第11話。負け犬たちの牙
私は自分が偽善者だと知っている。
私は決して英雄にはなれない。そんな事は分かりきっている。千人を助ける英雄がいる一方で、一人しか助けられないくせに小さな自己満足に浸っているのが私だ。
あの奴隷館にいたミサキ以外の奴隷は、順番に殺処分されていくだろう。私がミサキを買い取った時の彼らの顔を忘れることができない。嫉妬と憎悪と絶望の顔。彼らはミサキだけを助けた私を恨んでいたはずだ。
こんな事は今までに何度も経験した。思い出す度に、自分のした事がとても虚しくなる。
人と自分を比べず、自分に出来る最善を尽くせ。
私の師はよくそう言っていた。思えばあの人は私の英雄願望を見抜いていたのかもしれない。
そしてそれが、決して叶う事のない幻想である事も。
私は、最善を尽くして生きているだろうか。
過去の自分に胸を張って生きているだろうか。
きっと、そうでありたいと願ったから私はミサキを助けたんだろう。
そして今度はそのミサキと一緒になって、縁もゆかりもない人狼なんかを助けようとしている。
私は自分の行為が自己肯定感を得るための手段でしかないことを自覚しているが、ミサキはどうなのだろう。純粋な善意で動いているのだろうか。
……違うと思う。芯のない善意は簡単に折れる。ミサキはそうではなかった。きっと、彼女にとって人狼を救う事は自分を救う事と同義であるはずだ。
ならば、ミサキの根源にあるものは強迫観念だろう。人の役に立たなくてはならないという、奴隷時代に植え付けられたであろう思想。本人は自覚していないだろうが、奴隷商の教育によって本人の人格として形成されてしまっている。
主人を喜ばせる事が自分の喜びだという思想に固定されたまま、その欲求を一度も満たせた事はなかったのかもしれない。だからあの必死さなのだろう。
あんな泣きそうな顔で無理に笑顔を作りやがって。
ちくしょう、いったいどこのどいつがミサキをあんな風に調教しやがったんだ。
それにしても、負け犬の師匠と売れ残り奴隷の弟子か。歪んだ者同士でお似合いの底辺コンビだ。
やられ役の人狼達まで加わって、噛ませ犬には丁度いい集団だな。きっと英雄様の強さを引き立てる踏み台になれるだろう。
だからこそ、やってみる価値はある。
生まれ持った能力や環境が人生の全てであってたまるか。
何も与えられなかった人間の努力は、どれだけ積み重なっても無駄だなんて認めてたまるか。
きっとそれを証明するために、私は冒険者を続けている。
「ヒャッハー! 負け犬の遠吠えが聞きてえなあー!」
「オラオラ! 人間サマを何人も食い殺してきたんだろー? 本性見せてみろよババァ!」
「次はこれブチこんでみようぜ! どこまで入るかなー!?」
「オイオイ酒瓶なんて入るわけないだろーが!」
「じゃあこうしようぜ! 酒瓶が入ったら今日のお仕置きはここまで! 入らなかったら変態旦那と一緒に火あぶりだぁ!」
「ヒハハハ! いい声で鳴いて仲間を集めてくれよぉ!あのガキどもみたいになぁ!」
鎖で縛り上げられたドーベルが、五人の男にいたぶられていた。
全身の体毛を剃り上げられており、まるで裸ネズミのように不恰好な肌を晒している。剥き出しの地肌に浮かんだ痣と火傷痕が彼女に加えられた暴行の凄惨さを物語っていた。
頭髪は根元から剃り上げられているが、丸坊主ではなくわざとまばらに残された長髪が惨めさに拍車をかけていた。
もはや抵抗はおろか泣き叫ぶ気力もないのか、彼女は低い呻き声を発するのみだ。脇腹や下腹部に突き出される槍の柄から逃れるように、体を丸めてうずくまっていた。
酷い事をしやがって。私は内面舌打ちしたが、それを表情に出すわけにはいかない。今は生きていてくれただけでもよしとしよう。
