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たとえ神に選ばれなくても  作者: ナカマクン
【クレアがバカになる話】
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第5話。導かれし変人達

 なるほど、彼らがやってるのは宗教ごっこだ。

 バリス卿が教団を脅威と判断しなかった理由が今なら分かる。


 異端を初めとする要注意団体には組織を強大化するマニュアルがある。人材育成がその最たる例だ。耳触りの良い言葉で人を集め、外界から孤立させ、徐々に後戻りのできない行為をやらせ、ここが自分の唯一無二の居場所だと洗脳する。これが連中に共通する手口だ。


 しかしここにはその手のノウハウも無ければやりそうな気配も無い。活動資金の徴収や悪辣なルールも無いし、組織体制も壊滅したままで再建する能力も無い素人集団だ。

 彼らの目的は二代目の魔法少女を見つける事らしいが、少なくとも今すぐ処刑されていいような危険な団体ではない。言ってしまえばアイドルのネタで騒いでいるファンクラブと同程度だ。


 それに、上から下まで全員が善意で動いているのは分かる。悪用を狙う連中から命懸けで魔法クレヨンを守ってくれたのも素直に感謝したい。


 だが、その善意の素人集団に私がここまで追い詰められているのは、いったいぜんたい何がどうなっているんだ?






「トリックバイトリート!」


 ステージの中央に立ったミサキが魔法クレヨンを前方の観客に向けて突き出し、「ん〜!」リボンをクルクルする時のバレリーナみたいな変なポーズで目を閉じてプルプルと震えている。


 当然ながら何も起こらないので、「ぷは〜……」ミサキが力を抜いて魔法クレヨンを下ろすと、パチパチと観客達の拍手が鳴った。


「ふぅ……ありがとうございましたぁ!」


 ミサキは妙に楽しそうに観客へ一礼した。そして隣に立つ聖女マリアに「えへへ……だめでした。ごめんなさい」はにかみながら魔法クレヨンを差し出す。


「どうか謝らないで下さい。あなたのご協力のおかげで私達は夢に近づけたのですから。ご参加ありがとうございました」


 マリアが微笑む。しかし盲目ゆえか、ミサキから魔法クレヨンを受け取ろうとした手の位置が少しズレていたので、ミサキが微調整をして魔法クレヨンを優しく手渡した。それを受け取ったマリアは大切そうに胸に抱える。


「では次の方、どうぞ」


 そしてあっという間に私の順番が来てしまった。


「次の方、どうぞ」


 どうしよう……目的全部投げ捨てて逃げようかな……でもそれやると今までの苦労が全部水の泡になるし……。


「次の方?」


「クレア様、呼ばれてますよ?」


 でも投資を惜しむあまり取り返しに固執して大負けするのがギャンブルの破産パターンで……えっと、サンクコストって言うんだっけ……? ここでやめたら取り返しがつかなくなるって考えを利用するのも要注意団体の特徴でえっと……えっと……。


「あらまー! 緊張してやり方忘れちゃったんだね! じゃあおばちゃんと一緒にやろっか! ね!」


 現実逃避していただけなのに、アマンダさんに肩を抱かれてステージの上に引き摺り込まれてしまった。もうこの際イノセント様でも誰でもいいから私を助けて……。


「じゃあまずはマリア様にご挨拶しよっか! はい、お名前言って!」


「どうも……ただのクレアです……」


 アマンダさんの勢いに押されて私は一礼した。そうだ、まずは落ち着け。まだ思考放棄する段階じゃない。魔法クレヨンが偽物だという可能性も残っている。


「…………?」


 しかし私が顔を上げると、マリアは何やら困惑した表情で固まっていた。


「マリア様?」


「あっ……も、申し訳ありません……!」


 アマンダさんが声をかけると、彼女は慌てて頭を下げた。


「初めましてクレアさん。私は……キャッ!?」


 私は見てしまった。彼女が胸に抱いていた魔法クレヨンが、釣り上げられた魚のようにビチビチと跳ねてマリアの腕を振り払う光景を。うわぁあれ本物っぽいぞぉどうしよお。


 そして魔法クレヨンは子犬が飼い主に飛びつくように私の胸に飛び込んできた。なすすべもなく私はそれをキャッチする。キャッチしてしまった。


 ……お帰り、魔法クレヨン。久しぶりだね。こんな時に私の知らない機能を発動するな! ブッ壊すぞ!


