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異世界男の娘ガンマン ~魔法が使えない能無でも弟の為に最強目指す~   作者: 冷えピタ
二章 首都ノーウィークへ 〜奴隷編〜
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extra

幕間です!よろしくお願いいたします。

 これはとある奴隷商人がその生涯の最期に出会った死神の話である。


 奴隷の売買を主な収入源とするリイズという都市の一角に豪奢な作りの屋敷が存在した。


「舐めやがって!私をコケにしておいてさっさとこの街を出て行かなかった事を後悔することね」


 その屋敷の主人である女性のような装いの美丈夫が怯える部下に向かってがなりたてている。

 彼は怒れる上司に対し反論など出来るはずもなく只々その嵐が過ぎ去ることw願うばかりであった。


 街の外に待機させている連中に連絡なさい。


 そう命じた主人の男は目が血走っていて人の話を聞けるような状態ではなさそうなのだが、これに関しては部下としても一言を言わざるを得ない。


「お言葉ですが…」


 部下が話をやめてしまったのは簡単な理由だ。

 石になった。


 一言で表せばただそれだけのことであった。

 口を半開きにしまま固まる部下から視線を外し、ドアの付近に控える別の者に片付けを命じる。


 現在部屋の中にいるのは石になった者を入れて5人程の部下と、その主人たる美丈夫のみだ。


 部外者に余計な話を聞かれる心配はない彼は先程の命令を少しだけ内容を変えて繰り返す。


「何度も言わせないで、外に待たせてる奴隷狩り連中にあの能無供を捕まえさせろって言っているのよ」


 この街の商人の殆どが奴隷商人達と繋がっている。元締めたるこの美丈夫は彼らを自由に動かせるだけの裁量を持っていた。


(能無はともかく、ユラに対しては手持ちの戦力だけじゃ部が悪い…あの粗暴者達に任せたらユラが傷物になってしまうかもしれないけれどもう構わないわ。いくら銀狼族でも多勢に無勢で数で押せばどうにでもなる筈よ)


 自分の命を見逃す程甘い連中に反吐を吐きながらイライラを紛らわせるように愛用しているキセルを探すが、それは昼の騒動の際に壊れてしまった事を思い出す。


 世界は自分を中心に回っている筈だというのにここのところ全くと言って良いほど上手く行かない。

 何故なんだ。自分はあの異端に、世界の理から外れた存在の少年に認められ力を与えられたというのに…。


 そういえば。


 あいつは…。


 あの異端の少年。


 イーチは何処へ行った?


 あの藍色の髪を持つ異端の少年、イーチは今まで私が何かをする度に付きまといヘラヘラと軽く、まるで希薄な空気のように存在を掴ませない


 そんな彼が昼ごろ現れたきり姿を見せていないのだ。


 ただでさえ存在感の薄い少年を暫く見ていないと、もう彼には会えないのではないかという想像が美丈夫の中で広がって行く。


 それではまるで自分が…。




 見捨てられたようではないか。





 ドアが勢いよく開け放たれる。

 その瞬間、執務室の中へと大きな袋が投げ入れられ地面へと落ちた瞬間視界を覆う程の煙が部屋中に広がった。


「何事よ!!」


「煙幕です、敵襲かと思われます!!」


「さっさと魔障壁を張って対処しなさい!!」


 主人の命令通りベルトから触媒を抜いてそれぞれ魔障壁を展開する部下達。

 石にされた者は哀れな事にそのままだった。


(この忙しい時に一体なんだっていうのよ)


 視界が塞がれてもカーマスの苛立ちは変わらないが気持ちは幾ばくか落ち着きを取り戻していた。

 戦闘の緊張感が彼の頭を冷やしたのだ。


(まあ良いわ…憂さ晴らしにでも使わせてもらおうかしら)


 彼の片目が赤く染まり場が俄かに殺気立ち始めたその時、展開した魔障壁に何か小さなものがぶつかる反応があった。


「何よこれ!?」


 何かが魔障壁に触った場所から、障壁が保てなくなり崩れていったのだ。


 ぶつかった物の正体である足元に転がる小石のような物を観察すると、それが普段から見慣れた物の破片だという事に気がついた。


「奴隷達に使っている枷のカケラですって…?」


 奴隷の枷とはつまり、魔力を封じ込める魔封石が材料だ。


 魔障壁を崩すのにそのカケラが撒かれたようだ。


「があっ…」


「なんだお前はグフっ」


「ガフッ」


 執務室に配置していた部下達の声が次々に上がる。

 煙幕でその姿は確認できないが聞こえた声からあまり状況が良くないことは分かった。


「『炎…(フレア)』グアッ」


 動ける最後の部下の声が聞こえ美丈夫の男は手に紫電を漲らせた。


 この視界の中では蛇女の魔眼は使えない、が自分にはまだ強力な雷を操る魔法があると男は周囲を伺うがそれがもうすでに間違いである。


 及び腰になった時点でもう彼の敗北は決まっていたのだ。


 足の衝撃を感じ思わず膝をつく。

 何事かとそちらへ視線を向ければ何故か自分の足に奴隷の枷がつけられているというわけの分からない光景が目に焼き付いた。


 自分はもう魔法を使えない。その事実に気づいた瞬間自分の後頭部にゴリッと何か硬い物体が押し付けられた。


 自分は今膝をついた状態であるため、侵入者らしき相手が自分を見下ろしているのを感じる。


「やっぱり1発で充分だったな」


「っっっっ!!!」


 自分はその声に聞き覚えがあった。

 忘れもしない、忌々しいあの能無のガキの声だ。


 だが何故?コイツが今動く?


 自分を殺すつもりであったならあのまま氷漬けにしておけばそれで済んだ筈なのに、なんでこんなに回りくどい事を?


 撃鉄が起こされる音にビクりと体を震わせる。


「俺達は助かったし、ユラが許したならそれでも良いかなって思ったんだけどよ。あれは駄目だ…それだけは認めねぇ」


 なんの事か分からぬ美丈夫はただ汗を流すばかりであったが侵入者にはそんな事は関係がないようで、独白を続ける。

 自分がなんで奴隷の主人を殺しに来たのかを簡潔に述べた。


「弟を、トワイアに害が及ぶ芽は残せねぇな」


「私を殺したら貴方は犯罪者として追われる事になるのよ!!!」


「問題ないさ。目撃者なんて誰もいない」


 苦し紛れに叫んだ美丈夫の言葉は当たり前の様に侵入者へは届かない。

 彼は引き金に触れる指へ力を込め始める。


 一度は断念した「殺す」という意思を再び確かなものにして銃口を押し付けられ狼狽する美丈夫を冷たく見下ろした。


「いやよ!!まだ死ぬわけには…イーチ?イーチ!!?どこなの!?私を早く助けなさいよ!!」


「良かったな。俺にとってテメェは殺す価値のある人間だよ」






 その夜、1人の奴隷商人が脳漿を晒した。





ありがとうございました。


少しでも続きが気になったらブクマや批評コメントの方を是非ともよろしくお願いいたします

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