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異世界男の娘ガンマン ~魔法が使えない能無でも弟の為に最強目指す~   作者: 冷えピタ
二章 首都ノーウィークへ 〜奴隷編〜
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7話 思わぬ出会い

あらすじ 奴隷商の国へ侵入。

「さあ、召し上がって頂戴」


 一目で質の高いと分かるティーカップに注がれた香り高い紅茶と色鮮やかで目に楽しい茶菓子の数々が目の前に置かれた。


 今俺とアルミンがいるのは奴隷商都リイズの中でも一際大きく美しく建てられた屋敷の一室。

 先程出会ったこの男。奴隷商人を生業とするカーマスによってここへと案内された。


 もっとも、案内とは言ったがその実人数で囲んでの連行であったが。


「ゆっくりしていって頂戴。知らない中では無いのだから」


 運が悪いとしか言いようがない。自分でも嫌になる縁を結んでしまった物だ。


 いっそのこと魔弾を使い切り抜けられないかとも考えたがこんな往来で銃をぶっ放してしまえばお縄に着くのは俺の方だ。それにこれだけ人が密集していたら加減の効かない魔弾じゃ関係のない人間まで巻き込んでしまう。


 それは俺のやり方じゃあない。只の悪党ならどたまをぶち抜いてそれで終わりなんだけどな…


 どう考えても面倒ごとの気配しかないが、アルミンも特に不平がある様子も無いし大人しく付いていくしか選択肢はなさそうだと、黙ってこのおんな言葉を扱う美丈夫についてきたはいいものの。


 想定外の歓迎を受けて困惑している。


「お前の同類か?」


 ニヤニヤ顔で菓子類へと手を伸ばしながらそんな事をアルミンがのたまった。


 同類というのは俺とカーマスの格好を見てそういったのだろう。

 見た目だけ見ればお互い男であるのにも関わらず、女性的な服装を身に付け美しく着飾っている点では共通している。


 勘弁してほしい。確かに女装をしているのは確かだが俺の場合は格好だけに留まっているのだ。この男の様に言葉遣いまで女性に寄せているわけではない。


 ふと向かいに座るカーマスに視線を向けると、ウッフンと流し目を送られてしまい鳥肌が立った。


 ()()()なんだコイツ…。


 顔を青くする自分の隣で菓子をパクつくアルミンを見て耳打ちをする。


「そんなもん食って大丈夫か?」


 止める間もなくアルミンが手をつけてしまったので今更だが、俺たちの目の前にいるのは拉致同然の方法でここへ連れてきた奴隷商人の男だ。

 そんな男が用意させた食事を口にするのは少し無用心がすぎるではないか。


 見てみればカーマスは茶にも菓子にも一切手をつけていなかった。


「心配しなくとも私に毒の類は効かんよ」


 …酒で気持ち悪くなっていたのに?


「あれは満腹になった所で馬に激しく揺さぶられたからああなっただけだ…しかし、まぁ」


「?」


 バジルは菓子を咀嚼ながら考え込むアルミンの次の言葉を待った。


()()()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉を即座に理解したバジルは向かいに座る狐の様な男を見据える。

 元々諦めてはいたが、この時点で楽しくお茶会だけして解散という平和的な未来は消えた。


「なぁに、そんな怖い顔しちゃって」


 白々しいな。毒を仕込んでおいて。


「そんな事よりも貴方達と色々話しがしたかったのよ」


 そうだ、この男は何が目的なのだろうか。昔あった能無の事など捨て置いてくれれば良いのに。


「逃げられるか?」


 再び声を落としアルミンへと声をかける。


「私だけなら簡単に、バジルも一緒にとなると荒事は避けられないな」


 彼女の言葉にバジルは笑みを深めた。

 上等だ。下手をすればお尋ね者になってしまうかもしれないが、それしか道がないのなら突き進むだけだ。それに幸いなことにここには()()()()()()()などは存在しない。

 屋敷で働く非戦闘員はいるだろうがこの部屋の付近にいるのはこの男と部屋の隅と外を固める有事に慣れた無頼漢のみだろう。

 侮っているのかは知らないが武器を取り上げられなかったのも僥倖だ。


 方針は決まった。あとはいつ動くかだが…。


 カーマスの話を聞き流しながら腰の銃へと手を伸ばそうとしたバジルを、遠慮がちに響いたノックの音が引き止めた。


「入りなさい」


 顔色ひとつ変えずカーマスは応じる。


 扉を開け部屋へと入ってきたのは、誰であろう先程バジルがぶつかった獣人の女性だった。


 驚くバジルの顔を一瞥し、楚々とした動きで主人であるカーマスの背後に立つ。


「この娘は私のお気に入りでねぇ、数あるコレクションの中でもイチオシなのよ」


 言葉につられ女性を見れば確かに、見目は相当に整っている様に思える。


「でも勘違いしないでちょうだいね。この娘は性欲の捌け口のためにいるわけじゃないの」


 勿体つける様に話すカーマスに少しイラつきながらバジルはこの奴隷の女性を傷つけない様魔弾の射線を考えていた。


「この娘はねぇなんと!世にも珍しい銀狼族のなのよ!」


 銀狼族?

