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たとえ神に選ばれなくても  作者: ナカマクン
【アベルの偽物が現れた話】
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第4話。名案だ!

「おはようございますぅ〜。さぁ〜てミサキママとハスキちゃんはどんなあられもない乱れたお姿でお休みしているのかなぁ〜? フヒヒ」


「おはすぞゴルァ!」


「ンアーッ!?」


 四日目の朝。

 今日も私に顔を蹴られたリューイチがテントの外に吹っ飛んでいった。まったく油断も隙もあったものじゃない。


 ディセブデオンへ向かう馬車は見つからなかった。以前は多くの便が出ていたのだが、本格的に治安が悪くなってしまったのだろう。私達は最寄りの町から徒歩での移動を余儀なくされた。


 しかし、街道は私の想定以上の治安の悪さだった。




「あんたらあの町へ行こうというのか? やめときなされ……あの土地は呪われておる……」


 少し歩けば謎の老人から忠告を受け。




「クレア様、今度は山羊が吊るされてますよ……」


「最初はカエル、次はカラス、その次は山羊か……。この様子だと次は人間かもな……」


「なあ、あれ食わないならオレが食っていいか?」


「駄目だ、何が入ってるか分からんぞ。これは罠だ」


「罠か……そうか……」


「ンミー」


「じゅるり」


「猫は食うなよ絶対!」


 道行く木々には動物の死骸が吊り下げられ。




「俺さぁ、ずっと不思議だったんだけど、この世界と元いた世界の動植物の生態系がほぼ同じ「コンニーチーハー!」文明レベルも中世くらいだと思「うわっ、こんちは……」カメラとか明らかにオーバーテクノロジー「アナーターハー! 魔法少女を信じマースカー!」もしかしてここは異世界じゃなくて文明がリセットされた遥か未来の「間に合ってます!」あるいは元の世界から派生した別の「魔法少女ハー! あなたの生活を豊かにシマース!」俺たち転生者を殺し合わせ「間に合ってるって言ってるだろ! 異端尋問官を呼ぶぞ! 全身金ピカの奴!」最後の一人の願いを一つだけ叶えてやると約束したあの女神の「お友達を紹介していただけれバー! 今ならなんとあなたに入会費の5%のキャッシュバックがありマース! ワーオ! これはお得デース!」目的はきっと「いい加減どっか行け! 二度と話しかけるな!」あの、俺割と真面目な話してたんだけど……「ンミー」皆さん興味無い感じっすかね……「聖少女イノセント様はー! お亡くなりになられてはいまセーン! 今も人々を優しく見守られてイマース!」「知るかボケ! マジでブッ殺すぞ!」「オーゥ、そのよーな暴力的な言動は、世界平和を願ったイノセント様を悲しませマース。さあ心を穏やかに一緒に唱えまショー。マジカル☆コミカル☆クリティカール」「あばぎゃあああああああああああ!!」「クレア様ー!?」「おいクレア! しっかりしろ!」「あなたーも、どうデースかー?」あ、俺は百合の間に挟まる男絶対殺す教なんで結構っす……」


 腹立つほどにしつこい魔法少女教団の勧誘も受けた。




「あーうー……」「おおー……」「うーうー……」


 街道を塞いで横転した幌馬車には、数体のゾンビ達が繋がれていた。しかもそれぞれ手足に鉄枷が嵌められ、首には名前と値段の書かれた木板まで下げている。

 運び屋はどうなったのだろうと御者席付近を覗いてみると、乾燥した紫色の泥らしきものが人間の形を成して地面にへばりついていた。そしてその側には空になった注射器が転がっている。…………これは洒落になってない。


「作戦ターイム!」


「認める」


 私はミサキとハスキを集めて円陣を組んだ。


「あれ? 俺は?」


「あっちでカブトムシでも探してろ。あんまり遠くまで行くんじゃないぞ」


「ご飯の時間までには帰って来るんですよー」


「はーい、行ってきまーす」


 君ら、ママ化と幼児化が進行し過ぎじゃない?


「……さて、これ以上進むのは危険だ。もう治安が悪いとかいうレベルを超えている。この道だけでも何十人と殺されているだろう。まだ着いてもいないのにこんな有り様では、本格的に命が危ない。引き返そう」


「危ないのは分かりますが、リューちゃんはどうします?」


「野生に帰す」


「ダメです! あの子はまだ一人では生きられないんです!」


「あいつはお前の子供じゃないぞ!? 目を覚ませ!」


「ママー……ゾンビに噛まれちゃった……」


「おおおい!? 言ってるそばから何やってんだお前はぁ!?」


「可愛いゾンビっ娘がいたから、ちょっと触ろうとしただけなのに……」


「お前ゾンビもストライクゾーンなの!?」


「美少女の顔さえ付いてれば人外でもバリバリOKですけど? むしろぼかぁ興奮するね」


「リューちゃん! すぐに傷を見せてください!」


「あ、噛まれたのは手です。どうです? 痛そうでしょ?」


「三本も指喰われてんのに余裕あるなお前!?」


「実は割と泣きそう。ママ、僕死なないよね? ゾンビになんてならないよね?」


「大丈夫です! リューちゃんはママが守ります! えい、えい、やあ!」


「痛い痛いよ! 糸鋸で僕の腕を肩から切り落とそうとするのやめてママ! せめてもっと先端の方狙って!」


「リューちゃんの悪い部分はママがちゃんと全部捨ててあげますからね! えいっ! えいっ!」


「そいつの悪い部分捨てたら何も残らないぞ」


「ママちょっと病んでない!? ひと思いに斧か何かで腕スパーンやって! 多分あとで治るから!」


「痛かったらちゃんと手を上げろよー」


「その上げる手が無くなろうとしてるんですけど!?」


 金は貰ったしゾンビになったら捨てて帰ろうかと真剣に考え始めた矢先、「なあクレア」ハスキに袖を引っ張られた。


「その町に行くのが目的じゃなくて、例の女をこいつに会わせるのが目的なんだろ? じゃあわざわざオレたちが行かなくてもいいんじゃないか」


「だな。何か案があるか?」


 ハスキは腕切りコントを繰り広げているリューイチを指差した。


「あいつを餌にして誘き出したゴロツキを捕まえよう。そして捕まえたゴロツキに例の女を連れて来させればいい」


 なんて血も涙も無い案を出してくるんだ。ゴロツキを利用するのはともかく、そんな危険な役目を背負わされるリューイチの命が危ない。

 あんなんでも一応今だけは仲間だ。私は目先の欲に惑わされず、冷静で温情的な判断を下した。


「名案だ! すぐにやろう!」


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