私が背負っていたハスキが、もぞりと身動きした。
「冷静になれ。本当に助けたいなら我慢して、二人とも作戦通りに動くんだ。きっと成功する」
「はい!」
「……わかった」
隣と背中から返ってきた返事に私は頷きで返す。
空には下弦の月が浮かんでいる。
私とミサキは人狼達が集会場として使っていた広場に戻ってきていた。
広場には冒険者のテントがいくつも張られ、焚き火が周囲を取り囲んでいる。いたぶられているのはドーベルだけではない。捕らえられた人狼達がそこかしこで痛めつけられ、ハスキを呼び寄せるための苦痛の叫びを上げさせられている。仲間を大切にする人狼の習性を利用するつもりなのだろう。
冒険者は見える範囲内だけでも20人ほどいる。ならばその倍以上が控えていると考えていいだろう。中々の大人数だ。依頼者は余程の金持ちだな。そんなにハスキが欲しいか。
ミサキがランタンを掲げると、ドーベルに暴行を加えていた冒険者達が一斉にこちらを見た。
さぁ、一寸の虫の魂を見せる時だ。
「聞け! 私達も正式に依頼を受けた冒険者だ! 例の人狼を捕まえてきた! 報酬の取り分について相談がある! リーダーを呼んでくれ!」
「クレア・ディスモーメントだ。組合にも登録している正規の冒険者だ」
「ミサキです。名字はありません。奴隷商に売られた時に失いました。今はクレア様に引き取られて冒険者見習いをしています」
「奴隷から冒険者に? ふぅん、珍しいわね」
「はい。クレア様にはいくら感謝してもしきれません」
「それはいいからミサキ、受注書を出せ」
「あ、はい。これが依頼受注書の控えです。確認お願いします」
「……うん、確かに本物ね。本当に人間だったのね。でも、どうして人狼の群れに?」
「もちろん、奴らを騙してコイツをこっそり捕まえるためだ。今は薬で眠らせているが、奴らの鼻を欺くのは苦労した」
「それで全員そんなに泥まみれなのね。ご苦労様」
リュックからミサキが取り出した受注書をスレイが確認した。アベルは私と背中のハスキを怪訝な目つきで眺めている。
冒険者達は遠巻きにこちらの様子を伺い、ひそひそと何かを話し合っていた。
「待て。そいつらが本当に依頼を受けた冒険者本人とは限らない。人狼が本人を喰い殺して化けている可能性がある」
「そんな事、思い付きもしなかったわ……さすがはアベルね。いったいどれだけの危険を予測し続けているのかしら」
「じ、人狼じゃありません! 何なら私、ここで服を脱ぎます! 全部脱ぎます! お尻に尻尾が生えていないかどうか確認してください! 触ってもいいです!」
「なるほど、それなら確実だ」
「ダメ!それは絶対にダメ!」
「だが」
「人を無闇に疑うことは良くないわ! 危険を犯してこの人狼を捕まえてきてくれた人たちに失礼じゃない!」
「やれやれだ」
肩をすくめるアベル。それにしても、ミサキの口先というか、とっさの弁解能力は目を見張るものがある。
おそらくはこれも主人の顔色を伺わなければならない奴隷生活で身についてしまったものなのだろう。
「それで報酬の取り分の件だが、私達が全報酬の50%を頂く」
「ハァ!? 何よそれ、ボッタクリじゃない!」
「これでも譲歩している方だ。そちらが余計な事をしなければ、もっと簡単にコイツを誘拐できたからな」
「ふん、あの時まとめて斬り捨てておけば良かったわ」
「その時は依頼達成は不可能だったのではないでしょうか? 人狼たちはこの森を捨てて逃げ出そうとしていましたから……」
「だからと言って!」
「まあ待てスレイ。彼らの言い分にも一理ある。だからそうだな、20%でどうだ」
「譲歩して40%だ。こちらも命がけだった」
