12話 拷問
あらすじ カーマスに呼ばれた
「そんなに能無のガキが怖えかよ」
「今のうちに吠えて起きなさい。今日こそは喋って貰うからね」
「…」
薄暗く少々手狭な部屋に3人の客人がいた。
1人はこの部屋は元より屋敷の主人であるカーマス。女の様な口調が特徴の奴隷商人の男だ。
もう1人は希少な銀狼族であるユラという名の女性である。カーマスの後ろに控え伏し目がちになっているのが印象的だった。
最後の1人は始めにカーマスを挑発していた青年バジル・アントリウムだ。
奴隷専用の貫頭衣を身につけていた彼だったが今はそれさえも剥ぎ取られ、あられもない姿で両手を鎖で吊られている。
ギリギリで足のつかない様に設計されているそれはバジルの体から体力を容赦なく奪った。
部屋の隅には赤黒い血で汚れた奇妙な道具が散乱しており、その全てが鎖で吊られたものを苦しめるために使われている事は容易に察しが付く。
「でも困ったわねぇ…アンタはツラが良いからそこを傷つけちゃあ商品価値が下がっちゃうし、薬でどうにかしようにも効果が薄いみたいだしねぇ」
頰に手を当て忌々しげにカーマスが視線をやるのは、バジルの左腕。謎が多い女アルミンから貰った植物の義手だった。
どうやらカーマスはアルミンに関する事を聞き出したかった様だが生憎俺自身あの女の事なんて何も知らない。
この時間は正直無駄でしか無いのだが、未だに拷問を甘んじて受けているのはこの際にユラを会える事とカーマスが俺に利用価値を見いだしている今の状況であればある程度無茶をしても即刻処分という事にはなり難いと考えたからだ。
カーマスが商品価値が下がるのを嫌い、目を抉ったり爪を剥がしたり、肌を焼いたりというのはしなかったが代わりに薬での自白を迫った時は少し焦った。
まあ杞憂でしかなかったのだが。
バジル自身自覚は無かったが何故か薬物の類は効果が薄かったのだ。
ボンヤリと若干効いているような感覚はあったのだが劇的な反応は起きず自白には至らなかった。
カーマスはこの奇妙な義手にその理由があると考えたようだ。
そして俺も同じ様に考えた。元々俺には薬物への耐性など持ち合わせていないし、故郷の村でこの腕をつけられた時体が妙に軽くなったのを感じたからだ。
身体中に怪我を負い腕を失った直後にも関わらずそんな感覚を覚えたのだから明らかに異常だろう。
元々義手であるならば商品価値にも関係が無いと、この厄介な腕を斬り落としてしまおうかと考えたカーマスであったが、植物で出来ている割りにこの腕は凄まじい強度を誇っており魔力を通した剣であろうが鉄板さえ寸断する魔法であろうがその刃を通さなかった。
根元から外そうかとも考えられたが木の根の様な波紋が左の胸や首元まで侵食している様子を見て断念した。
その部分をゴッソリと削ってしまえばバジルは命を落としてしまうのだから無理も無い。
常軌を逸した程の強度を誇っており、着用者の代謝や薬物への抵抗力を上げる義手。
このオーパーツに関するカーマスやバジルの印象はそんな所だ。
地味ではあるが充分に有益な筈のこの腕だが、カーマスとしてはこれだけでは納得がいかない。
アルミンと同じだという異端の少年はカーマスに商売で成功するためのノウハウや有益な情報、魔法の神髄についても教えてくれた。
他にも様々な支援をしてくれたがこのビジネスパートナーは資金源として金鉱や不思議な魔法アイテムも惜しみなく譲ってくれた。
こんなものでは無い筈なのだ。あの者たちが自分達に齎してくれる恩恵は。
だからこそこうして頭を捻りどうにか聞き出そうと時間を費やしているのだがわかった事といえば下らない義手一本だけ。
これでは忙しい時間を態々割く意味がないじゃないか。
薬は効果が薄い。体に欠損などの大きな傷を負わせるのは論外。ならばとカーマスが考えたのは、魔法による苦痛と顔以外への殴打、つまりはリンチだ。
バチリとその場でけたたましい音が響く。
カーマスの掌が明滅しやがて雷光を宿しバチバチと電気の火花を散らしながら輝き始めた。
『雷掌』
「残念な事に魔法のコントロールが得意な人材が少ないのよね…だから、私がやるしか無いってわけ」
背後のユラはその雷光から目をそらした。心なしか震えている様にも見える。
「吐けばこんな真似すぐにやめるからいつでも言って頂戴ね。まっ吐かずに気を失ってもその後はこの娘にタップリと可愛がって貰いなさいよ」
両手は頭上に吊られており。ゆっくりと迫るその稲妻を纏う手を避ける手段など無い。
小さく触れた指先があヂリッと嫌な音をたてた。
瞬間。
「がっっっ、ああっ、ああああああああっがあああ、っあ、ああああ!!!!」
視界が真っ白に染まり、壮絶な痛みが体の隅から隅までを駆け巡る。
刺し貫く様な痛みを与えながら流される高圧の電流は、バジルの筋肉を痙攣、収縮させ彼の意図とは関係なく骨折してしまいそうな程折れ曲り始めた。
「あああああああっ、がああ、あ」
響渡る絶叫にカーマスは愉悦の笑みを浮かべ、ユラは顔を真っ青にしながら耳を塞いでいた。
やがて。
「あ…」
プッツリと人形な糸が切れた様にバジルは項垂れた。
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