「あらまーっ!?」


 隣で一部始終をバッチリ目撃していたアマンダさんが驚きの声を上げる。だがまだ大丈夫だ。ピンチへの強さに定評のある私を舐めるな。この程度のピンチならいくらでも乗り越えてきた私の実力を見せてやる……!


「いやー! 聖女様が足を引っ掛けて転びかけてしまうなんて、危ないですねー! はずみで魔法クレ……聖杖がこっち飛んできちゃいましたよー! お怪我は無いですか聖女様ー!」


 どうだ! これが百戦錬磨の誤魔化し力だ!


「ほらここ! 釘が! 飛び出していたようですね! 聖女様! いやーまったく! 足元がね! 不注意が危ない釘ですねー! 釘が! ねっ! 危ないので押し込んでおきますね! いやー! はははー!」


 何も無い床をダンダンと踏んでアピールに成功した私。よし今だミサキ! 私をフォローしてくれ! いつものように!


「えへへ……ポムポム焼き美味しいですぅ」


「そうかいそうかい、たんとお食べ。あんたみたいな若い子が美味しそうにモチモチ焼きを食べてくれるのが、ワシみたいなオババには一番の幸せなんじゃよ」


「ファーッ!?」


 しかしミサキは知らないババアからモチョモチョ焼きをもらって美味しそうに食べていた。ずるい!


「あれ? これってポムポム焼きって名前じゃないんですか?」


「ワシはモチモチ焼きと呼んでおるがのぅ。中に餡が入っているのがモチモチ焼き、クリームが入っておるのがデロデロ焼きじゃったかのぅ?」


 ババアそれ今やる話か!? ミサキを返せ! 私の生命線なんだぞ!?


「あ、あの……」


 マリアがおずおずと私に話しかけてきた。マズい! 余計な事を聞かれる前に何が何でもこの場を乗り切らなくては! 秘策発動!


「はいじゃあ儀式やりまーす! トゥルィックゥ! ぶぁーるぃ……? トッリィーットメント! はい何も出ませんでしたね、っと! じゃあこれ返します!」


 私は魔法クレヨンをマリアに返品した。

 どうだ! 巻き舌クソ発音で乗り切る! これが私のアンサーだ! これなら何も出「ヒメサマヲマモレー」


「…………は?」


 下から聞こえてきた小さく甲高い声に恐る恐る視線を落とすと、小鳥サイズの小さな落書き衛兵が私の足元で鳴いていた。


 あ……今でもまだ出せるんだ私……。


「セイヤーッ!」「ヒメサマヲー……」


 私の全力シュートをくらって空の彼方へ飛んでいく落書き衛兵。セーフ! セーフだよね!? 信者達には見られてないよね!? お願い!


 私はそーっと信者達の様子を伺った。


「「「…………」」」


 先程までの熱狂はどこへやら。ステージの下に集まる信者達はシーンと静まり返ってこちらをガン見していた。ひぃ……。


「なぁ……今……」「え? なになに?」「変なのが居なかった?」「見ーえーなーいー!」「いや、たしかに小さい何かが……」「ネズミ?」「そうじゃなくって」「よーし、パパが肩車しちゃうぞー!」「パパダメー! うしろの人が見えないなるでしょー!」


 露骨にざわめき始める信者達。マズい……マズいぞ……。


「なあ、もう一回やってもらったらどうだ?」「そうね! もう一回ちゃんと前でやってもらうべきよ!」


 や、やめろ……。


「そうだな!」「もう一回やってもらおっか!」「もう一回!」「もーいっかい! もーいっかい!」「もーいっかい!」「もーいっかい!」


 やめろって……。


「次は発音もちゃんとやってもらおうぜ!」「そうだわ!」「トリック・バイ・トリート!」「トリックバイトリート!」「トリックバイトリート!」


 お前らが崇拝しているイノセント様本人を虐めるのをやめろおおおおおおお!


