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127話 石造りのダンジョン6

「クリス!」


「『突光飛剣』!」


 俺の掛け声に、クリスが飛翔しロックゴーレムの核石を貫いた。

 それだけで、今日何度目かの遭遇となるゴーレムが地にその身を伏せる結果となる。

 それらを見送り、俺達は静かに剣を収めた。


 始めてロックゴーレムを倒した日から、既に五日が経過している。俺達は『石造りのダンジョン』の五階層目を探索していた。

 ここまで潜るとケイブゴブリンはその姿を見せず、遭遇するのはロックゴーレムばかりである。大抵は一度に一体しか遭遇しないのだが、稀に二体纏めて出会うこともあった。

 通路が広いとは言ってもゴーレム二体が横になれるほどではなく、一体ずつ対処すれば問題ないのが幸いである。


 この短期間で、俺達は結構実力が増してきていると思える。特にゴーレム相手には随分と慣れてきていた。動きも見切れるようになり余裕も出てきたので、いろいろと戦い方を試していたりする。

 膝や肘の関節を中級剣技や中級魔術で砕いたり、直接核石を中級魔術などで砕いたりと、倒し方は様々だ。それでも、効率の面だけで言えば最初にゴーレムを倒した時のように、俺とシャルロットでゴーレムの動きを止め、クリスティーネが止めを刺すという形が一番早くて危険度も少ないものであった。


「むぅ、フィーの出番がないの」


 などと、フィリーネは頬を膨らませ、少し不満そうな様子ではあったが。だが、フィリーネはフィリーネで周辺警戒と言う大事な仕事もしているのだし、役に立っていないわけではないのだ。


 俺が地図を確認していると、何かを考えこんでいたようなクリスティーネが、倒れたゴーレムから俺へと視線を移した。


「ねぇジーク。私、大変なことに気付いちゃったかもしれないんだけど」


「どうした?」


 何か変わったことでもあっただろうかと、俺は首を傾げた。

 目の前に倒れているゴーレムは今まで戦ってきたものと遜色のないもので、特殊固体だったなどと言うこともない。

 俺には何もわからなかったが、クリスティーネは何かを見出したのだろうか。


 半龍族特有の勘の良さでも働いたのかと考えていると、クリスティーネは迫真の表情を作って口を開いた。


「もしかして、このダンジョンって、あんまりおいしくない?」


「……そうだな」


 そこまでかしこまることかと内心思いつつ、俺は神妙に口を開く。


「はっきり言って美味くはない。二重の意味で不味いと言えるだろう」


 まず、実入りが少ない。ケイブゴブリンから取れる素材は魔石のみ、それも安いと来たものだ。いくら数を多く狩ったところで、大した儲けにはならない。


 さらに問題なのはロックゴーレムだ。倒すのにかかる労力はケイブゴブリンの比ではないというのに、儲けは全くのなし、ゼロである。

 実際のところは、傷つけずに取り出せれば核石が売れるのだが、そのためには今以上に危険を冒す必要がある。だというのに、取り出したとしても核石は大した金額では売れないのだ。労力に見合わないということもあり、核石を砕いて仕留めることにしている。


 もう一つの意味としては、食えないということである。クリスティーネにとっては、むしろこちらの方が重要だろう。

 ケイブゴブリンはゴブリンの例に漏れず、食用に適さない。それでもクリスティーネは少しだけ挑戦していたが、口に含むと同時にものすごく渋い顔をしていた。それでも吐き出さないところはさすがであったが。


 そして、やはり問題なのはロックゴーレムだ。奴は岩の塊である。当然、可食部などあるわけがない。

 これで、オークのような食べると美味い魔物でも出てきてくれれば、もう少し冒険にやる気も出るというものなのだが。


 そんなわけで、素材も肉も売れないということで冒険の成果としては完全なる赤字なのだ。このダンジョンが人気のない理由がわかるというものである。経験を積めるという点で言えば悪くはないが、せめてオークくらいは出てきてほしいところだった。


「ジーク、私、ちょっと飽きてきちゃったかも……出来れば、美味しい魔物と戦いたいなぁ」


「フィーもなの。洞窟の中は飛べないし窮屈なの」


「えっと……」


 クリスティーネとフィリーネが、ややうんざりとしたような表情を見せる。シャルロットも眉尻を下げ、苦笑を見せていた。

 その気持ちは俺にもわかる。俺自身もこのダンジョンの探索には飽きてきていたところだ。

 もちろん、冒険にはそれなりに危険はあるし、ゴーレムなどと対峙しているときは皆、真剣な面持ちで戦闘に臨んでいる。


 だが、どこまで行ってもほとんど変わらない洞窟の景色に、青白い壁や天井に照らされた中を歩き続けるのは、精神的にもよくないだろう。

 これが、森の中などであれば緑はあるし、陽の光もあってそこまで気が滅入るようなことはないのだが。改めて、自然と言うものに感謝の意を示したくなるところだ。


「みんな、もう少しだけ我慢してくれ。たぶん、そろそろ五階層目の探索が終わるはずなんだ」


 二層目までの探索に比べ、三層目以降の探索には時間がかかっていた。それらはひとえに、ゴーレムとの戦闘にそれなりの時間を要するためだった。それに、最短ルートを選んではいるが、層から層への移動にもある程度の時間を要している。

 それでも順調に探索は続いており、俺の体感ではそろそろ五階層の探索が終わるはずだった。これが、突然五層目だけが広くなっているなどあれば別だが、四層目までの様子を見るにその可能性は低そうである。


「折角だし、ダンジョンを制覇して終わろうぜ?」


「それにはフィーも賛成なの」


 フィリーネが賛成を示すように挙手をする。クリスティーネとシャルロットにも異論はないようだ。

 その後も俺達は探索を続け、さらに数体のロックゴーレムを討伐する。そうして、ダンジョンの五階層の調査をすべて終えるのだった。

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