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閑話の様な本筋 1

少し短めです!

「うん…んん、ん?」


 知らない…随分高い天井だ。


 目覚めたトワイアはまだ覚醒仕切っていない頭でボンヤリと思った。


 起き上がろうとついた手はどこまでも沈み込んで行き、自分が上質なベッドの上に寝かされていた事に気づく。


 半身だけ起こし暫く惚けていると、ボンヤリと霞んでいた意識が次第に明瞭になり気を失う以前の事を思い出した。


「ヤコさん!!」


 慌てて立ち上がろうとするトワイアだったが眠り続け鈍っていたらしい体が思うように動かせずベッドから転げ落ちてしまう。


 騒ぎを聞きつけた使用人らしき女性が倒れるトワイアを目にして悲鳴を上げた。


()()()!!」


『勇者』。その単語を聞きトワイアの思考が停止する。


 勇者?誰が?僕?何故?。


 混乱するトワイアに使用人が駆け寄り身を起こそうとするがそれを遮る様に彼女の背中から胡散臭い印象を受ける声がかけられた。


「おやぁ、お目覚めだったのですねトワイア様」


 ヘラヘラと道化の様な笑みを浮かべた男、ヘンリー・マグレガー。王都からトワイアを勧誘する為遣わされた使者だ。…つまりここは。


「なんで僕は王都にいるんですか」


「察しが早くて助かります」


 慌てる使用人を締め出したヘンリーはトワイアを抱えベッドに戻した後自分はどっかりとその横へと腰を下ろす。

 介護するのが慣れている様な手つきと、デリカシーのない行動を取るその落差に眉を顰めながら声は平静を装った。


「気を失った後助けてくれた事には礼を言います。でも王都まで連れてきたのは何故ですか?勇者の話は断ったはずですよね?」


「王都までお連れしたのは単にここが1番安全だと確信していたからですよぉ。勇者云々の話は全く関係がありませんので安心してください」


 しかし現にトワイアの元へ最初に訪れた使用人は彼のことを「勇者様」と呼んだ。

 これは周囲の人物がトワイアの事を勇者と認識している事に他ならない。


 疑念の色が顔に現れていたのか、ヘンリーは苦笑気味に口を開く。


「あっしは元々トワイア様を『勇者として勧誘する』という目的で動いていたのでいざ本人を首都へ連れ帰ったと話が広まれば勘違いをするものが出てくるのも無理はないでしょう。勿論否定はしているのでご容赦頂けると幸いです」


 頭を下げるヘンリーに二の句が繋げなくなっているトワイアだったが、何故自分が取り乱しベッドから転げ落ちたのかを思い出した。


「そうだ…ヤコさんは、村はどうなったんですか?」


 気を失っていたトワイアには村のその後どうなったのかという情報は無い。

 1番の脅威であったオークロードはヘンリーから借り受けた得体の知れない杖から発生した魔法により退けることが出来た。


 あの時点ではまだ開拓者達は何人も生きていたしロード級の魔物がポンポン数がいる事も考え難い。

 ヤコの怪我は心配だがどうにか生き延びている筈だとトワイアは考え…いや、願っていた。


「残念ながら、トワイア様の村は商体(キャラバン)が持ち込んでいたアースドラゴンの暴走によって滅びました。ご友人のヤコという少女もその際に。そして言い難いのですが…」


「え…?」


 しかしヘンリーから告げられた言葉はあまりに残酷で、無情で、救いがなかった。


 ヤコさんが…死んだ?。他の村の人達も…?なんで、そんな事に…ドラゴンって…。


 今のヘンリーの言葉には少しだけ嘘が混じっていた。


 アースドラゴンが暴れた事も、村人が全滅した事も事実なのだがヤコに関してだけは少しだけ事実と異なっている。


 しかしそんな事は残酷な現実に打ちのめされるトワイアに気づけるはずも無く、その後続けられた追い討ちの様な発言にトワイアの思考は一瞬にして黒く塗りつぶされてしまった。


「トワイア様聞いていますか?」


「え、ああ…はい」


 この男はなんて言った?ヤコさんや村が滅びた事を伝えた後…。


「本当に残念な事です。能無といえトワイア様にとって大切な人物であったのは間違い無いというのに」


 やめてくれ…。


「村から脱出する際もしやとは思ったのですがやはり彼だったとは」


 それ以上言わないで…。


「まさか…」


 やめ…。


「まさか、あんなに早くアントリウム兄が村へと帰ってくるとは…」


 生存は絶望的でしょう。


 そんな言葉が耳に届いた。


 世界が暗く閉ざされた様な錯覚を覚え込み上げる吐き気に呻く。

 魔物の群れの中、そしてドラゴンが跋扈しているという村へと入った兄。確かに魔法が使えない筈の兄には生き残るのは難しいというのは嫌でも理解できた。


 兄の死という受け入れ難い程の現実を受け止め聞いれずにいるトワイアだったが、幸か不幸か彼はそれなりに聡い人物であったため、理性的な部分がその現実を事実であると告げている。


 そして魔法が使えない筈の兄が魔物の群れに突っ込むなんて無茶を何故起こしたのか。その理由にも簡単にたどり着いてしまった。


 兄は、バジルはいつだって家族の為に行動してきた。


「僕の…せい、なのか」


 わかりきっていた事だ。


 嗚咽を漏らす。


 涙や声が枯れそうになる。


 心の反応に身を任せ感情を吐き出す。


 兄に何も返せなかった。恩も、愛情も何一つ。


 いつのまにかヘンリーは部屋を後にしていた様でトワイアはひとりきりだった。

 今はそれが有難く思う。


 こんな子供の様に泣きじゃくり駄々を捏ねる弱い姿を誰にも見せたくはない。そんな小さなプライドも初めのうちは持っていたがすぐに悲しみの濁流に押し流されてしまう。


 その後バジルは丸一日部屋閉じ籠りシーツを破かんばかりに握りしめながら慟哭するのだった。







明日の同じ時間にもう1話閑話を投稿いたします!

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