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133話 石造りのダンジョン9

「こいつは……アイアンゴーレムってやつか」


 頬を冷や汗が流れるのを感じながら、俺は言葉を溢した。その内容を聞き、クリスティーネが瞳を鋭くして前方から目を離さないまま、口を開いた。


「アイアンゴーレム? ロックゴーレムとは違う……のは、見たらわかるけど」


「まぁ、平たく言うと親戚みたいなもんだな。ゴーレムに血縁関係はないだろうが」


 アイアンゴーレムはロックゴーレムと同じゴーレムと言う種族と呼ばれ、一纏めにされるようなこともある。ロックゴーレムの別種とも、上位種とも呼ばれる魔物だ。


「同じゴーレムと言っても、油断するなよ。ロックゴーレム以上の硬度で、力も強いと聞いている」


 ロックゴーレムが岩で出来ているのに対し、アイアンゴーレムの体は金属、鉄で出来ているのだ。アイアンゴーレムはロックゴーレム以上に頑丈で、密度も高く重量も重いらしい。

 また、運動性能もロックゴーレムを凌駕しているそうだ。素直にロックゴーレムの上位互換と言っていいだろう。


 そんなアイアンゴーレムが一体、真っ直ぐに俺達の方へと向かってきている。相変わらず目や鼻などはなく、どうやって外部の情報を得ているのかは謎であるが、その挙動からは既に俺達を認識しているのだろうということが窺えた。


「ジーク、どうしよう? 戦う? それとも逃げる?」


「出来れば、この場で倒した方がいいだろうな」


 理由としてはいくつかある。


 まず、アイアンゴーレムを一体見かけるということは、この階層には他にもアイアンゴーレムがいるのだろうと予想される。ここでやり過ごしたとしても、何れはアイアンゴーレムと戦わなければいけない時が来るだろう。

 それを思えば、今目の前にいるのは一体だ。ここで倒せなければ、これから先も倒せないということである。倒せるのならそれが一番いいし、倒せないとなると今後の対応を考えなければならない。


 また、例え戦わずに逃げたとしても、逃げきれるかわからない。アイアンゴーレムの動きはそれほど早くないように見えて、その実歩幅が大きいために意外なほどに速度が速い。逃げきるのは至難の業だろう。

 それに、逃げた先で別のアイアンゴーレムに出会ってしまえば、挟み撃ちと言う形になってしまう。今の状況で、二体に前後を挟まれるのは致命的だ。


「クリス、いつも通り前を頼む。シャル、俺と一緒に、ゴーレムの動きを止めるぞ」


「任せて!」


「わかりました!」


 俺は、今のところロックゴーレム相手に最も効率的に戦えた策を選択する。

 即ち、俺とシャルロットの魔術でゴーレムの動きを止め、クリスティーネが単身ゴーレムの核石を砕く戦術だ。

 この戦い方が、今のところ最も安定し、かつ速やかに戦闘が終了する。戦闘は長引けば長引くほど、危険が増すものだ。早く終わらせるに越したことはない。


 クリスティーネが前へと走り、ゴーレムと相対する。

 話に聞いていた通り、アイアンゴーレムはロックゴーレムよりも運動性能が上のようだ。ゴーレムの振るう双腕に、クリスティーネが押されているのが見える。

 元々、至近距離で相対するのは難しい相手だ。早めの手助けが必要だろう。


 俺は体内の魔力を練り上げると、ゴーレムへと左手を翳す。


「『強き石の腕フェルズ・シュタルク・アルマ』!」


「『強き氷の腕アイス・シュタルク・アルマ』!」


 俺とシャルロットの声が重なる。

 地面から生み出された岩と氷の腕が、怒涛の勢いでゴーレムの両腕を拘束した。動きの止まったゴーレムの姿を確認し、いざ飛び出さんとクリスティーネが両足にぐっと力を入れる。


 そして地面を蹴る直前、ゴーレムの両腕が大きく動いた。

 ゴーレムは両腕を拘束している魔術の腕を割り砕くと、一歩踏み込んで目の前に立つクリスティーネへと鉄の拳を叩き込んだ。


 飛び出しかけていたクリスティーネは出鼻をくじかれる形となり、強引にその身を逸らす。あわや直撃するかと背筋が凍る中、クリスティーネはギリギリのところで身を躱したようだ。

 そのまま初級魔術で牽制しながら、トットッと俺達の方へと後退する。


「クリス、無事か?」


「うん、なんとか」


 クリスティーネの元気な様子に、俺はほっと息を吐いた。ゴーレムの一撃など受けようものなら、骨など容易く折り砕かれてしまうだろう。


「さて、どうするか……」


 拘束で動きを止められないとなると、後は関節などを地道に砕いていくしかないだろう。

 戦闘が長引くことを覚悟していると、隣に立ったクリスティーネが口を開いた。


「大丈夫、少しは止まってたから。次は、もっと早くするわ」


「大丈夫なのか?」


「うん、信じて」


「……わかった、任せる」


 危険だということは、クリスティーネもわかっているはずだ。それでも、クリスティーネの口調には自信が見えた。ならば、その言葉を信じてやるべきだろう。

 確かに、俺とシャルロットの魔術により、アイアンゴーレムの動きは一瞬とは言え止まっていた。

 掛け声と同時に飛び出せば、ゴーレムの核石にも剣は届くかもしれない。


「よし、シャル、もう一度だ!」


「はい!」


 俺とシャルロットが魔術の詠唱をする間に、クリスティーネが前方へと躍り出る。そうして、アイアンゴーレムと再び斬り結び始めた。

 俺は再度体内の魔力を練り上げると、ゴーレムへと掌を向ける。


「『強き石の腕フェルズ・シュタルク・アルマ』!」


「『強き氷の腕アイス・シュタルク・アルマ』!」


 俺とシャルロットの掛け声と同時に、白と黒の柱が聳え立つ。それらは先程の再現のように、ゴーレムの両腕を掴んで動きを止める。

 その時には既に、クリスティーネは地を蹴っていた。


「『突光飛剣』!」


 高い声と同時に真っ直ぐ伸ばされた剣先が、ゴーレムの核石を捉えた。

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