「なら中間をとって30%にしよう。これ以上要求するようなら、力づくで解決することになる」
「わかった。30%で手を打とう」
「驚いたわ。なんて交渉力なの……? こんな強欲な女を一言で黙らせるなんて……」
「やれやれだ。このくらい、交渉術の初歩の初歩なんだが」
一言じゃないだろ。だが注意を金に向ける事はできたか。
「話がまとまったところで、さっそく依頼者に引き渡しを行いたい。どこにいる」
「ここにはいないわよ。受取人は護衛と一緒に森の外で待機しているわ」
やはり依頼者を人質に取ることは不可能か。まぁいいさ、こちらもそう上手くいくとは思っていない。
「そうか。ならひとまずこいつを縛りあげよう。いい加減腰が痛くなってきた」
私はゆっくりと後ろを向き、背負っていたハスキを彼らに向けた。ハスキは何も身につけていない。泥に汚れた裸体をむき出しにしている。
ハスキが唾を飲み込む音がした。緊張するよな、私も緊張してる。
「起こさないようにゆっくり下ろしたい。すまないが手伝ってくれ」
「オーケーだ。俺「私が手伝うわ。アベルは鎖を持ってきて」
アベルが何かを言いかけたが、それを押しのけてスレイがこちらに近づく気配があった。私の背中に伝わるハスキの鼓動が早くなる。
焦るなよ、まだだ。まだ早い。
「アベルの視線は関係ないけど、人狼とはいえ見た目は女の子だし、裸のままだとちょっと可哀想ね」
「あ、じゃあ私の上着を使いますね。泥と草まみれなので申し訳ないんですが」
「ま、裸よりはいいんじゃない?」
ミサキの上着には、拾ってきた注射器がすぐ取り出せるようにポケットに隠されている。不自然な膨らみは泥と草が誤魔化してくれるはずだ。
「よっ、と。結構重いわね」
私の背中から重みが消えた。
よし、今だ!
「スレイ!」
「あっ!? こっ……のぉ!」
アベルの警告とスレイの怒りの声に続き、刃が鞘を擦る金属音がした。振り返ろうとしたが、背中に誰かがぶつかってきた。えり首を掴まれ、体が強制的に半回転する。
目と鼻の先に赤い切っ先が見えていた。
「クレア様!」
「邪ッ魔ァ!」
怒りの形相を浮かべたスレイが刀を私に突き付けている。いや、正確には私の背後のハスキにだろう。
ハスキめ。私を盾にしたな。
打ち合わせにはなかった動きだが、上手いぞ。
「オレの目が覚めたことにも気づかないとはバカな人間たちめ! 次はお前が眠ってみろ!」
スレイの左腕に小さな赤い点があった。出血だ。注射針が刺さった跡だ。ハスキを襲った冒険者達が持っていた強力な麻酔薬を打たれた傷痕だ。
「すみません! 予備の麻酔を奪われました!」
「謝ってすむ問題かこの役立たずが! お前のおかげで今までの苦労が全て台無しだ!」
ハスキと私達がグルではないというアピールも忘れてはいけない。指名手配はされたくないからな。
「それで私に勝ったつもり?」
スレイの顔付きが変わった。
男に甘え媚びる女の表情が消えた。パッチリ開いていた大きな目が冷たく細まり、瞳孔が収縮した。唇の端がゆっくり持ち上がり、三日月型の不気味な笑みが浮かんだ。彼女が帯び始めた殺気に心胆が震え上がる。
剣聖スレイ。お前、さては猫を被っていたな。人狼なんかよりよっぽど化けるのが上手じゃないか。
「スレイ!」
「アベルは下がってて。悪いけど私、アベル以外の誰かに負けるのは嫌なの」
スレイが刀身を自分の左腕に押し当てて引いた。血を啜る不快な音と共に彼女の左腕から血の気が引いていく。
刀の色だと思っていた赤みは、網目状に隙間なく張り巡らされた細い血管だった。スレイの腕に食い込んだ刃が脈動し、血管がうねり、太みと赤みを増した。
麻酔ごと自分の血を吸わせているのか。
