶりの王都である。前回訪れたのは、実に一か月以上前のことだ。劇的に様変わりしているなどと言うことはないだろうが、多少は見て回りたいという思いもある。

 だが、時間帯は夕暮れ時、そろそろ宿を探さなくてはならない。町を見て回るのは、翌日以降でもよいだろう。


 それから俺達は宿を求めて王都を回った。幸い、以前利用していた宿屋に空きがあったため、そちらで部屋を借りることにした。

 そうして向かえた夕食時、一つのテーブルを囲んだ俺達は自然と言葉を交わし合う。主な話題は、翌日の予定だ。


「ジーク、明日はまず鍛冶屋に行くんだっけ?」


「えっと……ミスリルゴーレムの素材を売るんでしたよね?」


「あぁ、その素材で武器や防具を作ってもらおうと思ってる」


 ダンジョンで倒したミスリルゴーレムの残骸は、未だ俺達のマジックバッグの中で眠っている。バッグの容量のほとんどを占有してしまっているので、早く売り払わなければ狩りに行っても他の素材が入らないのだ。

 それに、今俺が使っている剣は予備の剣である。長年使用していた黒魔鉄製の愛剣は、ミスリルゴーレムとの戦いで砕けてしまったのだ。


 いつまでも予備の剣を使うわけにはいかない。早めに新しい剣を新調するべきである。

 折角ミスリルの素材が山ほどあるのだ。これらを使って、ミスリルの剣を作ってもらうのがいいだろう。


「でもジーク、あんなにいっぱいあるけど、鍛冶屋で全部売れるの?」


「まさか。鍛冶屋に売る……というか、渡すのは装備を作れる量だけだよ。鍛冶屋の後は冒険者ギルドに行って、そっちで残りの大半を売るんだ」


「冒険者ギルドなら、全部買い取ってくれるの?」


 フィリーネの言葉に「あぁ」と頷きを返す。

 鍛冶屋に渡すのは、俺達の装備の材料となるミスリルだけの予定である。そうすれば、材料費はほぼ無料で装備を作れることだろう。

 これだけの量を売れば当分金に困るようなことはないだろうが、節約できるのであればそれに越したことはない。


 冒険者ギルドであれば、すべてのミスリルゴーレムの残骸を買い取ってくれるはずである。俺は今まで利用したことがないが、ミスリルゴーレムのような大型魔物を討伐した際は、裏にある専用の倉庫に案内されるらしいのだ。

 まぁ、普段利用するカウンターではゴーレムの腕一本載せられないのだから、それも当然だろう。ギルドとしても、運ぶ手間が省けるということだ。


「ミスリルゴーレムを売った後は……そうだ、折角まとまった金が入るなら、打ち上げでもするか? ダンジョン初制覇記念ってことで」


 思い返してみれば、ダンジョンから帰還しても特に祝いの席などは用意していなかった。もちろんフィリーネの家に厄介になっていたという事情もあるが、さすがに疲れていたのでゆっくり過ごしたかったのだ。

 だが、改めて振り返ってみれば、当初こそ旨味のないダンジョンだったものの、最終的にはミスリルゴーレムという売ると大金になる魔物を仕留めることが出来た。良い経験もできたし、一区切りついたところである。


 こういう時くらい、豪勢な飲み食いをするというのも、冒険者の醍醐味と言うものだろう。

 そう思って提案すれば、やはりというべきか、まず初めにクリスティーネが食いついた。


「賛成! たくさん美味しいものを食べようよ!」


 今だって食事中だというのに、既に打ち上げ時の食事へと思いを馳せているようだ。大きな金の瞳が、夜空に輝く星々のようにキラキラと輝いている。


「いいと思うの。んふふ、ジーくんにたくさんお酒を飲ませるの」


「楽しみ、です」


 シャルロットとフィリーネも賛成のようだ。純粋に楽しみにしている様子のシャルロットに対し、フィリーネは何やら企んでいるように意味深な視線を俺へと向けていた。

 どうも、俺を酒で酔い潰そうという腹積もりらしい。

 いいだろう。

 普段はそこまで飲むことはないが、これでもそれなりには飲める方なのだ。逆に返り討ちにしてやろうではないか。


 さて、明日の夜の予定は決まった。後は、それまでをどう過ごすかだ。


「それなら日中は、また買い物にでも出るか? 王都に来るまでにも、いろいろと使ったことだしな」


 基本的には町から町へと移動し、夜は宿に泊まるようにしているが、それでも消耗品は減っていくものだ。補充するついでに、町を見て回るのもいいだろう。


「それならジーク、大衆浴場に行ってもいい? 宿だと、体を拭くだけでしょう? 大きいお風呂に入りたいんだぁ」


「あぁ、もちろんいいぞ」


 たまに風呂付の宿に泊まることもあったが、大半は湯をもらって体を拭く宿ばかりに泊まっていた。

 以前、護衛依頼でユリウスからもらった金もあるし、フィリーネの父フランクから呪術の解呪代も頂いている。それにミスリルゴーレムを売ったとなれば、金銭の心配はなくなる。

 それなら、風呂付の宿に変えることも視野に入れていいかもしれない。


 こうして、この日の夕食では翌日の予定を詰めていくのだった。

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