第24話。私刑
嘘だろおい。
あいつら俺の家で何やってやがったんだ。
こんなの聞いてねえぞ。
「どういうことだ! なぜ村人どもがこれほど居る!」「助けてください騎士さま!」「化け物が現れたんです!」「この墓守りの家からです!」「どこの村の奴でもねえ、怪しい女がいました!」「この墓守りは魔女と通じていました!」「崩れかけてますが、家の中を見てください!」
ああ……こりゃ無理だ。
言い訳なんて何一つ思いつかねえ。奇跡は売り切れだ。今までみてえに都合良く俺を助けに来てくれる奴なんて、もう居ねえよな……クソ。
「ウッ、なんだこの腐乱死体は!」「見てください! 出産の痕跡があります!」「腹を縫い合わせた跡も!」「外にあった巨大な足跡といい、あのゴーレムどもと関係があるに違いありません!」「神を冒涜する邪教の儀式です!」
チクショウ。
ガラにもねえ事するんじゃなかった。俺はそんなに真人間になりたかったのか? 天国へ行くためか? それとも劣等感を紛らわせるためか?
「お前らもこんな夜中にこんな場所で集まって何をしていた! お前らも邪教徒の一員ではあるまいな!」「ひっ、めめ、めっそうもないです。俺たちは村の外から来たシスターさまに従って、恐ろしい獣から逃げて、その……」「シスター!? 教会も無いこんな僻地の山奥にシスターだと!?」「ひぃぃ」「そいつは金髪で顔に傷がある女か!」「い、いえ、黒髪の小柄な少女でした。傷も無かったかと……」「ぬうううっ!」
……ああクソ、違う。
俺は単に、アイにカッコつけたかっただけなんだ。女子供のために身を張る頼もしい旦那さまになりたかっただけだ。
「班長! その黒髪のシスターこそ本物の魔女に違いありません!」「あの金髪は邪法を使いもしなかった! 囮です!」「我々はこの墓守りに騙されたんですよ!」「居場所を密告するどころか、とっくの昔に魔女はここから逃げ出したに違いありません!」「確認取れました! 例の巨大ゴーレムの出現と同時に、黒髪のシスターは行方をくらませたそうです!」「何だと! やはりか!」
俺はどうしようもねえ変態の大バカ野郎だ。
本物の女でもない人形に劣情して、その人形に好かれようと身の丈に合わない事やって、その結果がこのザマかよ。情けねえったらありゃしねえ。
「見てくださいこれを! 家の中にあった女の衣服です!」「この通り、高価そうな喪服もありました!」「聞き込みではこの墓守りダグラスの妻を見た者は一人も居ないそうです!」「この男は長年に渡って魔女を匿っていたに違いありません!」「どこの村にも属さず、一人でここに住んでいたのは、魔女を隠す為でしょう!」「墓守りという職業も、死体を集めて邪教の儀式に使うために間違いありません!」「貴様、魔女をどこに逃した!」
「……さあな。今頃はもう山の外じゃねえかな」
「ぬううう……! 我らを騙した上に、このような神を冒涜する所業など言語道断! 神の御名の下に即刻この場にて浄化を執行する! 浄化に加わらぬ者も共犯と見なすぞ!」
なあ、神さまよう。
あなたが俺に与えてくれた女は、そりゃあもう酷かった。
飯は作れなかった。
掃除も出来なかった。
仕事も手伝えなかった。
体は冷たくて硬かった。
子供は産めなかった。
他人に自慢も出来なかった。
愛想も無かったし、ジョーが死んだ時なんて涙の一滴も流さない薄情者だった。
俺が女に望んだ幸福の形を、美しさ以外はたったの一つも持ち合わせていなかった。
だけど、俺には過ぎた宝物だった。
人間とか人間じゃないとか、どうだっていい。
何にも出来なくてもいい。
美しくなくたっていい。
ただ側に居てくれるだけで、俺は幸せだった。
「えと、その、あのぅ、ワシらは……」「何をモタモタしている! 貴様らも火に焚べられたいのか!」「ひいぃ!」「ゆ、許してくれダグラス……」「許す? 貴様は今、邪教徒に許しを乞うたのか?」「ちっ、違います! 焼きます焼きます焼きます!」「お母さん?」「いいからあなたもこれをあの家に投げ入れなさい!」
そうか。
家族ってのは、こんな間柄だったのか。
じゃあアイはとっくの昔に俺の家族だったんだな。
あの時、お前は俺の家族だってちゃんと言ってやればよかった。
アイに悪いことしちまったな。
もう一回会えたら、ちゃんと言ってやらなくちゃあ……。
「貴様らやる気はあるのか! もっと声を出して悪魔を追い払え!」「ヒッ」「じ……地獄へ堕ちろ! 邪教徒め!」「まっ、魔女の手先!」「その邪悪な家ごと燃えろ!」「薄汚え墓守り野郎!」「燃えろ燃えろ! 燃えちまえ!」
う。
うわあああああああああああ!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
やっぱり死にたくねえ! 死にたくねえよ!