「なんだそれ!? お前それ大丈夫なのか!?」
「別に。腕を切り落とすわけでもないし、しばらく片手が痺れる程度よ。ハンデにもならないわ」
「スレイ、殺すなよ」
「わかってるわ。でも、手足をへし折るくらいは構わないわよね」
「舐めるな!」
ハスキが私を突き飛ばした。スレイは軽く身を捻って私を避けた。私は勢いを殺しきれず前のめりに転んで顔を少し擦りむいた。
痛ったぁ……。はぁ……いいとこないなぁ、私。
だが自分の非力さを今更嘆いても仕方がない。凡人は凡人なりに頭を使って、できることをやろう。
戦って勝てない相手と戦わずに目的を達成する。その状況を作り出すのが私達の戦いだ。
「報復だ! 今からこの森を出て、多くの人間を殺してやる! 女子供から殺してやる! 死体から流れた人間の血でお前の名前を書いてやるぞ! お前がオレを逃したせいで多くの人間が死ぬんだ!」
「私が逃がすと思ってるわけ?」
「スレイ!」
「ここは私に任せて! 私だってアベルの足を引っ張ってばかりじゃないって証明してみせるから!」
お、私が考えた挑発だ。
どうやら効果はあったみたいだな。ハスキとスレイの声が遠ざかっていく。体を起こすとミサキがいた。
「クレア様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。それより状況はどうなった」
「ええと、クレア様が蹴り飛ばされた隙にハスキさんが逃げました。それをスレイさんが追って森の中へ入って行きました」
体を起こしながらアベルの様子を見てみる。スレイの援護に行かず、怪訝な目つきで私達を見ていた。私達を怪しんでいるな。
こいつを何とかこの場から引き離さなければ、捕まった人狼を助け出す事ができない。
「クレア様! スレイさんを助けに行かないと!」
「え? いや、だが私達が行ってもだな……」
「森の中にはまだ人狼がいます! スレイさんがどれだけ強くても、夜の森の中で背中から襲われたらひとたまりもありません!」
「お、おい。引っ張るな」
「待て」
アベルが私達の前を塞いだ。
「お前たちはここにいろ」
「でも、私のせいで……!」
「いいから動くな。大人しくここにいろ」
「スレイさん一人だけでは危険です! 私たちだって背中を守るくらいには役に立つはずです!」
「……背中、か」
アベルは何やら迷っていた。
そうか。もし私達が人狼とグルになっていた場合、スレイの背中を守るフリをして襲いかかるかもしれないと考えているんだな。
ミサキが繰り返し背中を強調したのは、私とアベルをその考えに誘導させるためか。
名案だ。アベルがここから離れないようなら実行しよう。スレイを人質にできるかもしれない。
「残りの人狼の数はわかるか」
「ええと……すごく大きい人狼が1匹と……普通くらいの大きさの人狼が10匹くらいです」
「こちらが聞き出した数より半分以上も少ない。本当はもっといるんじゃないのか」
「いいえ、10匹くらいです」
「ふむ……」
アベルは黙り込み、何やら考え始めた。こいつとんでもなく慎重な性格だな。それとも余裕があるのか。まさかただの優柔不断なんてことはないだろう。
たっぷり5分以上も考えた後、アベルはようやく口を開いた。
「カマをかけてみたが、嘘はついていないようだな。お前たちはここから動くな。俺が行く」
「は、はい! お役に立てず申し訳ありません! もし何か私にできることがあれば、お詫びに何でもさせてください!」
「それは魅力的な提案だ。スレイに見つからないようにしなくてはならないな」
なんだこいつ、キザなセリフ吐きやがって。いやキザかこれ? 見つからないように何をする気だ。ロリコンか。そのウインクはカッコいいと思ってんのか。私の弟子に手を出したらブッ殺すぞ。
