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よろしくお願いいたします
夏の夜、美也子は頬を腫らして帰ってきた。
「今日はどうしたの!?」
慌てて冷凍庫から保冷剤を取り出して手渡した。
「ありがとう……あぁ、うん。駅前で酔っ払いのケンカがあった…」
「巻き込まれた!?」
「ううん、そうじゃないんだけど」
「ダメだよ。近づいたら…怪我、写るじゃん…」
「うん…そうなんだけど」
リビングの椅子に腰掛けて彼女は言い淀む。
下唇を噛んで、人差し指で触る。グロスで潤っていた唇が歪んだ。
「けど?」
「……」
彼女は指を少し口から離してペロリと舐めた。そのまま僕をゆっくりと見つめた。
「シメは福ちゃんラーメンか、ごっちゃラーメンかで揉めてたから。気になっちゃって」
突然のラーメン話に僕は思わず笑顔を作った。
「そっか。美也ちゃん、ごっちゃラーメン好きだもんね」
僕が笑うと彼女は安心したように笑った。
「うん…好き」
彼女は甘えるように僕に抱きついた。
「圭くん、好き…」
「僕も、好きだよ」
お互いに見つめあって自然と口付けを交わした。
その夜、彼女が痛くないように、優しく優しく抱いた。
ありがとうございました