「ピーピーピーピーうるっせえ! このクサレヒヨコ共が!」


 何かが飛んできて信者達のど真ん中に着弾した。不運な信者達が何名か轢かれ、飛来物はバウンドしてステージを支える柱にブチ当たってへし折った。「キャッ!?」「ヒェーッ!?」ステージが傾き、マリアとアマンダさんが悲鳴を上げて仲良く転げ落ちる。反射的に伏せていた私は、いち早く体勢を立て直してステージから飛び降りた。


 魔女狩り部隊か!? 助かった! ……助かっ、た?


 着弾地点では五名の信者達が倒れていた。うめき声が聞こえるので少なくとも数名は息があるようだが、うち一名は頭から血を流してピクリとも動かない。

 一方で飛来物に目をやると、崩れた材木に押し潰されている金髪の少女が見えた。


 ……人間を投げたのか。


「おうおうおうおう!」


 静まり返った会場に、ガラの悪い女の声が響く。


「聞いたぜぇ? イノセントの後継者を探してるんだってなぁ? だったら俺様がその後継者になってやろうじゃねえか!」


 声の出元は民家の上。四人の少女が立っている。年齢はおそらく全員が十代半ば。服装は全員イノセントのコスチュームに似ているが、カラーリングが赤青緑ピンクとそれぞれ異なっていた。こいつらが魔女狩り部隊なのか……?


「レッド、魔女狩り部隊が接近しています。勝手な行動は慎み、提督のプラン通りに進行して下さい」


 彼らは服と髪色が一致していた。今口を開いたのは青くロングストレートの髪を持つ眼鏡の少女だ。

 それにしても今の発言は聞き捨てならない。魔女狩り部隊ではないなら、こいつらは何だ?