「あの、クレア様?」
しまった。顔に出てたか。
「逃がしてしまった役立たずの私が言うのも変ですが、報酬は諦めましょう……?」
「あ? ……ああ。そうだな。仕方ないか……」
「ではアベル様、よろしくお願いします」
フォローありがとう、ミサキ。役立たずなんてとんでもない。口下手な私の百倍は役に立っているぞ。
アベルは頭を下げたミサキに爽やかに手を振って悠々と森に向かった。冒険者達も十数人ほどがアベルの後ろを追っていく。
よし……よし! 後はレトリバ達をここへ呼んで、冒険者を蹴散らして人質を助け出すだけだ。
レトリバが生きていて本当によかった。他の人狼だけではどうしようもなかった。
さて、アベル達は十分離れたな。
次は冒険者達の動きを混乱させてやろう。
「全員聞いたな! 人狼どもが暗闇に乗じて襲ってくるぞ! もっと火をたけ! 寝ている奴は叩き起こせ!」
遠吠えが響き始めた。人狼が襲ってくるぞ、とは事前に決めた合図だ。レトリバの耳が捉えてくれたか。
冒険者達が慌てて動き始めたが、その動きには迷いが見られる。そりゃそうだ。いきなりやってきた私の指示に従うのは抵抗があるだろうな。
だがお前達のリーダーはお出かけ中だ。こういう時、人は結局、一番声が大きく自信満々な奴に従う。そうでない奴も、先に行動を始めた奴に従う。指揮系統が明確な兵士ではなく寄せ集めの冒険者ならば尚更だ。
私は更に声を荒げながらキャンプ地の中央へ向かう。
「あのデカブツさえ殺せば後は雑魚だ! だが毒を塗った矢や槍でもあの化け物に刺さると思うな! 油を集めろ! 火だるまにして焼き殺しでもしない限り、デカブツに全員喰い殺されるぞ!」
「あ、あんた。裏切ったのか……」
ふと近くを見ると、縛り上げられて顔をボコボコにされたジャックが転がっていた。よかった、生きていたか。
だが殴る。
「裏切るも何も、獣と交尾する変態の仲間になった覚えはないんだよ!」
「うぶええええええ」
ジャックの腹を思い切り蹴飛ばすと、吐瀉物を吐き出した。ごめん、痛かったよな。本当にごめん。
だが殴る。
「このハゲが! 交尾の話ばっかりしやがって!」
次は股間を狙ったように見せかけて、太ももの付け根辺りを何度か蹴った。
さらに吐き出された吐瀉物をわざと踏み、苦悶するジャックの顔をその足で踏みつけ、にじってやった。
顔に足を乗せたまま周囲に目をやると、戦慄した顔でミサキが私を見ていた。他の冒険者達もだ。
「ボサッとするな! お前らもタマナシになりたいか! さっさと動け! もっと火を増やせ! 油を集めろ! グダグタ言う奴を見つけて私の前に連れて来い!」
見せしめの効果はあったようだ。
ますます近づく人狼の遠吠えを聞き、焦り始めた冒険者達が活発に動き始めた。
よし、ごちゃごちゃと皆が走り回っている今がチャンスだ。私はミサキの背を叩き、無言で合図を送った。
ミサキが私から離れ、燃える薪を手に火種を増やし始めた。広場に生えている細木や冒険者のテントの足元にこっそりと火元を増やす。
これでしばらくすれば、この一帯は火と煙で満ちる。レトリバ達を呼び込むのは、混乱が極まってからだ。
これが狼ゲームなら、私とミサキは狂人や狂信者の役割なのだろうな。
さて、私とミサキにできるのはこれくらいだ。後は人狼達に任せるしかない。特にハスキだ。人の体の戦い方を教えたとはいえ、彼女が逃げ切れるかどうかは最後まで確証が持てなかった。
勝てなくていい。奴らを引きつけて逃げてくれ。
ハスキ、君なら出来るはずだ。
君はたりない子なんかじゃない。この森で最も強く賢い、最高の人狼だ。
負け犬の牙を、共に突き立ててやろうじゃないか。