第二話 ヤンキーお嬢様
佐野葉月。
昨日都を助けてくれたヤンキー少女。
それがなんの運命のいたずらか、都と同じ中学同じクラスに転校してきた。
転校生と言えば、初日から注目の的で質問攻めにあうと言うのがパターンだが。
「あ~……佐野さん」
「あぁん?」
「ひ、ヒィ……!」
金髪。それに転校先のブレザータイプの制服を着ようとせず、前の学校の黒のセーラー服で近づくものにガンを飛ばす。
みな佐野葉月に近づきたいが遠巻きに見るしかないと言った感じだった。
その例にもれず、都も英子と共に自分の席から一人孤独に座っている佐野葉月を観察することしかできない状態だった。
「何あれ、感じ悪ぅ……」
「ヤンキーだからね。仕方ないね」
「でもさっきの話本当?」
「ん?」
「あの子に助けられたって。あの子があんたを襲いそうな見てくれだけど」
「ヤンキーがみんなカツアゲするわけじゃないぞ。あの俺の家の西側に広い田んぼ道があるじゃない。あそこで襲われそうだったところをちょうどタイミングよく」
「あそこなの? 明かりも車通りも少ない上に夜中あそこを通る人もいなくて犯罪の温床となっているあそこ?」
「説明台詞ありがとう。まあ、その危険な田んぼ道だよ」
「誰も通らない場所。で、たまたまあの子が助けに来るって……家が近所とか?」
「それも確かにあるかもしれないけれども……転校生だし、あの制服って……」
佐野葉月が来ている黒いセーラー服はここいらでは有名な制服だった。
「あ、気づいとった? あれお嬢様学園で有名の乙女坂女学園の制服よ。だから、ヤンキーみたいな髪の色しとるけれども、もしかしたら……と思ってあの子たちは近づいとるんよ」
また、佐野葉月に話しかけようとするクラスの女子が近づくが、再びガンを飛ばされて委縮して帰っていく。
「乙女坂学園ってかなり遠いよね?」
「そこからわざわざ……それも、昨日たまたまあんたを助けた……もしかして……」
英子が都の耳元に顔を近づける。
「あんたのストーカーなんじゃないの?」
その可能性を、昨日からずっと考えていた。
「俺も、実は、昨日のあれはストーカー同士のつぶし合いだったんじゃないかとじゃっか……」
佐野葉月を遠巻きで見ていたところ、変化があった。
イライラがピークに達したように頭をかきむしり、勢いよく立ち上がる。
「お、バックレるのか?」
「何期待してんのよ……」
若干目を輝かせている都に英子が呆れる。
佐野葉月はそのまま教室の外へ出ていくか……と思ったが、ずんずんと二人の元へと近づいてくる。
都と英子は「え……え?」と戸惑いの声を上げているうちに、佐野葉月は都の目の前までやってきていた。
「あの、佐野さん。何か……」
「あんた、宇都都だな?」
「はい……先日は……」
「ちょっと面かせ」
ぐっと親指で廊下の方を指さす。
英子が口元を隠しながら再び顔を近づけ、
「やっぱりストーカーなんじゃないの?」
「だまらっしゃい。きこえるでしょ」
佐野葉月に気づかれないように声を潜めて英子を叱りつける都だった。