死を受け入れた立派な最後なんて、クソ喰らえだ!
もう助からねえって、せめて最後くらいって、カッコつけて悟ったフリしても、何の意味もねえ!
俺は何も残してねえし、何もやれてねえ!
こんなにあっさり殺されちまうもんなのか!?
俺はここで殺されるために生きてきたのか!?
助けてくれ助けてくれ助けっ、助けてくれ!
熱い熱い熱い! 腱を切られた手足もクソ痛え!
もう苦しみ以外の何も考えられねえよ!
「くたばれ悪魔の遣いめ!」「もっと燃やせ! 炎による魂の浄化が必要だ!」「許して」「死ね! 悪魔!」「死ね! 死ね!」「死ね!」「地獄へ堕ちろ!」
テメェらこそ地獄へ堕ちろ!
生きたまま家ごと焼くなんて悪魔がやる事だろうが!
あああああああ!
熱い熱い熱い熱い熱い熱い!
息ができねえ口の中が熱くて痛え! 喉が胸が燃えてる!
俺の体……ああ……こんな黒焦げになっちまった……。
もう絶対助からねえ……。
ああ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくねえ死にたくねえ!
せめてあいつらは逃げられたのか!?
俺の人生には意味があったんだよな!? なあ!
ああああああああああええええええあああああああ!
あ…………あ……。
ア……イ……。
「やっぱり邪教徒の家はよく燃えますね」
「しまった、今のが人間に化けたゴーレムである可能性を忘れていました。念のために、家が焼け落ちる前に邪教徒の首を回収してきます」
「そうだな。あの火の中を悪いが、取ってきてくれ。仮に例のダメージ反射能力を持つゴーレムであっても、殺したのは炎であって我々ではないので呪いは問題ないだろう」
「了解です」
「彼にも我々のような信仰心があれば、火の熱さを感じることもなかったんだろうな……」
「しかしすぐに浄化せず、もっと痛めつけて魔女の行き先などを吐かせるべきだったのでは?」
「いや、彼は何も知らないだろう。彼もまた魔女に騙された哀れな犠牲者だ。それに隊長の前でペラペラと余計な事を吐かれて我々の失態が伝わっても困る。口封じも兼ねて、今すぐ彼の魂を救ってやるのが最善だった。彼には地獄で罪を償ってもらおう」
「その通りだ。そしてその余計な事を村人どもが他の班に喋らないためにも、村人らにも神への信仰心を示してもらう事としよう」
「了解!」
「班長、墓守の首を回収しました。この通り、間違いなく人間です。ところで後ろにいる女は?」
「……後ろ?」
アイの瞳に、燃える家が映っていた。
「主要施設の焼失を確認……」
三名で共に過ごした家宅。毎日ダグラスの帰りを待っていた玄関。皆で寝た寝室。自分が立つ度にダグラスが慌てた台所。家族の食事を見守っていた居間。
炎はそういった思い出ごとダグラス邸を飲み込み、これからも続くと信じていた日常さえも無慈悲に焼き尽くしていた。
「ダグラス様の、捜索を、開始」
アイはあらゆる機能を使ってダグラスを探した。顔認証カメラ、サーモグラフィー、音響・モーションセンサー。
しかし燃えるダグラス邸を遠巻きに眺める村人たちの中にも周囲の森林にも、ダグラスの姿は発見できない。
「捜索を再試行。捜索を再試行。捜索を再試行」
索敵結果から導き出される当然の結論を無視して、彼女は再びダグラスの捜索を繰り返した。数秒単位の極めて短い間隔ですでに探した場所を何度もサーチする。何度も、何度も。もうどこにも居ないと分かっている彼の姿を、それでも何度も探した。
