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異世界男の娘ガンマン ~魔法が使えない能無でも弟の為に最強目指す~   作者: 冷えピタ
二章 首都ノーウィークへ 〜奴隷編〜
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1話 下戸の情報収集

よろしくお願いいたします!

 真昼間から酒に酔う男達の下賎な会話やカードを使ったギャンブルに興じる者の喧騒、酒の席を彩る弦楽器の音色が乱雑に絡み合い空間を満たしていた。


 そんな荒くれ者達溢れる室内の一角で少々場違いな2人組が談笑している。


「何で酒も飲めないのにこんな場所に寄ったんだ?」


「情報収集って言ったら酒場が基本だろ。王都に着く前に少しでもトワイアに関する何かを掴みたい」


 チャプリと白い液体をグラスの中で転がしているのは、絹の様な光沢を放つ美しい黒髪の女性である。因みに注がれているのは朝一で絞られた新鮮なミルクだ。


 整った顔に備えられた宝石の様に赤い瞳が憂いを帯びて揺れる度に、周囲の男共は揃って生唾を飲み込む。


 席を共にする少女も妖艶な雰囲気を持つ女性に負けない程の魅力を備えていた。

 あまり近辺では見かけない翡翠色の髪や、陶器の様に白い肌は彼女の神秘的にさえ思える美貌を引き立てていた。


 人形じみた風貌と、その現実味が無いと感じられるくらい整った顔立ちや無表情から最初、周囲の男達の視線は黒髪の美女に集中していたが、人形の様な少女が時折浮かべる蠱惑的な笑顔にやられてしまう者がだんだんと数を増やしている。


「隣町までしか足を伸ばした事がなかったお前が何を偉そうに」


 厳しい言葉とは裏腹に神秘的な少女はクスクスと笑っている。


「そういうもんだって開拓者の連中か聞いたぞ?」


「それは建前だよ。酒を飲むためのな」


「こんな苦い水の何が良いんだろうな」


 聞くなり美女…いや、()()()は早々に立ち上がり店を後にしようとする。


「もう少しゆっくりしていかないか?まだ酒も残っている事だし」


 もう1人のアルミンという名の少女の言う通りまだ彼女のグラスには果実酒が並々と注がれていた。


「いいかげんにしろ。何杯目だよそれ」


 不機嫌そうに再びどっかりと腰を下ろすバジルはアルミンの周囲に置かれている空き瓶や空杯がいくつも散乱している様子を見て眉を更に釣り上げる。

 勿論この金は彼らの旅費から出ているわけで、それを浪費されるのはやはり面白くない。決して自分が下戸だから過剰に憤っているのでは無いのだ。


 村から旅立ち2週間、バジルはこの少女についていくつか知った事がある。


 まずはアルミンは自身で話していた通り()()だった。

 それは見た目の印象などから生まれる比喩表現では無く、彼女は実際に作り物の身体を利用していた。


 本当の彼女は今も何処かに身を潜めているらしい。

 そんな荒唐無稽な話、初めは話半分に聞いていたのだが自らの腕を捥いでそれが土くれに変わる瞬間を見せつけられながら説明されてしまえば流石に信じる他ないだろう。


 次に彼女は見た目以上に大喰らいである事。人形だとか話していた癖にだ。

 まだ始まったばかりの旅だが既に1日何度も食事を要求されていてウンザリしている。


 別に料理をする事自体に不満は無いのだが、いかんせん1日に要求される回数と量が問題なのだ。


 人を揶揄う時以外は普段愛想の無い表情を浮かべている癖に食べるときに限ってこっちが恥ずかしくなるくらいいい笑顔を浮かべるのタチが悪い。

 これがずっと能面みたいな顔で食事するのなら問答無用で頻度を減らせたのに…。


 村からそこそこの額の資金を持ち出してきたとはいえそれは無限では無く限りあるものだ。財布を握り家計を切り盛りする立場からすれば少しは気を使って欲しいところだけど。


「ふむ、酒はまあまあだけど…つまみや食事に関してはバジルが作ったものの方が私は好みだな」


 こういう事言うんだもんな…。


 頭の中で酒瓶の数と財政事情を勘定しながらソッと溜息を吐いた。


「そんな事よりも、何か私に聞きたい事とか無いのか?」


「何かって…特にねぇよ」


「全く寂しい事言うじゃ無いか、お前が小さい頃はオシメだって変えてやったって言うのに」


「…勘弁してくれ」


 旅を始めたばかりの時はバタバタしていたせいでそんな事を考える余裕もなかったが、言われてみれば確かに祖父の過去やこの女の身の上については興味がない事もない。


 しかしそれはアルミンが全て真実を話していた場合に限る。

 この花の香りを漂わす女を盲目的に信用する事など自分には出来そうにないし、する必要があるとも思えなかった。


 この女に命を救われた。その見返りに何かの目的を果たす手伝いをする。この事実さえあれば充分だ。


 その目的についてはまだ詳しく聞き出せていないがそれでも構わないのなら今の自分にとってかなり都合が良い。


 トワイアの会う。ただそれだけを考えていられるのは助かる。あわよくば彼女が言う所の本物の魔弾の情報を得られるかもしれないという打算もあった。

 他にも考えておかねばならない事は多々あるが大筋さえハッキリしていればどうにでもなるだろう。


「本当につれないなぁ昔は可愛かったのに…あ、ラムをくれ」


 通りかかった給仕に酒を注文をするアルミンを見たバジルが呆れ顔で溜息を吐く。


「まだ飲むのかよ…見てる方が気分悪くなるぜ」


 浴びる様に飲んでも一向に酔う気配の無いアルミン(人形だから当たり前なのだが)と酒精が含まれた空気に囲まれただけで顔色が悪くなるバジルはどこまでも対照的だった。


「酒を飲むのは久しぶりだからな。昔より随分旨くなっていて驚いた」


 と言いつつサーブされたラム酒を呷るアルミンにこれはまだまだ呑まれるだろうな、とバジルは足を投げ出してだらし無く腰掛ける。


(これは早いとこ旅をしながらでも出来る金策を考えた方がいいな)


 特に目的を定めぬまま酒場を見回す。


 ガラの悪い開拓者や労働者、忙しなく動き回る給仕、音楽を奏でる奏者へと視線を巡らせたところでバジルは壁に貼られている黄ばんだ紙に注目した。


(生死は問わず、身柄を差し出せば賞金…か)


 dead or aliveと、そしてゼロがいくつか並んだ数字が書き込まれたそれは、所謂賞金首と呼ばれるお尋ね者の情報が記されている手配書だった。


旅をしながら罪を犯した者を殺し金を得るというのはバジルにとって都合が良く、とても合理的な様に思えた。

その点ではある意味弟のトワイアよりも能無であるバジルは、この命の価値が希薄な世界に適応しているとも言える。


「いっそ、賞金稼ぎにでもなろうかね…」


 魔力を持たない能無(ノーム)であるバジルには酷なはずだが、絶対的な自分の銃の腕に対する自信と既に検証済みの魔弾という手札がある事からそう悪い考えでも無いように思える。


「よぉ姉ちゃん達、少し付き合えよ」


 そんな風にバジルが目算を立てていると背後から酒臭い臭気を纏った声が無遠慮にかけられた。

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