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異世界男の娘ガンマン ~魔法が使えない能無でも弟の為に最強目指す~   作者: 冷えピタ
二章 首都ノーウィークへ 〜奴隷編〜
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20話 解放

あらすじ 「墓参りに行こう」

 銃の仕組みはそれを扱わない一般の人間が考えている程複雑な物では無い。


 極端な話金属製のパイプを少しだけ加工すればそれで銃としては完成といって良い物が出来るのだ。

 勿論メーカーが卸している逸品に比べると精度も威力も比べるのも痴がましいのだが、複雑な構造で、極めて特殊な材料と工具を用いなければ作ることが出来ない物という認識は間違っている。


 基本的な構造だけみればそれほど特殊な物でも無いのだ。

 鉱山の奴隷があり合わせの資材を用いて銃を作り反乱したという話もある。


 祖父から銃の知識を教わる際にこの自作拳銃の総称の様な物も一緒に聞いた気がするのだが残念な事に忘れてしまった。中々に洒落気のある名前だった気はするのだが…。


 まあそんな事はどうでも良い。今ここで重要になるのはバジルが銃の構造についての知識を持っており、作成の為の材料も狡猾に収集していたという事実だ。


 腹に隠し持った「魔弾」に急造の銃があれば能無と侮っている連中から逃げ出す事など容易い。


 カーマスも他の連中もバジルを只の搾取されるだけの弱者と考えるべきでは無かった。

 確かに彼は生まれつき魔力を持たず、魔法が使えないハンデを背負っている立場ではあるのだがその程度で歩みを止める性格でも無い。


 大切な物を守る為に力を貪欲に蓄えてきた人間は恐ろしいものだ。


 今回のカーマスのミスは虎を猫と見誤った事。

 そのせいで彼は得体の知れない少年に縋ってまで手に入れた商会をこれから失う事になるのだ。


 もっとも…『今回』とは言ったがカーマスに次が訪れることは無いのかも知れないが。






 ♢





「よお!お前ら元気にしてたか?」


「姉御!??」


 牢屋に燻っていた奴隷たちの中で酒屋獣人のジンが真っ先に声を上げた。

 彼は昨日バジルが連れていかれてからその身をずっと案じていたのだが、当の本人が()()()()()()から明るく挨拶をしてきて驚愕している。


「ジンか、突然だけど俺ここから出て行くから」


 ジャラリと懐から鍵束を取り出して何の躊躇もなく鉄格子を開けてしまうバジルを理解が追いついていない奴隷たちは惚けたまま見守っていた。


 そしてズカズカと中へ入って来たバジルは、真っ直ぐ隠し収納守りへと向かって行く。


「どいてくれ」


「え?、ああ」


 訳も分からぬまま退かされた元鍵屋の収納守りはその場に立ち尽くす。

 収納を開け、仕事の合間に物色していたガラクタをかき集めたバジルはそれを手にさっさとその場を後にしようとする。鉄格子は開け放たれたままだ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」


「何だよ、忙しいんだけど?」


 我に帰り慌てて引き止めるジンであったがバジルは手元のガラクタを弄るのに集中していて視線すら向けない。


「いや状況が全く読めないんですけど、何で姉御が外に出てるんで?」


「お前らも出たけりゃ出ていけば良いだろ」


「出たけりゃって…脱走なんてしたら俺達逃亡奴隷ですよ?」


「だからこれかあのカマ野郎と話しをつけに行くんだよ」


「!?」


 バジルは話をつけに行くといっているがそれを言葉通りに捉える馬鹿はここにはいない。

 間違いなく荒事。血を見る事になるのは明らかであった。


「何でそんな無茶を…」


「やる事があるんだから出て行くのは当たり前だろ。お前達はどうしたいんだ?奴隷として一生を過ごすのか、それともここから逃れて人生やり直すのか」


 最近活気を取り戻していたとはいえ辛気臭さは変わらない牢屋を見渡し言葉を投げかけるバジル。

 酒屋を営んでいたジンや魔道具の仕事に携わっていた痩身の男、そして鍵屋の収納守り、よく会話をしていた連中もそれぞれの人生があった筈だ。


 奴隷狩りにあい理不尽な運命を押し付けられた事に不満を感じていないなんて事はありえない。


 他の者達にも視線を向けてみればその内から溢れる不満を隠しきれていない様子がよくわかる。


 しかし危険に対し理性が働くのが人間だ。脱走する迄にカーマスの手の者との戦闘は避けられないだろう。その際に命を落とすかも知れないうえ万に1つここから脱走出来たとしても逃亡奴隷として猟犬から追われる事になる。


 それで本当に人生をやり直す事ができるのか?命を無駄にするだけでは無いのか?