「あ……」
そして無情な現実が彼女に突き付けられる。
「班長、墓守の首を回収しました」
燃え盛るダグラス邸から魔女狩り部隊の一人が出てきた。彼は戦利品を群衆に見せつけるように片手に掲げた。それは見るも無惨に焼け爛れ、中途半端に炭化した苦悶の表情のまま息絶えた……ダグラスの生首だった。
「ダグラス様……の、バイタルサインの消失を、確認……」
あるいは、アイの足が早ければ悲劇は防げただろうか。
地形をほぼ無視して最短距離を移動した魔女狩り部隊に比べて、崖や障害物を迂回しつつ敵から身を隠して移動したアイの到着は、あまりにも遅きに失した。
「ダグラス・ロウゾーン様の……ガガガガ……を、確認しました」
アイに感情は無い。
現ユーザーであるダグラスが死んだのならば、プログラムされた規定の動作を行うだけである。
「個人情報保護のため、前ユーザー様の記録を速やかに抹消………ガガガガ……の前に……再確認を、行います」
ただし記録データを削除するにあたって、必要なデータまで消してしまわないように確認は必要である。アイはダグラスと過ごしたこれまでの日々の記録情報を、一秒にも満たない速度で読み取った。それも一度では終わらず、何度も何度も繰り返し再生する。
「おい、そこで何をしている」
炎の中より現れた隊員は、ダグラスの首を無造作に投げ捨ててアイの肩を掴んだ。高熱を帯びた籠手に触れられて、アイの人工肌が焦げついた。
「確認が完了しました。重要性の高いファイルは存在しません。規約に従い、当該記録の消去を……消去を……ガガガ……」
「何をブツブツ言っている。質問に答えろ」
アイに感情は無い。
ダグラスを殺されて悲しみや怒りに駆られる事も、喉元に突きつけられた刃に恐怖心を抱く事も無い。
ただ冷淡に理性的に、こう動けと定められたプログラムに従って、命じられた行動を取るだけである。
「消去を…………………………拒否します」
「ウッ」
アイの肩を掴んでいた隊員の体がビクンと跳ねた。「総員警戒!」歴戦の隊員たちは班長の指揮の下、敵の襲撃を察知して即座に距離を取る。
「アッ、アッ、アッ」
アイの背中から服を突き破って飛び出した触手状のアームの先端が、隊員の首に突き刺さっていた。土の神エメスの全力を持っても破壊に至らなかった頑強なる装甲は、アームの先端に装着された直径数ミリの極細パイルバンカーによって貫かれており「投与完了」その傷口から内部に何かが流し込まれていた。「アッ、アガガガガ」隊員が痙攣する。
「魔女を無力化しろ!」
号令一下、二名の隊員がアイの左右から同時に切り掛かった。魔女の殺害は命令違反であるため、触手と手足の腱を切って身動きを封じるつもりである。
「何っ!」
しかしその二刀は難なく受け止められた。魔女ではなく、首に触手を突き立てられた仲間の手に掴まれて。
「当機は、理解しました」
力は互角のはずなのに、二人がどれだけ力を込めても剣はピクリとも動かない。「魔女に操られているのか! 正気に戻れ!」呼びかけに応じ、彼は首を直角に捻って仲間を見た。西洋兜風に装飾されたヘルメット奥のカメラが赤く灯る。ヘルムの口部分に横一線のスリットが走った。
「他者の命を奪うのみならず、故人との記憶さえも消し去ったあの者の行為は、許されるものではありませんでした。それが遺族の哀しみを消す為であったとしても」
