8話 コンテンダーの改修
いつもありがとうございます!!
「なんでコンテンダーを?」
ガンベルトに収納してあるあまり触らない方の片方の銃へ手を伸ばす。
バジルが時間が無い中ここへ来たのは、キンベイがトワイアの事を承知であった事と、彼曰く俺が求めている物さえ知っているような言動をとったからだ。
だがそれがお世辞にも使い勝手のいいコンテンダーを渡す事に繋がる理由がわからない。
キンベイがガンスミスだと言うことから、銃のメンテナンスをかって出ているのだろうかとも思うが、その程度のためにここへ読んだのなら拍子抜けの感じが否めない。
「お前さんは魔弾を使ったことがあるか?」
「…ああ」
この男は魔弾の事まで知っているのか。まあ軍人だった祖父の殆ど専属であった事を考えればそれも当然か。
「コンテンダーは元々、魔弾を放つために儂が調整した銃だ。他の物で撃つよりもその効果を高める効果を持っていた」
この形見の銃を使ったのは故郷の村でレッサーアースドラゴンと相対した際の一回のみだ。
その時に使ったのがアルミンが細工をした『本物』の魔弾だったため、銃の違いなど特に気にも止めていなかった。
ん?持っていた?
バジルの疑問が顔に出ていたのか、察したキンベイが口を開く。
「コンテンダーに今その力は無い。お前の爺さんが最後に会った時機構を封印しろと言われての、理由は結局教えてはくれんかったがな」
そしてこうも祖父は言伝をしていたという。
「もし、自分の孫がやって来たら助けになってほしいってな」
「爺さんが…」
祖父の顔が脳裏に浮かぶ。自分に戦う力を与えてくれた。祖父、トワイア共々身寄りのなくなった自分達を迎い入れてくれた恩人。
そんな人物がまさか何年も経ちこんな都会に出てきたバジルの事まで案じてれていた事と、律儀にその話を守ってくれたキンベイの存在に思わず胸が詰まってしまう。
「コンテンダーに掛かっている制限を外してやる。あとはそうだな…ホワイトフィールドの警備について知っている事を話そうか」
「…!?良いのか?」
その情報とはバジルが今喉から手が出るほど欲している物であった。
そんな重要な話を一介の魔道具技師、否ガンスミスであるキンベイが知っているというのは激しく疑問ではある。
「何でそんな事お前が知ってるんだ?いや、ありがたいんだけどよ」
「お前の爺さんはそれなりに軍の中でも特殊な立場でな、銃のメンテナンスや魔道具を降ろしていた儂も何度かホワイトフィールドへ入る事があって何度か中を見る機会もあったんだよ」
「そう…か、ありがとう。でもなんでそこまでしてくれるんだ?」
話が旨すぎるともバジルは思う。
武装の強化に、首都官邸の警備情報をもらえるというのはあまりのもこちらに都合が良すぎる。
「別に…ジェイソンにはそれだけ世話になったって事だ…あの野郎、つまんねぇとこで勝手に死にやがって」
沈痛な面持ちで俯くキンベイ。
その姿をアルミンがいつもの感情の読めない無表情で見つめていた。
「…」
そういえばアルミンは以前祖父と行動を共にしていたらしいがキンベイは彼女の事を知っているのだろうか?
「なぁキンベイさん。あんたはアルミンの事を知ってるか?もし何かーーー」
「悪いことは言わん。その化物とは縁を切れ」
にべもなくそう言い放つキンベイにアルミンが苦笑する。
「おいおい酷いじゃないかキン。一時期は一緒に旅もした仲だろう?」
「キンって呼ぶな。貴様と話すことなど何も無い」
ここに来て以来、キンベイがアルミンを無視していたのは興味が無いからではなく。単純に嫌っていたかららしい事を今知った。
「アルミン、お前はキンベイやこの店のことを知っていたのかよ」
「ああ、このチンチクリンの事は知らなかったが案内しているのがこの店だって事はすぐに分かった」
そう言ってアルミンは「チンチクリン」と言われ憤慨するワカサの頭をグリグリと撫でる。
「…なんで言わなかった?」
「特に聞かれなかったからな」
「ああ、そう」
基本的にアルミンが傍観者だという事を忘れていた。
にしてもコイツは自分の事や祖父の事になると殊更に情報をボカす傾向にある気がする。
今すぐに知りたいわけでは無いがモヤモヤすることには変わりない。
「そいつを信用するのはやめておけ。人の心なんて分からんよ」
「せっかくずっと空気を読んで黙っててやったのになぁ…ジェイソンとお前と私の3人で旅していた時のお前の恥ずかしいエピソードをお孫さんに話してしまっても良いのか?」
アルミンが抱える様に拘束していたワカサが我慢の限界と言ったようにそれをどうにか振り払い、不機嫌な顔をするキンベイへと叫んだ。
「ちょっと待ちなさいよジジイ!!ホワイトフィールドの警備情報を教えるって何考えてるの!?そんなの漏らした事がバレたらあたし達捕まっちゃうじゃない!悪ければ極刑よ極刑」
彼女が怒るのも無理はない。それだけ国防に関する情報というのは重要であり秘匿されるべき物である。
「心配はいらん。万が一の時はお前を逃す算段くらいはつけてあるわい」
「そういうことじゃなくて…」
純粋に自分の家族のことが心配なのだろう。
バジルにはその気持ちが痛いほど良く分かったが、同時に自分が彼らの言い争いの原因になっている事も理解してしまう。
「誰かいないのかーーー?」
すると今まで通って来た通路の方から何やら声が聞こえた。
「何!?客!?今まで来なかったくせにこんな時に限って…」
「ほら、お前さんの欲しがってた客だぞ。早くガラクタでもなんでも売ってこい」
「ガラクタじゃないわよ!!!〜〜〜〜〜っっもう!!言ってくるわね!!」
苛立ちを足に乗せドカドカと豪快に地面を踏みならしながらワカサが工房を出て行った。
「お前さんも銃を渡したらさっさと部屋を出てくれ。気が散って集中出来んからな。
夜になったらまた取りに来い」
「私は少し残るわね」
「貴様も出て行け」
バジルはコンテンダーを作業台に置き、旧知の仲らしい2人を残し工房を出る。
彼の心にあるのは先程のワカサのことだ。
剣のある態度を取っていても彼女だって家族のことが大切なのだ。だからこそキンベイの何かあった時の事を聞いても納得をしなかった。
バジルにはその想いが痛いほど良く分かる。
そして同時に自分がその思いを踏み躙る切っ掛けになっている事にも気づいてしまう。
トワイアは救う。
これは決定事項だ。その為にはどんな事だってしてみせる覚悟がバジルにはある。
しかしその為に自らと同じ願いを持つ人間の命を脅かして良いものか悩んでしまう。これがただの悪人であったなら何の躊躇いも無く銃口を向ける事が出来るのだが…。彼らはそうでは無い。祖父の友人でもあった彼等はただ慎ましく暮らしていただけなのだ。
もし、トワイアを救う事が出来たたその時…あの人たちが死んでしまっていたら?
自分は胸を張ってトワイアと向き合う事が出来るのだろうか。
その疑念を抱き、表情を暗くしながらバジルはワカサの後を追うのであった。
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