 ならばここで良い主人に買って貰える事を願い大人しくしている方が利口なのではないか。


 その考えが頭に残り彼らは牢の外(自由)への一歩を踏み出せない。


「ここに来るまでに他の牢屋も開けてきたんだけどよ」


「?」


「どいつもこいつも牢屋の隅っこで縮こまって出てくるやつがいやしねぇ。まあ決めるのはお前らだ。俺はやりたいようにやるだけだからな」


 生の与奪を人に任せるのは確かに楽ではあるがバジルはそんな生き方は真っ平だった。

 人の選択を否定する事は無いが彼にとって()()()()()()()を選んだ者達はわざわざ説得して助けるほどの価値は無いと考えている。


 だからこそ彼はこう尋ねるのだ。「お前はどうしたい?」と。


「…俺は行きやすぜ」


 声を上げたのは意外にも鍵屋の男であった。

 彼が前に出た瞬間その足元からゴトリと重量を感じさせる音が鳴る。


 魔封石の枷が見事に外されていたのだ。


「へぇ、やるじゃねぇの」


 不敵な笑みを浮かべてバジルは鍵屋の男を賞賛する。


「こんな…所で一生を終えるなんて勘弁でさ。だったら死に場所くらい自分で選べた方がまだマシだ」


「何勘違いしてんだよ。俺らは生きて堂々とここから出て行くのさ。あのカマ野郎に1発お灸を据えてな」


「はは、それは楽しみでやすね」


「待ってくれ!お、俺も行きます!」


「私も連れて行け!」


 和気藹々と会話をしながら歩き出す2人に、魔道具売りの痩身の男と獣人のジンが慌てて名乗りを上げた。


「ただ流されてるだけならやめといた方が良いぜ?」


「構わねえ!俺は姉御について行きますぜ!」


「私も奴隷なんぞでいていい人間では無いのでな、危険だろうが構わん」


 冷たくそんな事を言うバジルだったが2人の意思は変わらないようだった。


「他は?」


 一応尋はするがあまり期待はしていなかったバジルだったが、「僕も行くよ」「ぼ、僕も行くっス」と声変わりもしていなさそうな高い声が2つ程聞こえ思わず驚いた顔をしてしまう。


 声の主は背丈が同じくらいの2人の少年だった。1人は藍色の髪を持っている利発そうな少年で、もう1人は対照的に内気そうな大人しい印象を受ける少年だった。

 バジルはここへ来てから一度も見かけた事がない2人に眉を寄せる。


「あんまり見ない顔だな」


「僕は普段目立たないようずっと息を潜めていたので気づかなかったんだろうね」

「僕が来たのはつい昨日の事っスから…」


「ふうん…まあ良いや、鍵屋!コイツらの足枷も外してやってくれ」


「全く人使いの荒い人でやすねぇ」


 そう言いながらもどこか得意げにヘアピンを取り出し鉄輪の解錠に取り掛かる。


 集めていた資材の中からピンが消えていたのはてっきりカーマスの仕業だと思っていたが鍵屋の男が原因だったのかと今更ながらにバジルは思う。


「この程度の枷なら俺にかかれば大したもんじゃありやせん。すぐに外しやすので少しお待ちを」


 残念ながら看守から奪った鍵束の中には奴隷達の足枷を外す物は無かった。そこに関しては彼に頼るしか無いだろう。


 大言を吐くだけあり鍵屋は手際良く少年達と痩身の男の枷を外していった。


 しかし時間は待ってはくれない。最後にジンとバジルの枷に取り掛かろうとした所で牢屋の外がにわかに騒がしくなって来たのが聞こえた。


 大方鍵を奪うため昏倒させた看守が見つかったのだろう。


(グズグズはしていられないな)


 バジルは手元の作業を終え、作り終えたそれを手に鍵屋の方へと向くなおる。


「ちょっと待ってくだせえ、今すぐ外して」


 ジンの足元へ近付こうとした鍵屋の言葉を遮るように1発の銃声が響いた。


 バジルの手より放たれたそれは的確にジンの足に着けられた鉄輪を破壊する。


「「……」」


 鍵屋もジンも呆気にとられ言葉を言葉を無くしていた。


「何してんだ。さっさと行くぞ」


「…俺がこのピンで遊んでたの見てやしたよね?」


「ああ、楽しそうだったし…何より弾が勿体無いだろ」


「…一応聞きやすけど姉御は外さなくていいんで?」


「俺は能無だぜ?こんなの別にあっても無くても変わんねぇよ」


 怪我はなかったとはいえ唐突に足を撃ち抜かれたジンと、無駄な仕事をさせられたような気分になった鍵屋は何処か釈然としない表情を浮かべながらも歩き出すバジルの後に続く。


 残りの痩身の男と少年たちも緊張の面持ちでそれについて行くが、ただ1人藍色の髪の少年だけは集団の

 1番後から楽しげな視線をバジルの手に持つ物体へ送っていた。


(へぇ銃なんて使ってんだ。アルミンが気にいる訳だよ)


 バジルが作った急拵えの拳銃とそれから放たれた不思議な弾丸の事をこの少年はよく知っている。


(ああ、これから面白くなりそうだよ…)


 1人全く違う視点で物を考える少年の事を理解できる人間はその場には誰一人存在しなかった。

ありがとうございました!

少しでも気になったらブクマや批評コメントの方を是非ともよろしくお願いいたします!

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