1.魔法ってなーに?
この世界における魔法についての説明をしようと思う。
魔法とはこの世界に普遍的に存在しているエネルギー、【マナ】を消費して起きる超自然的現象のことだ。
俺たちの使う魔法はもちろん、マナ災害と呼ばれる自然災害も広義的には魔法だ。
マナはありとあらゆるものに含まれているが、基本的には生物の体内には密度の高いマナがある。
魔法を使ったりなどで体内のマナが減少すると、空気中にあるマナを体に取り込んでいく。
ちなみに筋肉や脂肪よりも内蔵や骨、皮膚などのほうがマナ濃度が高い。だから魔獣は肉よりも骨や革のほうが素材として有用だ。
一般的に魔法と呼ばれるものは人間や魔人、一部の魔獣がマナを利用して行使する超自然的現象だ。
基本的には体内にあるマナを魔力操作によって調律し、放出することを指す。
魔力操作には大きく分けて3種類ある。
1つ目が詠唱だ。マナの操作の補助を行うために作られた言葉を唱えることで、自分の代わりにマナを操作してくれる。
利点は誰でも同じ魔法が使えること、空気中に存在するマナの利用に効果的なところだ。
欠点は呪文を唱える必要があるため喋れなければ使えないことと、発動が遅いことだ。
そのため、詠唱は自身の行使マナ上限(一度の魔法で使える体内マナの量)以上の魔法を使う場合に補助的に使うことが多い。あとは体内操作の参考としてマナの流れる感覚を覚えたりする用だな。
2つ目は刻印だ。魔法陣やルーン文字もこれに該当する。モノに描いた模様や文字がマナの操作を代替してくれる。
利点は術者以外でも使用できること、遠隔または自動で魔法を発動できるところだ。
欠点は刻印をするために専用の魔法が必要なこと、描いた模様や文字が掠れたりすると効果が弱まったり失ったり、最悪暴走したりすることだ。
こちらは大規模呪文を行使したりする際や、詠唱の代わりに使用することが多い。一度刻印すれば詠唱を間違える心配もないからな。
3つ目が体内操作だ。詠唱と区別するために無詠唱と呼ばれたりもする。言葉の通りマナを自力で操作する方法だ。
利点は自分で好きなように出力を決められるところ、連射性が高いところ、意識さえあれば魔法を使えるところだ。
欠点は高位の呪文になってくると失敗した際のデメリットが大きすぎること、体の外にあるマナの操作に難があるところだ。
とはいえ、難易度の高くない呪文であれば失敗してもまあやけどや骨折程度で済むし、詠唱や刻印より手軽に使えるので、魔法使いの基本は体内操作を覚えるところからだ。
…ちょくちょく話に出たが呪文についても軽く解説しておこう。
呪文とは簡単に言うと「魔法の名前と効果が紐付けされたもの」のことだ。
《ファイアボール》という名前の魔法がある。火属性の中級魔法だ。火の玉という名前の通り、火でできた玉を飛ばす魔法。
この説明で「《ファイアボール》は火でできた玉を飛ばす魔法である」ということが分かったと思うが、これが「《ファイアボール》という呪文を知った」ということになる。
魔法は使う本人が効果を理解していなければ使えない。「呪文を会得する」ということは「会得する呪文の名前と効果を理解する」ということなのだ。
次に「魔力」について説明する。
一般的に魔力というと、体内の総マナ量のことと思われがちだが少し違う。
魔力とは文字通り魔法の力、すなわち魔法を使うための総合的な能力を数値化したものだ。
「魔力が高い」とはつまり、「魔法が上手い」とほぼ同義である。
具体的には体内の総マナ量は勿論、行使マナ上限、マナ吸収率(空気中のマナを取り込む効率のこと)、行使速度・魔法連射性などを多角的に判定し数値化する。
…項目が多いので測定は大変だが、自身の魔法の強さが具体的な数値として見れるため、数年に一度は測定するのがおすすめだ。
今日の最後は「属性」について説明しよう。
まずはマナの六大元素。火・水・風・土・光・闇の6種類だ。
ほぼすべての人間はこの属性のどれかに適正がある。複数持つものもいるし、全属性に適正がある人もいる。
とはいえ一言で「適性がある」と言っても内容は様々で、「マナ消費量が少なくて済む」とか「適正属性の連射性が高い」とか「適正属性の補助魔法を受けると効果が強く出る」と言った具合だ。
属性の詳細に戻ろう。
マナを属性のイメージに変換する。こうして変換したマナ、属性マナを使って魔法を使う。
火・水・風・土はイメージしやすいだろう。しかし光と闇については少しイメージしづらいと思う。
光は浄化や回復、強化に向いている属性で、明るいとかほんのり温かいといったようなイメージの魔法が多い。
闇は腐食や吸収、代償つき強化に向いている属性で、暗いとか寒気を催すといったイメージの魔法が多い。
相反する属性のように見えるが実はそうでもない。光と闇の両方に適正を持つ人間も多くいる。
両属性とも自己強化に向いているので単独で戦場をかけるカオスナイトという専用職業があったりもする。
本編で登場した聖属性についても説明しよう。
簡単に説明すると光属性の上位属性だ。
上位属性とはマナの六大元素それぞれに存在する更に強力な属性のことだ。炎・氷・嵐・岩・聖・魔の6種類になる。
それぞれより強力な魔法が使える属性だが、先天的に適正を持つ人間は滅多に存在しない。
後天的に適正を得ることも出来るが、多くの時間を要する。聖と魔に関しては他の4属性よりも圧倒的に時間がかかる。
俺は上位6属性の適正を後天的に得るのに400年近くかかったが、聖と魔だけでその内300年を使った。
まあ、上位属性については本気で魔導を極めようとしたり、最上位の魔物や魔人と戦うようなことがない限りは気にしなくてもいい。
…ん?「雷属性は無いのか」だって?
ああ、忘れていた。雷属性という属性は定義上存在しない。
雷の有名な魔法である《ライトニングボルト》という魔法、あれはマナを用いて静電気を発生、増幅・保持し、貯めた電気を対象に誘導する魔法だ。
マナを直接雷に変換しているわけではないので上で説明した属性の定義には当てはまらない。
一応弱い電気なら直接変換で作れるので理論上は存在するが…まあ出力を上げようとした魔法使いの大半が上半身不随になったといえばなんとなく察しが付くだろう。
無属性のマナが絶縁体となって電気の保持をしてくれている。だから五体満足に雷魔法が使えるというわけだ。
雷魔法は発生と着弾が早いし、何よりかっこいいので憧れるのは分かるが、もし習得しようと思うなら最低でも上級魔法を自在に操れるようになってからにするように。
マナ操作を誤って感電死しても知らないぞ。