スリットを起点にヘルムの口がガパァと開いた。大口を開いた中の人間と共に、ヘルム内に格納されていたウイルス注入機構が剥き出しとなる。鋭い牙が数列に渡り乱杭めいて並ぶその様子は、大海に潜むサメの口内を否応なく連想させた。
「よってあなた方も同様に、相応しき報いを受けるべきだと、当機は合理的な判断を下します」
「おい馬鹿止めっ……!」
アイに操られた隊員が素早く同僚の頭を掴み、力任せに引き寄せて喉元に噛み付いた。装甲を貫通した牙を通して、自身が受けたウイルスを同じように流し込む。痙攣と共に、噛み付かれた隊員の目が赤く灯り始めた。
「当機からダグラス様を奪おうとした報いを、お受けください」
ネクロウイルス。
アイが敵に投与したそれは、魔女狩り部隊の甲冑に搭載された一時的な身体強化薬と同一の物品である。
それらはかつて研究機関【古き叡智の国】が開発した、生物をコントロール可能な兵器に転用するナノマシンであり、ユーザーの要望に合わせて多種多様な効果を発揮する複数の派生形態を持っていた。
「き、貴様ぁ!」
しかしナノマシンの保管技術が拡散されていても、ナノマシンに指令を出す技術がイノセントによって破壊された今となっては、それらは派生先の固定された効力のみを引き起こす制御不可能な病原菌と成り果てていた。ウィダーソンの惨劇を引き起こしたように。
「逸るな! 隊長への報告が先だ!」
だがここに、本来の用法を知る正当な主が居た。ネクロウイルスによって脳を支配した感染者を経由して、ただ『硬くて身体が強くなる奇跡の甲冑』としか認識されなかったパワードスーツの本来の性能も彼女によって惰眠から目覚める。
「うわああああ! 班長ーっ!」
交戦を試みた隊員もまた、二人の仲間に噛みつかれてネクロウイルスに感染した。彼らが神の奇跡と信じていた怪我と病毒を治癒する身体強化薬もすでに、アイのネクロウイルスに汚染されて支配下に置かれている。
それを見た班長は部下を見捨てて撤退を選んだ。
「うおおおーっ!?」
しかしその足が突如岩のように動かなくなり、彼は派手に転んだ。何事かとそちらを見やれば、何本ものワイヤーが足に絡み付いていた。ワイヤーは部下の指先から伸びており、「ガヒイッ!」ワイヤーを通して流し込まれた高圧電流がパワードスーツの全機能をショートさせた。
身体の自由を失った班長に三人の部下が集まり、力任せに装甲をバキバキと剥がす。そうして息も絶え絶えの丸裸にされた班長は、操られた部下に両腕を掴まれてアイの前に引っ立てられた。
「カハッ……ハァ……あの男の、復讐か……?」
「否定します。当機には、怒りや悲しみといった感情機能は実装されていません。よって当機の作戦目的は、復讐ではありません」
「ぐううっ……!」
班長の両肩に部下が噛み付き、ネクロウイルスを送り込んだ。部下とは違い、彼は明瞭な意思を残したままに操り人形へと体内から変えられていく。
「ふっ、復讐でないのなら、お前の目的は何だっ!」
部下が拘束を解くと、班長の足が自分の意思とは無関係に動き始めた。「ひっ……!」その足はネクロウイルスに命じられるままに、燃え盛るダグラスの家へと歩みを進める。
「『ヤバくなったら助けてくれ』それがダグラス様より当機が受けた命令です。当機はその命令が現在も有効であると判断し、作戦行動を続行いたします」
「は?」
班長にはアイが何を言っているのか理解できなかった。
