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scene 1





「あ、雨だ。」


玄関を開けた瞬間にザァザァという音に気が付いた僕は、思わずそう呟く。

そういえば、朝ぼんやりと眺めていた天気予報で、梅雨前線がどうのこうの言っていた気がする。


「はぁ……傘さすか。」


あきらめて傘を手に取った僕は、「行ってきまーす」と声に出して家を出る。

親は今日も仕事で忙しいようで特に「いってらっしゃい」が返ってくることもないが、もう別に気にしない。

中学の頃に母も働き始めてからは割とそうだし、むしろ収入が増えたから僕のお小遣いも増えて大歓迎だ。


そんなことを考えながら僕はいつも通り鍵をかけて鞄に放り込む。

最後にもう一度鍵がかかっていることを確認した後、傘を開いて雨の中に一歩踏み出す。

いつもと同じ道をいつものように歩く僕は、ただぼんやりとしながら暫く歩く。


そうしていると、自然と目的地で足が止まるから不思議。


僕はまだ出てきていない幼馴染を待ちながら、目を閉じて静かに雨の音に耳を澄ます。


そうしていると、雨の音の中にドアの鍵が開く音が混じる。

僕が目を開いて音のする方を見ると、ちょうど音を立てて玄関のドアが開くところだった。

ぎぃいと音を立てるドアの先にいたのは、黒い短めの髪の美少女で僕の幼馴染の粟野(あわの)真菜(まな)

真菜は傘をもっているほうの手を軽く上げて僕に目配せした後、傘を開いて僕のほうへ寄ってくる。


「お、おはよ、ゆーくん。」

「おはよう、真菜。じゃあ、行こうか。」


僕がそう言うと、真菜はこくんと頷く。

傘があるので二人で並びながら歩くと結構道幅が狭い道路では迷惑になるので、僕が少し前を歩く感じになる。

まぁ、本当は「一緒に入る?」って言いたいんだけど、ただの幼馴染の僕にそんなことを言える勇気があるわけでもない。

まぁ、実際そんなことを言っても「え?何言ってるの?」みたいな顔されて終わりだと思うけどね。


「そういえばゆーくんのクラスは今日体育ある?」

「ああ、確か無かったはずだよ。」

「そうなんだ。こ、こっちは今日外であるよ、でも今日は流石にないかな。」


いつも通り早口で喋る真菜に速さを合わせると真菜がよけい早口になるので、僕は努めてゆっくり話す。

真菜、身内相手には結構饒舌なんだよね。すらすら話すし。


「うーん、そういえば雨の日は昔のことを思い出すよね。前にも話したっけ?ほら、あの、あ、あ――」

「相合傘?」


急に言葉に詰まった真菜の表情が強張ったのを振り返って見た僕は、真菜が言いたそうなことを代わりに言う。

すると、真菜はこくんと頷いて、何事もなかったかのように話し始めた。


「そう、その話した?」

「結構な頻度でしてる気がするよ?

 あと、段々早口になってるから落ち着いたら?」

「そう言われても意識しないとそうなっちゃうんだよ。癖?そんな感じ。」

「知ってる。何年幼馴染やってると思ってるの?」

「何年だろ……」


「えっと、一歳からだから……」と呟いた真菜は、たぶん指を折って数字を数えているんだろう。

振り返ってないからわかんないけど。

単純に今の年齢から一引いたら出るのに、それを思いつかないで一生懸命数えるのとかは昔から変わらない。


「えっと、十五年であってる?」

「うん。今年で十六年になるね。」


そう返しながら、ふとその数字の大きさについて考える。

真菜と会ってから今年で十六年になるのか……

正直、物心つく前から知ってるからなんか変な気分だな。

でも、そっか。今年で僕らは十七歳になるのか。

そりゃあ、真菜も僕も成長するよね。


「なんか遠いどこかを見てるような目だけど大丈夫?」

「たぶん、真菜の数学の点数よりは問題ないはずだよ。」

「い、今はテストの話はしないの!」


そう言ってぷりぷり怒る姿は、僕の覚えている中でずっと変わらなくて、思わずくすっと笑ってしまった。








こんにちは、海ノ10です。


誤字脱字等ありましたら、教えていただければありがたいです。

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「絵が好きな君と絵を描かない僕」
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