「俺様に命令するんじゃねえ。ダルマにされてぇか」


 そして先程から野蛮性を発揮しているのは、赤くトゲトゲしい髪質の少女。血のように真っ赤なマフラーを巻いていて、遠目にも目立つ程に胸がかなりデカい。敵だ。


「おや、よろしいのですか? 私を殺せば男性に戻れなくなりますが?」


「だから死なねえようにダルマにすんだろうが。ガン突きしてヒィヒィ泣かせてやろうか、ああン!?」


「あらあら、喧嘩はいけませんわ」


 赤と青の仲裁に入るのは、緑のふんわりした髪を持つ少女。こいつは赤の次に胸がデカい。敵だ。


「そ・れ・にぃ〜、どうせ全員アタシがちょっと命令しただけで情けな〜くワンワン鳴いて服従しちゃうザコなんだからぁ〜。さっさとオシゴト終わらせちゃおうよ〜。ねっ?」


「ケッ、テメーが操れんのは身体だけだろーが。男に戻ったらクソ生意気なテメーを真っ先にブチ犯してやるって心のチ●ポがブチギレてるぜ」


「ひっどーい! 自我はそのままだからエロいのに〜!」


 四人目はピンク髪のツインテール。人を馬鹿にしたようにニヤニヤと笑っており、連中の中で一番幼い容姿をしている。


「レッド、時間がありません。すでに魔女狩り部隊には包囲網を敷かれています。接敵する前に今すぐ冷静な判断を」


「そーそー、また提督に怒られるよ〜?」


「たしかに提督のセンスは最低です。嫌がる気持ちは分かりますが……」


「るせえ! チ●ポ切り落とされようが目ん玉くり抜かれようが、元に戻れんなら何でもやってやらぁ!」


 四人は屋根の上で横一列に並ぶと、それぞれ独自のポーズを決めた。


「ダルマ串刺しハラワタ引き抜き何でもござれ! 人体破壊こそ究極のセックスだ! リョナレッド!」


「君に見せよう、男がメスになる瞬間を。信じて。人は誰でも美少女になれる……! TSブルー!」


「触手姦にスライム姦、石化人外化人格排泄。肉体変化の専門家。生物姦グリーン」


「キャハハハ! 口では嫌がってても身体は正直だよぉ〜? でも種付けおじさんだけは勘弁して! 催眠ピンク!」


「「「「五人揃って、特殊性癖魔法少女戦隊! マジカル☆パラフィリア!」」」」


 ………………シーン………………。


 会場の空気は死んだ。拍手の一つも起きない。ドヤ顔の四人とは裏腹に、何ともいたたまれない沈黙が耳に痛い。

 うわぁ、痛たたた……客観的に見ると私もあんなんだったんだ……。一人足りてないし……。


「頭おかしいんじゃねーの」


 誰かがボソッと呟いた。正論だ。


「テメーらにだけは言われたくねぇんだよ!」


 顔を真っ赤にしたレッドが、赤い砂利のような物を声の出元に投げつけた。短い悲鳴が上がる。こっちも正論だ……。


「あらあら、私達が考えた設定ではありませんのに……酷いですわ……はぁ……」


 グリーンが困ったように頬に手を当ててため息を吐いた。


「クレア様、あれ見て下さい」


 いつの間にか私の隣に居たミサキがちょいちょいと袖を引く。そして指差すその先には、倒れ伏す負傷者に覆い被さる血塗れの金髪ショートカットの少女が居た。


「ごめんね。ボク、痛かったよね……?」


 先程ブン投げられて、崩れた足場の下敷きになっていた奴だ! こいつが五人目だったのか……!


「今治してあげるからね……んっ……ちゅっ、ちゅっ……んんっ……はぁ……」


 吐息混じりに負傷者の女性と唇を重ねる黄色い奴。「んんっ!?」それまで頭から血を流し、ピクリとも動かなかった女性の手がビクンと跳ねた。どうやら意識を取り戻したようだ。何が起きているのかを探ろうとするように彼女の両手が動いて、自分の唇を塞ぐ少女の頬を撫でた。


「ぷはあっ……。無事に治ったみたいだね、よかったぁ」


 その動きに気付いた黄色い奴……おそらく何とかイエローは顔を引いて負傷者と目を合わし、花のような笑顔を見せる。見つめ合う二人の唇に、血の混じった唾液が赤い橋をかけていた。負傷した女性が頭の血を拭うと、そこには傷一つ残っていない。


「五人目はキス魔イエロー……ですかね? キスした相手の傷を治せるみたいです。もしかしたらあの人の体液に秘密があるのかもしれません」


 嬉しい。ミサキが真面目に敵の能力を考察してくれている。変人だらけで頭おかしくなりそうな環境なのに、なんて真面目で良い子なんだ……! 流石はみんなの大天使!