 その単語がバジルの脳を刺激した。


「獣人にも関わらず高純度の魔力を多く持ち、他の追随を許さないくらい高い戦闘力と美しさを兼ね備えた正に完璧な種族!それが銀狼族よ」


 銀狼族。そうだ。


 それはヤコが、死んだ友人が探し求めていた家族の素性であったはずだ。


「…近辺で銀狼族を扱っている奴はいるのか?」


「そんなレベルじゃないわ。銀狼族は最早その殆どが滅びてしまった種族の名よ。少なくともこの国で所持しているのは私くらいね」


 誇らしげに自慢のコレクションの説明をするカーマスに反吐が出ながら、今度は背後に立つ銀狼族の女性に向け問いかける。


「アンタに血の繋がらない妹は居るか?」


「っ!!!」


 目に見えて狼狽する銀狼族の少女。その反応だけで充分だった。


 さっきは運が悪いと言ったが彼女の引き合わせてくれたのだからこの男との縁も一概に悪いとは言えないかもしれないな。


「アルミン、予定変更だ」

「?」


「何をコソコソしてるのよ」


 アルミンに方針を変更する旨を伝えていると、顔に張り付いた欲にまみれた笑みはそのままだがどこか機嫌の悪そうな声が響いた。

 その声に1番反応しているのが彼の背後を守る銀狼族の女性な事が何とも皮肉だ。


「いい加減良いかしらねぇ、なんかもう面倒になって来たわ…。貴方は一切軽食に手をつけないし、連れの娘は何故か何ともない様だし。私の事は警戒して当たり前でしょうけど大方の想像も付いているんでしょう?」


 アルミンはペロリと茶まで平らげているがどうやら本当に何らかの仕込みがあったらしい。


「いい加減ウンザリしていたのよねぇ。たかが能無と普通に会話をするなんて」


 だんだんと化けの皮が剥がれ始めたカーマスを見て既にバジルは動いていた。


 雑嚢から小袋を1つ取り出し。ガンベルトごとアルミンへと手渡す。


「本当に良いのか?」「ああ」


 バジルは1つ深呼吸をして手にある小袋を口に含む。

 しかし小さいとは言えそのサイズの異物を一気に飲み込むのは難しいと判断したバジルはテーブルに置かれた紅茶で流し込んだ。


 アルミンやカーマス本人も言っていた通り仕込みがなされた紅茶を飲んだバジルは当たり前ながら体に異常をきたしているのを感じる。


 睡眠薬…か。


 揺れる視界で正面の相手を睨みつけた。


「何のつもりかは知らないけれど手間が省けるわねぇ」


「そうかい」


 バジルは手にある高級そうなティーカップをカーマスへと投げつけるが瞬時に張られた魔障壁に阻まれ砕け散った。


「元々能無が使った食器なんて捨てるつもりだったけど…私はね、やられたらやり返さなきゃ気が済まないタチなの。あの時も予定が詰まっていたから見逃したけれど能無風情にコケにされた事、忘れた事はなかったわよ?」


 ギイと軋む様に笑みを深めたカーマスは片手を上げ背後の戦士へと命じる。


()()地面へと叩き伏せなさい。勿論殺さないギリギリでね。資源は大切にしましょ」


「かしこまりました」


 ブワリと闘気が溢れ出す。

 最早その姿から最初に出会った頃の頼りない姿の面影は微塵もない。


 そうバジルが思ったのも一瞬。瞬きをしたのも一瞬。

 彼女の姿がかき消えた。


 …と思ったのも束の間。凄まじい力に振り回され硬い床へと叩きつけられてしまった。


 その衝撃で、薬物の影響下にあったバジルの意識は簡単に遠のき始める。


 暗く狭まっていく視界の中で様々な声が聞こえた。


「あの薬の効かない女はどこに行ったのよ」


「分かりません。いつのまにか消えて…」


「それじゃあ困るのよ。あれだって充分商品になったじゃないのよ勿体無い。早く探してきなさい!」


「は、はい」


 どんな手を使ったかは知らないがアルミンはうまく逃げてくれたらしい。

 さっき彼女に伝えたのは俺を置いて逃げろという物だった。


 最初は難色を示しいていたアルミンだったが俺にとってそれは大事な事なのだと説明すると「死ぬなよ」と一言だけ残して同意してくれた。


 さていよいよ意識ともおさらばしそうだ。


 あの商魂逞しい様子を見るに次に起きたら天国って事は無いと確信しているが果たして…。


 意識を手放す直前、彼は1つの呟きを聞いた気がした。


「ごめんなさい」


 最後に聞こえたのはそんな謝罪の言葉であった。





よろしくお願いいたします

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