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異世界男の娘ガンマン ~魔法が使えない能無でも弟の為に最強目指す~   作者: 冷えピタ
二章 首都ノーウィークへ 〜奴隷編〜
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extra sideアルミン

あらすじ 謎の男無双。

 奴隷商人の屋敷の前で人形のように目鼻立ちが整った少女が大きなバックを背負い込み佇んでいた。

 その目はまるでガラス玉のように透き通っており夜空の星を映し出している。


 そして彼女の手には何やらヒビ割れた鈴のような物が握られていた。


「随分と脆いオモチャだったな」


 興味もなさそうに呟いたのは、バジル・アントリウムの旅の連れ。アルミンである。


「人間が作った物はみんなそうさ」


 1人、こんな真夜中に突然声をかけられたのにも関わらず、アルミンに動揺した様子はない。寧ろ待っていたとさえ思える彼女の様子に声の主の方が逆に驚かされてしまう。


「あれ意外と驚いてなかったりする?」


「あの奴隷商人が()を持っていた時点で察していたよ」


「それもそっか」


 カラカラと楽しげな笑い声をあげながら、暗がりから1人の少年が姿を現した。


 少年の髪は艶やかな藍色で月の光を反射し、薄く輝いて見える。


「やあ13番目、暫く見ない間にコブ付きになったみたいだね」


「久しぶり2番目、お前は相変わらず道楽にかまけているのか?」


「「……」」


少年はアルミンが乳母のように竜の卵を抱えていることを、アルミンは少年の未だに根なし草らしき様子をそれぞれ指摘した。


「やめようか、今はアルミンだっけ?僕は今イーチだからよろしく」


「軽いなお前は…分かったよイーチ」


 最初の記号の意味も、この2人の関係も、分かる人間などこの場には存在しない。


「それにしても意外だったなぁ、あの人とあまり関わってこなかったアルミンがそこまで協力するなんてね」


 イーチと名乗った少年が指差すのはアルミンの手に握られているヒビ割れた鈴だ。

 この鈴はバジル達が牢を脱走する際に痩身の魔道具売りの男が作り出した誘眠作用のある音色を出す道具である。


 これを使い警備の人間をアルミンが眠らせて回ったのが、この少年にとってはそれほど過去に見た彼女とかけ離れた行動らしい。


「絆されたのかな?それともあの人の関係者だから?」


「特に話す事でも無いな」


「つれないなぁ、でも()をあげたって事はバジル君で決まりなんでしょ?」


「そういうお前はあの奴隷商に()を与えてるじゃ無いか。あんな小物で満足するような気質でも無いだろうに」


「ああ、あれはただの暇つぶしだよ。もう飽きちゃったしね」


 お互いに探り合うような会話を続けていると屋敷から乾いた破裂音が響いた。

 これが銃声だとすぐに気がついたのはアルミンで、イーチの方は何があったのかを()を通して確認をしている。


「うん終わったみたいだね。目はいらないから適当に処分しといてよ」


 本当にただ雑談がしたかっただけと言いたげなイーチが軽い足取りで暗がりへと消えて行こうとする。

 それをアルミンは最後に1つだけ質問をするため引き止めた。


「お前はまだ諦めていないのか?」


 振り返ったイーチの表情は相変わらず軽薄に笑みを浮かべているが先程までのものとは明らかに性質が変わっている。

 軽い印象しか受けなかった笑みは今、重くドロリとした年月を感じさせる威圧感を放っている。それがこの者を人以外の何かだと告げているようで不気味であった。


「当然だよ」


 イーチはそう一言言い残し闇へと溶けていく。


 残されたアルミンは暫く暗がりを見つめていたが、イーチが本当に去ったのだと納得するとため息を1つ吐いた。


 イーチという少年はアルミンにとって友人でもなんでもなく、油断のならない相手だ。

 それが立ち去り安堵のため息をつく様はこの少女も同じ異端なのにも関わらず実に人間味のある姿に見える。


(確認したい事は聞けた。もう暫くあいつに会う必要もないだろう)


「アルミン!待たせたな!」


 半刻程前に送り出した男の声が思考に耽るアルミンの華奢な肩にかけられた。



 ♢



 仕事を終えて門のへと戻ってみる、アルミンの様子が少し妙だった。


「どうした何かあったか?」


 男の質問にアルミンは目を伏せ首を振る。


「いや特には…そうだ、この鈴もう使い物にならないみたいだぞ」


 差し出されたヒビ割れ力を無くした鈴を目にして男は「アッチャー」と額に手を添えた。


「流石に勝手に借りてきた物壊すのはマズイよなぁ……うん、でもまあアイツなら平気か」


 あいつというのはこの魔法の道具を作り出した痩身の男の事である。魔法技師として間違いなく有能なはずの男をこの扱いなのは奴隷の時散々嫌味を言われたことが後を引いているのかもしれない。


 しょうがない。と納得しながら屋敷から撤収しようとする男とアルミンだったがそこで思わぬ珍客と出会った。


「何者でござるか?」


 風を受けてばさりと薄い外皮をはためかせながら現れたのは、以前酒場で世話になったライドウという男であった。


 その手は油断なく腰に撒かれたベルトに付けられた曲刀に添えられている。


 いつのまにか男の横からアルミンの姿は消えており、ライドウが見たのは男だけであった。


 ライドウが少しずつ距離を詰め、暗闇から互いの顔が判別できる場所までたどり着くと。剣呑な表情を浮かべていたらしいライドウは一瞬驚いた顔をした後急に吹き出すように笑う。


「くく…一応聞いておくでござる。()()()()()()?」


「ハドソン」


「男の子みたいな名前でござるなぁ」


 ハドソンと名乗った者は仮面を被り、動きやすいウェスタンスタイルの服装に身を包んでいた。

 スラっとした体型から性別の判断は難しい。


 だが、この怪しい人物にライドウは心当たりがあったようでクスクスと笑っていた。


「これは独り言でござるが、実は以前美人な女の子に危ないところは通っちゃいけないよと忠告したのだが見事に無視されてしまったみたいでござる。しかもしっかりと面倒ごとに巻き込まれたみたいで困ったものござる」


「悪い」


「謝る必要はないでござるよ。だって君はあの子では無いんでござるよね?」


 ニコニコとしているライドウに、ハドソンは彼のかんがえを察した。


「見逃してくれるのか?」


「見逃すも何も、拙者が上司に頼まれたのは外に溢れてた奴隷狩りの掃討と関係者の取り締まりでござる。拙者は給料以上の働きはしない主義でござるよ」


「ありがとう」


「なんのことかは分からないけど礼は一応受けておくでござる」


 言葉少なく別れを告げたハドソンがライドウがやってきた道をそのまま戻ろうとしたところで、ライドウの声が背中にかけられた。


「あー…それと、知り合いみたいだからバジル殿に連絡を頼みたいでござる。今度首都に来たら美味し食事処を紹介するって伝えてほしいでござる」


「…分かったよ、伝えとく」


「かたじけないでござる。ではハドソン殿、ご達者で」


 こうして2人の男が別れていき、1人は闇の中、もう1人は華美な作りの屋敷の中へ消えた。



ありがとうございました!

すこしでも続きが気になったらブクマや批評コメントの方を是非ともよろしくお願いいたします!

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