「このメスブタがぁ!」


 優しく微笑むイエローの笑顔に、レッドの靴先が突き刺さった。


「人がクソ寒い登場シーンやらされてる時に、テメーはどこで遊んでやがんだゴラァ!」


 レッドがイエローを派手に蹴り上げた。彼女は空中で半回転して吹っ飛び、「ンウッ!」背中から地面に落ちてプルプルと悶えた。


「酷いよ! そもそもボクを投げたのはレッド君じゃないか!」


 どうやらイエローの治癒力は自分にも適応されるようだ。鼻が折れてもおかしくないダメージに見えたが、すぐに起き上がって異論を挟む彼女の顔には青あざ一つ見られない。


「訂正して下さい、レッド。彼女はメスブタではありません。コールサインはドMイエローです」


「るせえ! 俺様に指図すんじゃねえ!」


「ボクそんなにMじゃないと思うんだけど……」


「ザーコザーコ、ザコイエロ〜?」


 五人がぞろぞろと集まってきた。彼らに恐れおののく教徒達が退き、円状の空白地帯が人混みに広がる。


「何者ですか! 乱暴はおやめ下さい!」


 そこにマリアが入り込んだ。彼女は杖もつかずに魔法クレヨンを大切そうに抱いており、彼女の後ろには信者数名が続く。


「何者かだぁ? 今言っただろーが。俺達はお前らが崇拝する魔法少女様だってよお? つまりお前らの味方、お前らの戦力ってわけだ。ヨロシク頼むぜ教祖様ァ?」


 レッドはズカズカと歩いて遠慮無くマリアの首を掴んだ。「……!」片手で持ち上げられ、声も出せずに青ざめるマリア。「マリア様!」彼女の後ろにいた信者達が駆け寄るが、「雑魚はすっこんでろ!」レッドのマフラーから赤い石ツブテのような物が飛び、「あうっ!?」信者達の足を撃ち抜いて次々と転倒させた。


「ハッハァ! 感謝しろよ! この俺様が、弱っちいお前らを魔女狩り部隊から守ってやるんだからなぁ!」


「ヒッ……!?」


 そしてレッドはマリアを空中に放り投げた。


「グリーン、彼女を拘束してください」


「お任せ下さいまし」


 グリーンの髪が素早く伸びたかと思うと、植物のツタ状に変化して空中のマリアを絡め取った。そのまま彼女から魔法クレヨンを取り上げた。グリーンが微笑む。


「聖杖の力を引き出す方法をご存知ではありませんこと? あなたに死なれては困りますので、どうか抵抗なさらぬよう願いますわね」


 狙いはやはり魔法クレヨンか。マズいな……。魔女狩り部隊だけなら、最悪逃げ切れなくてもバリスの名前やグランバッハ家の身分を使って交渉で乗り切る手が使えたのに、予想外の連中が出てきた。しかも魔法使いあるいは魔術師が五人もだ。こいつらの服装はそれっぽいが、明らかに教団の味方ではない。


 となれば……この国の戦力が戦争に駆り出されている隙を狙った第三勢力か。センス最悪の変態戦隊設定は、教団に罪を被せる偽装工作といったところだろうな。

 そして魔女狩り部隊との交戦を想定しているなら……ふざけているように見えても相当な手練だ。


 だが、それならそれでやりようはある。

 敵勢力が勝手に潰し合ってくれるのなら、これを利用しない手は無い。混乱に乗じて魔女狩り部隊の特殊武器が手に入れば魔法クレヨンも破壊できるだろう。


 ……信者達は巻き込まれて大勢死ぬだろうが、それは私の知ったことではない。お前らを助けてくれないエセ救世主の無能さでも恨むんだな。


「ああ、聖女様……」「そもそもこの子たち何なの?」「見れば分かるだろ……魔法使いだよ」「パパー、魔女狩り部隊ってなにー?」「……大丈夫、そんなのはまだ知らなくていいんだよ」「そんな……もう教会の手先が……」「ああ、イノセント様……」


 信者達の嘆く声が耳に痛い。だが私に助けを求められても困る。私はただの一般人だ。異端に走った自業自得と諦めるんだな。


「イノセント様に助けを求めてはいけません!!」


 マリアが叫んだ。あの細い身体のどこから出ているのかと疑いたくもなる声量だった。信者達が一様に黙る。グリーンが眉をひそめた。


「呼べばあの方は必ず来てしまいます!! イノセント様を戦場に引き戻してはいけません!! あのお方はもうお休みになられるべきなのです!!」


 おい……何を勝手な事を言ってんだ……。


「すぐに全員逃げて!! 逃げなさい!! お願いします!! 誰が殺されても人質に取られても、誰の言葉にも耳を貸さないで!! なりふり構わず全員逃げて下さい!! 私からの最後のお願いです!! 逃げて!!」

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