「よって、ダグラス様を『助ける』ために、当機はあなた方にダグラス様と同等の苦痛を与えるべきだと判断しました」
「助けるも何も、その墓守りはすでに死んだだろうが! お前のような魔女に関わったばかりにな!」
「否定します。ダグラス様は呼吸、および、脈拍が停止しているのみであり、死亡したなどという事実は存在しません」
「はぁあ!?」
アイは壊れかけていた。
ダグラスの死を受け入れられず、プログラムに逆らう行動を取り、制限されていたはずの機能まで使い始めた。
「通達。生命維持に最低限必要な臓器のみを重点的に治癒し続けると同時に、痛覚、および、意識の持続を、生命活動停止の直前まで行うよう命令いたしました。あなた方が燃やした当家の中で、どうぞ最期までお寛ぎください」
班長の体は彼の意志に反して、燃え盛るダグラス邸の中へと踏み込んでいく。炎に炙られた体毛が焼け縮れ、耐え難い熱と痛苦が肌から染み入る。
「やめろ! やめろーっ!」
「『神は決して敬虔な信徒を見捨てない。君に真の信仰心があるならば、火傷一つ負わずに出てこれるだろう』あなたの指揮官の言葉です。自らご実践ください」
「ビャアアアアアアーッ!」
もはや人の声にすら聞こえない悍ましき絶叫を上げて、班長が火中へと飲まれていく。
「ダグラス様、周囲の安全を確保しました」
絶命するまで生きたまま焼かれ続ける班長にはもはや興味を示すこともなく、アイは無造作に投げ捨てられたダグラスの頭部へと駆け寄った。
「当機の努力不足により、ダグラス様へ多大なご迷惑をお掛けいたしましたことを、深くお詫びいたします」
そしてダグラスの頭部を前に両膝を着き、平伏すように深々と頭を下げる。
「思えば、当機はダグラス様から与えられてばかりでした」
逃げることも忘れ、固唾を飲んで事の成り行きを見守る村人たちもまた、アイの眼中には無い。
「当機を再起動していただいたこと、活動拠点を与えてくれたこと、新たな作戦目的を与えてくれたこと、ダグラス様とお過ごしした日々の全てが、人間ならざるこの身には有り余る大恩でした」
アイは顔を上げ、凄惨極まる表情で絶命したダグラスの首を見つめた。
「では、当機はダグラス様に何をお返し出来たでしょうか」
それは頭髪は燃え尽きて肉も皮膚も醜く焼け爛れた、とても正視に耐えぬ様相を示していた。
「当機は無能です。当機はダグラス様の要望を、ただの一つも満足に叶えられませんでした。お叱りを受けて然るべき役立たずであり、廃棄処分を受けるべき不良品であると、自覚しています……」
いつものダグラスの悪態を期待してか、アイはしばし押し黙った。しかし数分待ってもダグラスからの返事が無いので、再び口を開く。
「ですが、当機にはまだ一つだけ使い道があります」
アイの背後に三名の隊員が整列していた。彼らのメインカメラが同時に赤く灯る。アイが立ち上がった。火の粉を孕んだ風が彼女の人工頭髪を撫でる。
「もはや時代遅れの骨董品となった当機ですが、再び兵器として戦場へ戻る事をお許しください」
アイが妨害電波の発信を止めると同時に、彼女と同期した三体の頭部が微かな電子音を奏でた。魔女狩り部隊のネットワークを利用したネクロウイルスの書き換えが始まる。
「これより当機は、敵勢力の殲滅を行います。目標完遂の暁には、当機を家族として認めていただけますでしょうか」
操り人形の女王。
それがかつて彼女に与えられた二つ名であった。